ありふれた職業で世界最強  魔王を支える者達   作:グルメ20

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どうもグルメです。

皆さん、大変お久しぶりです。ようやく書き終えたので投稿します。

今回のお話しはクラスメイトサイドから変わって、ハウリア達が修行を決めて10日後の主人公サイドのお話しになります。

それでは、どうぞ。


成果を見せる時、シア、乾坤一擲の大勝負

ハウリア達の決意から10日がたった。修行の終わりと共に旅の再開の今日この日、霧の立ちこむ樹海の中、一人の青年が歩いていた。

 

「久しぶりの登場だぜ。テンション上がるな。」

 

<お前は何を言っているんだ?>

 

スバルの意気揚々として意味不明な言葉に脳内に響くように語りながらツッコミを入れるレオン。今、彼らは10日前に決めた集合場所に向かっており修行でなかなか親友達に会えなかった(すれ違いが多かった)こともあってか久しぶり会うことに楽しみにしているのだった。

 

<それにしてもお前には驚かせるばかりだ。魔物の変化を1つ2つ覚えるどころか5つも覚えるとは。>

 

「へへっ、教えるのがうまかったんだよ。」

 

<それだけじゃない、変化中の持続もだいぶ上がってきている。前から思っていたが、お前には才能があるかもしれないな。>

 

「よしてくれ、笑いが止まらなくなるぜ。」

 

そう言ってべた褒めするレオンの言葉に思わずにやけ顔になるスバル。この10日、レオンの指導の下、変化状態の維持の向上と雷鬼以外の新たな魔物の変化。この二つを重点において修行を行っていたのだ。その成果はレオンの想像を遥かに越えており、魔物の変化は1つ、2つが限界と思いきやあっさり5つも覚え、雷鬼の変化状態時の維持に至っては5分から10分も維持が可能となり、この成果にはレオンも褒めるしか他なかった。

褒められてにやけ顔でいたスバルだったが、ふと急に浮かない顔になり、

 

「…とは言いつつも心残りなのがレオンが教えようとしていた‘’あの‘’魔物の変化、最後まで出来なかったな。」

 

<仕方がない、あれは神獣の一つだ。>

 

「神獣?」

 

聞きなれない言葉に首をかしげるスバル。レオンは話しを続けた。

 

<今は実在しない、太古の時代にいたとされる逸脱した魔物…その総称を‘’神獣‘’と呼ぶ。神獣はそこらの大型の魔物と比べ物にならない程の力と狂暴を兼ね備えトータスに破壊をもたらした存在だ。それ故、変化も並み大抵にはいかない。とてつもなく気力と集中力が必要となってくる…。>

 

「そうなのか? 最初に覚えようとしていた魔物がそんなスゲー奴なんて思わなかったぜ。どうりで上手くいかないわけだ。」

 

この10日間、スバルはその魔物の変化をしようと試みるも何故か全くもって反応がなかったが、その理由が今わかった。要領として雷鬼と同じような感覚で変化しようとしていたからだ。レオンの話しを聞く限りではとてつもなく気力と集中力が必要になってくる。

つまり、普通の変化のやり方ではダメだということが理解できた。

答えがわかったなら色々やりようがある。今からでも早速試したいところだが、その前にスバルは不満そうな顔を浮かべて、

 

「というかレオン、普通のやり方がダメならダメって教えてくれよ~」

 

<…あのな、俺は「少しやり方を変えたらどうだ?」って言ったはずだぞ。>

 

「…ソウダッケ?」

 

急にどこかとぼけた顔をするスバル、レオンはあきれつつも口を開いた

 

<なのにお前ときたら…何もない状況で変化しようとした。いいか、言っとくが雷鬼も神獣の一つだ。それが今や簡単に変化出来るのは感覚で覚えているからだ………思い出せ、初めて雷鬼になったあの時、どんな状況だったか……>

 

「…………あの時って、確か…」

 

スバルが状況を振り返ろうとした矢先、

 

「スバル君!」

 

誰かが呼ぶ声が聞こえてきて思考を停止、声をした方を振り向くと霧の中、うっすら4人の影が見えた。その4人の影は近づいてきて姿を表し、それを見たスバルは自然に笑みが浮かび上がった。

 

現れたのは当麻、士郎、ユエ、シア、それに当麻、士郎の後ろで幽体になっているサラ、クロウだった。

 

「当麻、士郎、久しぶりだな!」

 

「久しぶり、スバル君!」

 

