ありふれた職業で世界最強  魔王を支える者達   作:グルメ20

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皆さん、お久しぶりです。グルメです。

長い間、音沙汰なしですみませんでした。何とか後編が出来ましたので少しでも楽しんでいただいたら幸いです。


それでは、どうぞ。


…おや!? ハウリアのようすが…! 後編

 

「そういえば、ハウリア族ってこれだけでしたでしょうか? もっと、たくさんいたような…」

 

『それもそうですね…族長のカム殿も見当たりませんし…』

 

「!! そうだ、父様は? みなさん、父様はどこにおられるのですか?」

 

当麻、サラはここにいるハウリアの数がやけに少ないことに気づき、シアもこの場にいないカムの存在が気になってハウリア達に尋ねた。

ハウリア達はハッとなり、「伝えなければ…。」や「こんなことしている場合ではない!」などを口々にしており、ハジメやシア、スバル達が不思議そうに見つめているとパルがいきなり敬礼を行い

 

「申し訳ございません。事後報告になってしまうのですがボス達にお伝えしなければいけないことが…」

 

「ん? なんだ?」

 

「実は…」

 

ハジメは首を傾げ、スバル達は「自分達もハジメと同等の扱いなんだ」と思いつつ、耳を傾けた。

 

 

報告の内容はこうだった。

 

 

無事に課題の魔物を討伐したハウリア達はハジメに報告するため帰路を急いでいた。しかし、その途中で完全武装した亜人族の一団を発見、不思議に思ったカムは帰路を中断し、見つからないよう後を追って内情を探った。

亜人の一団は熊人族50人、虎人族50人の計100人の若者で構成されており、そのまとめ役なのか長老衆のジンとギルだった。そして、一団の会話を盗み聞きして分かった事は、ここに集まっている者は長老会議の決定に納得してない者達で集められ、目的が聖地に入ろうとしているハジメ一行の抹殺、及び忌み子を匿い人間達を招き入れたハウリア達の処刑であり、さらに言うとハジメ一行に屈辱を与えるためなのか大樹へ至る寸前で襲撃することも分かった。「目的手前で果てろ」大体そんな意味が読み取れる行動だ。

そして、この事実を知ったカムは生まれて初めての怒りを覚えた。それと同時にチャンスだと考えた。亜人の中で最強種と数えられている熊人族と虎人族にボスに鍛えられた自分達がどこまで通じるのか試したくなったのだ。それはカムだけでなく一族全員が想っていることでもあった。

カムは全員が頷くの確認してから静かに指示を飛ばした。カム率いる半分はこのまま一団の後を追って機を見て奇襲、もう半分はこの事を報告するため魔物討伐の証を持ってボスの所に向かう運びとなり、自分達がその報告組だと告げるのだった。

 

 

 

 

 

「あ~、やっぱ来たか。来るとは思ってたけどさぁ…」

 

「ヤロー、簡単に約束破りやがって! 親の面、拝んでやりたいぜ!!」

 

ハジメは心底めんどくさそうにため息をつき、スバルは白い歯を見せつつ、拳と手の掌をぶつけて怒りをあらわにさせていた。他のみんなも簡単に約束を反故するフェアベルゲン側に呆れかえっており、唯一シアだけがこの報告を聞いてあわあわしているのだった。

そんなさなか、再びバルが敬礼を行い口をひらいた。

 

「ボス、報告を終えましたので自分たちも殺戮…じゃなく、援護に向かいますのでこれで失礼します。」

 

「ちょと、さっき殺戮と言いませんでしたか!? ねぇ!?」

 

「あっ、勝利の証として全員の首を持って帰ってきますので楽しみにしていてください。では!」

 

「こらっ! 何さらっとお土産感覚でおっかないモノ持って帰ろうとしているのですか!? まだ、話は終わって、って早っ! ちょっと、待って! 待ってください~!!」

 

そういってパル達はシアの言葉もスルーして颯爽に霧の奥へと消えていき、シアも少し遅れる形でバル達の後を追った。

取り残されたハジメ達はバルの発言にドン引きし、ハウリア達やシアの背中が霧の中に消えていくのをただただ見つめるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…師匠、これってまずくないですか?」

 

『ええ…当麻、非常にまずいですね。このままだと当麻の二の舞いになりかねません。』

 

