ありふれた職業で世界最強  魔王を支える者達   作:グルメ20

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どうもグルメです。

今回のお話しは長いです。次回で第一部、最終話にしたいため詰め込みました。ギャグだったりシリアスだったりと色々です。
それと、この小説では3つのかぎかっこを使い分けていますので解説を、

「 」は普通の人がする会話時。

『 』は幽体及び魂だけの状態の会話時。

< >は脳内に声が響いてくるような状態の会話時。

となっております。

これを踏まえて本編の方、どうぞ。


ある人物の意外な一面と、この世界の真実。

「そんじゃ、まぁ…お互いどういう経緯があったか知れたことだし、この反逆者の住処を調べ…『お待ちください、ハジメ殿。」ん、どうした?」

 

『暫し、時間をください…。』

 

ハジメが反逆者の住処の調査を提案しようとした矢先、いきなりサラが言葉を遮って時間を要求した。皆が「何事だ?」と思っているとサラはユエの前にやってきた。

 

『お嬢様、此度の件…本当に…申し訳ございませんでした。』

 

そう言ってサラは土下座し、今にも泣きそうな声で頭を深く下げた。クロウも気づかされたようにサラの横に並び片膝を立て詫びるように頭を下げた。ユエは表情を変えずに紅眼の瞳でジッとサラを見つめ、ハジメ達は何も言わず見守る中、サラは頭を上げて口を開いた。

 

『私はお嬢様に出会う前は、どうしようもない人間でした。故郷を滅ぼした人物を見つけては仇討ちを行い、己の拳を相手の血で染める日々を送っていました。』

 

「(師匠の過去にそんなことが………)」

 

サラの意外な過去に当麻、ハジメ達が驚いている中、急にサラは懐かしむように言葉を続けた。

 

『そんな時、私はディンリード殿に拾われ、まだ幼いお嬢様に謁見することになりました。そして、私の手を取って言ってくださいました「…とても綺麗な手」と。今もその温もりは鮮明に覚えています。』

 

そう言ってサラは自分の右手を少し見つめた。幼いユエが触れていった所を思い返し、謁見の後に大いに泣いた事を思い出した。

 

『お嬢様の言葉で歪んだ心は浄化され、お嬢様が触れた事で今までしてきた己の拳を見つめ直すようになりました。そして、誓ったのです、‘’私の拳はお嬢様を守るために、大切な人を守るために振る‘’と……それなのに…』

 

サラは言葉を詰まらせる、握り拳を作り、過去の情けなさに怒りをこみ上げてくるのをぐっと耐えながら再び言葉を続けた。

 

『いざ、ディンリード殿の前では……ためらったせいで…もしかしたら、考え直してくれる…そんな甘い考えもあって技も…拳も…出せず…捕まって身体と魂を分離させられ…………手を握り、お嬢様の温もりを感じるどころか、身体を張って守ることも………囚われていた場所から助け出すことさえ叶わず…300年も……毎日扉の前でただ己の弱さを懺悔するばかりでした……。』

 

サラは今にも泣き出しそうな声で自分の後悔を告げると最後に「お嬢様…」と前置きして、

 

『誓いを果たせず…救い出せなかったこと……………どうか、お許し…ください。』

 

「サラ姉……。」

 

サラは再び深く頭を下げると同時にすすり泣いた。無様な顔を見せたくないのかサラは頭を上げることはなくただ頭を下げ続け、「300年も何も出来なかった」、「ユエを救い出せなかった」その事に対しての罵声を待った。クロウもこのことに対しては言い訳も弁明もせず、自分達が未熟だったのが確かなので何も言うことはなく、ただ頭を下げ続けるしか出来なかった。ユエはその二人の様子をジッと見つめていた。

ハジメ達が「差し出がましいことは出来ないな。」と思い見守る中、いきなりユエが口を開いた。

 

「当麻、サラ姉の横に並んで姿勢を低くして。」

 

「えっ?」

 

「早くする。」

 

いきなり呼ばれて戸惑う当麻は催促されてようやく動き出し、ユエに言われたようしゃがみ込んで姿勢を低くした。サラとクロウはその様子をチラッと見ており、当麻が姿勢を低くしたのを確認すると再びユエが口を開いた。

 

「サラ姉、当麻と入れ替わって」

 

『お嬢様…?』

 

「いいから当麻の身体に入って、動けるようにして」

 

サラが困惑するなか言われた通りに当麻の身体に入りサラが当麻の身体を動ける状態になった。

 