「よう、スバル! ちゃんと修行したか?」

 

10日間ぶりの再会に3人は嬉しそうに話をしていた。

 

『レオン殿、お久しぶりです。』

 

『お久しぶりです、レオン。』

 

<ああ、二人の首尾は?>

 

『そこは問題なく…前よりもだいぶ良くなっています。』

 

『当麻も、心身ともに強くなりました。』

 

<…そうか。こっちもだいぶ仕上がっている。>

 

レオンはレオンでサラ、クロウに挨拶しつつ三人で修行の成果を確認していた。スバル、レオンがそれぞれ挨拶を終えたところで、

 

「久しぶりユエさん。シアちゃん。」

 

<お久しぶりです陛下………それと、シア。>

 

二人は改めてユエ、シアに挨拶をした。

 

「…………………久しぶり。」

 

「えっへへへ、お久しぶりです。スバルさん、レオンさん。あっ、レオンさん。さっきの間がなければもっと良かったです。」

 

どこか不機嫌そうで素っ気ない態度を見せるユエ。そして、それには対照的に機嫌が良く、どこか浮かれている様子のシア。その後、レオンに対してのシアの一言にイラッとしたユエが「ひとこと多い」と言って思い切りに横っ腹をグーパンチ。「はうっ!」とシアがお腹を押さえて地面にうずくまっていた。

それを横目にスバルとレオンは二人の対照的な態度について当麻や士郎達に尋ねた。

 

「なぁ、あの二人に何かあったのか?」

 

<やけに陛下がご機嫌斜めのように見えるのだが?>

 

それを聞いた、当麻や士郎、サラやクロウは苦笑いを浮かべていた。

 

「実は、スバル君とレオンさんが合流する前に…」

 

当麻は二人についての詳細を話してくれた。

 

 

 

 

 

 

 

ドゴン  ドゴン  ドゴン  ドコォーン

 

樹海の中、凄まじい破壊音が響く。野太い樹が幾本も燃えて炭化した樹や氷漬けになっている樹があり、地面は隕石でも落下したかのようなクレーターがあちこちに出来上がっていた。

 

「でぇやぁああ!!」

 

気配断ちにより霧に紛れ奇襲を仕掛けたウサミミ少女ことシアはその身に似つかわしくない超重量級の大槌(ハジメ特製)をユエに対して大きく振り下ろした。

 

 

ドコォーン

 

 

大きな轟音と共に地面をえぐり、土や石が散弾して周囲に飛び散った。ユエは直撃を受ける前に風に流されるように飛び退いて回避、すかさず反撃に入った。

 

「……緋槍」

 

今までいくつもの樹木を炭化してきた豪炎の槍をシアに向けて放つ。

 

「なんの、です!」

 

シアもぴょんぴょん地を跳ねながら後ろに下がりつつ緋槍を難なくかわすと濃い霧の中に紛れて気配を隠した。

 

「また……小賢しい。」

 

愚痴をこぼしつつ周囲を見渡すユエ。先ほどから攻撃を仕掛けて来ては霧に隠れてのヒット&アウェイを繰り返し、攻撃も全く当たらないことに苛立ちを覚えていた。「どこから来る…?」そんなこと思いつつ神経を研ぎ澄ましてシアを探っていると、

 

「そこか!」

 

瞬時に上を見上げると霧に隠れて黒い影が迫ってきた。目視できるほどはっきり見えてきたのは大きな岩、ユエをすっぽり覆い隠すような大岩がすぐそこまで迫ってきた。

 

「風壁」

 

ユエはとっさになって風の障壁を展開、大岩を軽く押し返すつもりだったが、

 

「シャオラですぅ!」

 

「!? くっ、」

 

大岩に隠れていたシアが風壁で押し返されそうになった大岩に手をつけて力を込めて押し返したことにより再び大岩がユエに迫ってきた。すぐさまさっきよりも強力な風壁で押し返そうとしたが、その隙をシアは逃さなかった。

 

「喰らうですぅ!」

 

「しまっ、目がぁ~!?」

 

シアは大岩を押し返した後、素早く地面に張り付くように着地。そして、起き上がると同時に右腕全体を使って砂や泥が混じった地面をユエ目掛けて巻き上げたのだ。ユエは大岩を押し返そうとした矢先の出来事になすすべもなく見事にヒット、目をやられたのだ。

 

「覚悟!!」

 

