ありふれた職業で世界最強  魔王を支える者達   作:グルメ20

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お久しぶりです。グルメです。
現実の生活が忙しかった、また、スランプ気味だったこともあり投稿が遅くなりました。本当にすみませんでした。


今回のお話しは長老会議で生存を許されたハウリア達ですが、ある存在のことを忘れていました。
その存在とは一体?

それでは、どうぞ。


トータスの厄災とハウリア達の決断

「そういえばハジメ君、帝国と接触するときもそうでしたけど随分強気で出ましたよね?」

 

「ん?」

 

「普段のハジメ君を知っている僕からすると凄く違和感といいますか…それとも慣れないと言った方がいいのかな? …こんな一面があったんだなって思って。」

 

そう言って当麻は先ほどの長老達との話し合いを思い返していた。邪魔になると考え、極力しゃべらないようにして見守っていたが印象的なのはハジメの強気な姿勢だった。元の世界では円滑に事が運ぶように流され、自分の意見どころか他人の意見に賛同して自分から折れる事がほとんどであり、当麻から見れば今回の一面に少し驚いたのだ。

 

「奈落の底で価値観が大分変わったからな…そのせいかもな。とりあえず交渉する時は相手に妥協しない。弱気な一面は見せない。そう決めている。」

 

「まぁ、無難だな。妥協なんかしたら思いっきり付け上がってきそうだし、皆、有利に立とうとしている。この世界の住人は油断ならないと思うぜ。」

 

「ああ、それは俺も同感だ。気は抜けられないな。」

 

ハジメの交渉の価値観に賛同する士郎、そしてハジメもまた士郎の‘’この世界の住人は一筋縄ではいかない‘’という考えに賛同を示した。

そんな最中…

 

 

スリスリスリスリスリスリスリスリスリスリ…

 

 

「おい、アホうさぎ! いつまで人の肩にすり寄っているんだ? そろそろ離れろ!」

 

「えっー! いいじゃないですか! こうして嬉しさを表現しているのですぅ!! もう嬉しくて嬉しくて…たまらないほど仕方がないのですぅ! 」

 

うっとうしいそうに言うハジメだが、シアはそんな事も気にすることなくべっとりハジメにくっつき、肩に顔をうずくまっていた。流石に見かねたユエが

 

「図々しいアホウサギ…調子乗りすぎ。」

 

「ちょ!? ユエさん! 服引っ張らないで! のびちゃいます、はたけちゃいますぅ~」

 

「いや、お前が離れればすむ話しだろ!?」

 

そう言ってシアの服を掴みおもいっきり引っ張り出すユエ。シアはハジメの黒いロングコートを片手で掴んで絶対に離れない意思を見せつつ、もう一つ手で自分の服を戻そうとして引っ張り返していた。そして、ハジメもまたシアの顔を片手で鷲掴みして引き離そうとしていた。

この光景に当麻は苦笑いして、士郎はやれやれといった感じで肩をすくめていた。そして、クロウとサラはユエ、カムと他のハウリア達はシアを見つめて微笑ましそうに見守っていた。共通して言えるのはどちらも生き生きしており、あんなにじゃれ合う姿は初めて見たので思わず声をかけるのも、もったいなく感じていたのだ。

 

全体的に少し騒々しい雰囲気が流れる中、スバルはただ一人難しい顔をしていた。そして、何か決まったのか「よし。」と意気込むと、

 

「なぁ、カムさん。一つ聞きたいことがあるんだけど…」

 

「ん? 何かな~?」

 

どこか細目でのほほんとしているカムに、スバルは真面目な顔で尋ねた。

 

「‘’ヤツら‘’ってなに?」

 

「…………。」

 

その瞬間、カムの顔が固まった。のほほんとした顔を一ミリも崩さずに固まったのだ。カムの近くにいたハウリア達もスバルのそれを聞いて夢が覚めたように怯え出したり、青ざめたりしていた。

 

「あっ、やべぇ…聞いちゃダメな奴だったか?」

 

上げて落とすような雰囲気を作ってしまったことに思わず苦笑いするスバル。

 

「…ヤツら? あっ…」

 

シアもまたスバルの言葉を聞いて何かを思い出したのか動作を止めて怯えだした。シアやカム、ハウリア達の尋常じゃない怯え方、スバルの気になる言葉を聞いていたハジメ達はスバルに注目した。

 

「おい、スバル。それはどういう意味だ?」

 

「ああハジメ、実は…」

 

