ありふれた職業で世界最強  魔王を支える者達   作:グルメ20

47 / 57
どうも、グルメです。

大変遅くなりました。あれやこれやと考えたり書き直したりしていたら6月に入ってしましました。本当に申し訳ございません。
ですがその分、ボリュームはあると思います。少し笑える所もちらほらあります。

それでは、どうぞ。


改過自新の当麻とサラ、苟且偸安なウサギのシア

「「「当麻!」」」

 

ハジメ、スバル、士郎は当麻の声を聞いてすぐさま振り向いた。

 

「ごめんなさい、皆さん。ご心配とご迷惑をおかけまして。」

 

そう言って当麻は軽く頭を下げた。

 

「いや~よかった。当麻が元気になって、なぁ士郎。」

 

「そうだな。倒れたことはあまり気にするな当麻。」

 

「むしろ当麻の反応が当たり前だと思う。そうなると俺たち相当変わっちまったよな…」

 

スバル、士郎は当麻が元気になった事を喜び、ハジメはフォローしつつも自虐に走った。ユエやシア達も当麻が元気になったことで安心の表情を浮かべた。

 

 

 

当麻に何があったのか。その話をするにあたって時は帝国兵との戦闘を終えた後まで遡る。

 

 

 

戦闘を終えたハジメ達はハルツィナ樹海に向けて準備をしていた時、当麻がいきなり体内の汚物を吐き散らしたのだ。一同はすぐさま駆け寄ると呼吸は荒く、顔色が優れない当麻の姿があった。

 

『恐らくですが、冷静を取り戻した事により先の戦闘の事を鮮明に思い返して身体が拒絶反応を起こしたのでしょう…』

 

幽体となって出てきたサラはそう推測した。とりあえず当麻を二人がかりで馬車まで運んで横になってもらった。

 

『体内の気も乱れています。落ち着かせるために再び身体に入いりますので必要な時以外は声をかけないでください。』

 

サラはそう言って当麻の体内の気を落ち着かせるために再び身体に入り込むのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それにしても、どうして当麻はあんなにも気性が荒くなったの?」

 

時は元に戻って、ユエは先程の当麻の出来事について質問した。当麻はおぼろ気に思い返すも、

 

「…それが僕にも分からないのです。」

 

そう言って口を閉ざしてしまった。だが、すぐに再び口を開いた。

 

「帝国兵と対峙する前は上手く戦えるかどうか緊張と不安でいっぱいでした。ですが…スバル君が刺された時、凄く許せない気持ちが沸き上がって…気づいた時にはすでに殴りかかっていて、その後は考えるよりも先に拳が出ていて無我夢中でした……戦いが終わった後、帝国兵やハウリア族の発言を聞いてすぐ、“何であんなことが言えるのか”って思っていたら言いたいことがいっぱい沸いてきて…気づいた時には師匠に叱責された後でした。そして冷静になって思い返したら…」

 

そう言ってだんだと声を小さくさせながら顔を歪める当麻。正直言って今でも思い返したら恐ろしいものだと痛感しており“まるで自分が自分で無くなる…”そんな気もしていたからだ。

 

皆が当麻の話しを聞いて、何故ああなったのか考え始めようとした矢先、

 

 

『…この件に関しては私がお話ししたいと思います。』

 

そう言って当麻の身体からサラが幽体となって出てきた。

 

『恐らくですが…当麻がああなったのは感情の暴走によるものたと思われます。』

 

「感情の暴走?」

 

ハジメを含めスバル、士郎が首をかしげる中、サラは『…と、その前に…』と前置きして、

 

『皆さんは、"気"には二つの種類があるのをご存知ですか?』

 

「確か、柔気と剛気じゃなかったか? オルクス大迷宮でサラさんが叫んで使っていたような…」

 

オルクス大迷宮での首長竜戦を思い返しながら呟く士郎。

 

「その通りです士郎殿。“柔らかく、かつ、魔力を弾く柔気”、“熱を持ち破壊を伴う剛気”…気術士はこの二つの気を使い分けて戦います。」

 

サラがそう説明を終えた後、『では、当麻…』と前置きをして

 

『柔気と剛気。これらをどのように引き出すのか説明出来ますか?』

 

「えっーと、柔気は通常通りに気を練ることで出来て…剛気は気を練る時に負の感情を思い浮かべて…練り上げます…」

 