シアは目をやられているユエに素早く後ろに回り込み、軽めの左ストレートを喰らわそうとした。しかし、ユエはまるでシアの行動を把握しているかのように落ち着いて静かに呟いた。

 

「…凍柩」

 

「ふぇ!? ちょっ、まっ…」

 

シアは魔法に気がついて必死に静止の声をかけるが聞いてもらえるわけもなく問答無用で氷系魔法が足元から一気に駆け上がり、シアの頭だけ残して全身氷漬けにされてしまった。

 

『そこまで!!』

 

ここでサラの声が樹海に響き、当麻と幽体姿のサラが二人に近づいた。サラは何かを確認するかのようにユエとシアを交互に見ていた。

 

「づ、づめたいぃ~、早く解いてくださいよぉ~、ユエさ~ん」

 

「……あなた良く頑張った。10日という短い期間でここまで戦えるようになったことは胸を張って誇ってもいい…でも、()()()()()()()。これに懲りたら大人しくこの森で、『いいえ、お嬢様…』ん?」

 

ユエが目をゴシゴシしながら話していると突然サラが話を遮り真剣な表情で告げた。

 

()()()()()です。』

 

「え?」

 

「ふえぇ!? それじゃあ…!!」

 

『はい、約束通り旅の同行の説得をしてみましょう。お嬢様はもちろん、私も口添えしますので。』

 

そう言ってサラは笑顔を向けて告げた。

この二人の模擬戦、一見すると10日間のシアの修行の集大成として行われているのだが、実はある賭けが生じていた。それは、シアがユエに対して、10日以内に模擬戦にてほんの僅かでも構わないから一撃を加え、それが出来た場合、シアがハジメ達の旅に同行することをユエが認め、そして、ハジメに同行を願い出た場合に、ユエはシアの味方をして彼女の同行を一緒に説得するというものだ。

ちなみにこの賭けの立会人は当麻、サラ、士郎、クロウである。

 

「やっ、やった! やったーですぅ……!!? ぴ、ぴくちっ! ぴくちぃ! あうぅ…それよりもユエさ~ん。はやく…はやく、魔法を解いてくださ~い。このままだと…帰らぬウサギになってしまいますよ~」

 

可愛らしいくしゃみをし鼻水を垂らしながら、うつらうつらとし始めるシア。その様子を見て、深々と溜息を吐くとユエは心底気が進まないと言う様に魔法を解いた。そして、目をを細めて不満そうな顔でサラに言った。

 

「…納得いかない。傷を受けた覚えはない。」

 

『お嬢様、右の頬を触ってみてください。』

 

目を閉じて静かに告げるサラ。ユエは不満げに言われた通り頬を触ると

 

「…………あっ。」

 

『その傷が何よりも証拠です。』

 

触って初めて気づいたユエ。確かに右の頬に2、3mmの切り傷が残っていたのだ。

 

「あ、確かによく見たら傷が…でも一体いつ?」

 

「たぶん、あの時じゃないか当麻?」

 

「あの時って?」

 

「それは、『私が説明しましょう。』えっ? ああ、頼んだクロウ」

 

そう言って士郎の言葉を遮って入ってきたクロウ。当麻と士郎は「解説がさまになってるな。」と思いつつその解説に耳を傾けた。

 

『結論を言いますとシアが姫の頬に傷をつけたのは彼女が目くらましで砂や泥を巻き上げた時です。それと同時に彼女は既に拾い上げていた小石を砂や泥に隠れるように姫に投げていたのです。』

 

「やっつぱり…」

 

「へぇーそうなんだ。」

 

士郎は思った通りと思い、当麻が感心している中、クロウは解説を続けた。

 

『それと、全て外している大槌の攻撃にも意味はありました。砂や泥を巻き上げやすいように地面をへこましていたのです。丁度この盛り上がっている部分を使うために、…』

 

クロウがシアの大槌でできたクレーターの一つを指さした。クレーターにはリング状に土地が高くなっている部分、‘’リム‘’と呼ばれる部分がある。シアはそこめがけて腕をぶつけて砂や泥を巻き上げたのだ。

 

『そして、この勝敗を大きく分ける運命の分岐点は彼女が投げた大岩にあります。』

 

「あの大岩が? 何か仕掛けがあったの?」

 

当麻はふとシアが投げてユエが吹き飛ばした大岩を見たが、どう見てもただの大岩で自分が持ち上げるのは到底無理だろうというくらいしか思いつかなかった。

するとここで不機嫌そうにユエが、

 