そう言ってスバルは先ほどあった出来事を皆に話した。ちなみにレオンには事前に尋ねてみたが「分からない」という返答をもらっているのだった。

 

「…なるほどな。で? 結局ヤツらって何者だ? アホうさぎ。」

 

話を理解したハジメは何かを知ってそうシアに尋ねるも、

 

「うぅ…言えないですぅ。恐ろしくて口が裂けても言えないですぅ…」

 

「お前な…」

 

怯えてその場でうずくまるシアにハジメは呆れるしか他なかった。シアが話さない以上、ハジメが次に注目したのはカムだった。

 

「おい、カム。フェアベルゲンの連中が言っていたヤツらとは何だ? 洗いざらい話せ。「怖くて話せない…」なんて馬鹿なこと…ぬかすなよ?」

 

そう言って若干脅しを入れるハジメ。その言葉に一瞬息を吞むカムはそのまま険しい顔でこらえていたが観念したのかため息をついてぽつり、ぽつり話し始めた。

 

「…申し訳ないハジメ殿。我らハウリア族の生存のことで頭がいっぱいだったせいか、すっかり忘れいました。このハルツハィナ樹海にはもう二つの種族……いえ、正確にはトータスの厄災とも言える存在がいるのです。」

 

「二つの種族?」

 

「…厄災?」

 

当麻が「種族って確か三つしかなかったような?」と思い、士郎も「聞いたことない話しだな…」と疑問を浮かべる最中、カムは話しを続けた。

 

「実は大樹のさらに奥地に大きな砦があり、そこにオークの上位種ウルク=ハイ、そして彼らと共にするトロルの上位種オログ=ハイ、その二つが多大な数でいるのです…フェアベルゲンの民はそのもの達に畏怖の念を抱き、口にするのも恐ろしい故にヤツらと呼んでいます。」

 

そう言ってカムは落ち着いた口調で話しているも平静を装っているのか、ところどころ身震いさせていた。

 

「ウルク=ハイ、オログ=ハイねぇ…」

 

「まさか、オーク、トロルに上位種がいるなんてビックリたぜ。」

 

「………。」

 

ハジメ、スバルが関心を寄せる中、ユエは何か思う所があるのか顎に手を当てて何かを考え込んでいた。

 

「ユエ、どうかしたのか?」

 

「えっ…ううん。なんでもない。」

 

気になったハジメが問いかけるも、なんでもないと切り返すユエ。少し気になったがユエがそう言っている以上、特に追求することはなかった。

そんな最中、当麻が恐る恐る手を上げた。

 

「あの~、この樹海にそれらの種族がいるとして、どう恐ろしいのか具体性が分からないのですが…」

 

ウルク、オログの生態をよく知らないため、いまいち恐怖が伝わらず困惑する当麻。

その時、士郎の身体から幽体となったクロウが出てきた。

 

『それに関しては私の方で解説させていただきます。』

 

そう言ってクロウはウルクとオログについて話し始めた。

 

 

 

 

 

 

 

‘’オーク‘’、人々がもしその言葉を口にしたらそれはウルク=ハイに他ならない。ウルクは人間より少し大きい位の体型で耳や鼻もあるため人とさほど変わりはない。ただ身体は人一倍丈夫で力もあり、強烈な痛みや喪失にも耐えられる。そして、その顔は一度見たら忘れられない目をそむけたくなるような恐怖に満ちており、それに沿ったかのように暴力的でかつ好戦的でもあり、悪知恵も働き、目をそむけたくなるような残忍さを持っている。

オーク生態は未だよく分かっていない。何故なら調べようとしたものはことごとく命を落としているからだ。ただ言えることは1000年以上前の戦乱時、ケレブリンボールが台頭していた時代には各国の有力者達はこの者たちを戦争の駒として使っていたのは確かだった。

 

そして、ウルクのすぐ近くには同様に戦争の駒として使われたオログ=ハイの存在もあった。

 

オログは魔法により改良させられたトロルである。いったい誰が改良させたのか定かではないがこちらもケレブリンボールが台頭していた時代には各国の有力者達が保有していた。体長は約5~6m、ウルク同様に強烈な痛みや喪失にも耐えられるようになっており性格もほぼ変わらない。通常のトロルよりも賢いため人間の言葉を理解する。

 