ハウリア達が去ったあと、ポツリと呟く当麻にどこか心配そうに答えるサラ。

二人の頭に過ぎったのは帝国兵相手に暴走した当麻の姿であり、ハウリア達がこうなったのも、力を急速に手に入れたことによるものだと考えた。

 

『それだけではありません。今の彼らの士気はとても高いです。仮に討ち果たしたとして、彼らはとどまってくれるのでしょうか?』

 

「仕掛けてきたのはフェアベルゲン…報復の建前もある。考えたくないけど勢いに乗ってフェアベルゲンに攻め込むことも考えられるよな。」

 

クロウと士郎はハウリア達の行動を推測、そして最悪のパターンを想像した。

 

「なぁ、ハジメ。これ止めに行った方がよくねぇか?」

 

<…手遅れになる前に止めるべきだな。>

 

「これ、ヤバくね?」みたいな顔でハジメを見つめるスバル、冷静に今する事を告げるレオン。

 

そして、全員がハジメを見つめた。「どうすんの、この状況?」と言いたげな顔で。

 

「…………」

 

ハジメは涼しげな顔でいたが、みんなの言葉と視線によって段々いたたまれなくなり、急にユエの方を向いて、

 

「…行くか。」

 

「…ん」

 

真顔でそう告げるハジメに対し、いつものように静かに答えるユエ。

一行はシアをおいかけるために走り出すのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、ここで時をさかのぼり、ハジメ達がパル達と接触し始めた頃に戻そう。

熊人族、虎人族の若者、計100人の亜人の一行は熊人族長老ジンと虎人族長老ゼルの指揮の下、大樹を目指して進行していた。

二人は長老会議で決まったとはいえ当然ながらこれには納得してなかった。彼らは会議を終えるとそれぞれの一族のもとに駆け寄り、長老会議であった出来事を伝えた。二つの一族は当然ながら怒りを覚え、人間達と大罪を犯したハウリア族を討ち取る決意をした。

長老衆や他の一族の説得もあり、全ての熊人族、虎人族を駆り立てることはできなかったが、血気盛んの若者達が集まった。そして、人間達の目的が大樹であるため、屈辱を与えるために先回りして大樹へと至る寸前で襲撃する事を計画したのだ。

相手は所詮、人間と兎人族。樹海の深い霧の中なら人間の大人なら直ぐに感覚が狂い、方向が分からなくなるような場所だ。それに付け加えて引き連れているハウリア族は戦闘に無縁でただ逃げることしかできない脆弱な兎人族。

我らにとって恐れるどころか足元にも及ばない存在、地の利も経験も我らにある。負ける訳がない!

 

誰もがそんな想いで大樹を目指して行進していたのだが……

 

 

「「いったい、どうなっているのだ!?」」

 

 

ジンとゼルは同時に絶叫を上げた。なぜなら、彼らの目には亜人族の中でも底辺という評価を受けている兎人族が、最強種の一角に数えられる程戦闘に長けた熊人族、虎人族を蹂躙しているという有り得ない光景が広がっていたからだ。

 

「ほらほらほら! 気合入れろや! 刻んじまうぞぉ!」

 

「アハハハハハ、豚のように悲鳴を上げなさい!」

 

「汚物は消毒だぁ! ヒャハハハハッハ!」

 

 ハウリア族の哄笑が響き渡り、致命の斬撃が無数に振るわれる。そこには温和で平和的、争いが何より苦手な兎人族の面影は皆無、必死に応戦する熊人族、虎人族の部隊は動揺もあらわに叫び返した。

 

「ちくしょう! 何なんだよ! 誰だよ、お前等!!」

 

「こんなの兎人族じゃないだろっ!」

 

「うわぁああ! 来るなっ! 来るなぁあ!」

 

奇襲しようとしていた相手に逆に奇襲されたこと、亜人族の中でも格下のはずの兎人族の有り得ない強さ、どこからともなく飛来する正確無比な弓や石、認識を狂わせる巧みな気配の断ち方、高度な連携、そして何より嬉々として刃を振るう狂的な表情と哄笑その全てが激しい動揺を生み、スペックで上回っているはずの熊人族、虎人族に窮地を与えていた。

この十日間、ハウリア族は、地獄というのも生ぬるいハジメの猛特訓かつ、武器を振るうことや相手を傷つけることに忌避感を感じる暇も与えないハート○ン先任軍曹様の罵声のおかげがあってか、ハウリア達は身も心も戦闘狂になったのだ。