「私の判断ミス。ただそれだけ…」

 

「えっ?」

 

その言葉にまたもや?を浮かべる当麻、それを見かねた士郎は

 

「要するに、ユエさんの実力ならあの大岩、他にも防ぎようがあった、そうだろクロウ?」

 

『ええ、そうです士郎。姫の実力ならあの大岩、真っ二つにでもして防ぐことは可能でした。こればっかりは姫の判断ミスです。もし、大岩を真っ二つにされていたら目くらましも防がれ彼女の勝利はなかったでしょう。作戦としましては少し詰めが甘いと言いますか、まぁ運に助けられて成り立った、と言っていいでしょう。』

 

『ですが、何もない所から10日間でここまで勝利に繋がる作戦を立てて、お嬢様の動きに対応出来ているのは成長している証、評価はするべきですね。』

 

「なんか話を聞いていると考えさせられるな。僕も色々作戦を立てられるようにしないと。」

 

士郎、クロウ、サラ、当麻、それぞれが思っている事を口にする中、シアは真剣な眼差しで一人ユエに近づいた。

 

「ユエさん。私、勝ちました」

 

「………………ん」

 

「約束しましたよね?」

 

「……………………ん」

 

「もし、十日以内に一度でも勝てたら……ハジメさんとユエさんの旅に連れて行ってくれるって。そうですよね?」

 

「…………………………ん」

 

「少なくとも、ハジメさんに頼むとき味方してくれるんですよね?」

 

「……………………………士郎、今日のごはん何だっけ?」

 

「えっー、そこで俺に振るのかよ…」

 

「ちょっとぉ! 何いきなり誤魔化してるんですかぁ! しかも、誤魔化し方が微妙ですよ! ユエさん、ハジメさんの血さえあればいいじゃないですか! 何、ごはん気にしているんですか!」

 

そう言ってツッコミを入れる士郎をよそにぎゃーぎゃーと騒ぐシア。ユエは心底鬱陶しそうな表情を見せいた。そして、この様子にサラは、

 

『いけません、お嬢様! 王女たるものが簡単に約束を破っては!!』

 

そう言って 責するもユエは視線をそらし不貞腐れるように

 

「私、もう王女じゃない…」

 

『王女じゃなくても人として、交わされた約束は守るものです!』

 

「サラ、私吸血…『お・嬢・様?』……ワカリマシタ、ヤクソクマモリマス。」

 

サラの満面に笑ってない笑顔を見たユエは流石にマズイと思ったのかどこか棒読みで応じた。

 

「ユエさん、ホント、お願いしますね?」

 

「……………ん」

 

シアの言葉に渋々不機嫌そうに応じるユエ。この返事に多少の不安は残しつつも、ハジメ同様に約束を反故にすることはないだろうと一先ず安心と喜びの表情を浮かべるシア。

 

 

 

その後、ユエ、シア、士郎にクロウ、当麻とサラはそろそろ、ハジメのハウリア族への訓練も終わる頃だと思い、集合場所に向かおうとした所にばったりとスバル、レオンに出くわすのだった。

 

 

 

 

 

 

「へぇー俺が修行している時にそんなことがあったんだ。知らなかったぜ…」

 

「スバル君、この10日間ほとんど入れ違いでしゃべることありませんでしたしね。」

 

「そうそう。俺と当麻、ハジメは結構一緒になることは多かったけど、お前ときたら拠点で誰よりも早く寝て、誰よりも早く起きて修行してたもんな。」

 

「仕方ねぇだろ、能力使うと滅茶疲れるし、修行を終えた後なんか身体中くたくた。帰ってくるのがやっとなんだぜ? 朝は朝でもっと寝ていたいのにレオン起こされるしさ。」

 

当麻からユエとシアにあった出来事を聞いて驚きつつ、この10日間を思い返してみた。当麻、士郎が言う通り入れ違いで誰としゃべることなく修行ばかりしており修行を終えて帰って来ても疲れで眠気襲ってきて誰かを待って話す気力もなかった。そして、朝になるとレオンにたたき起こされて誰よりも早く修行に取り掛かったのだ。

 

<だが、その分の成果はデカい。いずれやっといて良かったということが来るはずだ…それよりも気になるのは…>

 

そう言ってレオンが一呼吸おいて、

 

