ありふれた職業で世界最強  魔王を支える者達   作:グルメ20

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どうもグルメです。本当に大変遅くなりました。後編になります。

あのキャラクターが久しぶりに登場します。


それではどうぞ。


クラスメイトside 変わらないもの、変わるものたち 後編

「やぁ、兄さん」

 

「おぉ、イツキか。」

 

カヅキの前までやって来たイツキはそう声をかけると兄と対面になるように席に座った。

 

「それでどうだった? お前から見て‘’あいつら‘’は?」

 

「驚いたよ。まさか数週間であそこまで成長するなんて、一体どうやったの兄さん?」

 

「…簡単なことだ。一通り手持ちの武器のレクチャーをした後、ひたすら実戦したのだ。何もない平野、視界が悪い森林地帯、足元を掬われる川、攻撃範囲が狭まれる廃墟等々、場所を変えてひたすら打ち込んだ。もちろん、俺もあいつらも手加減なしでな。」

 

カヅキが話していたのは奈々、妙子、佐助、厚志の戦闘訓練のことだった。奈々の頼みから始まったこの戦闘訓練はレムが去った次の日から始められた。内容はカヅキが話した通り、休憩をはさみつつ朝から日が落ちるまで、時として夜間の戦闘に対応できるように真夜中に召集をかけて行われることもあり、あらゆる状況を想定して戦闘訓練が行われたのだ。

 

「スパルタだねぇ兄さん。まぁ生死に関わることだし実戦ほど得るもの多いから仕方がないかな。」

 

そして、今日は試しにイツキとの一対一の模擬戦が行われた。結果としてはイツキの圧勝だが皆が前よりも確実に強くなっていることを身をもって痛感したのだ。

 

「実際にあいつらは成長した。最初の頃は俺の気迫で逃げ腰だったのに一週間経つ頃には克服し死線を越えて攻めてくるようになった。最後まで俺に傷一つつけることはなかったが確実に強くなっているのは確かだな。」

 

カヅキがそう評価しつつ「それと…」と前置きして、

 

「奈々はめざましい成長が見られる…将来化けるぞアイツは。」

 

そう言って宮崎奈々を一目置くカヅキ。それを聞いたイツキは、

 

「それは僕も思ったよ。彼女だけ他の誰よりも戦闘の取り組みが違っていて他にはない気迫があった……まぁ奈々さんに限らず皆、自分の意志で変わろうとしている。きっと強くなると思うけどね、兄さん。」

 

そう言ってイツキも宮崎奈々が人一倍強くなることを感じ取りつつ、他のメンバーも強くなるだろうと思うのだった。

 

そんなこんなで二人が話していると一人のメイドがやってきた。

 

「カヅキ様、長らくお待たせしました。王様がお待ちしております。」

 

「おっ! ようやく来たか。そんじゃあ行って来るぜ。」

 

「あっ、兄さん。僕も行くよ、色々知っておきたいからね。」

 

そう言って二人は立上り、メイドに連れられてクラスメイトの中を横切りサロンを後にした。

クラスメイト達はただ月山兄弟を去って行く様子を指をくわえて見るしか出来なかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

二人が去った後もサロンは静寂のままだった。月山兄弟の言葉を聞いて誰もが呑気に雑談に興じる気が起きなかったからだ。ある者は心に深く響いたのか顔を地面に向けてうつむき、ある者は「どうする?」と言いたげな顔で他のクラスメイトの顔を伺っていたりしていた。そしてニアを筆頭としたメイド達は先ほどのトラブルを防ぐため何も言う事なくなるべくクラスメイトの顔を合わせないように待機していた。

このまま今日はそれぞれの部屋に戻った方がいいかなとクラスメイトの誰もがそう思いはじめた時、

 

「変わろうとしている、か……」

 

静寂を打ち破るように一人の女子生徒がポツリと呟きを口にした。その声を聞いたもの達は誰もが驚きながら声がした方に目を向けた。このサロンにいながら特に会話にも参加せず、どこか遠い目をして静かに座り込んでいた女子生徒、園部優花がそこにあった。

 

 

 

園部優花。

普段の性格は少し勝ち気な言動が目立つ良くも悪くもパワフルな女の子なのだが、今は口数は激減し、友人達が連れ出さなければ一日中自室の椅子に腰かけて外をボーと眺めているだけという重症振りで居残り組の中でも一番精神的ダメージが深い者として認識されていた。それもそのはず、あの日、九死に一生を得て生還した日に親しい間柄を4人も失っており、そのうちの一人は幼い頃から一緒で家族同然の人物も含まれていた。彼女はそのショックから気を失って目を覚まさない日々が続き、再び目を覚ましたのはレムが旅立った後だった。生きているとはいえ高校になってできた親友のレムも傍からいなくなり、二重のショックでこのような状態に成り果ていたのだ。

そんな優花が久方自分から話し出したことは確かに驚くことなのだが、当の本人は周囲の様子にも気づくことなく虚空を見つめたまま言葉を続ける。

 

「…………そうだよね、レムだけじゃない。雫も香織ちゃん、奈々や妙子、猿山くんも牛山くんも……変わろうとしている…そして、彼らも…士郎も……誰よりも……変わろうとしていた。それなのに私は……私は……」

 

意味をなさない言葉の羅刹。だれに聞かせるでもない、心情の吐露。ずっとふさぎ込んでいた優花の中で何かが動きだそうとしていた。一人、ブツブツと呟く優花にクラスメイトやメイド達は互いに顔を見合わせて困惑を表情に浮かべていたが、何となく虚空を見つめる優花の瞳が少しずつ光を取り戻していくように見え、そして…

 