「お嬢様、一体何…を……す……る?」

 

改めてユエに何をするのか尋ねようとした矢先、温かいものに包まれた。耳を澄ましていると「ドクン…ドクン」と音が聞こえてきてサラはそれがどこか心地よかった。

 

今、サラはユエに抱きつかれているのだ。

 

「こうしたら……私の‘’温もり‘’伝わるでしょ?」

 

「……お嬢様。」

 

母性を思わせる優しい言葉と温かい温もり、サラの鼓動が早くなると同時にどこか身体の重みが消えつつあった。

 

「サラ姉、私もね………叔父様と対峙した時、同じような気持ちだったの。‘’話せば、理解してくれる‘’とか‘’これは何かの間違い‘’とか、そんなことばかり考えて、目の前の現実を受け止めようとしなかった………だから、ろくに魔法も使えず、抵抗もできなかったの…………私がもっとしっかりしていたら、こんなことには…。」

 

そう悔やむように話すユエは、魔力の直接操作、自動再生等々の先祖返りの力に目覚めてから当時最強の一角に数えられ、そのこともあって若くして国の王になることが出来た。その気になれば叔父など敵ではなく、簡単に倒すことが出来たのだ。だが、最強といえどもその心は最強ではなく、まだ人生の半分も経験していない幼子であり、信頼していた叔父の裏切りのショックで戦闘意欲はほぼ皆無に、よって本来の実力を発揮することなくあっけなく捕まってしまったのだ。

 

「それと、サラ姉は「誓いを果たせなかった」って言うけど……サラ姉はちゃんと誓いを果たしてくれた。絶望の淵から私を救い出し、ヒドラの攻撃から私を守ってくれた。‘’会いたい‘’と願ったら……こうして私の前に会いに来てくれた。だから……」

 

そう言ってユエは優しくサラの魂が入っている当麻の顔を上げて女神のような微笑みで言った。

 

「…‘’ありがとう‘’って言わせてサラ姉、クロウ兄。今、こうしていられるのは…あなた達のおかげです。」

 

「姫…。」

 

「…お……じょう………う…わああああああぁぁぁぁぁーー!!」

 

その言葉にクロウは優しい笑みを浮かべ、サラは当麻の身体で泣きじゃくりながらユエに抱きつき、大粒の涙でユエの胸元を濡らした。そんなサラをユエは優しく受け止め、あやすように頭を優しくなでていくのだった。そんな様子を残りの者は優しく見守っていた………………………ここまでは、まだよかった。

 

 

 

 

 

「!?」

 

変化あったのはサラがユエに抱きついて数分後、急に目を細めて身の毛がよだつようにビグッとするユエ。それは何故かというと、

 

「あぁ~、おじょう様の胸、慎ましくも柔らかく張りのあるこの胸……すうぅぅ~はぁ~、300年経っても変わらないのですね。」

 

サラがユエの胸にすりすりと顔を寄せていたからだ。おまけに匂いも嗅いでおり、これにはハジメ、スバル達はドン引き、クロウは手に頭を当てて深いため息、レオンは「300年経っても、そこは変わらんか…。」と呆れていたのだった

 

「サラ姉……」

 

「はいお嬢、ごっぱッ!?」

 

返事をしたサラは顔を上げた途端に、‘’いったいその小さな身体にそんな力があった?‘’のと驚く位にユエはアッパーを放ち、サラもとい当麻の身体が飛んだ。

 

「これは許してない…」

 

「このやり取りも久しぶりですね、おじょう様。」

 

胸元を守るように呆れながら言うユエに、サラは顎を抑えながらどこか懐かしむように嬉しそうにニヤニヤとしした後、再びユエの胸に抱きついた。

 

「俺、この先信用していっていいのか心配になってきた。」

 

「俺もだハジメ、まさかこんな一面があるとは…サラさんに対するイメージが崩れそうだ。」

 

『身内の恥さらし、どうかご了承ください。』

 

ハジメと士郎がサラに対するイメージがかけ離れているなか、クロウはペコペコと頭を下げるしかなかった。

 

「当麻…お前、そんな一面があったのか……」

 

『ち、違うよスバル君! あれしているのは僕じゃなくて師匠、分かって言ってるでしょう!? ちょっと師匠、僕の身体で変なことしないで! 傷つくのは僕の身体なんだから!!』

 