『はい、その通りですね。ちなみに“気を練る”というのは気を操作して身体の一点に集めることを指します。気術士の基礎と言えますね。』

 

どこか最後の方は歯切れが悪そうに説明する当麻。そこにサラは補足説明を付け足した。

するとここでスバルが申し訳なさそうに手を上げた。

 

「あのー気の特質もろとも充分に伝わりましたけど…結局の所、当麻がああなってしまった原因って何なの?」

 

スバルの質問を聞いたサラはふと当麻の顔をみた。唇を噛み締め悩ましそうな表情をする当麻を見てサラは確信した。

 

『………当麻は大方気づいていますね?』

 

「……はい。」

 

『よろしい…では、私が説明しますね。』

 

そう言ってサラは一呼吸おいて口を開いた。

 

『結論から言いますと当麻は感情の暴走もとい、負の感情に呑み込まれたのです。』

 

「呑み込まれた…どういうことだ?」

 

ハジメが首をかしげ、その他の者も疑問に感じる中、サラは説明を続けた。

 

『剛気をどのように引き出すのか説明しましたよね? 当麻の場合…弱い自分、力のない自分を思い浮かべることで出来る悔しさ。それで剛気を練っていました…ですが先の戦闘で予想外の事が起きました。』

 

「…予想外のこと?」

 

『はい、お嬢様…それはスバルが刺されたことです?』

 

「えっ!? 当麻の件、俺が刺されたことに何か関係しているの!?」

 

まさか自分が関係したいるとは思わなかったスバルはただただ驚くしかなかった。

それでもサラは説明を続けた。

 

『本来ならさっき言った通りで剛気を練り、徐々に思いを高めて戦っていくつもりでした。…ですが、スバル殿が刺されたことにより弱い自分への悔しい思いから一変して、大切な友を傷つけられた怒りへと負の感情が差し替えられたのです。さらに何の罪のないハウリア族の命を散らせたことも当麻の怒りを増長させるものになったでしょう…』

 

「そういえば当麻は、おじいちゃんおばあちゃんっ子だったな。怒るのも無理もないか…」

 

士郎はそう言って元の世界でも、こっちの世界でもお年寄りに優しかった当麻の姿を思い浮かべつつ、ハウリア族の犠牲の中にはお年寄りがいたという帝国兵の発言を思い出した。

 

『その結果、負の感情に飲み込まれ、あのように暴走したと思われます。私が思うに多分、気術士の駆け出しによく見られる傾向かと思われます…断定は出来ないですが…』

 

そう推測するサラ。しかし、どこか自信なさげな言い方に疑問を感じたスバルが尋ねた。

 

「随分しっくりとこない言い方だな…500年の経験者ならもっと自信もって言ってもいいんじゃない?」

 

『…確かに気術士として500年の経験を積んできました。ですが、他の気術士を見たのは当麻が初めてなのです。』

 

「へぇ~意外だな。」

 

「つまり、今までの技術は独学で学んだってことか?」

 

『ええ、そうなりますねハジメ殿。』

 

当麻が気術士として初めて見る人物だと言うことに少し驚く士郎、そしてハジメも独学で気の使い方を学んだサラに内心驚くのだった。

 

「………」

 

そして当麻は先程から黙り込んだままで、暴走した時の様子を何回も思い返していた。自分がとった行動自体に後悔はない、だが、この先、ふとしたきっかけで再び暴走してしまわないか。今回はなかったが、もしひどい暴走を起こしたら今度は親友達を傷つてしまうのではないか。

 

そんな不安が当麻の頭の中を何回もよぎっていた時。

 

『当麻、私はあなたに謝らないといけません……ごめんなさい。』

 

「師匠…」

 

いきなりサラが軽く頭を下げて当麻に謝罪した。

 

『今回の暴走、私は身をもって知っていました。ずっと自分個人による問題だと思っていましたが、そうではなかった。これは誰しも…いや、気術士なら誰にでもなりうることだと今気づかされました。もっと早くこの事実に気づいていたら、あなたがつらい思いをすることはなかった……それなのに…」

 

少し黙り込むサラ、だが直ぐに力のない声で口を開いた。

 

「心のどこかで“当麻なら大丈夫”という考えがありました。物覚えが早いあなたなら、やさしい心を持つあなたなら…どんなことでも乗り切れると思っていましたが………私の過信、見当ちがいでした。本当にごめんなさい。」