そして、パニック状態に陥っている熊人族、虎人族では今のハウリア族に抗することなど出来る訳もなく、瞬く間にその数を減らし、既に当初の半分近くまで討ち取られた。残り半分も満身創痍状態でお互いの身体を寄せ合って一ヶ所に固まり、武器を盾にしてハウリア達の猛攻を凌ぐがやっとであった。

 

ハウリア達はすかさず彼らを取り囲んで罵声を浴びせつつ、石や矢を浴びせた。

 

「どうした〝ピッー〟野郎共! この程度か! この根性なしが!」

 

「最強種が聞いて呆れるぞ! この〝ピッー〟共が! それでも〝ピッー〟付いてるのか!」

 

「さっさと武器を構えろ! 貴様ら足腰の弱った〝ピッー〟か!」

 

兎人族と思えない、というか他の種族でも言わないような罵声が浴びせられ、ホントにこいつらに何があったんだ!? と戦慄の表情を浮かべる熊人族と虎人族。中には既に心が折られたのか頭を抱えてプルプルと震えている者も現れた。

 

その時、ふとハウリア達の攻撃がおさまり、取り囲んでいるハウリアの中から一人のハウリアが前に出てきた。

 

「クックックッ、何か言い残すことはあるかね? ジン殿、ゼル殿?」

 

現れたのはハウリアの族長カムであり、その表情は実にあくどく皮肉げな言葉を投げかけていた。闘争本能に目覚め、見下されがちな境遇に思うところが出てきたのか前のカムからは考えられないセリフである。

 

「ぬぐぅ……」

 

「…クソっ。」

 

ジンとゼルはカムの物言いに悔しげに表情を歪めた。まったくもっての想定外。ハウリアに対してもそうだが、部下を、慕ってくれた者をこの様な状況にあわせた自分達にも怒りを覚えた。すぐにでもカムを討ち取りたいところだが、今はその時ではない。少しでも生き残った部下を存命させるためにもするべきことは決まっていた。

ジンとゼルはお互いに顔を見合わせて頷くと、

 

「……俺らはどうなってもいい。煮るなり焼くなり好きにしろ。だが、」

 

「ここにいる者は俺たちが無理やり連れてきた者ばかりだ……どうか、見逃して欲しい。」

 

「なっ、ジン殿!?」

 

「ゼル殿! それはっ……」

 

その言葉に熊人族と虎人族が途端にざわつき始めた。ジンとゼルが自分達の命と引き換えに部下達の存命を図ろうとしたのだ。動揺する部下達にジンが一喝した。

 

「だまれっ! ……頭に血が登り目を曇らせた俺とゼルの責任だ。兎人……いや、ハウリア族のカム殿。勝手は重々承知。だが、どうか、この者達の命だけは助けて欲しい! この通りだ!!」

 

武器を手放し跪いて頭を下げるジンとゼル。それに対してカム達ハウリア族の返答は、

 

「断る」

 

という言葉と投擲された二つのナイフだった。

 

「「なっ!?」」

 

咄嗟に身をひねり躱すジンとゼル。カムの投擲を皮切りに、ハウリア達は哄笑を上げながら心底楽しそうに一斉に攻撃を再開、高速の矢や石などが熊人族、虎人族に迫ってきた。当然、熊人族、虎人族は防御態勢に入った。

 

「なぜだ!?」

 

 呻くように声を搾り出し、問答無用の攻撃の理由を問うジン。

 

「なぜ? 貴様らは自ら約束を反故にしたのだろ? ならばこちらとて願いを聞き入れる道理などない!」

 

そう答えるカム。それを聞いて返す言葉もなく思わず「くっ」歯を食いしばるゼル。さらにカムは、

 

「それに何より……貴様らの傲慢を打ち砕き、嬲るのは楽しいのでなぁ! ハッハッハッ!」」

 

「んなっ!? おのれぇ! こんな奴等に!」

 

その言葉に啞然、そしてすぐに激昂するゼルはカムに向かって突撃をかけようとするも、ハウリア達の過激な遠距離の攻撃が迫ってきて咄嗟に武器で防御態勢を取った。

全員が身動き出来ないと睨んだカムは口元を歪めながらスっと腕を掲げる。

 

 

 

あれが振り下ろされたら、ハウリア達が一斉に迫ってくる。もうおしまいだ。

 

 

 