当麻の身体を借りたサラを見つめながら言うスバルに、当麻は否定しつつサラに抗議していた。

さっきのシリアスはどこに行ったのか? というくらい周りが明るくなる中、レオンはただ一人この様子を静かに見ていた。ユエ、サラ、クロウを見る限り今の所、ディンリードの裏切りによるショックの陰りは見られず、引きずっている様子もなかった。まずは、そのことに一安心するのだった。

 

<(今はこれでいい………だが、いずれ真実は話さないとな…。)>

 

誰にも言うことなく、いずれしないといけない使命を思いながら、レオンは喧騒を眺めつつ静かになるのを待つのだった。

 

 

 

 

 

 

サラの暴走が収まり、行動を起こす前にハジメとユエはスバルが用意した男の物の服(ユエに飛ばされた時、二人に着るものがないと察して適当な所から見つけてきた服)を着た。だがハジメはともかくユエには大きすぎたのかカッターシャツ1枚しか着れず、‘’裸にカッターシャツ‘’状態となり、それを見たサラが暴走して再び当麻の身体を使って抱きつこうとするも、士郎の身体を借りたクロウにアームロックをかけられ事前に阻止、自分の身体が痛めつけられる所を見て「僕の身体が~」と嘆く当麻をを慰めてから一向は反逆者の住処を探索することにした。

ベッドルームを出ると周囲は自然に囲まれて様々な種類の樹が生えていた。さらに人口の太陽(ユエ曰く、夜になると月なるとのこと)、天井近くから流れる滝、それからなる川、何も耕されてないが畑らしきものがあった。この光景にハジメ達は圧倒され、ここが迷宮の最奥だということが誰もが頭の記憶から離れかけた。

次にハジメ達はベッドルームに隣接した建築物、というよりも岩壁をそのまま加工した住居に向かった。見た感じは三階建てらしく一階から確認していくことにした。

リビング、台所、トイレ、を発見するも長年放置されている様子はなく綺麗のままだった。「誰かいて、掃除でもしているのか?」と誰もがそう考えながら進むと、再び外に出た。目の前には大きな円状の穴があり、その縁には口を開いたライオンのようなオブジェが鎮座しており、近くには魔法陣が刻まれていた。「これは、もしや……」とハジメ、スバル、士郎、当麻が顔を見合わせてハジメが近くの魔法陣に魔力を注ぐとライオンモドキの口から温水が飛び出した。4人が想像していた通り、これはお風呂だった。

 

「「「「よっしゃあ!」」」」

 

迷宮をさまよって久しぶりのお風呂に、4人の気持ちが高ぶった。彼らは生粋の日本人でお風呂大好き人間、寒い日には4人で近くの銭湯でお風呂に入ることもしばしば。「早く探索を終わらせて久々にゆっくりしたい」という想いを胸に一向は二階に足を向けた。

二階には書斎や工房らしき部屋を見つけるも開ける事が出来ず、封印されているのかスバルが力技で開けようとハジメが錬成しようともびくともしなかった。「何処かに鍵があるのかもな。」と士郎の言葉に皆が納得し、一向はここを保留して三階に向かった。

三階には部屋は一つしかなく扉を開けると目の前には直径七、八メートルの今まで見たこともないほど精緻で繊細な魔法陣が部屋の中央の床に刻まれていた。さらに魔法陣の向こう側には豪奢な椅子に座り、金の刺繍が施された見事なローブを羽織ったままの白骨化遺体があった。

 

「この住居の主…なのかな?」

 

「だと思うぜ当麻、いや~それにしてもRPGとかでよく見かける、魔法とか秘密の奥義を習得する部屋を現実で見られるなんてテンション上がるぜ。絶対この魔法陣、凄い力を授けてくれるに違いないって!」

 

当麻の疑問にスバルが同意、さらに言うとスバルはゲームやアニメとかでよく見かけた光景に胸を高鳴らせた。

 

「あまりはしゃぐなスバル、まだそうと決まったわけじゃないだろ? 何かのトラップが発動する罠かもしれない。ハジメはどう思う?」

 

士郎は興奮するスバルに落ち着くように言い聞かせた後、ハジメに意見を求めた。

 

「うーん、ここまで来て流石に罠はないと思う…確証はないけど。まぁ、地上への道を調べるには、この部屋の魔法陣がカギなんだろうし…入って調べるしかないだろうな。一応、俺一人が入ってみる。皆はここで待っててくれ、何かあったら頼む。」

 

