歴オタミリオタ介護福祉士が異世界転生して外道鬼畜と言われようと手段選ばず天下と美少女の眼差しを受け続ける退屈じゃない毎日を目指す様です。 作:オラニエ公ジャン・バルジャン
アルトヘイムの街はお祭り騒ぎであった。攻め寄せた敵国二つを併合し、更に新たな英雄の誕生に浮ついていた。王都では新規気鋭の五千人長3名の昇格式を行う事で持ちきりだった。普通の五千人長の昇格式ならこんなになる事は無い。だが同時期に五千人長になるこの3名はまさしくアルトヘイムの英雄と謳われるにたる人物達であった。当然その一人はマサユキだったが当のマサユキは…全力でこの場から逃げ出したい気持ちでこっそり抜け出す隙を見つける為見苦しく足掻いていた。
マサユキ
『嫌じゃ。』
アッシュ
『………。(汗)』
マサユキ
『行ってもなんか変に期待されるか貴族様に揚げ足取られるだけやんか。』
トマス
『マサユキ兄さん声が大きいですよ?聞かれたらどうするんです!?』
マサユキ
『なんだったらさっきの宿屋みたくここで大の字になって駄々こねてやろうか?』
マシュ
『それやったら最期、みんなで他人のフリかその場でタコ殴りにするわよ。もうしょうがないじゃない!そういう決まりなんだから‼︎』
マサユキ
『にしたってもっとさ、その〜静かに粛々とやるもんじゃないの?なんでこんなお祭り騒ぎよ⁉︎宿屋でたら人人人で俺もう考えただけで酔って気持ち悪く…ボエ〜(嘔吐)』
ヤートン
『王都で嘔吐ってか?命張ってボケんでもええがな。』
マサユキ
『ううぅ…そうだ!ホルサス卿には申し訳ないが先の戦傷が原因で体調を崩した為欠席ということにしよう‼︎早速使者をば。』
そうしようとした瞬間ホルサス卿の使者がマサユキを訪ねてきた。
使者
『アヤセ・マサユキ卿は居られるか?我が主人ホルサス卿より文をお持ち致した。』
マサユキはさっきまでの酷い表情を消えさせ、何時もの武将然とした、簡単に言うならキリッとした表情を浮かべ応えた。
マサユキ
『ご苦労でした。拝見いたしましょう。…返答は口頭が宜しいか?』
使者は頷いたので、マサユキは早速書状を拝見した。
アッシュ
『宰相閣下は何を?』
マサユキ
『昇格式は午後からなので少なくとも昼頃までは互いに手空きであろうから共に昼食を摂ろうと思ったから幕僚全員を連れ、我が屋敷に来たまえ、だそうだ。』
マサユキは書状を纏めると使者に二つ返事で回答し、使者も了解したと応え、主人共々お待ち致すと言い、戻っていった。
マサユキ
『…どうあがいてもその足で式典に出ることになりそうだ。覚悟決めていくしか無い。』
ガストン
『まぁまぁ、宰相閣下がタダ飯食わしてくれると思って行きましょうや。』
マサユキと幕僚達はホルサスの屋敷に向かい、出迎えた宰相と共に昼食を共にした。その間、ホルサスはマサユキに起きた事全てを話してくれた。
マサユキ
『そうですか…遂に鉄砲がこの地にも。』
ホルサス
『やはり君の世界にもあったか。使い方とかその他諸々全て一緒かな?』
マサユキ
『はい閣下。しかし私のいた世界ではもう数百発の弾丸を撃ち込む事が普通に出来る銃がそこら中に出回っておりまして、これは初歩の銃です。してその女商人は継続的に鉄砲の取引は行うと?』
ホルサス
『うむ、後日聞いたところ製造は我らでも出来るだろうが、当面は数を揃えたいだろうから申し付けあれば幾らでも売るそうだ。だが奴ら肝心の火薬の製造法を我らに提供しなんだ。恐らく奴等は火薬も買わせ、多額の利益を得る気だろう。鉄砲代だけでも馬鹿にならんというのに。』
そう聞いたマサユキは懐から小さな包みを取り出し、それを広げてみせた。その中に入っていた黒色の粉末は紛う事なき火薬であった。
ホルサス
『…どこでこれを?』
マサユキ
『自作です。初任地のエルフの街で敵の死体や我が方の犠牲者の遺体、木炭、住人や家畜の糞尿や土間の土、そしてそこから作られる硝石という鉱石、硫黄。それらを組み合わせて作り上げました。本当はもっと数が揃ってから献上する予定でしたがこうなっては仕方がないので今ある分だけを献上致します。』
ホルサス
『この際だから無断で製造したことは不問にしよう。だが大規模量産するとなると誰か錬金術師に会わせたいな。君はこういう事が専門ではあるまい?』