 

そう言って再び頭を深く下げるサラ。当麻はじっとサラを見ていたが急に我に返り慌てるように答えた。

 

「し、師匠、自分を責めないでください。これは僕に原因があります。怒りを我慢出来なかった、感情を維持出来なかった僕の責任です……師匠は何も悪くないですよ。」

 

『ですが当麻…』

 

「それに師匠言ってたじゃないですか。「私にとって初めての弟子であり、初めて自分以外の気術士を見た」って……初めてなら初めてなりに知ること、見えてくることだってあると思います。今回だって‘’気術士は負の感情に飲み込まれやすい‘’って分かったから収穫ものです!」

 

サラの懺悔の言葉を遮り微笑みながら前向きの言葉を投げかける当麻は続けて「ですから…」と前置きして、

 

「負の感情に負けないよう…今後ともご教授と共に、二人で見つけていきましょう。新しい境地を!」

 

『……そうですね。私たちはまだまだ未熟、共に強くなりましょう…当麻。』

 

当麻とサラ。二人は頷くと共にその互いの言葉を聞いて、深く胸に刻み込んだ。正直の所、当麻は再び負の感情に飲み込まれて暴走しないか。サラは師としてこの先、弟子の当麻を正しく導く事が出来るのか。それぞれ互いに不安要素を心に秘めているが、そればかり囚われていても強くならないのは明確。口には出さないがその不安を消し去るためにも努力を怠らないようにしようと決意するのだった。

 

 

 

 

 

「………………。」

 

シアは樹海へと向かう移動中、ずっとハジメ達の話を聞いていた。あれだけ容赦なかったハジメ達が、実は初めて人を殺したという事実に内心驚くシア。それと同時に、それぞれ思っていることを口に出して言い合える仲に羨望と渇望を感じた。

「もっと彼らに近づきたい」「もっと彼らの事を知りたい」そう思ったシアは勇気をもって、

 

「あの、あの! もっと皆さんのこと、教えてくれませんか?」

 

その言葉にハジメ達は

 

「…って言っているが、皆どう思う?」

 

「別にいいんじゃないか、ハジメ。」

 

「……ハジメがいいなら、それでいいと思う。」

 

「減るものではないですし、僕も良いと思います。」

 

ハジメの問いかけに士郎、ユエ、当麻は賛同し、クロウ、サラ、レオンも問題ないと判断したのか反対することはなかった。そして、スバルは

 

「よし! 大方異論もないことだし………話をしよう。あれは今から36万…いや、1万4000年前のことだったかな? 俺にとってはつい昨日の出来事の…」

 

「「「そういうのはいいから!!!」」」

 

「…少し黙って、スバル。」

 

「………ハイ。」

 

ハジメ、士郎、さらに珍しく強気の当麻に指摘され、さらにユエに黙るように催促されたスバルは流石に肩を縮めるしか他なかった。

ハジメ、ユエ、士郎が中心になって、自分達の素性、ここまでの経緯、旅の目的を話した。

真摯になってウサ耳を傾けるシア。しかし、ハジメ達が話しを終えた頃には…

 

 

「うぇ、ぐすっ……ひどい、ひどすぎまずぅ~、みなさんに、そんな…けいいが、あったなんて~。そ、それ比べたら、私はなんでめぐまれて……うぅ~、自分がなざけないですぅ~」

 

大号泣だった。滂沱の涙を流しながら「私は、甘ちゃんですぅ」や「もう、弱音は吐かないですぅ」と呟いていており、そして、さり気なく、ハジメの外套で顔を拭いていたた。

まさか、自分以上に大変な境遇を持った人物がいる思ってもおらず不幸顔した自分が恥ずかしくなったのだった。

 

「(そんな泣くような話しだったか、レオン?)」

 

〈(何で泣くかなんて人それぞれ…というかお前も人のこと言えないだろ。)〉

 

「(…そうだっけ?)」

 

シアを見ながら二人だけで会話をするスバルとレオン。

レオンはスバルと初めて出会ったことを思い出しつつ、先程のスバルの発言を聞いて呆れていると

 

「みなさん! 私、決めました! 私は皆さんの旅に着いていきます! これからは、このシア・ハウリアが陰に日向に助けて差し上げます! 遠慮なんて必要ありませんよ。共に苦難を乗り越え、望みを果たしましょう!」

 