「待てよ保険として俺も入るぜハジメ。何かあった時、中から俺とレオンが対応する。」

 

「わかった。その時はスバル、レオン、頼んだぞ。」

 

「あいよ。」

 

<…ああ。>

 

「ん……三人供、気を付けて。」

 

お互いの行動を確かめ合った後、ハジメとスバルは並んで魔法陣に踏み出した。そして、二人が魔法陣の中央に足を踏み込んだ瞬間、カッと純白の光が爆ぜ部屋を真っ白に染め上げ、まぶしさのあまり目を閉じるハジメ達。やがて光が収まり、皆が目を開けた瞬間、魔法陣が淡く輝いており豪奢な椅子の前に白骨化遺体と同じローブを着ている青年が立っていた。

 

「試練を乗り越えよくたどり着いた。私の名はオスカー・オルクス。この迷宮を創った者だ。反逆者と言えばわかるかな?」

 

目の前の青年はオスカー・オルクスと名乗り、どうやら事前に記録したものをホログラムのように立体化して映し出しているだけのようだ。それでもオスカーは語るのだ、反逆者と呼ばれる由縁、そして、この世界の真実。

 

 

 

その真実は、ハジメ達が聖教教会で教わったものと大きく異なり、ここにいる全員が驚愕すべきものだった。

 

 

 

 

 

 

 

「………………話は以上だ。聞いてくれてありがとう。君のこれからが自由な意志の下にあらんことを」

 

そう話を締めくくりオスカーの記録映像はスっと消え、魔法陣の光も収まった。オスカーの長い話しに二人はようやく一息つくことが出来た。

 

「とんでもねぇ話しを聞いちまったなハジメ。」

 

「ああ、そうだな。だが、俺たちの目的はここを出て元の世界に帰る、ただそれだけだ。この世界のことなど知ったこっちゃない。」

 

「……そうか。」

 

そう吐き捨てるように言うハジメに、どこか寂しく思うスバル。友を仲間を思う心は変わらずとも、その他は変わってしまったのだなと改めて痛感するのだった。

 

「例えどんなことがあっても………私の居場所はここ。」

 

そう言って、ユエはハジメに寄り添いその手を取るとギュッと握りしめた。これを見る限り、この世界に未練はないのだなと思うレオン。

 

「それにしても、この世界の戦争が全部仕込まれていたものなんて、ねぇ師匠。」

 

『………………………。』

 

「……師匠?」

 

この世界の真実を知り、鼓動が早くなるのを感じながらふとサラの顔を見ると無言で俯いていた。ただ、その顔は白目が見えるほど見開き、何かに耐えるように拳を握りしめていた。そんな様子のサラに当麻が声をかけるが聞こえてないのか反応がなかった。もう一度、声をかけようととしたらクロウに『彼女にも色々あるのです、今はそっとしておきましょう』と優しく止められるだった。

 

『それにしても、反逆者達はこの世界の自由を求めて戦っていたのですね。』

 

「そうなるとクロウ。ケレブリンボールもこの事実を知って神に戦いを挑んだじゃないのかな?」

 

『そうかもしれませんね……。』

 

士郎とクロウは反逆者もとい解放者の思惑を知り、クロウの能力の根源の持ち主ケレブリンボールも解放者と同じ、この世界の自由を求めて戦っていたのではないかと推測した。

その推測に皆が関心を寄せているとハジメが口を開いた。

 

「まぁ、ともあれここ誰もいないし使われてもいない、使える物は貰っておこうぜ。見ろ、この指輪。開かなかったドアと同じ紋章がしてある、これがあの部屋の鍵に違いない。」

 

「ハジメぇ……それ墓荒らし「道具は使ってなんぼだ! 有難く使った方がオスカーも報われるだろ?」

 

スバルの言葉を強引に遮るハジメ。いつの間にかオスカーの骸を調べていたのか、身につけていた指輪を発見し、びくともしなかったドアの鍵だと推測。「ついでにここにあるもの使おうぜ」というハジメのとんでも発言にユエ以外が少しひくのだった。

 

「そうそう、ユエ、当麻、士郎。お前らも魔法陣に入ったらどうだ? 今じゃあ誰も覚えていない神代魔法が手に入るぜ。」

 

「えっ、魔法が覚えられるの!? いよいよ僕も魔法が……。」

 

