早速ですが今回のお話しはハジメ達が帝国兵にコンタクトを取る所から始まります。
果たして無事に切り抜ける事ができるのでしょうか…
それではどうぞ。
「ん? 何だあいつら?」
「ガキが4人こっちに向かっていますね、隊長。」
「隊長!! その後ろに兎人族。しかも隊長が欲しがっていた兎人もいます。」
「ほう、こりゃあいい。ついているな、俺達は。」
「隊長~あれだけいるんですから、ちょっとくらい味見してもいいですよね~?」
「全くお前らと来たら……二、三人だけだぞ。」
「「「やったー!」」」
この隊の隊長と思われる男はこっちに向かってくるハジメ達に気づくも、部下の声ですぐにハジメ達から少し離れた位置から付いてくる兎人族に目が行った。欲しかった兎人もおり、兎人の女性の数もそれなりにいた。隊長は部下を労う為にも二、三人好きにしていい許可を入れると帝国の小隊は歓喜に包まれた。
部下たちが兎人の女性の品定めを始める中、隊長は何人か連れてハジメ達の前に立ちはだかった。
「お前ら奴隷商か? 情報掴んで追っかけて捕まえた所で悪いけど、これうちらが狙おうとした獲物達なんだよね…と言うわけで国で引き取るから置いていけ。」
勝手に推測し、勝手に結論づけた隊長は、さも自分の言う事を聞いて当たり前、断られることなど有り得ないと信じきった様子でハジメ達に告げた。
ハジメは左右にいる親友達の顔を見た。親友達が軽く頷くの確認したハジメは
「断る」
「……今、何て言った?」
「断ると言ったのです。兎人族は今、僕たちが所有しています。誰一人として売るつもりも渡すつもりはありません。」
「悪いことは言わないから帰った方が身のためだぞ。」
聞き間違いかと問い返し、返って来たのは丁寧な物言いをする当麻と士郎。しかし、隊長の額に青筋が浮かび上がった。
「……ガキ共、俺達が誰かわからないほど頭が悪いのか?」
「帝国兵だろ? 知っている。兎人族から聞いた。俺らとしてそんなことで頭悪いか判断されたくないんだけどな。」
ハジメの言葉にさらに額に青筋が浮かびあがせる隊長。周りの部下たちも同じように青筋を浮かびあがらせてハジメを睨みつけていた。周りに険悪な空気が流れる中、
「おいおいおいおい待てよ待てってば。本当に帝国軍人は怒りっぽいんだから!」
スバルがこの空気を変えようと隊長の前に出てきて、フレンドリーに話しかけてきた。
「あんたらが狙って待ち伏せで捕まえようとしていたかもしれないが、俺たちは直接会って捕まえたんだ。こういうのは早い者勝ちだろ? それを横取り、しかも無償でよこせと言うのはどうかと思うぞ? それと隊長さん、俺たちがどこからやって来たか見ているか? 階段を登って来たんだぜ。つまり俺たちは地の底の強力な魔物や魔力の分解にも対応できる力があって…」
グサッ
「あ……え?」
お腹に何か違和感を感じたスバルは下を見てみるとジャージの上から大型ナイフが突き刺さっていた。
「うるさい、だまれ。お前の説法を聞きに来たんじゃないんだよ!」
隊長はスバルを小突いて後ろに押し返した。周りの部下たちがあざ笑う中、スバルは血を流しながら後ろに下がり地面に膝を付けて項垂れた。
これを見た兎人族の方はシアも含めてパニックを起こし、悲鳴が上がっていたがユエの「うるさい」の一言で収まるも、まだ恐怖があるのかひくつかせていた。
「あ~あ、お仲間が死んじゃったね~。俺らにたてつくからこうなるんだよ。これに懲りたら大人しく兎人族を引き渡し…ん?」
隊長はここで違和感を感じて言葉を止めた、何かがおかしいと。
本来、仲間が刺されて恐怖に顔をにじませて狼狽えるものだと思っていた。死んだ者に駆け寄ると思われていた。しかし、目の前にいる者たちはその動作が見られない。平然とした様子で死んだ者に目を向けているだけだった。隊長の近くにいた部下たちもそれに気づき奇妙な目でハジメ達を見ていると
「おい、大根役者。いつまで死んだフリしてるんだよ。」
「……そりゃあないぜ~ハジメ。俺的には名演技だと思うけどな。」
「僕は、別に悪くなかったと思いますよ。スバル君。」
「えっ、マジで当麻!! 今後何かに使えるように練習しとこ。」
「スバル、とりあえずそれ抜いたら? 痛々しくて見てられないぜ。」
「それもそうだな士郎、意外に地味に痛いし。」
そんな会話を繰り広げるハジメ達に隊長と周りの部下たちは顔を青ざめた。そんな事も気づかずにスバルは何事もなかったかのように立ち上がり、腹に刺さっていた大型ナイフ抜いた。
そして、服をめくってナイフが刺さっていたであろう辺りを確認し始めた。隊長と部下もそこを見るとさらに顔を青ざめさせた。
お腹周りにはおびただしい出血の後はあるも、傷口が見当たらなかったのだ。「確かに自分は殺すつもりで刺した。手ごたえもあったはず…」隊長は自分の手を見て自問自答をしていると、
「あ~あ、痛かった!!」
ブォン!!
