皆さんゴールデンウイークいかがお過ごしでしょうか?
私は毎日仕事の日々を送っています(笑)
さて、二期の放送日も決まり、再び盛り上がりに貢献出来たらいいなぁと思いながら書き上げた新作です。
それでは、どうぞ。
「…ハジメは大丈夫だったの?」
「ん?」
「…人殺し…初めてだったのでしょ?」
どこか上の空で魔力駆動二輪を運転しつつ、前方に見えるハルツィナ樹海を見つめていた時、ハジメの前に座っていたユエが声をかけてきた。
ユエは奈落の底の修行期間にハジメから元いた世界のことを聞いていた。ハジメがいた所は少なくとも命が簡単に奪われるような事もなくハジメ自身も手にかける事を知らない、やらない平和な所だということは知っていた。
それゆえ今回、この世界で初めて帝国兵を相手にした後、ハジメが物思いに耽っているような気がしたためユエは気になって真意を確かめることにしたのだった。
ユエの問いかけにハジメは少し黙りこんだ後、静に話し始めた。
「…旅立つ前、“殺してでも前に進む“と決めたとは言え…実際に直面すると正直不安だった。強気でいたけど内心ビビっていたし、足取りも重かった。殺したあと発狂するんじゃないかなと思っていた…だけど。」
「…だけど?」
「………スバルや当麻、士郎が駆けつけてくれた。横に並んで一緒に戦ってくれた。人殺しの罪を…一緒に背負ってくれた……それが凄く心強かった。」
そう言って先ほどの帝国兵との小競り合いの事を思い返すハジメ。
実際ハジメは言ったからには一人で戦うつもりだった。一人で業を背負う積もりだった。だけど予想外のことに一人、また一人と親友達がやって来た。その時、何となくだが肩の荷が下りて帝国兵に向かう足取りが軽くなったのを今でもはっきりと覚えていた。
「そのおかげで戦闘中は発狂することも取り乱すこともなかった。たぶん親友達のおかげだ。ここまで親友に助けられたら不安な気持ちに負けたくないし、うじうじしてるのも親友達に申し訳ないと思って…だから、その…変な話し、その事は吹っ切れているんだ。」
「だから、大丈夫。」と付け足すように少し笑みを浮かべて言うハジメ。
「……そう。」
ユエは静かに頷いた。
ハジメに大きな精神的なダメージもなく嬉しい半面、頼っているのは自分ではなく親友達であり、ハジメの力になれなかったことにちょっぴり寂しい思いに浸っていた。
ハジメは何となくユエが寂しい思いをしていると感じ取ると
「あ~ユエ。あのさ…」
「…?」
ユエは見上げるように顔をあげると頬をかきなから別の方向を見ているハジメがいた。ユエがぼんやりとハジメの顔を見つめているとそのままハジメはしゃべりだした。
「俺はああは言っても、もしかしたらどこかで罪の意識で苦しむかもしれない。もし、その時が来たら…」
言い終えると突然、ハジメはユエの右耳に顔を近づけて囁いた。
「……ユエに慰めてもらってもいいかな?」
「!!………んっ」
愛する人の言葉を間近で聞き取り全身に衝撃と快楽が走り、ユエはどこか色っぽく頷いた。
もし、クラスメイトの男子一同がこれを見ていたら鼻血&卒倒ものだと断言しよう。
それほど今のユエは幼くも大人の色っぽさが出ているのである。
そして、この様子をハジメの真後ろで見ていたシアはというと
「ぐぬぬぬぬぬぬぅぅぅーー!!!」
歯をむき出して白い布をこれでもか、というほど嚙み締めて引っ張っていた。
それと同時に馬にまたがってハジメの隣にいたスバルはというと、
「砂糖水が~口から~マーライオン!!」
<何やってんだお前は…>
笑いを取ろうとしているのかどうか分からないが変なテンションで口をこれでもかというほど開けるスバル。これにはレオンも呆れるしかほかなかった。
「おまえらな…」
「二人とも雰囲気が台無し…」
ハジメ、ユエも二人に邪魔されて不満を露にした。
「目の前でイチャコラされたら誰だってこうなります~。」
頬を膨らませて、可愛げにプンスカ怒るシア。
「そうだそうだ! 俺だって慰められたい! ユエさん俺も慰めてくれ!!」
「…………。」
「アッ、ヤッパイイデス。ヘンナコトイッテゴメンナサイ」
「…フン」
スバルはスバルでシアに同調しつつユエに慰めを要求するも、ユエの無言の圧力と絶対零度の眼差しに怖じけついて発言を撤回するのだった。
ハジメは呆れて溜め息を吐くも、すぐに切り替えてスバルに尋ねた。
「お前はどうだったんだよ、スバル?」
「ん? 何が?」
「いや、殺しだよ。お前…何も思わなかったのか?」
「ああ、それね。う~ん……」
言われてようやく気づくスバル。その姿にハジメは「お前、大丈夫かよ?」と内心ドン引きしつつも親友の言葉を待った。数秒後、スバルは口を開いた。
