またまた大変遅くなりました。本当に申し訳ないです。
今回のお話しは優花が愛ちゃんの護衛をすると宣言した次の日になります。
一人で行くと思いきや、少し事情が変ったようです。
それでは、どうぞ。
優花が愛子先生の護衛を決めたその翌日。朝靄のかかる日の出前の早朝、薄っすらと白み始めた東の空と朝のキンとして清涼な空気が流れるなか優花は遠征の集合場所に向かって歩いていた。一人で歩いていると思いきやよく見てみると優花の両隣には親友の菅原妙子と宮崎奈々の姿もあった。
「…妙子、奈々、もう一度聞くけど…本当についてくつもりなの? 別に無理に合わせなくてもいいのよ?」
「無理なんかしてしてないわよ。私も奈々も優花と同じで何かしないと…って考えていた所だからちょうど良かったわ。」
「そうそう。優花っち一人だけ見送るなんて出来ないからね。それにレムっちとの約束もあるし、優花っちにもしもの事があったら私、顔向け出来ないよ。」
そう言って特に迷いもせず答える妙子と今はいないもう一人の親友レムの義理を果たすためだと告げる奈々。
実は昨日の夜、優花は一方的に愛子先生に遠征について行く事を告げた後、二人にも遠征に行くことを伝えたのだ。すると二人は一度、互いに顔を見合わせて苦笑いしながら頷くと、二人は同時に自分達も遠征について行くと告げたのだった。
優花はこのことを聞いて二人は無理してついてきているのでは考えていたが、先ほどの答えを聞いて本心だと確信した。正直、一人で護衛するのに不安があったが親友二人の申し出は嬉しいもので、優花は頬を綻ばせながら茶目っ気たっぷりに号令をかけた。
「そっか。ふふっ、それじゃ、愛ちゃんを魔物と教会から派遣されてるイケメン護衛騎士達から守る度に、出発~!」
「「お~!」」
その言葉に妙子と奈々は威勢よく応答した。
「優花、イケメン護衛騎士達から守る旅ってどういうこと?」
「妙子、知らないの? 愛ちゃん今凄く人気で護衛の騎士達がみんなアプローチしているみたいよ」
「ええっ~何それ!? みんな、ロリコンなの!?」
「ロリコンって…奈々、愛ちゃんは成人女性よ。」
そう言って妙子はどこか呆れた様子で答えた。
三人が談笑を交えつつ、これからについて話しながら集合場所に向かって歩いていると、
「ねぇ、あれって…?」
奈々が何かに気づき優花と妙子が足を止めた。よく見ると前方から三人の男子がやって来た。
「玉井君? それに、相川君と仁村君もいる。」
「……。」
少し怪訝そうな顔をする妙子、そして、昨日のこともあって睨みつけるように三人を見つめる優花。淳史、昇、明人の三人組は真っ直ぐこちらに向かっており、淳史達もまた昨日の事があってなのか緊張な顔つきで優花達と対面した。
「……まさか来るとは思ってなかった。正直、ちょっと意外。」
「うっせ。……お前だけじゃねぇんだ。きっかけが欲しかったのは。俺達だって、同じだ。」
「そっか……うん、じゃあ、私たちだけでも、一緒に頑張りますか。」
昨日の事はもう水に流したかのか肩をすくめて、あっさりと淳史達を受け入れる優花。淳史達も無事に受け入れられた事に安堵したのか緊張を解いた。緊張が解けたのか昇がこんなことを話し出した。
「まぁ、性格には俺ら二人は淳史に頼まれたんだけどな~。そうとう悔しかったみたいだぜカヅキに言われたことが。」
「お、おい、ばらすなよ!」
「そうなの?」
淳史が慌てふためく中、優花が聞き返すと人差し指で眼鏡をクイッと上げた明人が口を開いた。
「…土下座もしてくれましたからね。流石に土下座までされましたら、友として親友として応えなければ。」
「明人、お前も……ったくもう。」
裏話をばらされた淳史はため息をつくとゆっくりと語りだした。
「今までの俺はどうかしてた。恐怖と弱さを棚に上げて周りに当たり散らかし、同学年に‘’斬る意味もその価値すらも値しない‘’と見下される始末。……悔しいけど言われて納得する自分があった。」
「だから…」と前置きをしつつ淳史は右手で握り拳をつくって胸にやると、
「俺はこの護衛を逃げずにやり遂げる。周りから見れば大したことない小さなことかもしれない…それでも無価値のままで終わりたくないし、何よりアイツにこのまま見くびられるのはゴメンだ!」
そう言って意気込む淳史、それを聞いた昇と明人も
「…へへっだよな、いっちょ俺らで見返してやろぜ! まぁ、俺は俺でこの遠征で‘’異世界の美女にモテるため名を売りに行く‘’っていう明確な目的があるけどな。」