「がっ!? あぁ…?」
一人の帝国兵がわけもわからないまま倒れた。頭にはスバルを刺したナイフが眉間に深く刺さっていたからだ。
スバルは刺されたナイフをおもいっきり投げて、隊長と部下の顔を横切り、後ろで品定めをしていた帝国兵の一人に当てたのだ。これを機に後ろで品定めをして盛り上がっていた帝国兵達の喧騒が静まり返った。
「おい、人がしゃべって途中にナイフを突き立てるなんてどういう見解なんだ、えぇ!?」
怒りの形相で帝国兵達に怒鳴り声を上げるスバル。同様にハジメ、当麻、士郎も睨みつけるように帝国兵達を見つめていた。
「殺せ! ガキ共を皆殺しに!?」
ドパンッ!!
ハジメ達の気迫に隊長はたじろぐもすぐに切り替えて怒号な声で指示を出した。しかし、その言葉が最後まで言い切られることはなかった。
一発の破裂音と共に、その頭部が砕け散ったからだ。眉間に大穴を開けながら後頭部から脳髄を飛び散らせ、そのまま後ろに弾かれる様に倒れた。
何が起きたのかも分からず、呆然と倒れた隊長を見る帝国兵達。
その隙を彼らは見逃さず事はなかった。
ボコォン!
クサッ!
当麻は瞬時に拳に剛気を纏い、隊長の近くにいた帝国兵の胸元に向けて正拳を突き出して鎧ごと身体を粉砕、士郎もまた隊長の近くにいた帝国兵に対して隠し持っていたナイフで首元を一刺し、絶命させた。
スバルはハジメの最初の発砲を機に駆け出し後方にいた帝国兵達に向かった。帝国兵達も隊長がやられてパニックに陥るも素早く誰かが迅速な指揮を執り、前衛が武器を構えて前に飛び出し、後衛が魔法の詠唱を始めようとしていた。
前衛の一人がスバルに斬りかかろうとした時、
「雷走」
そう言って目の前からスバルが消えた。前衛は辺りを見てスバルを見つけとしていた時、
「「「ぎゃあああああああああ!!?」」」
後衛の方から複数の断末魔が聞こえた。そちらに目を向けるとスバルがおり、後衛の帝国兵に襲い掛かっていた。しかもスバルの両腕は若紫色に変色し手には鋭い爪が生え、その爪で帝国兵達の喉を次々に引き裂いていた。
スバルは‘’雷走‘’を使い、雷のごとくの速さで帝国兵達の後ろを取ると‘’部分変化‘’で両腕を雷鬼の両腕に変えて戦っているのだ。この方が体力の減りも少なく状況によって瞬時に切り替えも可能となるのだ。
前衛の帝国兵はすぐさまスバルの下に向かおとするも、
「行かせると思ったか?」
ドパンッ!!
ハジメのドンナーで胸を撃ち抜かれ絶命、そして次々と帝国兵に向けて発砲。さらにそこに当麻、士郎も襲い掛かって来た。
後ろからのスバルに前からのハジメ、当麻、士郎に為す術もなく帝国兵はやられていき、残すことあと一人となった。
「ひぃ、く、来るなぁ! い、嫌だ。し、死にたくない。だ、誰か! 助けてくれ!」
一瞬にして自分以外がやられて周りの骸となった帝国兵が目に入り、命乞いをしながら這いずるように後退る帝国兵。しかし、何かに当たり振り向いて確認したら両手を血塗れにしたスバルが冷めた目で見つめていた。前からはハジメ、当麻、士郎が同様に見つめていた。
帝国兵は恐怖で顔を歪ませて身体を震わししつつ再び命乞いを始めた。
「た、頼む! 殺さないでくれ! な、何でもするから! 頼む!」
「………他の兎人族がどうなったか教えろ。結構な数が居たはずなんだが……全部、帝国に移送済みか?」
「それは……多分、全部移送済みだと思う。人数は絞ったから……」
ハジメの質問にそう答える帝国兵。大方の解釈として老人など売れそうにない兎人族は殺したということだろう。全員がそう理解してシアや兎人族は悲痛な表情を浮かべた。
聞けたい事は聞けたし、もしどこかにいるのなら助けてもいいと考えていたハジメだが、もういないなら仕方がないと割り切り、この帝国兵を処分しようとした矢先、
「ハジメ君、この人…僕に任せてもらってもいいですか?」
「………当麻?」
ここで当麻が生き残りの帝国兵の前に出てきた。いきなりの行動に少し驚き、思わず当麻に任せるハジメ。しかし、この時ハジメを含めてスバルも士郎も、当麻がいつもと何かが違う様子だということを感じ取っていた。
「なぁ、優しそうなあんちゃん…礼はたっぷりする! まだ死にたくない! だから見逃して…」
「随分好き勝手なことを言うのですね…あなたと同じように兎人族もそう思っていたはずです……それなのにあなたたちは…何の罪もないのに命を奪った……」