ここにいる熊人族、虎人族の誰もがそう思い、死を覚悟した時、

 

 

 

 

「いい加減にしなさぁ~い!!!」

 

 

可愛らしい大声と共にズドォオオンという轟音が鳴り響き、土埃が周囲を舞った。

 

「は?」

 

「な、なんだ!?」

 

思わず間抜けな声を出してしまうジンとゼル。

何せ、青白い髪を靡かせたウサミミ少女が、巨大な鉄槌と共に空から降ってきた挙句、地面に槌を叩きつけ、その際に発生した土埃やら衝撃波で飛んでくる矢や石をまとめて吹き飛ばしたのだ。

目が点になるとはこのこと、周りの熊人族、虎人族はもちろん、攻撃していたハウリア族もポカンとしていた。

 

「もうっ! ホントにもうっですよ! 父様も皆も、いい加減正気に戻って下さい!!」

 

土埃が晴れ、怒り心頭、といった感じで現れたのは、もちろんシアである。

ハジメの圧縮錬成の練習過程で作成された大槌をブンブンと、まるで重さなど感じさせず振り回し、ビシッとカムに向かって突きつけた。

そんなシアに、最初は驚愕で硬直していたカムだが、ハッと我を取り戻すと責めるような眼差しを向けた。

 

「シア、何のつもりか知らんが、そこを退きなさい。」

 

「いいえ、退きません。これ以上はダメです!」

 

シアの強気な言葉と態度に、カムが眉をひそめた。

 

「ダメ? まさかシア、我らの敵に与するつもりか? 返答によっては…「あ、この人達は別に死んでも構わないです。」…は?」

 

「「「「いいのかよっ!?」」」」

 

てっきりハウリア族を止めてくれると考えていた熊人族、虎人族はシアの言葉に思わずツッコミを入れた。

 

「当たり前です。殺意を向けて来る相手に手心を加えるなんて心構えでは、ユエさんの特訓には耐えられません。私だって、もう甘い考えは持っていません。」

 

「ふむ、では何故我々を止めたのだ、シア?」

 

そう、カムが尋ね、ハウリア達も怪訝な表情でシアを見つめた。

シアはそれにものともせず答えた。

 

「そんなの決まってます! 父様達が、壊れてしまうからです! 堕ちてしまうからです!」

 

「壊れる? 堕ちる?」

 

訳がわからないという表情のカムにシアは言葉を続けた。

 

「そうです! 思い出して下さい。ハジメさん達は確かに敵に容赦しません。魔物だろうと帝国兵が相手だろうと、敵意で襲ってくる者に対して一切の容赦はありませんでした。ですがそれは…生きるため、前に進むため行動だったはずです!! ハジメさん達の中に魔物でも人でも殺しを楽しんだ者は誰一人いませんでした!! ハジメさんは訓練で「楽しんで敵は殺せ」と言っていたのですか!?」

 

「い、いや、それは……」

 

「それと父様達が、今どんな顔しているかわかりますか?」

 

「顔? いや、どんなと言われても……」

 

シアの言葉に、周囲の仲間と顔を見合わせるハウリア族。ふと、カムは自分がもっている短刀の刀身部分の反射で映り込んだ顔を見た。嘲笑と愉悦が混じった顔。自分でもこんな表情が出来るのか、と驚くのと同時にこうも思った。

 

 

 

この表情は最近どこかで見たことがある。

 

 

 

猛特訓により最近の記憶が薄れかけていたのだが、徐々にある記憶が脳裏に浮かび上がった。

それは思い出したくもない大事な家族が奪われた記憶。そう、それはまるで、

 

「……私達を襲ってきた帝国兵みたいです」

 

「ッ!?」

 

シアは、ひと呼吸置くと静かな、しかし、よく通る声ではっきりと告げた。

その言葉に衝撃を受けるカム、ハウリア達。自分達家族の大半を嘲笑と愉悦交じりに奪った輩と同じ表情、同じ行動を無自覚で行っていたことにカム、ハウリア達は動揺し、それぞれ持っていた武器を落としていった。

 

「シ、シア……私は……」

 

カムにいたっては膝から地面に落ちて項垂れており、それを見てシアも安堵したのかため息をついて、

 

「ふぅ~、少しは落ち着いたみたいですね。よかったです。まぁ、初めての対人戦ですし、今、気がつけたのなら、もう大丈夫ですよ! 大体、ハジメさんも悪いんです! 戦える精神にするというのはわかりますが、あんなのやり過ぎですよ! 戦士どころかバーサーカーの育成じゃないですかっ!」