マサユキ
『はい、製造に関しては硝石を人工的に作り上げておりますので、その過程でかなりの危険が生じていて、隊員や現地の住人の協力で生産していましたが出来れば専門の人間に任せたいとは思っていました。』
ホルサスは考え込むと、時計を見た。まだ時間がある事を確認したホルサスは呼び鈴を鳴らし、従者を呼んだ。ホルサスが書状を従者に渡すとその従者は頷いて、部屋を後にした。しばらくすると従者が戻ってきた。その後ろに一人の男が立っていた。その男は背格好こそ人間であったが見た目は顔つきが限りなく人間に近いゴブリンであった。
マサユキ達は驚き武器を構えた。するとその人間に限りなく近いゴブリンは慌てて制止するよう求めた。
?⁇
『お、おおお⁉︎お待ち下さい‼︎私決して怪しい者ではございません‼︎た、ただのしがない学者なのですよ〜⁉︎』
ホルサス
『諸君…落ち着きたまえ。彼はコボルト族だ。…そうか君達は初めてか。』
アッシュ
『な、成る程。話に聞くコボルト族の方でしたか。マサユキ様は勿論、王都より離れて暮らしていた我々には殆どコボルト族と交流する機会がありませんからな。』
ミシェエラ
『因みに私は何度かお客で来てたから知ってるけど…これまた凄い大物が来たわね。』
マサユキ
『誰なんだい?このおじさん。』
ヘルムット
『申し遅れました。私はコボルトの族長にして学術城塞都市コボルトニアの総領事並びにコボルトニア学術院院長を兼任するヘルムットと申します。以後お見知り置きを。』
マサユキは慌てて姿勢を正し、敬礼すると直ぐにヘルムットに謝罪した。
マサユキ
『これは閣下失礼致しました‼︎アルトヘイム特別遊撃五千人隊隊長マサユキ・アヤセであります。』
マサユキが自己紹介したのに続いて他の面々も挨拶を交わした。ホルサスはヘルムットに火薬の製造協力依頼を出し、マサユキの支援を頼んでくれたのだ。ヘルムット卿も二つ返事で了承し、材料と作り方を聞くとあっという間に理解したのは流石は学術院の院長であった。こうしてアルトヘイムにおける火薬製造は軌道に乗り始めるのだ。
そして少し時が経ち舞台は王城に変わる。
フレデリック王とその妃マリアンヌそしてソフィア王女の前に三人の若者が跪いていた。
一人は、 シルヴァン・ド・ホルサス。
ホルサス卿の嫡子であり、昌幸とはまた違う戦場で武勲を挙げた。槍と馬術の名手であり、名宰相にして名戦略家である父の才を引き継ぎ、既に将軍入りは確実の声が上がっている。
一人は、
モーティアス・ド・フィンガーフート。
アルトヘイム王国宮内卿であるフィンガーフート伯の孫であり、剣と魔法の名手である。やはり宮内卿の祖父を持ち、既に亡き者になっている猛将であった父から受け継いだ素質は本物であり特に統率面に関しては将軍達にも引けを取らずその洞察力は他を圧倒した。
最後にマサユキ・アヤセ改めマサユキ・ド・オートクレール。
異世界よりきた青年アヤセ・マサユキはこの世界で軍功を挙げ続け将軍を除けば最高位につく五千人長の昇進に合わせ、没落し滅亡したオートクレール家の爵位と領地をオートクレール子爵として継承したのだ。幼い頃から武芸に励み、歴史を学んだこの青年は自然と戦争の知識がついてしまいそのお陰で彼はこうしてこの地位に立っている。先の二人と違い立派な家柄は無く、将としてのカリスマは無く(本人談)、劣るものはあるが周囲の人々を集める人徳の様なものがあった。それが作用しこの男をここまで連れてきたのだろう。最も彼のいた世界は今いる世界より何倍も未来の世界であるからマサユキにとっては歴史の授業の復習を身を以て行なっているだけなのかも知れない。
何にしても三人の青年…と言うよりもまだ子供と言ってもいいかもしれない三人はそう言う役職に任ぜられたのだ。上の二人は元々領地があるので所領の増加が恩賞として与えられたが、マサユキは所領が無いので新たに与えられたのだが、オートクレール家は本来大貴族の一翼を担う伯爵や公爵になれる程の家柄だが、一応平民であるマサユキがその全てを受け継いでしまえばとんでもない騒ぎになることはフレデリック王もホルサスもマサユキも他の者達も皆分かっていた。そこでマサユキの所領はオートクレール領の半分くらいで収まった。しかし所領の大きさはつまりその貴族の家柄や能力を表すものであるからその対処ではあまりにもマサユキに対しても酷な事である事を国王とその最も信頼する臣下は理解していた。(当の本人はそこまで気にしてない)そこでマサユキには別の恩賞が渡された。それは…