「親友のためとはいえ私にも明確な目的があります……今や天之河は迷宮で不在、この遠征を成功させクラスメイトの心を掌握し必ずや天之河に成り代わってクラスメイトを引っ張る存在になってみせましょう!」
親友のため自分の野望のために高らかに宣言する二人。淳史はともかくして昇と明人の目的には奈々、妙子は苦笑いをしていた。そして優花はあきれつつため息交じりに前々から思っていた事を口にした。
「あなたたち………………後ろに月山兄弟いるわよ。」
「「「ファ!!??」」」
変な声と共に淳史達は素早く後ろを振り向きつつ、優花達がいるとこまで下がった。優花の言うとおりそこには無愛想な顔をしているカヅキとニコニコしているイツキが立っていた。
「……まさか、聞かれてた!?」
「…ああ。」
慌てふためながら昇が尋ねると無愛想なまま答えるカヅキ。
「……どの辺りから…ですか?」
「うーん、玉井君の意気込み辺りかな? 君たちの決意もバッチリ聞かせてもらったよ。」
動揺しているのか手を震わせながら眼鏡をあげる明人にイツキは特に気にもせずに答えた。
「………ッ。」
そして、淳史も動揺を隠せてないのか身体を震わすも、抵抗を見せるかのように表情を強張らせながらカヅキを睨みつけた。
「…………」
そんなカヅキは淳史の睨みも気にもせずに無愛想なまま三人の顔を見ていた。言葉だけでは分からないそれぞれの本心を見極めるようにまたは見透かすようにジッと見つめていた。数秒間の沈黙が流れた後、先に口を開いたのはカヅキだった。
「……たしかにお前が言うとおり、この国の重鎮が見ても大したことないと一笑するだろう……だけど、俺はそうは思わない。理由はどうあれこの世界で生きるため、前に進むための最初の一歩を踏み出そうとしている。そこは評価されるべきだと、俺は思う…だから言わせてもらうぜ………大したもんだ、見直したぜ!」
そう言ってカヅキはニッと不敵に笑うのだった。
てっきりけなされると思っていたばかりか褒められたことに戸惑い昇と明人に至っては下を向いて照れ隠しをしていた。淳史も嬉しさが込みあがってきて思わず顔に出そうになったがグッとこらえて、
「上から目線のオメェに言われても嬉しくねぇよ。今に見てろ、必ず侮れない存在になってやるからな!!」
「そいつは、楽しみだ。」
「ふふ、功を焦って命を落とさないようにね。」
淳史の言葉に昇と明人も緩んでいた顔を戻して頷き、三人の姿を見たカヅキとイツキは「彼らなら大丈夫」そう強く思っていると急に奈々が手を合わせて、
「本当にごめんねカヅっち。自分から頼んでおいて、お礼もできていないのに勝手に遠征に行くって言いだしちゃって……」
「気にするな、お前が決めたことだ。咎める理由はない。」
そう言って奈々は謝罪を入れるもカヅキは特に気にする様子はなかった。実は昨日の夜、優花から話を聞いて遠征に行くと決めた奈々は、真夜中でカヅキが寝ていたこともあってか野宿先に置き手紙を置いていたのだ。そして奈々が去った後、すぐに手紙を読んで大体の事情を把握したカヅキは奈々と妙子が心残りが無いよう旅立てるようにイツキも呼んでこうして朝早くから見送りに現れたのだ。
「…でも、私も奈々も全然カヅキ君に勝ててないから強くなってないと思うのに…いいの? 特訓を抜け出して…?」
優花について行くとはいえ、奈々はもちろん、妙子自身も強くなってもいないのに特訓を途中で放棄することに不安を感じていた。それを聞いたカヅキは、
「そう思うかもしれないが、お前らは俺との戦闘の経験を積んで前の自分よりかは強くなっている、もっと自信を持てよ。それに元はといえ、クラスメイトの俺に躊躇いもなく攻撃してきただろ? 躊躇いがなければ今はそれで十分。」
二人の不安を吹き飛ばすかのように笑みを浮かべるカヅキ。だが、すぐに真剣な表情になり、
「……とはいえ強くなったからといって上には上がいる。どうあがいても勝てない奴も出てくるだろう…だから相手を見極め無理だと感じたら逃げろ…俺が教えれるのはもう、これぐらいだろ。」
これが自分が教えれる最後の教えだと思いつつ、カヅキは奈々と妙子に告げた。最後の教えを聞いた二人は、
「ええ、分かったわ。自分の力、信じてみるわ。」
強く頷き自信に満ち溢れる妙子。そして、奈々は、
「カヅっち、私、絶対強くなるから! 特訓してくれたことも、教えてくれたことも全部活かして、優花っちやレムっち、大事な人たちを守れるくらい強くなって見せるから!! カヅっち、短い間でしたが本当に…」