ウルクとオログは決して仲が良いわけではない。ちょっとした些細なことで殺し合いに発展するのも珍しい事でもない。それでも一緒に行動するのは一種の共通認識、あるいはお互いを利用し合っているのか定かではないが、どちらにせよ人間族、亜人族から厄災と認識され、特に人間族が信仰している聖王教会からは‘’根絶するべき害悪‘’と認定されて討伐対象となっており、教会内では「前世で悪い行いをしてエヒト様から神罰が下ったんだ」や「信仰が足りない者はああなってしまう」など噂が絶えず続いているのだった。

 

 

 

「前々から思っていたけど、クロウって博識だよな。」

 

『そんなことありませんよ士郎。知らないことだってあります。それにオークについては私にとって全く関係ないってことがないのです。』

 

「それはどういう意味だ?」

 

スバルが問いかけるとクロウは笑みを浮かべて答えた。

 

『私の身体にオークの血が流れているのです。私の父はオークで母はエルフ、俗に言うハーフエルフというやつですね。』

 

「「「「ええええぇぇぇ!!??」」」」

 

「…………。」

 

クロウのカミングアウトにハジメ、スバル、当麻、士郎の声が樹海にこだまし、ユエにいたっては目を開いて驚いていた。

 

「まぁ100年以上も生きていたから普通じゃあないと思っていたけど…」

 

「…ん。初耳。」

 

『申し訳ございません、姫。あまり必要ないと思い黙っておりました。』

 

未だに驚きを隠せない士郎とユエ。クロウはユエにこの事を話さなかった事を軽く謝罪した。

 

『私は知っていました。クロウとは…親密な関係でしたので…。』

 

〈まぁ、上司だからな。把握はしていた。〉

 

どこか恥ずかしげに答えるサラ、さも当然のように答えるレオン。

そして、スバル、ハジメはと言うと、

 

(なぁ、オークとエルフとの間に出来たって事は…やっぱり…)

 

(いや、まぁ…うん…そうなるよな?)

 

二人そろってヒソヒソと話していた。“オークとエルフ”、これを聞いて思い浮かべるのは、やはりR18禁のあの展開を思い浮かべ…

 

『失礼ながら私の父と母はあなた方か考えていることなど決してありませんでした。決して!!』

 

「「アッ、ハイ。」」

 

いきなりスバル、ハジメの前に現れるクロウ。物凄い笑顔を向けていたが目が笑っていなかったので二人はここで考えるのをやめるのだった。

 

「でも、さっきのオークの生態と残虐性を聞いてからだと、なんか想像つかないですね…。」

 

『無理もありません、私の父は‘’人間好き‘’という考えを持つオークなのですから』

 

「人間好き?」

 

当麻の疑問にクロウはそう答え、新な疑問にハジメは首をかしげた。

 

『オークの中に稀にいるのです。人間に友好的な考えを持つ存在が。私の父がその一人です。最も人間からも、オークからも理解されないことがほとんどですが…』

 

そう言ってクロウは一瞬儚げな笑顔を浮かべた後、すぐに表情を戻してカムに向き合った。

 

『ところでハルツィナ樹海にいるオーク達は元々この土地に住んでいたもの達なのですか?』

 

「いいえ、彼らは侵略者…外からやって来たと先代の族長から聞いたことがあります。たしか…300年前のことになります…。」

 

「…300年前」

 

『ディンリード様が反乱を起こした年と同じ…。』

 

ユエ、サラが意味ありげに呟く中、カムは話を続けた。

 

「ヤツらはどこからともなく現れました。そして、あろうことか大樹の近くに砦を築き始めたのです。当然、前代のフェアベルゲンの者達は黙って見過ごすわけには行きません。早速、歴戦の戦士達を集めて攻め立てたのですが…地の利もありながらことごとく敗走を重ねたのです。」

 

そう言ってカムはどこか気難しそうに語り、一息入れて再び話し始めた。

 

「その後、7度目の敗走後に使者がやって来ました。内容は戦争の休戦に不可侵条約及び共同宣言というもので、これ以上、敗走を重ねたら威厳に関わると考えた前代の長老達は大方承認しましたが、オークが信用出来ないこともあり共同宣言だけは受け入れられませんでした。その後、大きな衝突もなく年に数回、ヤツらから使者が訪れて共同宣言を持ちかけては断るということが続いております。」

 

話を終えるとカムやシア、ハウリア達は身震いしており、ヤツらの存在を思い出し恐怖したのもそうだが、それよりも自分達は追放された身。もし知られたら襲って来るのではと、そっちの方に恐怖がよっていたのだ。

 

「「「「「………。」」」」」

 