 

そういって今度はハジメに対してプンプンとかわいく怒り出すシア。

そんな最中、蚊帳の外状態の熊人族、虎人族はハウリア達を見つつ、少し、また少しと動いて距離を取り、この場を離脱しようとしていたが、

 

「どこ行こうとしていた?」

 

その言葉にビクッとなる熊人族、虎人族たち。後方を振り向くと霧の中から、見下すように見ているハジメ、絶対零度の冷たい表情をするユエ、ポケットに手を入れて「あぁ?」と言いたげなヤンキーみたいな見下しをしているスバル、あきれた表情をする当麻、士郎。さらに普段人前には表さないクロウ、サラも幽体状態で現れ、眉をひそませて睨みつけていた。

完全に挟まれた状態の熊人族、虎人族はあきらめたのか歩みを止めてしまった。

それを見てハジメ達は歩き出し、亜人たちの群れをかきわけてジン、ゼルの前に立った。

 

そして、じっくり見た後にハジメは口を開いた。

 

「…お前ら、見逃してやってもいいぞ。」

 

「なに?」

 

「我らを生かすと?」

 

その言葉にジン、ゼルだけでなく周囲の者たちが一斉にざわめいた。「これで帰れる」と誰もがそう思って緊張を解き安心していた矢先、

 

「…ただし、条件がある。長老衆にこう伝えろ……”貸し一つ”」

 

「ッ!!?」

 

「なん…だと!?」

 

ハジメの条件に思わず顔が引きつるジンとゼル。

さらにハジメは続けて、

 

「それと、おたくらの部下の死の責任はそっち持ちで、ハウリアに惨敗した事実と一緒に添えてな。」

 

その言葉でさらに表情を歪ませるジンとゼル。周りの部下達もこの意味を理解して苦しい表情をしていた。

それもそのはず、長老会議の決定を無視した挙句、周囲の制止を振り切り、あまつさえ最強種と豪語しておきながら半数以上を討ち取られての帰還。しかも国に不利益な話を持ち帰る始末。

まさに生き恥、国にも死んでいった者たちに対しても申し訳ない気持ちでいっぱいだった。

 

 

条件を飲むか飲まないか。ジンとゼルが考え込んでいると、しびれを切らしたハジメはため息をつき、どこか気だるそうに口を開いた。

 

「……ハウリア隊、動けるものは準備が出来次第にフェアベルゲンを急襲、殺しはせずに破壊活動を、」

 

「わかった、分かった!!」

 

「我らはその条件を呑む!!」

 

流石に化け物に変わり果てたハウリアを国に入れたら一大事どころか大惨事になると思ったジンとゼルは早急にハジメの条件を承諾した。

 

「………決まりだな。」

 

そう言ってどこか悪そうに笑顔を浮かべるハジメ、この行動にユエとハウリア達を除いてスバル達は少しドン引きするのだった。

 

 

 

 

 

 

せっせと帰っていくジンとゼル、その部下達を霧で姿が見えなくなるまで見送った後、ハジメは「さてと…」と呟いてハウリア達の方に向いて歩き出した。途中、「ハジメさん!」と家族の事でまだ文句が言い足りないのか突っかかってくるもそれを手で制止(シアも思わず止まった)、シアのことも見向きもせずカム達の前に立った。

ハジメはどこか気まずそうな視線を彷徨わせておりカム達が怪訝そうに見つめていると

 

「その~何だ、うん……スマン悪かった。」

 

そう言って90°のお辞儀をするかのようにハジメはハウリア達に頭下げた。これにはポカンと口を開けて目を点にするシアとカム達。まさか素直に謝罪の言葉を口にするとは誰も予想していなかったのだ。

 

「その…自分が平気だったもんだからすっかり殺人の衝撃ってのを失念してた。それに決められた時間である程度仕上げないといけなかったから…つい行き過ぎた指導になってしまった。歯止めは考えておくべきだったな……本当にすまなかった。」

 

頭を下げながら申し訳なさそうに言うハジメ。

ここまで丁寧に言われたらシアも怒るのはやめようと思った。仮にも命の恩人だし、なんやかんやで家族が強くなったのだ。心配ごとが無くなったわけではないが少なくともこのフェアベルゲンで魔物や他種族に怯えることなく生活ができる。