<シア、お前は何故この旅に同行する? 前にも話したがこの旅は危険が伴う過酷な旅だ。サラやクロウが認める以上、前の自分よりもさぞかし強くなったのだろうと思う。故に分からない。危険を冒してまで旅に同行する理由が…>

 

ユエに傷をつけるだけの力を得て、クロウやサラが認められるなら十分にこの樹海で一族と一緒にやっていけるはず。それなのにユエに賭けを用いてまでこの旅に同行することにレオンは到底理解出来なかった。

 

レオンの問いかけにシアは少し頬を赤くしてモジモジしながら口を開いた

 

「その……ここでは……言えません…」

 

<…何故?>

 

「ですから、それは…」

 

シアが回答に困っているとスバル達が助け舟を出してきた。

 

「まぁまぁレオン。そんなにせかさなくてもいいだろ? まだハジメが揃ってない、全員揃ってからでも説明は遅くはないと思うぜ。」

 

「スバルの言う通りだな。」

 

「ここで説明したらまた、ハジメ君の前で説明しないといけませんから二度手間がかかってしまいますね。」

 

スバル、士郎、当麻がそう言うとレオンは静かに「…わかった」と告げて黙り込むのだった。

 

「みなさん…ありがとうございます。」

 

シアはスバル達に深く頭を下げた。

 

「いいってことよ、さあ、早くハジメの所に行こうぜ。」

 

スバルの言葉に全員が頷き、一行はハジメやハウリア達がいる集合場所に向かって歩き出した。

 

 

 

 

一行がそれぞれこの10日間の出来事を話しながら歩いていると集合場所にハジメの姿が見えてきた。

 

「おっ、ハジメ~!!」

 

スバルが少し離れたところから手を振ると、ハジメも気づいたのか右手で軽く手を振り返した。一行がハジメの所に集まった所で、

 

「久しぶりだなスバル。元気だったか?」

 

「元気、元気!」

 

「レオンもお久しぶりです。スバルの首尾の方は?」

 

<問題ない。より一層強くなっている。>

 

「そうですか、それが聞けて安心しました……スバルも頼むぜ。お前の能力、あてにしているからな」

 

「おう、任せろ。」

 

二人がそう言っていると、いきなりシアが割り込んできた。

 

「ハジメさん! ハジメさん! 聞いて下さい! 私、遂にユエさんに勝ちましたよ! 大勝利ですよ! いや~、ハジメさんにもお見せしたかったですよぉ~、私の華麗な戦いぶりを! 負けたと知った時のユエさんたらもへぶっ!?」

 

身振り手振り大はしゃぎという様相で戦いの顛末を語るシア。調子に乗りすぎて、ユエの膝蹴りを食らい「はうっ…」と情けない声と共に地面に倒れ込んだ。よほど強烈だったのかピクピクとして起き上がる気配がない。

フンッと鼻を鳴らし更に不機嫌そうにそっぽを向くユエに、ハジメが苦笑いしながら尋ねる。

 

「で? どうだった?」

 

二人が何かを賭けて勝負していることは聞き及んでいたハジメは勝負の結果というより、その内容について質問した。この時、まだ正直、どんな方法であれユエに勝ったということが信じられなかったのだ。

ユエは話したくないという雰囲気を隠しもせず醸し出しながら、渋々といった感じでハジメの質問に答えた。

 

「……魔法の適性はハジメと変わらない」

 

「ありゃま、宝の持ち腐れだな……で? それだけじゃないんだろ?」

 

「……ん、身体強化に特化してる。正直、化物レベル」

 

「……へぇ。俺と比べると?」

 

ユエの評価に目を細めるハジメ。正直、想像以上の高評価だ。珍しく無表情を崩し苦虫を噛み潰したようなユエの表情が何より雄弁に、その凄まじさを物語っていた。ユエは、ハジメの質問に少し考える素振りを見せるとハジメに視線を合わせて答えた。

 

「……強化してないハジメの……六割くらい」

 

「マジかよ……」

 

ユエの言葉に啞然としているハジメ、ここでサラが更に驚愕の事を口にした。

 

『ハジメ殿、私も少々彼女の鍛錬を見ていたのですが鍛錬次第ではまだ成長の見込みはあります。おそらく上手くいけば……スバルとレオンの雷鬼と肩を並べるかと…』

 

「……噓だろ?」

 

「へぇー、シアちゃんそんなに強くなるんだ。」

 

<ほぅ…>

 

