ありふれた職業で世界最強  魔王を支える者達   作:グルメ20

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何とか書けました、後編です。



異世界トータスへ 後編

スバルは不思議な空間をさまよっていた。自分は経験したことはないが、まるで宇宙空間にいるかのように無重力の中、浮いているのだった。

その時声が聞こえてきた、

 

’’お前に力を…………どうか、私の友を……愛する者を……………救い出してくれ…’’

 

優しそうな男の声がスバルの耳に聞こえてきた。それと同時に右手の平がやけに熱く感じた。声の主はスバルの知り合いに照らし合わすも誰も該当するものはいなかった。とっさに誰なのか尋ねようとするも再び光が強く輝き出し、スバルの視界を奪うのだった。

 

 

再び視界が戻った時、そこに教室ではなかった。目の前にはルーブル美術館に飾ってあるような巨大な壁画、周りは彫刻が彫られた巨大な柱に天井はドーム状になっていた。そして、台座の上に立っているのか周囲より位置が高い場所にいた。そして、あの教室にいた全員がその台座の上に立っていた。ハジメや士郎や当麻、レムはもちろん、光輝達や檜山達、他クラスの生徒、担任の愛子先生もいた。

誰もが状況を呑み込めていないのか、呆然と周囲を見渡すクラスメート達、その時一人だけ、レムだけは、どこか苦しいのか、胸元を抑えているのだった。

スバルが「大丈夫かな?」と思った時、ふとさっきの光景を思い出した。誰か分からない声、やけに熱かった手の平、スバルはゆっくり自分の右手の平を見た。

 

「なんだ…………これ?」

 

そこには直径六センチ程の円状の幾何学模様、もとい魔法陣が描かれていた。さっき自分達を囲んだものとは別の魔法陣らしく、さっきよりもぎっしり複雑な模様が描かれていた。そして、とっさに周りのクラスの連中の手を見るも、誰もスバルと同じ魔法陣を持ったものはおらず、どうやら自分だけのようだ。

 

「ようこそ、トータスへ勇者様、そしてご同胞の皆様。」

 

声が聞こえてきたのでスバルはとっさに手を下して右手は握りこぶしを作った。何となくだが誰かに見られてはいけないと本能で悟ったからだ。

 

「私は聖教教会にて教皇の地位に就いております、イシュタル・ランゴバルドと申す者。以後よろしくお願いいたしますぞ。」

 

そう言って煌びやかな法衣をまとった七十代くらいのイシュタルと名乗った老人は好々爺然とした微笑みを見せた。

 

 

さて、場所が変わり異世界に飛ばされたクラスメイト達はテーブルがいくつもの並んだ大広間に通され、適当に座ってこの世界とその現状についてイシュタルは話し始めた。

 

要約するとこうだ。

 

まず、この世界は’’トータス’’と呼ばれ人間族、魔人族、亜人族、の三つの種族があり、人間族は北一帯、魔人族は南一帯を支配しており、主な亜人族は東の巨大な樹海の中で生きていたり、各地にひっそりと隠れている者もいるみたいだ。

この内、人間族と魔人族が何百年も戦争を続けている。

そしてここ数年で魔人族が魔力を取り入れた魔物を使役し始めており、これに対して人間族は滅びの危機を迎えているのだという。

 

「あなた方を召喚したのは’’エヒト様’’です。我々人間族が崇める守護神、聖教教会の唯一神にして、この世界を創られた至上の神。おそらく、エヒト様は悟られたのでしょう。このままでは人間族は滅ぶと。それを回避するためにあなた方を喚ばれた。あなた方の世界はこの世界より上位にあり、例外なく強力な力を持っています。召喚が実行される少し前に、エヒト様から神託があったのですよ。あなた方という’’救い’’を送ると。あなた方には是非その力を発揮し、’’エヒト様’’の御意志の下、魔人族を打倒し我ら人間族を救って頂きたい。」

 

イシュタルはどこか恍惚こうこつとした表情を浮かべている。おそらく神託を聞いた時のことでも思い出しているのだろう。

これらのことから分かることは、どうやらこの世界の人間はエヒトと呼ばれる神を異常までに崇拝していることだ。スバルは神の意思を疑わず従順と慕う人々の考えにどこか危機感を感じていると、これに猛抗議する人物が現れた。

 

担任の愛子先生だった。

 