「ニアさん。愛ちゃん先生の出発っていつでしたっけ?」

 

また一人、変わろうとして立ち上がる者が現れた。

 

「えっ? あっ、はい、愛子様ですね。確か、明日の朝には出ると聞き及んでおります。ですが今度の開拓は大遠征、各村々や街々を周りつつ最終的には湖畔の町ウルを目指しますので、帰還には3,4ヶ月かかると思います。」

 

「うわぁ、明日か…うん、逆にいいかな。こういうのは時間を置くと萎えちゃうし。」

 

ニアの返答を聞いた優花は苦笑いしつつ、勢いよく椅子から立ち上がった。その躍動感と力強さを感じる動きにクラスメイト達は瞠目する。ここ最近、全く見られなかった活発な優花の姿に思わず相川昇が声をかけた。

 

「お、おい、園部。いきなりどうした? 具合悪いのか? わけがわからないのだが…」

 

「具合は悪く無いよ相川くん。なんていうか、いい加減ジッとしてられないなって思ってさ。だから、私、明日の愛ちゃんの遠征について行くよ」

 

さらりと告げられた優花の決断にクラスメイト達はポカンと間抜け面を晒す。それもそのはず、空虚な瞳、無気力な態度、優花こそ心折られた生徒の筆頭と誰もが思っていたからだ。それが今や水を得た魚のように生き生きとし始め、クラスメイト達は困惑せずにはいられなかった。

 

「お、おい、園部。マジどうしたんだよ。何かお前、おかしいぞ? ちょっと落ち着けって」

 

玉井淳史が何やら焦った様子で窘めの言葉を送るも、

 

「私は落ち着いているわよ、玉井くん。それにいきなりじゃない……ずっと、このままじゃいけないと思ってた。彼らが落ちて、怖くて、わけわかんなくて、頭の中ぐちゃぐちゃで……でも、なにかしないと思っていた。それは、玉井くんも、皆も、一緒なんじゃない?」

 

そう言って静かに返す優花。その言葉に淳史は息を呑み、同時に言葉も飲み込んでしまったのか言葉を閉ざした。他のクラスメイトも同様で気まずそうに視線を逸らしていた。そんな姿に特に気にもかけずにサロンの扉に向かって歩き出した。

 

「ま、待てよ、園部! 本当に行く気か!? 今度こそ、本当に死ぬかもしれないんだぞ! ここは漫画の世界でも映画の世界でもないんだっ。ご都合主義なんて起こらないんだぞ! だから、だから、あいつらは死んじまったじゃねぇかッ!! 無能のくせに、馬鹿やらかして、あっさり死んじまったじゃねぇかッ!! 俺は、俺は、あいつらみたいに馬鹿に……」

 

ビュッ

 

「っ!?」

 

何かが淳史の頬を掠め言葉を遮った。言葉に酔い我に返って優花を見ると手元には小さいヘアピンがあり、優花は振り返らずも静かで微かに怒りが含まれた声で答えた。

 

「……私の大事な人を…レムが大切に思っている人たちを…汚さないでくれる? 今あなた達が生きていられるのも、そんな無能で馬鹿で、そして誰よりも変わろうと努力していた彼らによって救われたからじゃなないの?」

 

「それはっ」

 

「別に玉井くん達もついて来いなんて言わないよ。ただ、私は、無駄にしたくない、それだけよ……それと、皆がレムにしたこと、こう見えて怒っているから。」

 

肩越しに振り返り、クラスメイト全員に向けるようにキッと睨みつけると優花はそのまま部屋から出ていった。

淳史を含め残っているクラスメイト達はバツが悪そうに下を向いたり、顔を背けたりしてまともに優花の背を見送る者は誰もいなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

優花が一人、廊下を歩いて行く中、頭の中で何回もこの言葉が過ぎった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「優花さん、私はさよならは言いません。士郎さん…いえ、皆さんを見つけて必ず帰って来ます………もし、目を覚ましたら……悲しみに明け暮れず…自分に出来ることをしてください。きっと、優花さんにしか出来ない事があるはずです……貴方の大切な親友レムはそれを切に願っています。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今はこの場にはいない親友の言葉、もっともこれは自分の夢の中で出てきたレムの言葉であり、これを聞き終えた瞬間、レムは消えていつの間にか目を覚ましていた。もちろん、レムは旅立った後だった。

この言葉がレムの伝えたかった本心なのか、それとも自分を突き動かすための都合のいい解釈で出てきた語呂並べなのか定かではないがこの言葉は優花の心に深く刻まれていた。

 

「(レム、私はやるよ。例え一人でも、皆に理解されなくても精一杯するよ。自分に出来ること! だから、信じさせてレムが起こす奇跡………皆を…士郎を見つけて帰ってきてね…。)」

 

そんな想いを胸に親友の無事を祈りながら優花は真っ直ぐ廊下を歩いていくのだった。

 

 




いかがだったでしょうか?
先ずは謝罪、本当に大変遅くなりました。なかなか執筆する時間が取れなくて去年の10月を最後に更新が止まっていました。楽しみにしていた読者の皆さまは重ね重ねお詫びを申し上げます。

さて、久しぶりに優花の登場です。本編ではハジメや嫁たちに振り回されて不便な子扱いですが、私の小説ではガッツリヒロインを勤めてもらいます。今のところ成長イベントはありませんが、本編にはないヒロイン力、及び士郎の嫁力を書けたらいいなと考えております。


次回、タイトルだけは決まっています。

‘’結成、愛ちゃん護衛隊!‘’


また遅くなるかもしれませんが書き終わり次第、投稿します。

それでは今日はこの辺で、ではまた…
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