「ぶっちゃけ言うけどさ…
「は?」
「…?」
「おいおいおい…」
けろりとした様子で話すスバルに、ハジメは腑抜けた声が出て、ユエは首をかしげた。そして、スバルとは別の位置のハジメの隣で馬をまたがっていた士郎は驚きの表情をかくせないでいた。
「スバル、とうとう頭がおかしくなったか? サイコパスでもなったか!?」
「…ハジメ、ハジメ、スバルは元々頭がおかしい…。」
「怒りで我を忘れて何も感じなかったとか?」
迫りくる三人の言葉にスバルはけだるそうに答えた。
「いやいやハジメ、俺はいたってまじめに答えていますし、サイコパスになった覚えもありませんよ。士郎の怒りで我を忘れるということもちょっと違うと思うんだ……それとユエさ~ん。さりげなく俺を汚すのやめてくれませんか…」
ユエの言葉にスバルはため息をついた後、一息入れて今度は切り替えるようにまじめな口調で話し始めた。
「正直に言うと戦いが終わってから、後悔とか罪悪感とか来るもんだと覚悟してたけど不思議にもそういうことはなかった。「あっ、終わったんだ…」というあっさりしていて、敵に同情、というよりそれすらの発想も至らなかった…例えるなら“自分に迫りくる蚊を叩いて潰す“…そんな感じに近かったな。」
先ほどの戦闘を思い返しながら話すスバル。今、思い返してもやはりというべきか、人を殺した動揺、後悔とか全く感じられないのだった。
「それと士郎の言っていたことだけど、たしかに腹にナイフが刺さった時は腹がたった! これが俺意外にやられていたと考えると無性に怒りが沸いてきたけど、戦闘に入った時は意外にも冷静になれたかなと思う。」
〈こいつには奈落の底で一つになった時から常日頃、“戦闘中は冷静になれ”って言い聞かせていたからな。〉
「まぁ、レオンのおかげってわけだ。つーわけで、この先も対人戦は問題なく戦えるということが証明できてよかったよ。」
そう言ってニィと笑うスバル。世間的に見れば、問題視されそうだが、とりあえず正常でいられていることにハジメと士郎は心を撫で下ろすのだった。
「…というわけで次、士郎。いってみよう!」
「いや、ノリノリで言うなよスバル。」
「少しでも重たい空気を変えようと配慮してるんだぜ?」
「まったくもう…まぁ話さない訳には行かないよな…」
スバルの対応にため息をついた後、士郎はゆっくりと口を開いた。
「正直言って怖い気持ち、不安な気持ちはあった。ただ俺は月下で誓った時、‘’お前らを支え、お前らが出来ないことを俺がやってやる‘’って決めているからな。それを強く思っているせいなのか、今でも問題なく立っていられる………ただ、」
「「ただ?」」
士郎の最後の言葉で口をつぐみ、それを聞き返すハジメとスバル。士郎はしばらく押し黙った後、またもやため息をついて軽く空を見上げた。
「……優花がこのことを受け入れてくれるかどうかなんだよな。」
ふと思い出すのはここにはいない園部優花の存在。幼い頃から両親は仕事で家を空けることが多く、家族ぐるみの付き合いがあった園部家に居候させてもらい園部の両親に家族同然に育てもらった。そしてその近くにはいつも優花がおり、学校の行事も園部家のイベントも常に一緒にやってきた。園部の両親もそうだが士郎にとって優花はかけがえのない存在、故に今回の件で拒絶されないか不安で仕方がないのだった。
「………。」
実際なくもない話しに安易に励ましの言葉をかけるべきではないと思い、ハジメは何とも言えない顔で押し黙った。ユエ、シアも何かを察したのか言葉を発することはなかった。だがスバルは、
「…大丈夫だって士郎。優花は受け入れてくれるって!」
そう明るく士郎を励ました。これにはハジメ、ユエは「お前、そこでそれ言うか!?」と言いたげな顔でスバルを見た。士郎も少し驚いたのか目を開いてスバルを見ていた。
「士郎、知っているか? 優花はお前にほの字なんだぜ。ちょっとやそっとの事で軽蔑はしないだろ。」
「(いや、人殺しはちょっとやそっとのことじゃないだろ。俺らの世界だと普通に見る目が変わるだろ…)」
スバルの言葉に内心ツッコミを入れるハジメ。「まさかそれだけ理由で…」思っていたが、まだ続きがあった。
「それに士郎、優花とは昔から一緒に過ごしてきたんだろ? 共に飯食って、風呂入って、同じ布団で寝た。言わば家族みたいに過ごしてきた仲なんだろ? 不安で心が揺れるのは仕方がないのは分かる…けど家族なら信じてみようぜ…優花を。そしてここまで紡いできた絆を。」
そう言ってニッと笑って諭すように言うスバル。つくづく家族とか友達関係の信頼や絆関連になると熱くなるなと思いつつ、