尻込みする帝国兵に冷めた目で見下ろすように当麻は迫った。穏やかな口調で話すも言葉には一つひとつに怒気が含まれており静かな怒りを見せていた。
「頼む許し…」
「許さない。」
そう言って当麻は帝国兵の顔面に向けて突っ張りを放ち後方に飛ばした。飛ばされた帝国兵は地面すれすれで宙を飛び地面に2、3回転んだあと動きが止まった。そして、ゆっくり立ち上がろうとするも、
「うっ、がっ、ああああああああぁぁぁ!??」
悲鳴を上げて再び大地に倒れ痙攣を起こしながら息絶えた。
この光景に兎人族はもちろんだったがハジメやスバル、士郎は息を飲み込んだ。それもそのはず普段温厚で、あんなに怒る所など見たことない、初めての光景だった。当麻を知っている者からしてみればあまりにも過激な行動であり、まるで人が変わったように見えたのだ。
三人は当麻に聞きたいことがあるも、どう声をかけたら良いのか迷っていると、
「……当麻、あの兵士に何したの?」
まるで三人に代わって代弁するかのようにユエが静に尋ねた。
「…体内の微力な気を引き出して活性化させたのです。相手は相当苦しかったと思いますよ………何せ全身のあらゆる血管が破れて内出血を起こしているのですから…」
兵士を見つめつつ静に答える当麻。
ユエは「…そう。」とただ一言呟き、三人は当麻がした行動にゾッとして寒気を感じていた。「本当に当麻なのか?」そんなことを三人が思っていると、
「あ、あのさっきの人は見逃してあげても良かったのでは……」
当麻の行動に思うことがあったのかおずおずと言うシア。この言葉にハジメ達一行は呆れ返り、ハジメが言葉を発しようとした矢先、
「…ですか。」
「えっ?」
「なんでですか!! あなた達の仲間を! 家族を! なき者にした張本人達ですよ!? 何故誰もが相手に同情するのですか!? 何故誰も怒らないのですか!? どうして! 悔しがらないのですか!!」
それはいきなりだった。シアの大きな耳でも聞き取れなかった当麻の小さな声を聞き返したとたんに燃え上がるように当麻は激怒したのだ。
これにはシアも「ヒッ」とマヌケな声と共に驚き、思わずカムにしがみついた。他の兎人族も感化されるようにお互いに身体を抱き寄せたりした。
ハジメ、スバル、士郎も今まで見たことがない当麻の激情姿に愕然とする中、見かねた士郎が当麻に話しかけた。
「お、おい…落ち着けって当麻。」
「士郎君、止めないでください!彼らの考えを改めさせないと、非常に良くないと思うのです!」
士郎の言葉に当麻はそう言って跳ね返した。
普段なら「そうだね。」と言って他者の言葉を受け入れ従順なはずなのに、この行動に三人は「本当どうしちまったんだ!?」と内心驚いた。
「……本当に当麻?」
ユエもユエで奈落の底の修業生活で大人しい当麻を見てきたため、あまりの変わりっぷりに疑問を感じていた。
そして、当麻が再びハウリア族に向き直した時、
『当麻、今すぐ心を静めなさい。』
サラが幽体で出てきて当麻に律するように静かに告げた。
「ですが師匠!」
『当麻、強くなりたければ心を静めなさい! 激情するような心では見えるものも見えなくなりますよ? 今あなたの姿がハウリア族、仲間達にどう映っているのか分かりますか?』
「…………。」
言い返そうとした矢先、サラの凛とした声で思いとどまった。そして、サラに言われたようにハウリア族、仲間達を見た。ハウリア族は誰もかれもが怯えた表情をしており、ハジメ達の仲間からは不安、心配そうに見つめられていた。
ここで初めて当麻は今の自分の異変に気づいた。
『あなたが先ほど帝国兵に行ったことをどうこう責めるつもりはありません。ですが、力も、闘う術も知らない彼らに、いきなりあなたの考えを押し付けるのはどうかと思いますよ?』
サラは当麻に諭すように言いつつ『それに…』前置きして、
『環境は違えど元をたどれば、あなたも彼らと似たような境遇を受けてきたのではないのですか? 彼らと同じ立場に立っていなかったのですか? 』
「…!!?」
サラの言葉に当麻の記憶がふと浮かび上がってきた。元の世界で身体が弱いがために、この世界では戦えない、天職が役に立たないがために檜山達にいじめられた事を、心を殺して耐えて、親友達に助けられ、何度も悔しい思いを嚙み締めた事を思い出した。
そしてここに来るまでの道中、ハウリア族は兎人族のことを話していた。