メソメソしていたシアが決然とした表情でガバッと顔を上げ、拳を握り元気よく宣言したのだ。

シアは思った、この宣言でハジメ達は大いに驚き、祝福と共に快く受け入れてくれるだろう…と。

 

 

だが、実際は…

 

 

「「「「えっ?」」」」

 

あまりにも唐突な宣言に素で返すハジメ達。

 

「………。」

 

ぶっ飛だシアの発言に開いた口が閉まらないユエ。

 

『『はい?』』

 

同じくシアの発言で驚きと共に声が裏返るクロウとサラ。

 

〈……は?〉

 

少し遅れて返事するも理解に苦しむレオン。

 

想像だにしなかったあまりにも冷たい周囲の反応、これにはシアも、

 

「ちょっとちょっと何なんですかその反応は!? 今の流れはどう考えても『なんて逞しく勇気あるウサギなんだ!? 君みたいな勇気ある子を求めていたんだ! 歓迎しよう!!』とか言って温かく迎えるところですよ! 何、美少女の仲間入りをふいにしようとしているのですか! あっ、何みんなしてため息ついているのですか! 失礼ですよ!」

 

プンスカと怒りながら抗議するシア。あまりにも図々しい行動、周囲の反応理由を理解していないシアにハジメ一同は呆れるしか他なかった。

そして、めんどくさそうにハジメが口を開いた。

 

「あのなぁ~、現在進行形で守られている脆弱ウサギが何言ってんだ? 完全に足でまといじゃねえか」

 

「……ハジメに同意見。それと‘’陰に日向に助けて差し上げます‘’って言っていたけどそれは士郎の役目、あなたには無理。」

 

「僕的にあの流れから仲間に加わろうとするの無理があると思いますよ。それにちょっと厚かましいかな…って。」

 

「…当麻の言葉から‘’厚かましい‘’って言葉が出るなんて相当だぞ。まぁ、流石に俺も仲間入りは賛成しないな。」

 

ハジメに続き、ユエ、当麻、士郎がシアの強引な仲間入りに反対を示した。ハジメ、ユエの反対はある程度予想していたが、まさか理解力があると見込んでいた士郎が反対に入るとは思っていなかったため思わず「そんな~士郎さんまで…」と声を震わして呟き、動揺を隠せないでいた。

 

『大方、一族の安全が確保されたら元々抜けるつもりでいたのでしょう。今回の騒動の発端は紛れもなく自分自身の存在、自分が一族にいる限り常に危険にさらされる。そう思ったあなたは最悪一人でも旅に出るつもりでいた。ですが……』

 

『…そこに私たちが現れました。圧倒的な強さに、気を使うことのない仲間意識、自分の中でどこか惹かれるものがあったのでしょう。それも含めて私たちについていけば、残りの一族も心配して後を追うこともなく容易に離れられると考えた…………違いますか?』

 

「それは…その、あう…」

 

クロウ、サラはシアから聞いた自分の素性やハウリア族の事情、そしてさり気なくシアのここまでの様子を観察した事を含めて推察、図星だったのか、しどろもどろになるシアは次の言葉を発することもできずにうなだれるのだった。

当然だが、もちろんこの二人も旅の参加には反対である。

 

「友達になるならまだしも、一緒についていくのはちょっとな…俺たちは自分の身は自分で守れるようにしているし、一人で立ち向かえるようにしている。もちろん、この先何かあれば助け合って行くけど…最低限それが出来ないと話にならないな。」

 

旅につれていけないまともな理由を述べるスバル。シアがある程度戦えればスバルも少しばかり擁護していたかも知れないが、今を見る限り他人任せ。もしも孤立した時、一人で対処出来なかったら無駄に命を散らすだけだと考えたスバルは仲間入りに賛成しなかった。

 

<…それにお前はまだ旅の目的をはっきりとさせていない。ここにいる者たちの目的は七大迷宮の攻略。強力な魔物、数々の試練…それだけでなく、もしかするとトータス全てを敵に回す過酷な旅になるかもしれない。それでもここにいる者達は危険を冒し、命を張ってでも果たしたい目的がある……それなのにお前は目的があるわけでもなく、ただ一族から離れるための理屈と自分の興味本位だけのために仲間に加わろうとしている。家族を思っての行動は称賛するがそれ以外はダメだ。目的ある者達からすればいい迷惑だ。>

 

 