「(まぁ、そこがスバルのいいところなんだけどな。)」
そう一人で納得してフッと笑う士郎。そして、わざと残念そうな顔をして、
「スバル……お前の口から優花が俺のこと好きってこと聞きたくなかったな…」
「えっ…?」
「こういうのは本人から聞きたかったな~」
「いや、そう言われても…」
わざとらしく困ったように言う士郎にスバルはあたふたした。そしてこれを見たハジメ、ユエ、シアは
「スバル…やっちまったな(笑)」
「スバル、最低…」
「スバルさん、それはあんまりですぅ…」
ここぞとばかりにスバルをいじった。
「ちょっとちょっと!? さっきから俺の扱い酷すぎません!?」
本気で困った様子を見せるスバルに周囲に笑いが起こった。ある程度笑った後、流石にかわいそうになってきたなと思った士郎は
「まぁでも、スバルのおかげで吹っ切れたよ。ありがとう。」
「…おうよ。」
冗談ではなく素直の気持ちだと理解したスバルは笑顔で頷くのだった。
士郎の悩みが吹っ切れて、いつもの調子を取り戻している中、一人物思いにふける人物がいた。
『………。』
クロウである。クロウは先程から会話に入らず帝国兵との戦い、主に士郎の動きを思い返していた。
先の戦いはクロウが代わりに士郎の身体を動かすどころか、助言もサポートもしておらず、全て士郎一人によるものであり相手の動きを見て予測して、確実に急所の首元にナイフを切り裂いた。切り口も鮮やかであり全体を通して無駄のない動き…
そう、クロウから見ても
そしてクロウは帝国兵との戦闘を終えて再びフェアベルゲンに向かう前の会話を思い返した。
『士郎、少しお尋ねしたいことがあるのですが…』
「ん、なんだ?」
『士郎は、初めて人相手に戦ったのですよね? それなのにあの戦闘技術…いったいどこで学んだのでしょうかと思いまして…』
「ああ、実は父さんに稽古をつけてもらって覚えた戦闘術なんだ。昔、父さんは俺のいた世界の別の国の軍隊の出身で今は退役して世界中の要人を護衛する仕事についているんだ。」
『そうでしたか、それであんなにも手慣れているのですね。』
「初めての実戦だったけど…上手くできてよかった。まさか、父さんの練習相手になるために稽古をつけてもらったことがここで役に立つなんて。」
『………。』
「ん? どうしたクロウ?」
『いえ、少し驚かされまして…。』
「そうか。」
士郎は特に気にすることはなく、ここでこの会話は終わった。
『(……初心にみられる身体の張りもなく、心臓の音の高鳴りもなかった。初心の実戦でこうも落ち着いて戦えるものなのか? 本当に彼は実戦が初めてなのでしょうか?)』
クロウからみても士郎の動きは熟練の戦士、しかも暗殺者の動きによく似ているのだ。士郎の発言におかしな所、嘘も感じられなく誰が聞いていても純粋な発言だった。これから先、問題なく戦えるのは確かだが、どうも初心に見えずスッキリしなかった。
誰に気づかれることなくクロウが一人悶々としている最中、
「…やっぱり皆は、すごいよ。」
そう言って、ハジメが引いている馬車から儚げな笑みを浮かべる当麻が顔を出してきたのだ。
いかがだったでしょうか?
先ずは謝罪、すみませんでした。
本当は、当麻が暴走した理由、シアの決意、フェアベルゲンの亜人との遭遇までを書いてまとめるつもりでしたが、膨大の量になりそうなので分けることにしました。
「初めて人を殺めたのに、次の回ではハルツィナ樹海のそばまで来ていた。」となると、流石に物語的にどうかなと思いますし、こういう経験があったからこそ、一人ひとりの描写は大事だと思います。登場人物が多いために考えるのも書くのも一苦労ですけどね…。
さて、それぞれ描写の解説的なものを書きますと、
南雲ハジメ
原作同様、殺めたことに吹っ切れています。ですが原作と違いこちらのハジメは人らしいので考えの持ち主なので、ふとしたことであれやこれやと考えてしまいますが愛するユエ、信頼している親友達がいるのでスランプになることはありません。
影山スバル
一行の中で一番思考がおかしいです。もちろん理由はあります。そして、再び最後の迷宮で向き合うことになります。
望月士郎
一行の中で精神的には一番丈夫です。ですが世間体を人一番気にしています。特に幼馴染の優花との関係が崩れないか危惧しています。それと何やらまだ秘密がありそうですが、明かされるのはだいぶ先になります。
そして、当麻の暴走と、この回で全く会話に入らなかった理由は次回になります。
感想はいつでもお待ちしております。励みになりますので…。
それでは次回、お会いしましょう。では、また……。