ありふれた職業で世界最強  魔王を支える者達   作:グルメ20

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皆さん、あけましておめでとうございます。

新年に入って初めての投稿です。

それでは、どうぞ。


イジメ

「悪いなスバル、買い物に付き合ってもらって。」

 

「いいって、いいって。ちょうど暇してたことだし、いい時間潰しになったぜ士郎。」

 

三人の最弱ぶりと役立たず具合を突き付けられた日から二週間が経った。現在、スバルと士郎は王宮の中、買い物袋を持って士郎の部屋に向かっていた。

先程の会話からして、どうやら二人は街に買い物に出ていたようだ。士郎の部屋に着くと二人は部屋に入り、テーブルの上に今日買った買い物袋を置いた。士郎が買った物を整理しているなか、スバルは買い物袋に手を入れて何かを取り出した。

それは瓶に詰められていた薬草だった。

 

「あ~あ、いいよな、士郎は…。表でも裏方でも活躍できる天職を持っててさ。」

 

どこか不貞腐れたように言うスバルの言葉に「うっ」と作業の手を止め、その後ため息をする士郎。

 

「スバル、その言葉は前も聞いたぞ…これで何回目だよ。」

 

「524回」

 

淡々と答えるスバル。

 

「覚えているんだな。」

 

「あれは噓だ。」

 

「だと思った。」

 

そう言った士郎は何事もなかったように荷物の整理をしていくのだった。

さて、ここで何故、スバルが不貞腐れているのかと言うと……それは士郎の天職とステータスにあった。

 

 

 

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望月士郎 17歳 男 レベル:7

天職:野伏

筋力:145

体力:170

耐性:135

敏捷:180

魔力:130

魔耐:140

技能:弓術[+速射]・剣術・短剣術・投擲術・縮地・気配感知・魔力感知・調合・追跡・気配遮断・言語理解

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見ての通り申し分ないステータスに技能の数、これがスバルが不貞腐れている理由だった。四人の中でクラスに並ぶチートステータスに天職の野伏(この世界では’’レンジャー’’と呼ばれている)は前線に立つ事が出来れば偵察や諜報活動もできる。

一応、’’暗殺者’’という隠密行動が出来る天職もあるのだが暗殺者の違いは、まず、弓を扱うことが出来る’’弓術’’があることだった。

これは士郎にとって非常にありがたかった、なにせ、元の世界は弓道部に入っておりその実力は全国クラス並、士郎に持って来いの技能だった。

次に’’調合’’だが、これは薬を作る技能であり、これがあれば様々な薬を作ることができるのだ。

これも一応非戦闘職に’’調合師’’という天職があるのだが調合師に比べて熟練に達するまで時間はかかるみたいだが、鍛えればそれなりに薬を作ることができる技能だ(ちなみに今回の買い物も薬作りに必要な材料を揃えるためだったりする。)

今の所、作れるのは煙幕のように使える’’煙薬’’、魔力を回復する’’魔法回復薬’’、一日に必要な栄養が取れる’’栄養薬’’、この三つである。

総括すると、前衛で剣を振ることも出来れば後衛での弓で援護でき、また、隠密行動などの裏方にも適しており、調合した薬でサポートにも回れる、言わば士郎はオールラウンダーなのだ。

ちなみに余談だが、士郎は初めこのステータスを見た時、周囲(主にスバル、ハジメ、当麻)に隠すつもりだった。三人が低いステータスの中、自分だけ高いステータスに罪悪感を感じていたことと、身の危険を感じたためだが、その日のうちに三人に迫られ、スバルに無理矢理ステータスプレートを奪われた挙句、ステータスを見られてハジメと当麻は更に落胆し、スバルに至っては涙目を浮かべながら腹パンを受けることになった。

 

 

 

「それでさ、お前らのステータスに何か変化があったのか?」

 

「それがさ士郎、実は…」

 

あれから二人は買った物の整理が終わり、次の訓練時間に間に合うように歩いていた。そして、ここでの話題はスバル、ハジメ、当麻のステータスについてだ。士郎は三人に「ステータスに変化はあったのか?」尋ねてみた。そして、スバルは三人のステータスについて話すのだった。

 

「努力はしているはずなのに、どうして大きく変化がないんだろうな。」

 

「そう、それだよ。さぼらず訓練に参加しているってのに、全然変化してないんだぜ! もう少しステータス上がってもバチが当たらないってもんだ」

 

士郎の言葉に強気に語るスバル。この二週間、四人はキッチリ訓練を受けてきた、士郎はそれなりに変化があったのか残りの三人はそうでもなかった。

スバルと当麻はあれから全ステータス、+5上がっただけで、ハジメに至っては全ステータス+2しか上がっておらず、これを聞いた士郎は「刻みすぎだろう」と内心突っ込みを入れた。