そう勧めるハジメに真っ先に食いついたのは、魔法を使うことが出来ない当麻だった。誰よりも先に魔法陣の中央に向かい、その後、「……ハジメが言うなら。」とユエが、「まぁ、覚えていて損はないよな。」と士郎が魔法陣に入っていった。再びオスカーが現れて先程聞いた話しを語り始めるも、もう聞いたので三人はそのまま魔法陣から出た。その様子を見たスバルは、

 

「何か博物館とかでよく見かける、展示の説明のボタンを押すだけ押してどっか行ってしまうような光景だな」

 

<何を言っているのか分からん…。>

 

スバルの例えがいまいち理解できないレオンは、淡々と話しているオスカーを見た。何となくだが、後ろの骸が心なしか悲しそうに見えた。

 

「うぅ……使えると思ったのに………神代魔法なら……いけると思ったのに。」

 

一方、当麻はというと地面に跪いて嘆いていた。やはりハナから魔力を持っていないためか魔法が使えなかったのだ。ちなみにユエ、スバルも上手く発動出来ず、ハジメ、士郎のみがこの魔法を修得する事が出来た。

 

『どうやら神代魔法にも適正があるのでしょう。ハジメは錬成師、士郎は調合の技能をお持ちです、それが関係していると思われます。』

 

『当麻、しっかりするのです。気を使いこなせば十分、魔法になしえないことだってあります!』

 

クロウはユエ、スバルが魔法が使えない理由を推測し、サラは当麻のフォローをして何とか立ち直らせると一向はドアを開ける事が出来なかった部屋に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぁ、あのオスカーの骸、あのまま放置しといていいのか?」

 

「あ~、邪魔だからスバル、後で片付けておいて。」

 

「ん…………畑の肥料………。」

 

「コラ、お嬢様! 亡くなった偉人をその様に言うのはいけません!」

 

<なぁスバル、ハジメはいつもこうなのか?>

 

「本当はもっと優しいはずなんだけどな…。」

 

 

 

 

 

 

 

一向はまず書斎に向かい、封印のドアを開けるとそこにはぎっしりと本が並べられていた。ハジメ達はそこで手当たり次第に地上に出る方法が書かれた書物が無いか探した。するとハジメがこの住居の設計図らしきものを発見、そこには今持っているハジメの指輪で三階の魔法陣から地上に出られることが書かれていた。さらにその設計図には一定期間ごとに清掃をする自律型ゴーレムが工房の小部屋の一つにいることも分かった。これで住居内が綺麗だった理由に説明がついた。さらに探り入れるとユエが一冊の本を持ってきた。どうやらオスカーの手記のようでかつての仲間、特に中心の七人との何気ない日常についても書かれており、その内の一節には他の6人の迷宮に関することも書かれていた。

 

「つまり、他の迷宮も攻略すると、創設者の神代魔法が手に入るということか?」

 

士郎の言葉に皆が頷いた。手記によるとオスカーと同様に六人の‘’反逆者‘’もとい〝解放者〟達が迷宮の最深部で攻略者に神代魔法を教授する用意をしているようだ。流石にどんな魔法を授けてくれるのかは書かれていなかったが……するとここで当麻がある考えを口にした。

 

「ハジメ君、もしかしたら残りの迷宮も攻略していったら帰る方法も見つかるんじゃないかな?」

 

その言葉にハジメは少し考えこんで

 

「当麻の言う通りかもな………よし。今後の方針が出来た。地上に出たら七大迷宮攻略を目指そう!」

 

「「「おうっ!」」」

 

「んっ」

 

『『はい!!』』

 

ハジメの言葉にそれぞれ返事をする者達、その様子をレオンは静かに見つめていた。

だいたい書斎を調べ終わった一向は工房へと足へ運んだ。

工房には小部屋が幾つもあり、その全てをオスカーの指輪で開くことができた。中には、様々な鉱石や見たこともない作業道具、理論書などが所狭しと保管されており、錬成師にとっては宝の山が見紛うほどであった。スバル達も興味本位であれやこれやと見ていく中、ハジメだけは腕を組み少し思案していた。そんなハジメに気づいたユエが首を傾げながら尋ねた。

 

「……どうしたの?」

 

「いや…あのさ皆、しばらくここに留まらないか? 使えるものは貰ってさっさと地上に出たいのは俺も山々なんだが……せっかく学べるものも多いし、こは拠点としては最高だ。他の迷宮攻略のことを考えても、ここで可能な限り準備しておきたい。どうだ、皆?」

 

そう提案するハジメ、すると真っ先に賛成を唱えた者がいた。

 