サラの言葉にハジメはただただ言葉を失い、スバルはスバルで気楽に見えて内心驚愕しており、レオンも同様に感情が乏しいように見えて内心は驚いてた。当麻や士郎、クロウもシアの秘めたる力に驚いている中、倒れているシアが立ち上がった。

ハジメが呆れ半分驚愕半分の面持ちで眺めている事に気がつくと身体についていた砂を払いのけ、急く気持ちを必死に抑えながら真剣な表情でハジメのもとへ歩み寄った。背筋を伸ばし、青みがかった白髪をなびかせ、ウサミミをピンッと立てる。これから一世一代の頼み事、緊張に体が震え、表情が強ばるが、不退転の意志を瞳に宿し、訝しむハジメの眼前にやって来るとしっかり視線を合わせて想いを告げた。

 

「ハジメさん、私を「断る!」即答!? しかも最後まで言えてないです~!」

 

間髪を入れずの回答にシアは憤慨し地面を踏みつけるように足をジタバタした。そんなシアをハジメは面倒くさそうに見つめ、呆れながら口を開いた。

 

「あのな~お前らを助けたり、強くしたりしたってのにまだ要求するのかよ? 分かってはいたけど図々しいぞ。それと、‘’旅に連れていけ‘’というのは言わずとも分かっていた。出会った当初から諦め悪かったんだ。俺たちに総スカン喰らっても諦めきれてないことくらい目に見えていたさ。」

 

さも当然のように言い切るハジメ、最もこれ以上お願いを聞くつもりはなかったのでシアが何を言ってきてもハジメの答えは「断る」の一点張りだった。シアは「うぅ…」と唇を噛みながら可愛らしく睨みつけてきたのでハジメはため息を吐いて、気になることを口にした。

 

「そもそもカム達どうすんだよ? まさか、全員連れて行くって意味じゃないだろうな?」

 

その言葉にシアは慌てながら答えた。

 

「ち、違いますよ! 今のは私だけの話です! 父様達には修行が始まる前に話をしました。一族の迷惑になるからってだけじゃ認めないけど……その、」

 

「その? なんだ?」

 

何やら急にモジモジし始めるシア。指先をツンツンしながら頬を染めて上目遣いでハジメをチラチラと見る。実にあざとい仕草にハジメが不審者を見る目でシアを見て、傍らのユエがイラッとした表情で横目にシアを睨んでいる。周りにいるスバル達は気づいているのかどこかニヤニヤしており、クロウ、サラはあたたかい目で事の結末を見守っていた。

 

<……?>

 

唯一レオンだけがハジメの味方なのか未だシアの心情を理解できずにいた。

そんな中、シアの一世一代のカミングアウトは終盤に差し掛かった。

 

「その…父様は…私自身が、付いて行きたいと本気で思っているなら構わないって……」

 

「はぁ? 何で付いて来たいんだ? 今なら一族の迷惑にもならないだろ? それだけの実力があれば大抵の敵はどうとでもなるだろうし、第一わざわざ何で危険が伴う俺たちの旅に同行したがるんだ?」

 

「で、ですからぁ、それは、そのぉ……」

 

モジモジしていたシアだったが覚悟が決まったのか「女は度胸!」と言わんばかりに声を張り上げた。

 

「ハジメさんの傍に居たいからですぅ! しゅきなのでぇ!」

 

「…………………………は?」

 

 「言っちゃった、そして噛んじゃった!」と、あわあわしているシアを前に、ハジメは鳩が豆鉄砲でも食ったようにポカンとしていた。そして、レオンも静かながら驚愕していた。

 

<……こりゃあ、驚いたな。>

 

「レオン、気付かなかったのか?」

 

<……全然。>

 

「たぶん、ハジメとレオン以外全員知ってたと思うぞ。」

 

<マジか…>

 

自分とハジメ以外みんな知っていたことをスバルに告げられ更に驚いている中、ハジメもようやく意味が脳に伝わったのか思わずといった様子でツッコミを入れる。

 

「いやいやいや、おかしいだろ? 一体、どこでフラグなんて立ったんだよ? 自分で言うのも何だが、お前に対してはかなり雑な扱いだったと思うんだが……まさか、そういうのに興奮する口か?」

 

自分の推測にまさかと思いつつ、シアを見てドン引きしたように一歩後退るハジメ。これにはシアが猛然と抗議した。

 

「誰が変態ですか! そんな趣味ありません! っていうか雑だと自覚があったのならもう少し優しくしてくれてもいいじゃないですか!!」

 