シアに旅の目的がない事にどこか強気で指摘するレオン。

実際レオンの言う通りシアには旅についていく目的も目標もない状態であり、ただ一族から離れるには好都合の展開とこの仲間の輪に入りたいという欲求しか捉えていなかった。後は全くのノープラン、行き当たりばったりで何とかなるだろう…そんな甘い考えを持っていたのだ。

 

「………………。」

 

ハジメ達の容赦ない言葉、とどめのレオンの言葉が響いたのか、シアは返す言葉もなく落ち込んだように黙り込んでしまった。その様子を見たハジメ達は特に気にする様子はなく、当麻と士郎は多少なりとも「言い過ぎたかな…」と思いつつも声をかけることはなかった。それ程、この旅は危険であり真剣だということをシアに示し諦めを持って欲しかったからだ。

 

 

その後、一行はこれといった会話もなくハルツィナ樹海と平原の境界に到着した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、ハジメ達、ハウリア族一行はこれからハウリア族の先導の元、ハルツィナ樹海に入り最深部にある巨大な一本樹木〝大樹ウーア・アルト〟に向かおうとしていたが、ここでちょっとした問題が起こった。

 

 

「……すみません。隠密系技能が無いばかりに…」

 

「いやいや、こればっかしは仕方がないだろ。」

 

「特に謝る必要はないと思うぜ、当麻。」

 

申し訳なさそうに何かに謝る当麻に対して士郎、ハジメは慰めの言葉をかけた。

 

実はこれから向う大樹ウーア・アルトは亜人族にとっては神聖な場所とされているも、これといって立ち入り禁止とかではなく、誰でも立ち寄れる場所となっていた。よって他の亜人族との接触も考えられるため隠密行動で向うことにした。

ハジメ、ユエ、士郎は技能の’気配遮断‘’があるため問題はなく、ハウリア族は兎人族特有の隠密行動に特化した種族のためこれも問題がなかった。

では、スバルはというと、

 

「へへっ…技能‘’迷彩‘’。まさか透明人間になれる日が来るなんてな~」

 

嬉しそうに言うスバルだが、その身体は透明となっていた。

魔物の技能の一つ‘’迷彩‘’、この技能を使えば身体を透明化させてステルス状態にさせることが可能となった。まさかこんな技能があったと知らず、嬉しそうに動きまわるも、

 

「…けっこうブレブレだな。」

 

「…ん。目を凝らしたら、すぐ見つかる。」

 

「マジで…。」

 

ハジメ、ユエの指摘通り、透明になったとはいえスバルが動けば動くほど周りから見れば空間が歪んだように見えて敢えて不自然な状態となっていたのだ。

 

<まぁ、今回使う場所は常に霧が立ちこむ場所だ。多少の空間の歪みも霧でカバー出来る、問題はないだろ。>

 

レオンの助言もありスバルはこの迷彩を使って樹海に入ることとなった。

 

そして問題は当麻である。流石に気を使っての隠密行動が出来る技はサラも持ち合わせていなかった。このまま諦めて当麻だけ何もなしで行くかと皆が思いかけた時、

 

「おっ、そういえばいいものがあったな。」

 

そう言ってハジメは宝物庫から大人がすっぽり被せる程のマントを取り出した。

 

「これに魔力を流し込むと………」

 

そう言ってハジメは魔力操作でマントに魔力を流し込んだ。するとみるみるうちにマントは透明化していきハウリア族は「おおぉー!!」と驚きの声が上がった。

 

「どこかで役に立つかなと思って入れておいたんだが、入れておいて正解だったな。」

 

実はハジメは旅に出る前にオスカーが作った数々のアーティファクトを見て、使えそうな物は宝物庫に入れておいていたのだ。その一つがこの透明のマントになるのだった。

 

「へえーこんなのがあったんだ。」

 

『スバルさんの迷彩と比べると、透明度はこっちの方が高いですね。おまけに揺らしても空間が歪む様子もない…とても高度な出来ですね。』

 

当麻は透明マントがあったことに驚き、クロウはこのマントの完成度に驚かされた。スバルの迷彩と比べると圧倒的にマントの方が迷彩力が高かったのだ。この結果にスバルは不貞腐れかと思っていたがそういうこともなくじっーとマントを見ていた。そして、何かに気づいたように口を開いた。

 

「なぁ、これってオスカーが作ったアーティファクトだろ? 名前なんて言うんだ?」

 

