ありふれた職業で世界最強  魔王を支える者達   作:グルメ20

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どうも、グルメです。

大変お待たせしました。1.5章の最終話となります。


それでは、どうぞ。


そして、少女達は決意する③ 香織と雫は決意し、孤高なレムは迷宮に挑む。

数人の生徒達がカヅキ達に向かって走って来た。

 

「あれは、光輝さんに、龍太郎さん。」

 

「あらら、雫ちゃんだけじゃなく、鈴ちゃん恵理ちゃんコンビまで…勇者組勢揃いだね~」

 

厚史と佐助がやって来る生徒達を判断していると勇者組がやって来た。みんな慌てふためいており、どこか落ち着かない様子が見られた。

 

「どうした? そろいもそろって血相を変えた顔をして?」

 

「‘’どうした‘’じゃないだろ!! なに悠長な事を言っているんだ!?」

 

カヅキの言葉に光輝はどこか切羽詰まった様子で声を荒げた。いきなり出会い頭に声を荒げられた事に苛立ちを覚えたカヅキは眉間にしわを寄せていると、雫が割って入って理由を話した。

 

「それよりもレムが……レムが、いないのよ! 昨日のことでレムに謝ろと思って部屋に訪れたら…綺麗に掃除してあってレムの私物が無くなっていたの…。」

 

「今、クラスメイト全員で王宮内を探している所だ。」

 

雫の言葉に付け足すように話す龍太郎。それを聞いたカヅキはチラッと奈々と妙子の顔を見た。二人は意を決するようにコクッと頷くと、カヅキはかったるそうに話し始めた。

 

「レムならさっきこの国を出ていった。オルクス大迷宮で落ちた連中を探しにいくためにな。」

 

「僕たちはそのレムを見送った帰りなんだ。」

 

「……えっ!?」

 

「な、なんだって!!?」

 

カヅキ、イツキの言葉に驚きを隠せない表情で固まる雫と光輝。龍太郎達もこれを聞いてただ驚くばかり、そして光輝は案の定批難し始めてカヅキの胸倉につかみかかった。

 

「あんな危険な事があって、まだ何があるか分からないってのにどうして止めなかった!!?」

 

「遅かれ早かれアイツはここを出て落ちた連中を探しに行く事を決めてたんだ。アイツの意志をどうして止める必要があったんだ?」

 

「それはどう考えても無謀過ぎるから…」

 

「無謀!? よく言うぜ! 大ベテランのメルド団長の言葉も聞かずに単騎でヘビモスに挑もうとしていたお前がよく言えたもんだな!?」

 

「少なくともレムは君より賢い、君みたいに無謀なことはしないと思うよ。」

 

特大ブーメランが帰ってきてかつ、イツキの棘のある言葉に光輝は苦虫を噛み潰したような顔をしてカヅキの胸ぐらを離した。そしてカヅキと話しても埒が明かないと思った光輝は無意識に妙子と奈々の方を向いた。

 

「君たちも君たちだ! 大事な友達なのにどうして止めなかった?」

 

「私だって止めたかったわよ! でも、レムがそうするって決めたから、一人の友人として支えたかったから…だからレムの意志を尊重して行かせたのよ!!」

 

「こっちの気も知らないで勝手なこと言わないで!!」

 

普段おっとりしている様子から想像つかない程の妙子の憤慨姿、さらに奈々の激怒する姿に光輝は少し後ずさりした。そして、カヅキは頭をかきながらめんどくさそうに口を開いた。

 

「なぁ天之河、レムが黙って出で行った原因…お前にも一因があること自覚しているか?」

 

「なっ、俺が!? 俺は何も悪いことは言っていない!! 悪いのは檜山やそれに便乗したクラスメイト達だろ!? でたらめなこと言うな!!」

 

そう反論する光輝。その言葉に疑いも迷いもなく‘’自分の行いは正しい‘’ ‘’間違ってない‘’という事が嫌という程伝わって来た。それと同時にレムが出ていった原因が檜山とそれに便乗したクラスメイト達の責任と押し付ける始末。本気で言っているのか、はたまた単に気づいてないのか定かではないが、自分の発言を棚に上げている事にカヅキとイツキ哀れみの表情で露骨にため息をつき、妙子と奈々は睨むようにを見つめ、ニアはどこか複雑な表情で見つめていた。そして佐助は「ためだこりゃ」と苦笑いを浮かべ、厚史は「この先、信じていいのでしょうか…」とどこか心配そうな表情で見ていた。