フレデリック王
『オートクレール子爵には我が国の初代鉄砲戦列歩兵総監の任を与える。これを完全に勤めた暁には残り半分の領土と侯爵の地位を改めて与えよう。』
宮廷内に衝撃が走った。総監ともなればその役職の最高位を意味する。つまりマサユキはアルトヘイムの鉄砲を扱う兵達の最高司令官になったのである。まだこの中央大陸に、少なくともこの王国には一人として存在しない鉄砲兵部隊を育成し組織する役目を与えられたのだ。それは他の二人の様に広大な領土を統治する事と同じくらい、或いはそれ以上の大役であった。何故なら時間こそ掛かるだろうがいずれ軍隊の主力を担う兵達の育成と組織を任せられたのだから、マサユキは驚きのあまり固まった。だがこの男は与えられた役目から真っ向から当たる事に定評のある男であった。
マサユキ
『初代鉄砲兵総監の役目拝任致します。必ずや我が軍の主力を担うに値する兵を作り上げてご覧に入れます。』
フレデリック王
『よくぞ言った!これにて式典は終了とする。皆苦労であった。大広間に宴の用意がしてある故皆そこで英気を養ってくれたまえ。以上解散。』
『『はっ‼︎‼︎』』
この場に居る臣下達は皆跪き、答えた。国王一家は玉座から離れるとそのまま奥に引っ込んでしまった。それを確認するや否や皆ゾロゾロと大広間に向かっていった。マサユキ達三人の青年も向かったが互いに声を交わさない。
大広間での宴はまさしく絢爛豪華であった。他の貴族達は皆シルヴァンやモーティアスを囲んで祝辞を述べた、マサユキを除いて。勿論マサユキはこうなる事を分かっていた。現に彼の周りにいるのは自身の幕僚とホルサス卿、アリスやオーランと言ったたまたま王都に居た知己の将軍達や将達しかおらず、マサユキが如何にこの宮廷内の人望がない事が分かる宴になった。
オーラン
『ま、まぁ気を落とすでない、マサユキ。こうしてわしらがお主を囲んでおるではないか?のぅ?』
マサユキ
『お情けなら要らんよオーランのジィ様。今にここにいる連中にはそれ相応の報いを与えてやるからな…グヘヘヘヘ。』
アリス
『見事に不貞腐れてるかと思ったら…なんか全然違った。性格悪くなってないか、マサユキ?前はもう少し素直だったじゃないか?』
それなりにも知り合い達に囲われワチャワチャ宴を楽しんでいた昌幸達の元に近づく男達が居た。シルヴァンとその幕僚や彼を支持する貴族達であった。
シルヴァン
『貴様が綾瀬マサユキか?』
マサユキも振り返り応えた。だか声にはトゲが生え、如何にも憎々しい素振りを、傲慢不遜を見せた。
マサユキ
『既にお会いしたと思いますがな?そして今の私はマサユキ・ド・オートクレールです。先の名は封印したものですゆえ。』
シルヴァンの幕僚
『高々子爵の癖に偉そうに‼︎』
シルヴァンの取り巻きの貴族
『その通り‼︎ましてや平民の分際で尚且つ異世界人の癖に陛下や姫殿下の恩寵を受けるなど身の程を弁えぬか‼︎』
シルヴァンの取り巻き達の罵倒の数々に火がついたアッシュやマサユキの幕僚達も言い返した。
アッシュ
『我が主人が陛下や姫殿下の恩寵を賜われたのはその武勲が本物であると正当な評価があっての事。家柄や親の力でのし上がったあなた方と違う。』
ガストン
『隊長殿はどのような身分、種族分け隔てなく接して下さる懐の大きいお方だ。だからこそ貴様らよりは強い。ましてや主に盗賊討伐やゴブリン、オーク退治ばかりをして、五千人長につけた人やそのおこぼれ狙いの乞食同然の連中の言葉など負け犬の遠吠えに過ぎませぬな‼︎』
今、まさに、ここが王城でなければ、ここが平原であれば、この連中は今佩ている佩刀や杖を取り出し殺し合いを始めかねない状況になった。人目も憚らずこの連中は武器に手を掛けているのだ。アリスやオーランも武器を何時でも構えられるように身構えているが勿論これは仲裁する為である。互いの後ろに視線をやったマサユキとシルヴァンは互いに歩み寄り、近くで向かい合った。
シルヴァン