『それは良い考えです。是非、やりましょう! なにぶん、当麻に気の使い方を伝授する時間が欲しかったのです。ついでにその身も、心もキッチリ鍛え直しましょう!』

 

そう言ってサラは両手を胸の前に置き"ぞいの構え"をしていた。そして、幽体のはずなのに何故だかサラの身体から熱気が出ているように見えたのだ。

 

「師匠、物凄いやる気に満ちている…。」

 

『彼女はだいの特訓好きでして、それはもう鬼のような過酷な量の特訓をさせられますよ…。』

 

クロウはそう言ってどこか遠い目をしており彼も過酷な特訓の被害者だろうと察した当麻は、どんな事があったのかは聞かないでおくことにした。ただ……

 

「(僕、地上に出る前に死なないよね……)」

 

ふと当麻の脳裏にその様なことを思い浮かべたが、すぐに切り替えてなるべく考えないようにした。その後、レオン、クロウもスバル、士郎にまだまだ教えたいことがあるため賛同し、「もっと強くなれるなら。」という理由でスバル、士郎も反対することはなかった。そして、ユエは

 

「……ハジメと一緒ならどこでもいい」

 

そういうことなので反対も何もなかった。ユエの不意打ちにハジメはどこか頬を染めるも「ゴホン」と咳払いして照れくささを誤魔化した。

 

 結局、ハジメ達一向は当分の間それぞれパートナーと共に、ここで可能な限りの鍛錬と装備の充実を図ることになり、その後、ハジメ達は四つに別れた。

ハジメとユエ(ユエはハジメと一緒にいたいので付き添い)は早速工房にこもり、今頭の中で考えている事を錬成を使って形にしていった。当麻とサラは、サラが当麻の身体を借りて昨日の戦いでの疲労が残る身体に鞭打って早速特訓に入り、士郎とクロウは、士郎が夕食を作り、クロウが食べられる食材が無いか住居区の近隣を探し回った。そしてスバルとレオンはオスカーの骸を持って畑の端に埋め、墓石も立てて丁重に供養した。

 

 

その時、ちょっとした不思議なことがスバルとレオンの前で起こったが、それはまた別の機会に話すとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「ごちそうさまでした」」

 

「はい、お粗末さまでした。」

 

出て来た夕食を残さず食べて満足げに言うスバルと当麻、その言葉を聞いて洗い物をしながら笑みを浮かべて答える士郎。スバルはオスカーの埋葬が終わった後、いい匂いにつられてキッチンに向かうと丁度特訓が終わりヘロヘロ状態で椅子に座っている当麻と一緒に夕食を取ったのだ。

 

「流石は‘’ウィステリア‘’のコックさん、美味かった~」

 

「本当久しぶりだよね、士郎君の料理。」

 

『私も驚かされましたよ、料理の手際の良さに。』

 

「おいおい、褒めても何も出ないぞ。」

 

スバル、当麻、クロウの言葉にどこか照れくさそうに笑う士郎。

ちなみにウィステリアとは士郎が居候している場所で、園部優花の家族が経営している洋食屋さんでもある。小さい頃からお手伝いをしており、料理のいろはもそこで学び、今では士郎一人が厨房に立っても十分やっていけるぐらい料理の腕が上がったのだった。

 

『ところで士郎殿、ハジメ殿とお嬢様はどこに?』

 

スバルと当麻の食事中、全く顔を見せなかった二人にサラは疑問を抱き士郎に尋ねた。

 

「ああ、二人ならとっくに食事を終わらせて行ったよ。また、工房の方に戻ったんじゃないかな? 」

 

その言葉にスバルは「アイツ、集中すると必要最低限のことしかしなくなるんだよな~」とひとりごとのように言って、当麻も「邪魔したら悪いから、今はそっとしておこうか。」と口にして向こうから話しかけてくるまで待つことにした。サラは『私の入る隙間、なくなっちゃいましたね…。』と小さな声でユエの恋する様子を喜びつつも、どこか寂しく感じ儚げな顔をしていた。

ここで士郎が「そうそう…。」と前置きして

 

「スバル、当麻。先に風呂に入ってきたらどうだ? 丁度いい感じに湯船が溜まっていると思うぞ。」

 

それを聞いた二人は顔を見合わせて、

 

「入るか、当麻。」

 

「うん」

 

そう言って二人は席を立ち、お風呂場に向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「師匠…………どうしても入るのですか?」

 