 

「でも、まぁ…お前らはすごいよ。ステータスを低くても卑劣にならずに自分達に出来る努力をしている所がさ。」

 

「士郎もそうだろ? 知っているぜ、夜な夜な薬の調合をして早く作れるようにしてるってことを。俺もそうだけど、ハジメも当麻も「クラスの足を引っ張らない」という想いは一緒だからな、皆各々、精一杯出来ることをしてるぜ」

 

この二週間、四人は訓練にとどまらずそれぞれ自分に出来る努力を続けていた。スバルが言ったように士郎は夜な夜な薬の調合を行い、いつ何時に使えるように魔力回復の薬などを増やしていた。

ハジメは空いている時間を見つけては錬成の練習を行い、せめて戦闘に生かせないか色々試してみたり、また図書館にこもっては本を読み漁りこの世界の知識を取り入れていた。

当麻も空いている時間を見つければ街に出て、お年寄りや身体の痛みを訴える人相手に気を操作して癒しを与えていた。

そして、スバルは戦場でスタミナ不足にならないように訓練が終わった後、筋トレをしており、腕立て、腹筋など五百回してから王国をランニングで一週するなど、身体を鍛えていた(もちろん、筋トレ終わりは当麻の気でマッサージを受けて、次の日もきちんと動けるようにしていた。)

 

「(努力しているとはいえ、それでもまぁ…不安だよな。それに、俺の天職も、この右手の魔法陣も一体何なのか分からないし…)」

 

スバルは包帯で巻かれている右手を見つめて、顔には出さないが内心不安の声を出す。訓練や努力を続けてもステータスの変化は大きく変わらない、この先、敵が現れても戦っていけるのか、ちゃんと大切なものを守り切れるのか、度々不安になることがあるのだ。

その不安の一つとして自分の天職も含まれていた。あれから自分なりに色々試してみたが変化はなく、親友達(ハジメ達)にもある程度話して手がかりになるようなものを一緒に探してもらっているのだが一向に見つからず、図書館によく出入りするハジメさえも「そんな文献はなかった。」という始末だった。

「この先、本当にやっていけるのかな」と思いつつ、スバルと士郎は訓練施設に向かうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

訓練施設に到着する二人、既に何人もの生徒がやって来ており、それぞれ談笑してたり自主練をしてたりしていた。

 

「さて、ハジメと当麻はもう来ているのかな?」

 

スバルがそう言いつつ辺りを見渡した、訓練をする時はいつも四人で行動しているのだ。士郎も一緒になって見渡すも見つからなかった。

スバルはたまたま近くで談笑していた生徒、おっさん顔の永山重吾、ちょっとだけクラスの嫉妬対象の野村健太郎、そして、珍しく目視出来た遠藤浩介に声をかけた。

 

「なあ影山、この作者俺に対してサラッと失礼なこと書いていなかったか?」

 

「気のせい気のせい。ところでお前ら、ハジメと当麻を見てないか?」

 

「「「……………。」」」

 

 

スバルの問いかけに三人は黙り込んだ。そして、お互い少し目を合わせたら下を向いたりして答えることはなかった。まるで何か言うのをためらうかのように。

その様子にスバルが首を傾げていると、後ろから士郎が声をかけてきた。

 

「なぁ…スバル。偶然かもしれないんだけど、檜山達もいないんだが……。」

 

「えっ?」

 

そう言って辺りを見渡した。確かに他の生徒達は見えているが、檜山達の小悪党四人組が見当たらなかった。ハジメと当麻と檜山達四人組、このメンバーがいないということは、そこから想像されることは。

 

「…クソッ!!」

 

スバルの脳内で最悪のシナリオが浮かび上がり、三人に背を向けて士郎にも構わず走り出した。もし、自分の考えが正しければハジメ、当麻は、檜山達四人組は……想像すると怒りが込みあがってきた。

スバルは「頼むから杞憂で終わってくれ。」と内心思いながら、ハジメと当麻を捜すのだった。

 

「あちゃースバル暴走仕掛けたな……早く行って止めないと。」

 

そう言ってスバルのあとを追いかけようとしたが………その前に。

 

「なぁ本当にハジメと当麻、ここに来たところ見てないんだな?」

 

「「「……………。」」」

 

士郎は再び三人に問いかけた。三人は答えようとせず、どこかそっぽを向いていた。そして、この様子を周りの生徒がチラチラと見ていた。士郎は視線を周りに向けると、何事もなかったかのように周りの生徒は談笑や自主練を再開しているのだった。士郎はこの様子に苦笑を浮かべると、