『俺は貴様を認めない。そして貴様を取立てた親父も‼︎味方でなければこの宝槍で心の臓を貫き殺してやるところだ。』
マサユキ
『意見が合うとは意外だ。だが俺は貴様と刃など交える気など無い。明日にでも育成する俺の鉄砲軍団で貴様の亡骸など残らないようにゴミ屑にしてやる。』
シルヴァンは戻っていき、他の取り巻き達もそれについていった。マサユキはそれを見送ると手元にあった赤ワインのコルクを抜き、ラッパ飲みした。幸い甘口のそこまで強く無いものであったから一気に酔いは回らないが他の者達は心配そうに見つめた。
すると今度はそんなマサユキ達に声を掛ける者が現れた。
モーティアス
『いや〜、まさかシルヴァンとメンチを切ってあそこ迄言うとは君もなかなか度胸あるね〜まぁそうでもなきゃあの帝国一の猛将と打ち合えないもんな。』
マサユキ
『おや、君はモーティアス・ド・フィンガーフート殿では無いか?』
モーティアス
『モーティアスで構わないよオートクレール子爵殿。シルヴァンを許してやって欲しい。昔から父上に対抗意識がある奴でそんな父親が目を掛けている人間が現れたから対抗心が沸いてしまったのさ。』
マサユキ
『残念だけど宣戦布告と受け取ったよ。必ず決着はつける。それとそちらもマサユキで結構だよ、モーティアス。彼とは親しいのかい?』
モーティアス
『まぁ、昔馴染みさ。さて決着をつけると言ったね?実は二ヶ月後アルトヘイム軍の新規気鋭の若手将校たちの部隊を中心にした大規模模擬戦をやると陛下がお決めになったそうだ。当然メインは俺達三人の三つ巴戦だそうだ。お爺様がお陰でてんやわんやさ。』
マサユキ
『面白そうだな、なら俺の鉄砲軍団も二ヶ月後にお披露目と行こうかな?』
モーティアス
『期待してるよ、ではなご機嫌ようオートクレール殿。』
モーティアスもまた自分の隊の幕僚達のいる場所に戻っていった。やりとりを見ていたマシュやトマスはマサユキに
マシュ
『さっきの宰相閣下の息子は気に食わなかったけどこっちの方は付き合いやすそうね。』
トマス
『すごく好印象でした。物腰も柔らかく、流石フィンガーフート宮内卿閣下のお孫さんですね。』
と口々に言ったが昌幸やミシェエラ、アッシュだけはその表情は固かった。この二人に対してこの三人はまた異なる見解を出した。
マサユキ
『まぁそう見えるよな。だがあれは…』
ミシェエラ
『あの何気ない会話の中で私達の実力を推し量ろうとしていた。そして…』
アッシュ
『それをやれるだけの力は持っている。あの方の目にはありとあらゆる計略が練られ我々にそれを仕掛けんとする強かさがありました。マサユキ様、いえお館様。彼の御仁は油断ならぬ相手かと。』
マサユキ
『ああ…油断せずに行こう。よしそろそろお暇するか、明日は鉄砲軍団育成の第一歩を踏み出す大事な日だ。』
そして翌日になりマサユキの鉄砲軍団育成は始まった。先ずは鉄砲の使い方を教練し、それを丸一日続けた。そして散兵、そして戦列歩兵としての鉄砲の使い方を教練し、銃の有効射程や散兵、戦列歩兵としての戦い方の基本知識の教授、行進射撃、整列射撃、精密、狙撃等の訓練を二ヶ月続けた。…そして大規模模擬戦の数日前に差し掛かった。
500名程の兵達が真新しい軍服を着込み、マスケット銃を持ち整列している。帽子はトライコーンに白地に赤のラインの入ったロングコートタイプの軍服に黒の長靴と、18世紀の戦列歩兵宛らの格好になった。そして同じ様な士官用の軍服を着た昌幸がサーベルを持って号令した。
マサユキ
『射撃姿勢‼︎』
戦列歩兵達は最前列が膝をつき二列目が上半身を露出する形を作った。
マサユキ
『構え‼︎』
戦列歩兵達はマスケットを構えた。
マサユキ
『狙え‼︎……撃てぇ‼︎‼︎』
無数の発砲音が王都の外に響いた。特設の藁人形やそれが纏っていた甲冑は穴だらけになり、中には完全に崩れて体をなさない物まであった。今日この日より、アルトヘイムの鉄砲軍団の歴史が始まるのだ。そして後の歴史書にはこう記されるだろう。
『初代鉄砲戦列歩兵総監オートクレール伯マサユキはその献身を持って見事最初の鉄砲軍団の育成を成し遂げ、アルトヘイム軍の栄光に新たな光を与えた』と…。そして彼らの初陣は数日後の大規模模擬戦となるのである。