『当たり前です! 私だって入浴したいのです。約300年ぶりのお風呂なのですから!』

 

「何だかな……。」

 

ウキウキ気分に話すサラに対して、どこか複雑表情でため息をつく当麻。それもそのはず、サラも当麻の身体を借りてお風呂に入るということでついてきており、今スバルを含めた三人でお風呂の脱衣場に向かっていた。当麻としては大人の女性のサラに思春期真っ只中の自分の身体を見られることに抵抗を感じていたのだった。

サラが言うには、幽体の状態では湯船に浸かっても温度も湯船に浸かっている浮遊感も感じられず、それを聞いた当麻は「ユエさんの身体を借りて入浴出来ないのか?」と尋ねるも、どうやら他の身体に入り込むことが出来ないみたいで、一度入ってしまった身体のみ魂の出入りや身体の操作が出来るのだった。

その話を再び思い出し、ため息をつく当麻。それを見たスバルは、

 

「そうため息つくなよ、タオルを巻いて入ればいいじゃないか。ここは異世界なんだし、わざわざ元の世界のマナーを守る必要なんてないだろ?」

 

『私も見ないようにしますので。仮に見えてしまっても私は何の動揺はいたしません………………………まぁ、散々クロウのモノを見てきましたし……

 

「「えっ?」」

 

スバルと当麻は思わずサラの顔をみた。

 

『…ほら、早く行きますよ////』

 

サラ自らの爆弾発言に頬を赤く染めて、いそいそと脱衣場に向かった。スバルと当麻はよく聞き取れなかったが、何か凄い発言を聞いたのは確かだと思いサラの後を追った。その後、サラの後ろからついていく形で二人が歩いていると前方に脱衣場の扉が見えてきた。サラは自分で開けれないのか扉の前で待っていた。お風呂場は脱衣場を通った先にあるのだ。

ここでスバルはある事を呟いた。

 

「お風呂に入ろうとしたらヒロインの女の子が先にいたりするよな? 俺、そんなシチュエーションに憧れているんだよね~。裸体はもちろん、可愛い反応が見れるからさ。」

 

「もう、スバル君。そんラノベみたいな話、現実に起きるわけ………………………ん?」

 

スバルの何気ない一言に否定的だった当麻だが、よくよく考えたら自分達は異世界に飛ばされ、迷宮という名のダンジョンをさまよい、魔物と戦ってきた。非現実的だと思っていた事が実際に起こり身をもって経験してきた。そうなるとスバルが言ったことも実際にあり得るのではないかと考えを改めた。

そして、自分の()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「ま、待ってスバル君!!」

 

とっさにスバルを呼び止めるも時すでに遅し、スバルはドアノブに手を伸ばしてドアを開け放ったっていた。

 

「えっ、何か言ったか当……マ……」

 

スバルは当麻の顔を向く前に、あるものを見て固まった。

 

 

「………………………。」

 

 

 

そこには早速フラグ回収と言えよう。バスタオルで身を包み鏡の前で髪を結わうユエの姿があり、こちらを見てキョトンとしていた。

 

「………………………。」

 

「あわわわわ……////」

 

ラノベによくあるテンプレな状況にスバルは慌てることもなく、意外にも喜ぶことはなかった。当麻はユエがタオルで身体を隠しているとはいえ裸に近い姿に顔を赤く染めてあわてふためいていた。サラも同様「お嬢様…////」と言って顔を赤く染めて、レオンも<普通こうなるか?>と呟いていた。ユエは未だに固まったままだった。

そんな中、スバルは「なぁ、当麻…。」と前置きして

 

「こういうのは期待するもんじゃないな……想像だにしないからこそ初めて喜びって生まれるんだな。」

 

「何冷静になって解釈してるの!? 元を辿ればスバル君が変な「…ねぇ」ひぃ。」

 

「……誰の許しを得て…ココニ来タノ?」

 

ようやくユエは自分が置かれている状況を理解し、ユエの金色の髪が自然にほどいいて何故だか触手のように動き、声のトーンを下げてスバル、当麻を睨み付けた。楽観的に見ていたスバルも流石にヤバいと感じ始めたのか無意味な言い訳をし始めた。

 

「ま、待てって。俺は士郎からハジメと一緒に工房に戻ったって聞いたからここにいるなんて思っていなかったんだよ!?」

 

「今すぐ立ち去るから、後で全力で謝るから今は見逃して………って師匠!? 何で僕の身体を操って動かないようにしているの!!?」

 

<いえ、タオル姿のお嬢様をこの目に焼き付けようと……そんでもって許しを得るならお嬢様のお背中でも流そうかと…////>

 

「こんな状況で何言っているのこの人!?」

 

一刻も早く当麻は立ち去りたいのにサラが身体を支配して動けないでいた。そして、スバルは

 

「後は任せた。お前の死は無駄にしない!」

 

「そんな、スバル君!? ズルいよー!!?」

 

そう言ってスバルはユエに背を向けて当麻を置いて走り去ろうしたが、その前にユエが右手をスッと上げて魔法を放った。

 

「二人共…反省……嵐帝ッ!!