「「ありがとうございました。」」
‘’強くなる‘’ あの日、親友を見送った時に心に決めた誓いを再び口にした奈々は、それに付き合ってくれたカヅキに礼を述べると同時に頭を下げた。妙子も同様に頭を下げた。
周りから見れば長年の師と弟子の壮大な別れのように大げさに見えたかもしれない。しかし、何となくだが二人は月山兄弟と会えるのが今日で最後じゃないかと、お礼を言うのは今しかないと、心のどこかで思ったのだ。
「奈々、妙子、頑張れよ!」
「…道中気をつけてね。」
カヅキは笑みを浮かべ、イツキは微笑みを浮かべながら短くそう返した。彼女らは自分達が思っている以上に成長している故にこれ以上に贈る言葉は不要。必ず困難を乗り越え、自分達が求めるものを得られる。二人はそう感じたのだった。
「…本当、二人は変ったというか、逞しくなったよね。それに比べて私なんか……こうなるなら二人に混ざって訓練に参加しとけばよかったかな…」
一連の流れを見た優花は親友の成長と自分の成長の格差にどこか自嘲気味に笑いつつ、カヅキが行う戦闘訓練に参加しなかったを後悔していた。まさか自分が再び死と隣り合わせの城外に出て愛ちゃんの護衛をするとは思ってもおらず、こんなことなら訓練に参加して戦闘技術の一つや二つ身につけておけばよかったと思うのだ。
「まぁ、そう落ち込むなよ。俺は結構、お前のこと買っているんだぜ? 迷宮で友と離れ離れになり、その友を探しにまた一人の友が離れていった。なのにお前は己を鼓舞し、出来ることを見つけて前に進もうとしている。おまけに周りの者も後押ししてだ…あの状況から立ち直るのはなかなか出来ることではないぞ。」
カヅキはそう言って率直に優花を評価した。あまりにも高く評価するカヅキに優花は苦笑いを浮かべながら反論した。
「買いかぶりすぎよ、私は勢いがあるだけ。弱いのに後先考えずに行動しているだけなのだから…」
「自分を弱いと立場を理解しているのがなおいい。どこかの勇者に見せつけてやりたいぜ。」
「……あなたって見かけに寄らず、人たらしなのね。」
「よく
「ぷっ…何よその返し、意味わかんない。」
カヅキの発言で思わず吹き出して笑う優花。思えば迷宮での出来事があって以来、久しぶりに笑ったなと思っていると、
「スッキリしただろ? 例え弱くても、お前の近くには奈々と妙子がいる。俺がみっちり鍛え上げたんだ、そいつらを頼れ。それに…お前はどちらかというと司令塔だ。現に迷宮での脱出時、動けないクラスメイトに的確に指示を出していたしな。」
そう言ってカヅキはアドバイスと共に迷宮での優花の行動を思い返していた。あの時、刀を振りつつ辺り全体を見渡していると優花が積極的に動けないクラスメイトの下に赴き、指示を出し鼓舞していたのが印象に残っていたのだった。
優花は「あんな状況でよく見れたわね…」と言って少し驚いていると、
「カヅキ君の言うとおり、戦闘は私たちに任せて。」
「そうそう。優花っちはどーんと構えて後ろから指示を出してくれれば十分。」
どこか誇らしげに言う妙子と奈々。これには優花も二人には一生敵わないと思いつつ、
「そうね、頼りにさせてもらうわ。」
ニコッと二人に笑顔を向けて頷いた。そして、改めて優花は心の劣等感を晴れさせ自分の役割を見出してくれたカヅキに礼を言った。
「月山くん、ありがとう。」
「……どういたしまして。」
カヅキは静かに受け止めるとちょうど辺りに陽の光が差し込みカヅキ達や優花達、淳史達を照らした。まるで旅に出る者たちの恐怖の影を打ち払うかのように、わだかまりの心を晴らすかのように暖かく差し込むのだった。
辺りがだいぶ明るくなった事に気づいた優花は、
「ちょっと長居しすぎたね、そろそろ行かないと…。」
そう言って奈々や妙子、淳史達の方を振り向いて号令をかけた。
「みんな、行こう!!」
「「うん!!」」
「「「おう!!!」」」
そう言って優花を筆頭に奈々や妙子、淳史達は集合場所に向かって走り出した。その背中を月山兄弟は見えなくなるまで見続けていたのだった。
「行っちゃったね。」
「ああ。だが、まぁ…先生には護衛の騎士もたくさんつく。何とかなるだろう。」
「そうだといいね……ねぇ、兄さん。」
「ん?」
ふとイツキの顔を覗き込むと手で口元を押さえてどこか思い詰めているような様子を見せていた。「なんだ?」と思いつつカヅキは耳を傾け、
「いいニュースと悪いニュースがあるけど…どっちを先に聞きたい?」