そしてハジメ達、ユエも難しい表情をしていた。ヤツらの生態は残忍、しかしカムの話しを聞く限りだと話しが通じるかもしれないが、自分達は部外者、もしかしたら問答無用で襲って来るかもしれない。

どっちにしろ大樹の近くに居住地があるので大樹に向かう以上、接触は免れないと考えていた。

 

それから誰も発言がなく、辺りに沈黙が流れた。「これからどうする?」という感じで、お互いに顔を見合わせていると……

 

「まぁ、ハウリア達を鍛えるのに変わりはないか…」

 

そう、ボソッという言葉に皆が注目した。発言したのはハジメだった。

 

「ハジメ殿、それはどういう意味で?」

 

「ん? そのままの意味だぞカム。軟弱で脆弱で負け犬根性が染み付いたお前等をある程度、戦えるように鍛えようと思ってな。どの道、これから‘’十日間’は大樹へはたどり着けないんだろ? ならその間の時間を有効活用しようと思ってな。」

 

困惑しながら尋ねるカムにサラッと答えるハジメ。実はフェアベルゲンを出ようとした矢先「大樹に行けるのは十日後だぞ」アルフレリックに告げら、初耳のためカムに問い詰めると、このことをすっかり忘れており吞気に笑いながら話すカムに思わず大きなため息をついていたのだった。

 

「あの~なぜ、そのようなことを……」

 

シアは唐突なハジメの宣言に当然の如く恐る恐る疑問を投げかけた。それを聞いたハジメはため息交じりで理由を話し始めた。

 

「あのな~俺達がお前達と交わした約束は、案内が終わるまで守るというものだ。じゃあ、案内が終わった後はどうするのか、それをお前等は考えているのか?」

 

ハウリア達は互いに顔を見合わせ、ふるふると首を振った。カムもシアも難しい表情であり、誰一人答える者はいなかった。

 

「まぁ、考えていないだろうな。考えたところで答えなどないしな。お前達は弱く、悪意や害意に対しては逃げるか隠れることしかできない。そんなお前等は、フェアベルゲンという隠れ家を失い、俺達の庇護を無くしたら、誰がお前らを守ってくれる? お前らをエサとする魔物も、奴隷にしようとする人も、待ってはくれない…容赦なく襲ってくるだろう。」

 

ハジメの言葉にハウリア達は皆一様に暗い表情で聞いていた。だが、そこにさらに衝撃的な事実を突きつけた。

 

「それだけじゃないぞ。スバルのさっきの話しを聞いて確信したんだが…フェアベルゲンの一部の連中は納得していない。確実にハウリア達を亡き者にしようと動いてくるはずだ。」

 

「「「「えっ?」」」」

 

それを聞いて一斉に顔を上げるハウリア達。誰が見ても「信じられない…」という言葉が顔に出ており、シアが切羽詰まったようにしゃべりだした。

 

「でもでも、私たちは死んだ扱い、それにハジメさん達の身内で手出しは禁止…そう約束されたのに…どうして…」

 

「…そういうことになっているだけで実際には死んでいない。」

 

『それに、手出しする者は自己責任ですからね。周りに迷惑をかけなければ実行するでしょう。』

 

「‘’死人に口なし‘’…俺たちを全員始末したら、始末した理由なんていくらでも作れるからな。」

 

「あのアルフレリックという、話が分かってくれそうなエルフも気づいたら止めてくれそうだけど…気づいた後だと、「仕方がない」という言葉で済まされそうかな…」

 

『長老達の中には激しく怒り抑えている者が気の流れで分かりました…ハジメ殿の考えは確実に的中すると思われます…』

 

「そ、そんな~、せっかく助かったのに、あんまりですぅ~」

 

ユエ、クロウ、士郎、当麻、サラがそれぞれ思ったことを口にしたら、それを聞いて泣き出してしまうシア。

そこにスバルが歩みより、

 

「まぁまぁシアちゃん。相手より強くなって返り討ちにすればいいだけのことじゃない。」

 

「でも、でも…私達は兎人族なんですよ? 虎人族や熊人族のような強靭な肉体もなければ翼人族や土人族のように特殊な技能も持っていません……そんな私たちがはたして強くなれるのでしょうか?」

 

陽気に慰めるも、泣きべそになりながら弱音を吐くシア。「兎人族は最弱、故にそれが強く根付いて強くなる向上心が持てない」シアの訴えを聞いて、ハウリア族全体がそう浸透していると感じたスバルは、まずはそれを取り除くためシアにある質問をした。

 