「いや、何でお前に優しくする必要があるんだよ……そもそも本当に好きなのか? 状況に釣られてやしないか?」

 

「何言っているですか! 状況が全く関係ないとは言いません! 窮地を何度も救われて、同じ体質で……長老方に啖呵切って私との約束を守ってくれたときは本当に嬉しかったですし、それに私に対しても…………私に対しても………………………………あれ? ホントに何で好きなんだろ? あれぇ~?」

 

話している間に出てくるのは数々の暴言と雑の扱いされてきた事ばかり、自分で自分の気持ちを疑いだし首を傾げるシアにハジメはまたも深いため息交じり、頭を抱えながらシアに告げた。

 

「とにかくだ。お前がどう思っていようと連れて行くつもりはない。」

 

「そんな! ちゃんと好きな気持ちは変わらないのですから連れて行って下さい!」

 

「あのなぁ、お前の気持ちは……まぁ、本当だとして、俺にはユエがいるって分かっているだろう? というか、よく本人目の前にして堂々と告白なんざ出来るよな……前から思っていたが、お前の一番の恐ろしさは身体強化云々より、その図太さなんじゃないか? お前の心臓って絶対アザンチウム製だと思うんだ」

 

「誰が、世界最高硬度の心臓の持ち主ですか! うぅ~、やっぱりこうなりましたか……ええ、わかってましたよ。ハジメさんのことです。一筋縄ではいかないと思ってました」

 

突然、フフフと怪しげに笑い出すシアに胡乱な眼差しを向けるハジメ。

 

「こんなこともあろうかと! 命懸けで外堀を埋めておいたのです! ささっ、ユエ先生! お願いします!」

 

「えっ? ユエ?」

 

完全に予想外の名前が呼ばれたことに素早くユエに目線を転じる。

ユエは、苦虫を百匹くらい噛み潰したような表情でやはり言いたくないのか口を富士山のように尖らせながら(珍しい表情にサラが少々興奮していた。)心底不本意そうにハジメに告げた。

 

「……………………………………ハジメ、連れて行こう」

 

「いやいやいや、なにその間。明らかに嫌そう……もしかして勝負の賭けって……」

 

「……無念」

 

ガックリと肩を落とすユエに大体の事情を察したハジメ。するとここでサラがハジメの目の前に現れて真剣な眼差しで口を開いた。

 

『ハジメ殿、私からもお願いします。彼女、いえ…シア殿を旅に同行させてやってください。シア殿はこの10日間、弱音を吐くことなく鍛錬に励み、死に物狂いで何度もお嬢様に挑んではやられ、そして今日、お嬢様の頬に傷をつけました。並み大抵に出来ることではありません、ここまでこれたのもハジメ殿に対しての純粋な想いがあってこそ出来たこと…この想いと努力が報われるためにも、ここはどうか…』

 

そう言って頭を下げるサラ。ここまでサラがするのは単に約束だけという理由ではない、10日間という短い期間での驚異的な成長に加え、‘’あなたの横に立ちたい‘’‘’みんなと一緒にいたい‘’という想いともに敗れても敗れても何度でも立ち上がるシアの姿に感銘されたのだ。

 

サラのこの行動にハジメは苦笑いを浮かべつつ頭をガリガリと搔きながらサラに対して尋ねた。

 

「でも、いいんですが? シアの奴は堂々と告白してきました。今後、俺に対して積極的にアプローチしてくると思うのですけど…」

 

これまでサラを見てきたがハジメと同等もしくはそれ以上にユエことを大切に想っている故にアニメやゲームの影響もあって脳裏では「お嬢様の恋を邪魔する者は例え何人たりとも排除する」という勝手なイメージが出来上がっていたのだ。

どこか恐る恐るに尋ねるハジメにサラは疑問に思いつつもあっさりと答えた。

 

『問題ありませんよハジメ殿。シア殿があなたに好意を抱いているのは明白、それでもお嬢様に対する想いが変わらなければ私は何も言いません。むしろ受け入れて結構です。この世界は一夫多妻は珍しくありませんしね。』

 

「でもな、俺の世界は複数の女性を持つことは許されないし、第一ユエがどう言うか…………」

 

ハジメが帰る世界はほとんどが一夫一妻であり、いくらアニメや漫画の世界で複数の女性と親密な関係を築いていく主人公を見てきたとしても実際に自分がそんな立場に立つと戸惑いがあり、さらに言うとハジメは生涯ユエを愛し、ユエのためなら何でも尽くすと決めた身でありユエもそれを快く受け入れている。そんな仲で横槍が入るようにシアが迫ってきたらユエからしたらたまったものではない。それに今まで様子からして今後仲良くやっていけるかも不安である。