 

「な、なんなんだ君らは! 俺が何をした!? どうしてそろいも揃ってそんな不快な顔をする!?」

 

原因を理解せず、どうしてこのような顔を向けられているのか分からない光輝は狼狽した。「こいつは本気で過去を振り返らないな…。」とカヅキ達が思っている中、

 

「…行くか。」

 

「…そうだね。」

 

カヅキの一言にイツキは頷いた。光輝を横切り勇者組の中をかいくぐるように歩く二人。

 

「奈々、行きましょ。」

 

「うん。」

 

妙子がそう言うと奈々は静かに頷き、二人の後を追うように歩き出した。そして、光輝を横切る時、二人は思った。‘’もう、光輝(こいつ)は信用しない‘’と。

 

「…では皆様、失礼します。」

 

「じゃあね、みんな~」

 

「失礼します。」

 

ニアは勇者組にお辞儀をして歩き出し、佐助は軽い口調で手を振ってからニアに続き、厚史もニア同様に深く頭を下げてからそれに続くのだ。

 

「ニア…。」

 

雫様、詳細はまた後で…。

 

どこか悲しげの雫の前を通る時、ニアは軽く会釈した。それと同時に雫しか聞こえない声で呟いてカヅキ達の後を追った。

 

「「「…………。」」」

 

龍太郎、鈴、恵里は横切って行くカヅキ達を黙って見送った。とてもじゃないが声をかけられる雰囲気ではなかったからだ。それと同時に彼らの背中が自分達にはない"何か"が漂っているように見えた。

雫にもそれが見えており彼らの背中を見つめていると、

 

「雫………俺は何か間違えていたのか? それが何なのか分かるのか?」

 

震える声でどこか悔しい思いを隠しながら光輝は尋ねた。

 

「光輝、それはあなたが…「ダメだよ八重樫さん、簡単に教えては。」月山君?」

 

いつの間にかイツキは歩みを止めてこちらを見つめており、雫が教えようとしていた事を静に遮った。

 

「別に良いだろそれぐらい! それにお前には関係無いはずだ、邪魔をするな!!」

 

光輝はイツキに邪魔された事に腹をたてて睨み付けるも、イツキは動じる事なく涼しい顔をしていた。そして、またもや小さなため息をついたのだ。それが光輝をさらに怒りを湧き上がらせイツキに迫ろうと動き出そうとした時、

 

「天之河ァ、耳をかっぽじってよく聞け。」

 

いきなりカヅキが歩みを止め、めんどくさそうに背中越しに語り始めた。

 

「お前がこの世界で何しようがかまわねぇ…だが本気で人間族のために戦い、人も世界も救うって言うのなら……やめときな。今のお前には無理だ。」

 

「なん…だと? 何が無理なんだ!!」

 

自分自身を否定されたように思えた光輝はさっきのこともあって激怒した。カヅキは淡々とした口調で話しを続けた。

 

「どうしてレムが去ったのか? どうして俺たちがお前に期待外れの眼差しを向けるのか? どうして俺がお前に無理だと言ったのか? それすら分からない奴が人を世界を…救えるわけないだろ。」

 

「だから俺は! 分からないから雫に聞こうと「それが間違いなんだよ天之河ァ!!」…っ!?」

 

いきなり声を荒げるカヅキに光輝はびくついた。そして、カヅキは振り向いて光輝に言い放った。

 

「自分で考えろ。これから多くの事を考え決断するというのに、考えもしないで安易に答えを求めるな。それとお前はもっと他人を知れ。他人を知らずにして人など救えない…それから最後に、もっと己を見つめ直せ。はっきり言うがレムの件、お前にも一因がある。何がいけなかったのか…しっかり追及しろ。」

 

それだけ言うと再び光輝に背を向けた。

 

「もし、それができないなら勇者なんかやめろ。その辺のガキを連れて勇者ごっこしているのがお似合いだ。」

 

そう言ってカヅキは歩き出したのだ。歯がゆい思いで聞いていた光輝は納得がいかないのか早歩きでカヅキに迫ろうとしたが、雫が素早く光輝の肩を掴んだのだ。

 

「待ちなさい光輝!」

 

「雫、何故止める!?」

 