シアはこの件で改めてハジメに”ありがとう”を伝えようと思った。だから、笑みを浮かべて…

 

「ハジメさん、頭を上げ、「ボスゥー!? 頭打たれたのですかぁ!!?」…えっ?」

 

「………………。」

 

言葉をかき消すように絶叫するカム。シアは笑みを浮かべながら固まり、ハジメも身体をビクッとさせた。そして、追撃するかのように、

 

「ボスがおかしくなった、今日は厄日かー!?」

 

「ボス! しっかりして下さい!」

 

「メディーック! メディーーク! 重傷者一名!」

 

「いつものボスじゃない…偽物か!?」

 

「俺のボスがこんなに優しいわけがない…」

 

「みんなでボスの頭叩いたら、いつものボスに戻るのでは!?」

 

「ボスがダメになるかならないかなんだ、やってみる価値はありますぜ!」

 

ハジメの心を抉るようにハウリア達は口々にしていった。シアは冷や汗を流し「もう、やめてよー。」と心の中で叫びつつ、徐々に雰囲気が変わってきているハジメに恐怖を感じて少しずつ距離を取っていった。もちろん、他のハウリア達はハジメの変化に気づいてはいない。

 

『もしや、ハウリア達の根本的なところは変わってないのでは?』

 

『そうかもしれませんね…』

 

サラとクロウがそんなことを言いつつ安全な所で見守っていると、ようやくハジメが顔を上げた。

その表情は満面の笑み、だが、細められた眼の奥は全く笑っていなかった。カム達はここでハジメの様子がおかしいと気づきる恐る声をかけた。

 

「ボ、ボス?」

 

「うん、ホントにな? 今回は俺の失敗だと思っているんだ。短期間である程度仕上げるためとは言え、歯止めは考えておくべきだった…」

 

「い、いえ、そのような……我々が未熟で……」

 

「いやいや、いいんだよ? 俺自身が認めているんだから。だから、だからさ、素直に謝ったというのに……随分な言いようだな? いや、わかってる。日頃の態度がそうさせたのだと……でも、でもな…このやり場のない気持ち、発散せずにはいれないんだ……わかるよな?」

 

「い、いえ。我らにはちょっと……」

 

ハウリア達はこの時気づいた。「あっ、これヤバイ。キレていらっしゃる」と。冷や汗を滝のように流しながら、ジリジリと後退る

そんな最中、ハジメは天を仰ぐように大きく深呼吸をして、

 

 

フウゥゥゥッッッーーーーーー!!

 

 

大きくそのまま息を吐いた。

しばらくその状態でいたが、いきなりガッと鬼の形相でハウリア達の方に向き、

 

「取り敢えず、全員一発殴らせろゴラァ!!!」

 

「「「わぁああああーー!!」」」」

 

ハウリア達が蜘蛛の子を散らすように一斉に逃げ出し、一人も逃がさんと後を追うハジメ。しばらくの間、樹海の中に悲鳴と怒号が響き渡った。

この様子にスバル達は、

 

「脳内でUnwe〇come 〇choolが流れる。」

 

「僕はどっちかというとス〇ン・ハ〇センテーマ曲かな?」

 

「お前らな……まぁ、この状況は止めようがないか…」

 

スバル、当麻の吞気な発言に呆れつつ、そういう自分も今はどうすることができないので黙って静観を決める士郎。

 

「……何時になったら大樹に行くの?」

 

<…まったくだ。>

 

ユエ、レオンもポツリと本音をこぼし騒動の静観していた。するとそこに、

 

「……あ~皆さん、父様達を置いて先行きましょう。私、案内しますので……はぁ~」

 

垂れきった耳と疲れ切った表情のシアが近づいてきて大樹まで案内するという事なので、一行はハジメ、ハウリア達を置いて先に進み始めた。

 

 

 

後にハジメ、ハウリア達は15分後にシア達と合流を果たす事となった。

 

 





いかがだったでしょうか?

前の投稿から半年くらいかかってしまって本当に申し訳ございません。
色々ここで思いを書きたいのですが、次の話しが投稿出来るように早いですが置きたい思います。

次回、大樹へ到着したハジメ一行、そこに最怖のヤツらが姿を現した。果たして彼らの目的は一体何なのか…。


感想、評価が作者の励みになります。

それでは今日はこの辺で、ではまた…
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