「ふざけないで下さい! 結局、この子達に戦争させようってことでしょ! そんなの許しません! ええ、先生は絶対に許しませんよ! 私達を早く帰して下さい! きっと、ご家族も心配しているはずです! あなた達のしていることはただの誘拐ですよ!」

 

「生徒を危険な目にましてや人殺しをさせるなんてもってのほか、そんなこと絶対させません」と想いが伝わってくるような勢いで怒る愛子先生。必死になって生徒のために怒っている良い先生なのだが、どうも、迫力が欠ける。何せ身長百五十センチの童顔ではたから見れば小学生が必死になって怒っているようにしか見えないのだ。まぁ、そんな可愛らしさもあって生徒から非常に人気があり、’’愛ちゃん’’という愛称で呼ばれ親しまれているのだが本人はそう呼ばれると凄く怒るのだ、何でも威厳ある教師を目指しているのだとか。

さて、愛子先生筆頭に他のクラスメイトも抗議するのだが、次のイシュタルの言葉に凍りついた。

 

「お気持ちはお察しします。しかし……あなた方の帰還は現状では不可能です」

 

その言葉に愛子先生も抗議していた生徒達も全員が凍りついて静まり返った。そして、イシュタルは続けた。

 

「先ほど言ったように、あなた方を召喚したのはエヒト様です。我々人間に異世界に干渉するような魔法は使えませんのでな、あなた方が帰還できるかどうかもエヒト様の御意思次第ということです。」

 

その言葉に愛子先生が脱力したようにストンと椅子に腰を落とすと他のクラスメイト達は騒ぎ始めた、今の現状に納得いかない者、怒る者、今にも泣き出しそうな者、人それぞれだ。ハジメや士郎、当麻やレムは騒ぎはしなかったが良い表情ではなかった。

そして、スバルもまた他の生徒と違って騒ぐことなく’’ある一点’’を見ていた。

 

特に口を挟むことなくパニックを起こしている生徒を静かに眺めているイシュタルを…。

 

 

 

さて、未だパニックが収まらない中、ある人物がテーブルをバッンと叩いて立ち上がった。その音にピックとなり注目する生徒達、立ち上がったのはクラス一のカリスマ持ちの光輝だった。

 

「皆、ここでイシュタルさんに文句を言っても意味がない。彼にだってどうしようもないんだ。……俺は、俺は戦おうと思う。この世界の人達が滅亡の危機にあるのは事実なんだ。それを知って、放っておくなんて俺にはできない。それに、人間を救うために召喚されたのなら、救済さえ終われば帰してくれるかもしれない。……イシュタルさん? どうですか?」

 

「そうですな。エヒト様も救世主の願いを無下にはしますまい。」

 

イシュタルのその言葉にギュッと握りこぶしを作り「世界もクラスの皆も救って見せる」と高らかに宣言する光輝。

光輝の言葉に親友の龍太郎も「俺も行くぜ。」と立ち上がり、雫も「やれやれ」といった感じに納得いってない所もあるみたいだがとりあえず賛同し、そして、「雫ちゃんがやるなら私も。」と言って決意を固める香織、いつものメンバーが光輝に賛同し当然の流れのようにクラスメイト達も賛同していった。愛子先生はオロオロと「駄目ですよ~。」と涙目で訴え、ハジメや士郎、当麻、レムは声を出して賛同するこそはしなかったが、その場の流れで強制賛同する形となった。

そして、スバルはというと、勝手に物事を進めて戦争に参加することを決めた光輝に「何、勝手に決めているんだゴラァ!」と多少の怒りや不満があったものの、’’ある事’’を予想したので、とりあえずこの場を収めた光輝に少しだけ脱帽するのだった。

 

 

その後クラスメイト達はイシュタルの先導の元、エヒトを讃える宗教、聖教教会本山の神山を降りて麓にあるハイリヒ王国に向かった。王国に入るとこの国を収め、今後お世話になる国王、王妃、またその子供の王女に王子の謁見、また戦闘の指導係となる騎士団長や高い地位にある者の紹介の後、華やかな晩餐会が開かれた。

クラスメイト達は一時戦争をすることを忘れ、異世界料理に舌鼓した後、晩餐会が終わり解散となった。

 




次回、原作にはないオリジナル回を二話程予定しています。

ハジメやスバル達が迷宮でどうなるのか、まだまだ先になりますが………どうか、飽きずにお待ちください。
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