 

「「アッーーーーーーーーーーーーーーーーー!!?」」」

 

極太の竜巻に二人は巻き込まれ、そのまま竜巻と一緒に廊下の先にある壁を突き破って近くの川に落とされた。

 

<(アホらしくなってきた…。)>

 

スバルの身体が川底に沈んでいく中、レオンは呆れながらそう思った。ちなみにサラは当分の間、ユエに口をきいてもらえなかったそうだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……スバルと当麻の叫び声聞こえたような…………………気のせいか?」

 

湯船に浸かってまったりとするハジメ、二人の叫び声が聞こえてきたかのように思えたが、お風呂が気持ち良すぎてどうでもよくなり思考を放棄した。

だが、この時ハジメは知らなかった。

 

「……フフ。」

 

すぐ近くまで恐ろしくも美しい淫魔(ユエ)が迫っていたことに。後に別の意味で叫び声を上げることになることもまた、ハジメは知る由もなかった。

 




ありふれ噂話




当麻「どうも、進行役の当麻です。」

クロウ「やあ、はじめまして。クロウ・ニッケルことクロウです。よろしく。」

当麻「今日は佐助君じゃないのですね…クロウさん佐助君は?」

クロウ「彼ならお休みして頂いています。無理を言って出番を代わって貰ったのですよ。何せ今回の噂話は私達がいた王国に関する噂話ですから。」

当麻「へぇーそうなんですね。それじゃあ読み上げもお願いします。」

クロウ「わかりました。それでは早速ですが、ありふれ噂話………………」












クロウ「姫に性知識、夜の営みのあれやこれの教師をしていたのは、サラなんですよ。」




当麻「何とまぁ…//// ディープな話しですね////」

クロウ「元々王国内に仕えている別の女性の方に教師をして貰うつもりだったのですが…サラがどうしてもと必死に頼み込むので仕方なくその女性の方に教師を代わって頂いたのですよ。」

当麻「…………ちょっと待ってください。そんなことしたら師匠、ユエさんにセクハラ行為しまくりなのでは?」

クロウ「当初はそんなことなかったのですよ。ただ授業するに連れて姫に対してのスキンシップが多くなり、姫も当時は純粋でしたからね……それを受け入れていたのですよ。」

当麻「ユエさん、当時はどんな心境だったんだろう……………」

クロウ「それで、ここから面白くなるのですが………ある日、サラがやってきて「夜のあれやこれを教えるにあたって、やはり経験なしでは教えられません。だから経験相手になってください」って大胆にお願いしてきたのですよ。」

当麻「えぇーっ!? それでクロウさんは、何て答えたの!?」

クロウ「恋人になる前提としてOKしましたよ。教材だけの関係は嫌ですからね。あっ、ちなみに…恋人になる前からお互い意識はしていました。二人で行動することも多かったし、付き合いは長いので。どちらもきっかけが欲しかったのですよ。」

当麻「そうだったんですね。それで…その//// ………二人で経験を積んで//// 無事に授業を納めたのですか?」

クロウ「………………実は最後の最後にサラが大事件を起こして……。」

当麻「えっ?」

クロウ「…………この続きは、次回話します。長くなりそうなので。」

当麻「あっ、はい。(師匠、何やらかしたんだ…!?)」

クロウ「それじゃあ、この辺で…また次回お会いしましょう。」













いかがだったでしょうか?
あれこれ書きたい想いが積もったら、こんなことになりました。非常に申し訳ございません。いつまでもオルクス大迷宮にとどまるわけにはいきませんので…。ここを出てのハジメ達の冒険はもちろん、クラスメイトの話しも書きたいので、この1話に色々詰め込みました。噂話も長くなりそうなので次回に持ち越しです。

次回、第一部最終話です。そんなに長くはならない予定です。


それではこの辺で。では、また……。
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