 

「そうか……………わかった、邪魔して悪かったな。」

 

三人にそう言ってスバルの後を追う士郎、多分ここにいる生徒は全員、ハジメと当麻が檜山達に連れて行かれている所を見ているのだろう。なかなか答えなかったのは、多分檜山達の報復を恐れて、もしくは単純にトラブルに関わりたくないという理由のどちらかだと考える士郎。イジメの報復やトラブル、どちらも関わりたくない気持ちは分からなくもないが………

 

「(複雑だよな。自分の友達がこんな扱いを受けているのは………。)」

 

やるせない気持ちで一杯の士郎。複雑の表情を浮かべながらスバルの後を追った。

 

 

スバルは訓練施設から少し離れていた所を走っていた、この辺は建物の死角が多く、人を連れ込むにはちょうど良い所だった。建物の角を曲がった時にそれを見つけた、ハジメと当麻の姿を。

しかしと言うべきか、当の本人達は地面にうずくまって苦しそうに身体を丸めており、そして、その近くには檜山達四人が立っており、檜山と近藤が容赦なく蹴りを入れ中野と斉藤はそれを見て笑っているのだった。

この様子にさすがのスバルはキレた。

 

「テメェらー俺の親友に何してやがる!!」

 

そう言って怒りの形相で叫び、右手に握りこぶしを作って檜山達に向かって走り出した。それに気づいたハジメと当麻は痛みで顔を向けることはできないが必死になってスバルの方を向こうとしていた。檜山達もスバルの存在に気づき二人に蹴りを入れるのをやめて、檜山は叫んだ。

 

「何だ、影山も鍛えて欲しいのか? だったら鍛えてやるよ!」

 

そう言って檜山達はスバルに向けて魔法を放ち始めた。火球や風球など下級魔法が飛び交うなかスバルは何とか避けながら近づくも多勢無勢、少しずつ避けきることができずに身体を掠めていき、そして、

 

「ぐわっあ!」

 

「「スバル!!」」

 

ハジメ、当麻のうずくまる前で檜山が放った火球がもろに当たり倒れ込んだ。すぐに顔をあげると風球の球を構えていつでも叩きつける準備をしている檜山がいた。

「まずい」とスバルが思った瞬間、いきなり別方向から風球が飛んできて檜山の風球を相殺したのだ。檜山達やスバル達が風球が飛んできた方を向くと魔法を放ったであろう右手を前に出しているレムとその横にいる士郎の姿があった。

 

「あなた達、何やっているのですか!!」

 

普段は見せることのない怒りの形相と怒号が檜山達に向けられて臆する小悪党四人組、士郎も何も言わないが普段見せることのない形相をして睨むのだ。

そして近藤が「俺らはただコイツらの特訓を…」と言いかけた時、

 

「特訓ね…。それにしては随分と一方的みたいだけど?」

 

「南雲君! みんな大丈夫!?」

 

そう言って二人の声が聞こえてきた、スバルの後ろからだ。後ろを振り向くと雫と香織、そして光輝と龍太郎の姿もあった。光輝や龍太郎が檜山達の行動を非難すると流石に分が悪いと思ったのか、誤魔化し笑いを浮かべながらウサギのように立ち去っていくのだった。

 

「あのヤロー、謝りもせずに……イテテッ。」

 

「スバル君、無理してはダメです。皆さんも、大丈夫ですか?」

 

「待ってて、今、治療するね。」

 

スバルが起き上がろうと立ち上がるなかすぐにレムが駆け寄り無理に立とうとするスバルを止めた。そして香織もすぐに駆け寄り三人を治療魔法で癒していった。

 

「あ、ありがとう白崎さん。助かったよ。」

 

「すいません白崎さん。ありがとうございます。」

 

「悪いな白崎、助かるぜ。」

 

ハジメ、当麻、スバルがそれぞれ香織に感謝の言葉をのべ、士郎、レムも友人を助けてくれたことに感謝するのだった。

 

「いつもあんなことされてたの? それなら、私が……」

 

そう言って怒りの形相で檜山達が去った方を睨む香織、それを見たハジメと当麻は慌てて止める。

 

「いや、そんないつもってわけじゃないから! 大丈夫だから、ホント気にしないで!」

 

「そうそう、今日はたまたまだったんだよ。だから気にすることないって!」

 

二人の言葉に香織は渋々ながら引き下がった。

 

「南雲君、入江君、何かあれば遠慮なく言ってちょうだい。香織もその方が納得するわ」

 