「……いいニュースから聞かせてくれ。」
この場合、普段なら悪いニュースを聞いてからいいニュースを聞くのだが今日に限って何となくいいニュースから聞こうとするカヅキ。
「帝国が動いた。六十五層を突破した勇者一向に興味を持ったらしく近々使者が来るみたい。」
「信憑性は?」
「あるよ。大臣同士で話していた。僕はそれを
そう話すイツキ。耳が良い彼は他人の話をよく立ち聞きする癖があるのだ。
「
イツキの癖を理解し悪気がない様子に苦笑し、「帝国との接触方法を考えておくか…」そう思いながらカヅキは悪いニュースについて尋ねてみた
「……それに伴って勇者一向が帰ってくる、いや、もうこっちに向かっているみたい。明日の朝にはここに着くみたいだよ。」
「マジかよ。俺らは明日、朝帰りだってのに…鉢合わせなんかしたら十中八九…」
「天之河君に絡まれるだろうね。持ち前の正義を振りかざして。」
「めんどくせーな。作戦で疲れてるのに正義の講義なんてゴメンだぜ…」
悪いニュースを聞いた途端、あからさまに嫌そうな顔を浮かべるカヅキ。イツキもそのことが容易に想像できたのか小さなため息をついた。これから月山兄弟はある計画を実行しようとしている。もちろん、カヅキもイツキもこれから行うことが人として、一般論として例え天之河が出しゃばって言わなくても倫理に反することだと理解している。しかし、王国に恩を返すために必要な事でもあった。
そんなことをお互い薄っすら思いつつカヅキとイツキは顔を見合わせて、
「…帰りは裏口から入るか、イツキ。」
「…そうしよっか、兄さん。」
そう言って頷きあった、お互い少々困った顔をしながら。
「よし、見送りも済んだことだし、帰って寝るか。じゃあ、今日の夜、待ち合わせ場所で。」
そう言ってイツキに背を向けて歩き出し、城の外の野宿先に向かおうとした矢先、
「待って、兄さん。本当に今日、あの二人……厚志君と佐助君を連れて行くつもりなのかい?」
その言葉にカヅキは足を止めた。そして、イツキの方に振り向くことなく静かに語った。
「あいつらには事前に話しをつけて‘’行く‘’と承諾している。これから生きるために必要なことだ。まぁ、出発前にもう一度確認して、心が揺らぐようなら置いていくつもりだがな…。」
それだけ言うとカヅキは再び歩き出した。言っていることは理解できた。しかし、大事な親友を戦地に送り込む事にやはり躊躇いがあるのかイツキは複雑そうな表情を浮かべながら、兄の背が見えなくなるまで立ちつくしてしまうのだった。
優花、奈々や妙子、淳史達が駆け抜けて行く中、黒いローブに身を包んだ一人の青年が物陰から様子を眺めていた。
「やるんだ。俺ならできる、俺なら…」
自分を鼓舞するかのようにぶつぶつ独り言を呟きながら、その青年は後を追った。
この行動が後に青年の運命を大きく変わることも知らずに…
いかがだったでしょうか?
今回も本当に遅くなりました。あれやこれやと考えていたら何か月もかかってしまいました。本当に申し訳ないです。
今回のお話しはそれぞれに決意がありそれが集まって愛ちゃん護衛隊ができた、というお話しになっています。原作よりも愛ちゃんの護衛隊の男組にもスポットが当たっています。
特徴がないのが相川昇くんで眼鏡をかけているのが仁村明人で合ってますでしょうか? 確か二期の一話を終えてのショートアニメでそんな紹介あったような気がするのですがもっとよく見ていたらと後悔しています。一応二人にも天職は考えてあるのですが決まらないのが現状です。次出るのがだいぶ先になりますのでとりあえず後回しですかね。
見送りに当然のように月山兄弟登場。おくりびとならぬ見送り人ですね。彼らも何やら大きな秘め事があるみたいですが、そのことについてはまたお話ししたいと思います。
そして、最後に登場した青年はご存知の通りの‘’彼‘’です。二次創作では原作同様に殺されたり、場合によっては生かされ仲間になったりと色々ですが、ここではどんな運命を辿るかはまだ秘密です。
さて次回は、スポットを主人公組に戻します。半年ぶりの登場です。実は帝国の使者が来た時の勇者一向の話を予定していたのですが、流石に半年も主人公サイトをほったらかしするのはまずいと思い話を進めます。
始まりはハウリア達がハジメの修行を受けてから10日後、おや、ハウリア達の様子が……?
頑張って執筆しますので応援よろしくお願いします。
それでは今日はこの辺で、ではまた…