逃げる隠れるしか出来ず、戦闘は頼ってばかり、他種族から見下され時として心無い事を言われても、仕方なく愛想よく笑うしかない。そんな自分たちの冷遇を明るく笑い話しのようにハウリア族は話していた。
サラの言う通り、色々違う所もあるが元をたどれば当麻も弱い存在たった。今は変われどそこに変わりはなかった。
『そのような事があったにも関わらずそれすら忘れて、力を得たからといって強気になり驕るように弱気者に教えを授けるなど…愚か者にも程があります。』
「師匠…僕は…」
サラの的を得た言葉にさっきの威勢はどこに行ったのやらと言いたくなるくらい当麻は身体を縮ませ、顔を真っ青にさせていた。
さすがに見かねたスバルはサラの前に立った。
「まぁまぁサラさん。お説教はこのくらいにして…当麻も反省してることだしさ。それに当麻は“仲間をもっと思え、害した者にもっと怒れ“とハウリア達に伝えたかったじゃないかな? 俺はそう捉えたし、少なくともハウリア達はそうするべきだと思った。」
『…………そうかもしれませんね。』
スバルは自分の思った事を伝えた。何か言われる覚悟をしていたが意外にも言われることなくスッと当麻の身体の中に入っていった。
「スバル君、ゴメン…それとありがとう。」
「いいってことよ、当麻!」
おずおずと言う当麻に、笑顔で答えるスバル。
「皆さんもゴメンなさい…特にハウリア族の皆さんには怖い思いをさせてしまって…。」
「気にするな当麻。」
「当麻殿、申し訳ない。我々は決して何も思わないということはない…ただ、こういう争いに我々は慣れておらんのでな……少々、戸惑ったのだ、すまない。」
「当麻さん、すみません。」
ハジメは特に気にしてない様子見せた。ユエや士郎達も同様にとやかくいうことはなかった。シアとカムは一族を代表して当麻に謝った。
それでも申し訳なさが残るのか当麻は浮かない顔をしているのだった。
その後、ハジメ達、ハウリア族は帝国兵が使っていた馬と馬車を使い、乗る者を分けて樹海へと進路をとった。
彼らが作り上げた帝国兵の死体の山はユエが風の魔法で吹き飛ばして谷底へ落とした。残されているのは帝国兵の血だまりだけだった。
ありふれた特別講座
サラ「こんにちは、気を使い続けて500年のサラです。今日は気について色々解説していきたいと思います。聞き手は、」
スバル「ほーい、無知無学のこの俺、スバルが務めるぜ。先生お願いします!」
サラ「はい、お願いします。」
スバル「じゃあ早速ですが先生、‘’気‘’って何なんですか?」
サラ「難しいこと抜きで言いますと生命エネルギーです。生きる者全てに血流が流れているの同時に微力ながら気が流れており身体から発しているのです。」
スバル「…ということは当麻が血流をよくする事が出来るのは、その流れている気を操作しているからなのか?」
サラ「その通りです。そして気の流れは個体、状態によって変わってきます。気術士は身体から発しているそれらの気を感じ取り、相手の位置、またはその者の状態を判別する事が出来るのです。」
スバル「なるほど。だからオルクス大迷宮でハジメとユエさんに出会う直前、危険な状態だと察知出来たわけか。」
サラ「そういうことになります。もっともあの時はまだ距離がありましたので意識を集中させないと見逃してしまう所でしたけどね。」
スバル「…なぁサラさん。俺も気が流れているなら当麻みたいに気を使いこなせることって可能なのか?」
サラ「出来ないことはないですが…あまりおすすめしません。」
スバル「えぇ!? どうして?」
サラ「それは……また次回の時にお話しましょう。今日はここまで、ご清聴ありがとうございました。」
スバル「うわぁぁぁ、スゲー気になるんですけど!? 仕方ない、またな!!」
いかがだったでしょうか?
やっぱりこうなってしまいました。ですが遅かれ早かれ人を殺めた話を書かないと最後の迷宮の試練は書けないので彼らには悪いですが殺めてもらいました。
そして、もう一つ注目する所は当麻の変化です。
キャラ崩壊ではありません。穏やかな当麻がああなってしまったのには理由があります。それについては次回の本編で解説するつもりです。
次回、人を殺めたハジメ達が思った事を話していきます。
皆様の感想、評価、いつでもお待ちしております。
それでは、この辺で。では、また……