「なぁ、シアちゃん。ハジメのことどう思う?」

 

「えっ!? それは、その……はう…」

 

スバルの質問にドキッとしてハジメを見た。ハジメを見た時、一瞬だけ目が合い思わず目をそらして頬を赤くしたのだ。

 

「……?」

 

「……………むぅ」

 

シアの反応にハジメは分からず首をかしげ、ユエは眉をひそめてシアを見つめており、当麻、士郎は「アニメやラノベで見たことあるような…」とデジャブ感を覚えていた。

 

「あ~悪い。質問が大まかすぎたな…ハジメは強いか…それとも強くないのか…どっちかな?」

 

スバルも当麻、士郎と同様でシアをからかいたい気持ちを抑えて再度質問を投げ掛けた。

 

「…! そんなの強いに決まってるじゃないですが! ライセン大峡谷では何度も何度も大型の魔物を退けて、ハルツィナ樹海では見えない魔物も討ち取って来たのですよ!? どこからどう見ても強者じゃないですか!!」

 

「何を当たり前のことを」と言いたげに少し強気になって答えるシア。スバルは聞きたい答えが聞けて笑みを浮かべるとハジメの方を向いた。

 

「……だってさ。ハジメ、教えてやれよお前の当初の姿。」

 

「そこで俺に振るなよ…」

 

スバルに話を振られて溜め息をつくハジメは、少し考えた後にゆっくり口をひらいた。

 

「俺は親友達以外から‘’無能‘’と呼ばれていた。」

 

「え?」

 

「‘’無能‘’だ‘’無能‘’。ステータスも技能も平凡極まりない一般人。仲間内の最弱。戦闘では足でまとい以外の何者でもない。故にほとんどの連中は俺を‘’無能‘’と呼んでいたんだよ。実際、その通りだった」

 

 ハジメの告白にハウリア族は例外なく驚愕を顕にする。ライセン大峡谷の凶悪な魔物も、同族の帝国兵も、苦もなく一蹴したハジメが‘’無能‘’で‘’最弱‘’など誰もが信じられなかったのだ。

 

「だが、奈落の底に落ちて俺は強くなるために行動した。出来るか出来ないかなんて頭になかった。出来なければ死ぬ、その瀬戸際で自分の全てをかけて戦った。……気がつけばこの有様さ」

 

 淡々にそしてあまりに壮絶な内容にハウリア族達の全身を悪寒が走った。一般人並のステータスということは、兎人族よりも低スペックだったということだ。その状態で、自分達が手も足も出なかったライセン大峡谷の魔物より遥かに強力な化物達を相手にして来たということになる。実力云々よりも、実際生き残ったという事実よりも、最弱でありながら、そんな化け物共に挑もうとしたその精神の異様さにハウリア族は戦慄するしか他なかった。

 

「お前達の状況は、かつての俺と似ている。約束の内にある今なら、絶望を打ち砕く手助けくらいはしよう。自分達には無理だと言うのなら、それでも構わない。ただ、こっちの立場も考えてくれよ? 俺達が去った後に蹂躙されて全滅しましたなんて耳に入ってきたら………後味悪いだろ?」

 

その言葉にスバルや当麻、士郎は笑みを浮かべた。障害になるもの敵になるものには容赦しない強気な性格になったものの稀にみる優しさとお人好しさは変わらないとつくづく思うのだった。

 

「それでどうするんだ? ハウリア族(お前ら)は?」

 

「「「………。」」」

 

そう問いかけるハジメにハウリア族達は直ぐには答えず互いの顔を見合わせた。自分達が強くなる以外に生存の道がないことはハジメ達の話を聞いて理解した。だからと言って「はい、そうですか。じゃあ、強くなるために鍛えます。」と言って進めるわけではない。温厚で平和的で、心根が優しく争いが何より苦手な自分達にとってハジメの提案は、未知の領域。なかなかその一歩が踏み出せなかった。

 

だが、その一歩を踏み出した者がいた。

 

「やります。私に戦い方を教えてください! もう、弱いままでいるのも、逃げ回るのも嫌です!」

 

樹海の全てに響けと言わんばかりの叫びに、これ以上ない程思いを込めて宣言するシア。その目は不退転の決意を宿し、真っ直ぐとハジメを見つめていた。そして、これが引き金になったのか、一人、また一人とハウリア達はハジメの方に向かれていった。

最終的に女子供も含めて全てのハウリア族がハジメの方を向いていることを確認するとカムが代表して一歩前へ進み出た。

 