困惑と不安が混ざり合い、あまりいい顔をしないハジメにサラ『ふふっ』と笑みを浮かべて

 

『少なくともお嬢様はシア殿を邪険には想ってないですよ。』

 

「えっ?」

 

「へっ?」

 

サラの言葉にハジメだけでなくシアも驚き同時にユエの方を見た。

 

「…フン。」

 

二人に見られてそっぽを向くユエ。出会いの当初はあまり良い印象を抱いていなかったがシアから賭けを持ち出され、この10日間でシアの‘’想い‘’と‘’真剣‘’を読み取り、多からずだがサラと同様に感銘を受けていたりするのだった。

嬉しさのあまり思わず「ユエさん…」とシアは言葉を漏らす中、今まで静観していた者達が口を開いた。

 

「ハジメ、とりあえず恋愛の事は置いといて仲間として連れて行ったらどうだ?」

 

「士郎君の言うとおり、僕も賛成です。強さも師匠からお墨付きを貰っていることだし。」

 

『それに彼女が持つ‘’未来視‘’も今後、役に立つかもしれません。』

 

士郎の言葉に賛同するかのように当麻、クロウ。そして、スバルは、

 

「ハジメ、ここまで来たら反対はないだろ? 受け入れようぜ。シアを仲間として!」

 

<俺はこんな身だ。これ以上、何も言うことはない>

 

白い歯を見せるようにニィと笑うスバルに、どこか投げやりなレオン。

 

「おまえらな…」

 

どこか他人事のように聞こえる仲間達の声にため息をつくハジメ、そして、再度ユエを見た。

 

「……フン」

 

相も変わらずそっぽを向いており、何となくだが「好きにすれば?」と言いたそうな顔だった。やれやれと思いつつ、最後にシアの顔を見た。

再びウサミミをピンッと立て不退転の意志を瞳に宿してハジメの顔を見ていた。ハジメは真意を確かめるようにシアの顔を見つめながら口を開いた。

 

「………言っておくがお前の想いに応えるつもりはない。そして、生温い旅じゃないし二度とここには戻っては来れない……‘’それでも‘’ついてくるのだな?」

 

「……‘’それでも‘’です、ハジメさん。もう、覚悟はとうに決まっています………それと、未来は絶対じゃあありません。必ず振り向かせてみせます!」

 

「ですから…」と前置きして

 

「……私も連れて行って下さい。」

 

静かにそう告げるシアにハジメは真意を確認するように蒼穹の瞳を覗き込んだ。みんなが固唾を吞みながら見守る中、その時が来た。

 

「………………はぁ~、勝手にしろ。物好きめ」

 

その瞳に何かを見たのか、ハジメは溜息をつきながらシアを連れて行くことを決めた。

 

その瞬間、樹海の中に一つの歓声と、不機嫌そうな鼻を鳴らす音、そして、「おめでとう!」「よろしくな!」と新たな仲間を歓迎する親友達の声が響き渡った。その様子に、ハジメは、いろんな意味でこの先も大変そうだと苦笑いするのだった。

 




いかがだったでしょうか?

約5ヶ月ぶりの投稿になりました。この5ヶ月、自分の身に色々ありまして小説が書けない時もあれば、やる気が起きなかったり、話しをどう纏めるか悩んだりして、それでも何とか書き上げて投稿するに至りました。

応援してくださる皆さま、遅くなったこと深くお詫び申し上げます。


さて、今回の見どころはユエとシア戦闘シーン。
原作と比べるとだいぶ違っています。ここで差別化するためにだいぶ悩みました。上手く戦闘シーンが読者に伝わっていたら幸いです。
あとは、原作にはないオリジナルキャラ達のやり取り。
原作と比べて登場人物が多いので上手く話しを纏めるのも苦労しました。出し過ぎず、かと言って置いてけぼりにならないようにしました。まぁ、毎回意識していることなのですが。
それと、本当は強くなったハウリア達も登場させてフェアベルゲンとの騒動も書く予定でしたが文字数が多くなりそうなので次回に回します。
本当に申し訳ないです……


それでは、今日はこの辺でおきたいと思います。次回も頑張って執筆しますので応援よろしくお願いします。

それでは、また……。
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