「それは止めるわよ。彼は何も悪いこと言ってないでしょ? 何をしようとしていたか分からないけど貴方が馬鹿な事をしでかそうとした事を止めたのは確かよ。」

 

目を細めて睨む雫に「うっ」と息を止める光輝は渋々カヅキを追いかける事を諦めた。

 

「口は悪いけど彼は貴方の欠点を教えてくれたのよ? 素直に受け止めないとダメよ光輝。」

 

「確かにそうだが…でも少しくらい教えてもらって罰は当たらないはずだ。」

 

「さっきも言ってたでしょ? 自分で考えないと貴方のためにならないわよ。それに私もさっきの行動は軽率だと深く反省している…今後の光輝のためにならないものね。」

 

そう言って雫は光輝の問いかけ直ぐに答えようとした事を反省した。思えば今の光輝の性格は自分の行動にも非があるのではと思い、後で思い返してみる事を心の中で決めるのだった。

そして光輝はまだ納得してないためなのか、はたまた雫が二人、もしくは一人と仲が近づきつつある所に嫉妬したのかカヅキとイツキの背を睨みつけながら呟いた。

 

「雫は、やけにあの二人の肩を持つのだな…」

 

「………そんなんじゃないわよ。良くなってもらいたいという気持ちを持つことはいけないことなのかしら?」

 

その言葉に雫は嫌気がさしたのか光輝の顔を見ずして視線を逸らした。すると城下町が目に見えたのでそちらの方に向けて雫は歩みを進めた。

 

「どこへ…?」

 

「どこだっていいでしょ…時には一人になりたい時だってあるのよ。いちいち光輝に言う義務があるのかしら? それに今の貴方と話したくないから………それじゃあみんな、また後で。」

 

苛立ちそうに背中越しにそれだけ言うと雫は城下町の方に歩いて行った。

 

「待て、雫!」

 

「おいおい光輝。」

 

「光輝くん、今はそっとしておいた方がいいと思うの…」

 

「エリリンの言う通りだね、今はシズシズを一人にさせてあげよ。」

 

呼び止めようした時、龍太郎と恵理、鈴が察して止めに入り光輝は渋々諦めた。

 

 

 

そして、この様子を少し離れた所で妙子が見つめているのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これが一週間の間にあった出来事よ。」

 

「私が寝ている間に…そんなことが……。」

 

妙子から一週間の間にあった出来事を聞かされ、どういった顔をしたら良いのか分からず複雑な心境なまま、香織はただ項垂れるしかなかった。

今ここにいるのは香織、雫、語りの妙子と奈々だけになっており、妙子の要望でその他の生徒は退出させられた。光輝は「香織は俺がついていないとダメなんだ!」「何故退出しないといけないんだ?」と空気が読めず最後まで拒んでいたがイツキ、佐助、厚史、そして雫の命令で動いた龍太郎により無理矢理退出させられた。

 

「…………………………。」

 

今、香織の頭の中はぐちゃぐちゃになっていた。

 

‘’どうしてクラスメイトはハジメ達の生存を信じないのか?‘’

 

‘’どうして皆はもっとレムの想いに寄り添わなかったのか?‘’

 

‘’どうして自分はもっと、早く目を覚まさなかったのか?‘’

 

‘’どうして自分はこうなる前に早くレムと深く関わっていなかったのか?‘’

 

他人を攻め、自分を攻め、怒りや悲しみ等、様々な感情や想いが混ざり合い、握っていたシーツに力が入り項垂れながら思わず涙が出そうになった。

 

「香織…」

 

心配そうに見つめる雫、妙子と奈々も心配そうに見つめていたが、

 

「……お話し…しないと…」

 

ぽつりと香織が呟いた。三人が「えっ?」とした表情になり香織に注目すると、

 

「私、レムとお話したい! ハジメ君、ううん…皆はきっと生きている事、皆、助けが来るの待っている事、レムと同じ想いだという事をちゃんと会って伝えたい!」

 

そう言って顔を上げて決意する様子を見せる香織、そこには堂々と正面から‘’突撃‘’しようとする少女の姿があった。これを見た雫も意気込む姿を見せた。

 

「そうね。会ってお話しをしないとね…私も付き合うわよ香織。」

 

「雫ちゃん! ありがとう!!」

 

「いいのよ。私も光輝が暴走した事、謝らないといけないから…。」

 