「ハジメ殿、いえ、皆さん……宜しく頼みます。」

 

その短い言葉には確かに意志が宿っていることを確認したハジメは不敵な笑みを浮かべた。

 

「OK、覚悟しろよ? あくまでお前等自身の意志で強くなるんだ。俺は唯の手伝い。途中で投げ出したやつを優しく諭してやるなんてことしないからな。おまけに期間は僅か十日……死ぬ気でやれ。この十日間でハウリアの未来が決まる。」

 

ハジメの言葉に、ハウリア族は皆、覚悟を宿した表情で頷いた。

そして、スバルもニィと笑顔を浮かべて

 

「よっしゃーおもしろくなって来た! 他のフェアベルゲンの連中に一泡吹かせてやろうぜ! 俺も全力でサポート<待て、スバル>ん?」

 

<お前は別行動で修業だ。>

 

「ええっー!? 修業するの!?」

 

<十日もあれば一つや二つ新しいことが覚えられる。>

 

スバルはハウリア族を鍛え上げることに意気込んでいた矢先、レオンの提案に大きなショックを受けた。

 

「でも面白そうなんだよなー、ハウリア達を鍛え上げるの。」

 

<スバル、自分の楽しいことを優先し新しいことを覚えずして仲間が危機に陥った時、後悔しないと約束できるか?>

 

「………できない。仲間が危機に陥る事もさせたくない。」

 

<ならばそうならないように自分がとる行動は、わかるな?>

 

「…うん。」

 

レオンの言葉に感化されて、改めて修行する決意を固めるスバル。それを見た当麻は、

 

「スバル君が修行に入るなら僕もしないわけにはいきません。先の戦いでの失態、二度とないように心身ともに鍛えないとですね師匠。」

 

『その意気です当麻。共に励みましょう!』

 

そう言って当麻、サラは帝国兵との戦いの失態を踏まえて修業することとなった。

 

「そうなると俺も修業しないとな…何だかんだで能力の一部クロウに出してもらっているし、せめて自分で出せるようにはしておきたいな。」

 

『いい機会ですし、新しい技もお教えしますね士郎。』

 

「おっ、いいね。それも覚えおくか。」

 

そして、士郎もまた修業に入る事を決意しクロウから新しい技を伝授することとなった。

 

「というわけでハジメ、俺らは各自で修業するからハウリア達頼むわ。それと飯の時と休息時だけここに集まるようにしようぜ。」

 

「ああ、わかったスバル。ハウリア達は俺とユエで面倒を見る。お前らもがんばれよ。」

 

「おう!」

 

「うん。」

 

「ハジメもな。」

 

ハジメの言葉にスバル、当麻、士郎がそう応えると各自目的のために別れて行くのだった。

 

 





いかがだったでしょうか?
ヤツらとは何者なのか、そしてハウリア達の一世一代の決断の回でした。
そしてようやくお話しができます。ハイファンタジーの礎を築き上げたと言ってもいい作品の一つ「指輪物語」よりオークとオログが参戦、といってもそれを題材としたゲーム「シャドウ・オブ・ウォー」という作品からのオーク、オログの設定がほとんどですけど…作者も指輪物語は実写映画の三部作しか見ていません。
ですがこのシャドウ・オブ・ウォーというゲームはハマってやりこみました。様々なオークやオログを従わせて裏切られることもあるけど共に敵を倒したり、部隊を編制し砦を攻めたりします。砦を攻めるシーンは圧巻です。
そんな彼らがどのように、ありふれの世界に絡むのか今後の注目です。がっつり活躍する話もある程度考えているので楽しみにしていてください。

さて、ここからしめったい話しになるのですが、読者の皆さん、この「ありふれた職業で世界最強  魔王を支える者達」という作品はおもしろいでしょうか?
前の話から感想を書く人が限られた人ばかりで、「おもしろくないのかな…」って不安になって筆が進まなくなり一時期小説から離れていました。作品を消すことも考えていましたが、それはそれで負けた気分になり、なにより「おいとけばよかった。」って後悔したくなかったのでとりあえず作品は残すことになりました。
こんな作者ですが、なにとぞよろしくお願いします。

さて次回のお話しはクラスメイトsideのお話しになります。
レムを見送った者達のその後どうなったのか、勇者組の一時帰還、帝国の使者、新たな出会いと別れ、そして目を覚まさなかったあの子にも動きが…何話になるのか未定ですががんばって書いていきます。

それでは今日はこの辺で、ではまた…

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