その言葉にハジメは「うっ」と言葉を詰まらせた後、真顔になってスバルに言った。

 

「言わないとダメか?」

 

「言わないとダメ。」

 

真顔でそう返事するスバルにハジメはでかいため息をついた後、口を開いた。

 

 

 

 

 

「……メイド自然観察マント ‘’キエール‘’」

 

 

 

「「「「「………………。」」」」」

 

 

 

そのマントの名前を聞いた途端、ハウリア族を含めて全ての者が微妙な顔をするのだった。

解放者の一人、オスカー・オルクスは数々の素晴らしいアーティファクトを作ってきたのだが、如何せんどういったわけなのかそのアーティファクトの名前が壊滅的に酷いのだった。

 

「……ハジメが作ったアーティファクトの中二病名称がまともに見えてきたな。」

 

「…おいコラ、スバル! それどういう意味だ!?」

 

スバルの失礼な発言に襟元を掴んで青筋を浮かべるハジメ。

 

『そもそもこれ、潜入に使うのではなくてメイドを見るために作られたというのが何とも複雑ですね。』

 

「落ち着いた人に見えてたんだけど…人は見かけによらずだな。」

 

高度な透明マントの使用目的が諜報活動ではなく、メイドを見るために作られたものだと知って苦笑するクロウ。オスカーという男が自分が想像してた高貴な人物像から一転してイメージが損なわれ始め、同じく苦笑いを浮かべる士郎。

 

「そういえば、オスカーさんの隠れ家にこれでもかという程のメイド服と美女の等身大の人形がいくつもあったような…。」

 

「……メイド服を拝借してハジメとメイドさんごっこをしたのは良い思い出。」

 

『お嬢様! その話しもっと詳しくッ!!』

 

どこか思い出すかのように呟く当麻にユエ。そして、ユエの発言に興奮しながら食いつくサラ。

 

<………とりあえず進まないか?>

 

オスカーのことをスルーして催促をかけるレオン。その言葉にハッとしたハジメ達は準備を整えて、ハウリア族を先頭にして樹海へと入っていった。

 

 

 

 

 

 

 

樹海の中は予想以上に霧が濃く視界を遮っていた。それでもカムを中心としたハウリア族の先導に迷いは見られず、道なき道をどんどん突き進んで行った。時おりハウリア族の足が止まったと思えば、周りに魔物の気配があり、そんな時はハジメ達が静かに素早く対処していくのだった。

そんな事が何回か続いてハジメ達が樹海に入って数時間が経った時、今までにない無数の気配に囲まれ、ハジメ達とハウリア族は歩みを止めた。数も殺気も、今までの魔物とはどこか違う様子が見られハウリア族は忙しなくウサミミを動かし索敵をしている。

そして、何かを掴んだのか苦虫を噛み潰したような表情を見せるカム。シアに至っては、その顔を青ざめさせていた。ハジメ達も相手の正体に気がつき、面倒そうな表情を見せた。

 

ハジメ達、ハウリア族の前に現れたのは…

 

 

「お前達……何故人間といる! 種族と族名を名乗れ!」

 

 

虎模様の耳と尻尾を付けた、筋骨隆々の亜人族達だった。

 

 




いかがだったでしょうか?
当麻とサラの新たな決意とシアがぼろくそに言われる回でした。
当麻の暴走した理由は本編でサラが解説した通りです。気術士という天職はなる人が本当にごくわずかで、気についての文献もこのトータスでは皆無に等しく、当然サラはそのようなことを目にしてこなかったので、当麻がハウリア族に激情した時に自分の境遇を思い出し、初めて‘’気術士は使い慣れた時に感情で暴走しやすい‘’と理解しました。

シアが原作以上にボロクソに言われています。実際に原作でも最初の頃は後先なんて考えていなかったと思っておりますので、その結果がこれになりました。

オスカーのオリジナルのアーティファクトが出てきています。ぶっちゃけ零は漫画は読んでいますが小説は未読です。もし、原作で透明マントが出てきていたら名前を教えてください。原作に合わせて訂正しますので……


ありふれた特別講座についてですが、本編の内容が薄いなと思ったら掲載予定です。身勝手な判断、どうかご了承ください。


さて、次回も書き上げ次第、投稿する予定です。
本編の質問、感想はいつでもお待ちしております。

それでは、この辺で。では、また……
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。