いつもの香織か見れた事に安心した雫。光輝と一緒にいながら彼の暴走を止められなかった事を負い目に感じていた彼女もまたレムに会う決意をするのだった。

 

「(この二人なら…)」

 

「(うん、大丈夫だよ。きっと…)」

 

レムに会う意気込みをしている二人を見て、妙子と奈々は小さな声で話していた。

 

‘’この二人ならレムに会っても大丈夫だろう‘’

 

‘’この二人ならレムを傷つけることもなく、共に彼らを見つけ出してくれるだろう。‘’

 

妙子と奈々はそんな想いを胸に香織、雫に期待を寄せるのだった。

それぞれ少女達が想いを抱く中、香織は目をつぶって胸に手を当てた。

 

「(待っててね、レム。私も後から追いつくからね…あなたに伝えたいこと、話したいこと、いっぱいあるから…それまではどうか無事で…)」

 

そう言って心の中でここにはいないレムに想いを告げたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………………?」

 

誰かに呼ばれたような気がしたレムは後ろを振り返った。しかし、振り返っても呼んだ者は見当たらず、いるのはこちらに見向きもしない街人ばかり。気のせいと感じたレムは再び前を向いた。目に映ったのは博物館の入場ゲートのような‘’オルクス大迷宮‘’の入り口だった。

 

レムは今、オルクス大迷宮の入口前の広場に立っていた。

あの日、ハイリヒ王国を発ったレムは焦る気持ちを抑えながら荷馬車に揺られ、休憩をはさみながら次の日の早朝にはホルアドに着いていたのだ。ホルアドに着いた途端、荷馬車の運転手に礼を述べた後、レムはニアの親族が経営している宿に向かった。そこで宿主にニアの招待状を見せて拠点となる部屋を確保すると荷物を整理し必要な物を揃えて、この広場までやって来たのだ。

 

「…………………っ」

 

レムは思わず顔をしかめた。このオルクス大迷宮の入口を見るとあの日、スバル達が落ちていった日の事を鮮明に思い出したからだ。4人が落ちていき、何も出来なかった自分の姿が頭の中を駆け巡り思わず涙が出そうになるも、何とか耐えて首にかけていた水晶のペンダントを取り出した。水晶はヒビもなく太陽に照らされて輝いていた。

 

「大丈夫、皆さんは生きている…だから、大丈夫。」

 

自分にそう言い聞かせて心を落ち着かせるとレムはペンダントを首にぶら下げた。

 

「…行きましょう。」

 

静かに告げるとレムは入口に向かって歩き出した。

 

‘’必ず助ける‘’そんな決意を胸にレムはオルクス大迷宮に一人挑むのだった。

 

 

 

 

第1.5章 完

 

 

 

 

 

 




いかがだったでしょうか?

光輝の説教回と香織、雫の決意回、そしてレムの孤独な戦いの始まりの回でした。
話しが進むにつれてここの光輝君はどんどん人望が無くなってきています。最終的に彼を信頼している人は残っているのでしょうか…作者自身も心配です。

香織と雫はレムに会う決意をします。雫は暴走して心無い事を言っていた光輝を止められなかった事に責任を感じてレムに謝るために、香織は落ちていった南雲達が「生きている。」と最初から信じているレムとお話し、もとい友達になるために動きます。
実は香織とレムはどちらも「南雲、天之川グループにいる一人」という他人程度の認識のため、深い仲ではありません。レムはともかく香織は気になっていたためレムに話しかけようとするも、その前にハジメを見つけてそっちに向かってしまったり、運悪く光輝に絡まれて話す機会をなくすなどして良い関係が築けなかったのです。
故に香織は今回の件で早く関われなかったことを後悔しているのです。

話しの最後にレムがオルクス大迷宮に挑みます。これが1章の最後に繋がるのです。


改めて無事に1.5章を書き終える事が出来ました。どこかで話したと思うのですが3話でまとめるつもりが、いざ文章にすると3話で収まらなかったので5話になってしまいました。ここまで読んでくださった読者には感謝感激です。
とりあえず、当分はクラスメイトのお話しはないのであしからず。

次回、いよいよ2章開幕。ハジメ、スバル達の冒険が始まります。
基本的な道筋は原作と一緒ですが、多数のモブキャラ達が登場予定です。書き上げ次第に投稿するので、いつになるのか分かりません。頑張って書き上げるので応援よろしくお願いします。

それでは、第2章でお会いしましょう。

では、また…
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