渋い表情をしている香織を横目に、苦笑いしながら雫が言う。

 

「親友の俺達も頼れよ、ハジメ、当麻。」

 

「私も、あなた達はスバル君と同じ私にとって大切な存在です、いつでも頼ってください。」

 

八重樫に続くようにそう言う士郎、レム。その言葉に再度礼を言うハジメと当麻。

このまま綺麗に終わるとスバルは思っていたが、そうはいかなかった。

いきなり光輝が…

 

「だが、南雲自身ももっと努力すべきだ。弱さを言い訳にしていては強くなれないだろう? 聞けば、訓練のないときは図書館で読書に耽っているそうじゃないか。俺なら少しでも強くなるために空いている時間も鍛錬にあてるよ。南雲も、もう少し真面目になった方がいい。檜山達も、南雲の不真面目さをどうにかしようとしたのかもしれないだろ?」

 

そう言ってハジメに説教をするのだった。しかも、どう解釈したのかいじめていた檜山達を擁護する始末、さらに説教は続き当麻にも及んだ。

 

「君もだよ入江。訓練が終わってすぐに街に行っているみたいだね。そんな所でホロホロなんかせずもう少し鍛錬をするべきだ! 聞けば魔法がつかえないんだろ? だったら、別のことで能力を伸ばさないと。」

 

「そのために街に出ているのに………」と当麻は言って反論する気はなかった、光輝の言葉に悪意がなく真剣に思って忠告しているからだ。だから当麻は「うん、そうだね…」と言って肯定するのだ。どこか悲しそうな表情で………

光輝の物言いに周囲の反応はというと、龍太郎は脳筋でハジメ達の努力を知らないので無言で「うんうん」と頷き、香織は「えっと…」と言って何て返事したら良いのか分からずにいて、雫と士郎は光輝の暴走に手で顔を覆いながら溜息を吐き、ハジメは半ば呆れていた。

そして、レムは光輝に笑顔を向けているのだが額に青筋を浮かべており、スバル達四人の努力を知っているため内心「コイツ、何言ってんだ?」という状況で、スバルに至っては歯を剝き出して睨んでいた。

雫は皆に小さく謝罪した。

 

「ごめんなさいね? 光輝も悪気があるわけじゃないのよ…」

 

「スバル気持ちは分かるが、押さえろよ。」

 

今にも光輝に飛び掛かりそうなので釘をさす士郎。スバルは士郎の言葉は聞こえていたのだが、どこか納得いかないのか睨むことをやめない。

 

「おい、スバル。」

 

「影山、何か言いたいことがあるならハッキリ言ったらどうかな?」

 

「ちょっと、光輝!」

 

士郎、雫が双方止めようとする、ハジメは「じゃあ言わせてもらうけどな………」と前置きして、

 

「何も知りもしないで俺の親友を語るんじゃねぇ!! お前が思っているほど俺の親友は努力を怠っていない。それといつも上面で物を語るのはやめろ、不愉快だから。ちゃんと本質を見てから語れよな……それと最後に自分の言葉に、行動に、責任を持てよ。でないとお前……他人に迷惑をかけるどころか、自分を苦しめることになるぞ。」

 

そう吐き捨てるように言うとスバルは訓練施設とは違う方向に向かって一人歩き出した。そして数歩、歩いた所で立ち止まり、

 

「悪い、気分悪いから次の訓練休むわ。団長に聞かれたら適当に答えといてくれ。」

 

顔も向けずにそう言って再び歩き出した。光輝が何か叫んでいたが、それも無視してスバルは皆の前から立ち去るのだった。

 

「スバル君………」

 

レムはただ、悲しそうにスバルの背中を見つめることしか出来なかった。

 

 

 

 

スバルが訓練を休み王宮に帰って来たのは夕食前だった。たまたま団長に出会い、訓練にいなかった事を咎められると思ったが、そのようなことはなくスバルにあることを告げた。

 

「明日から実戦訓練の一環として’’オルクス大迷宮’’の遠征に行く、しっかり休んでおけよ。」

 

 

そう言って団長には去って行った。スバルは「大丈夫かな……」と一言呟き、不安に感じながら食堂に向かうのだった。

 

 

 

 

 




タグ追加に’’シャドウ・オブ・ウォー’’を追加しました。
作者はこのゲームが好きで、士郎の天職’’レンジャー’’もこのゲームが元ネタです。
いずれは’’ヤツら’’もこの物語に出したいなと考えております。

シャドウ・オブ・ウォーってどんなゲーム?
って気になった方はこちら↓の動画をご覧ください。どんなゲームかすぐに分かります。
https://youtu.be/K2vC51F1a9A
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