歴オタミリオタ介護福祉士が異世界転生して外道鬼畜と言われようと手段選ばず天下と美少女の眼差しを受け続ける退屈じゃない毎日を目指す様です。 作:オラニエ公ジャン・バルジャン
話は三将模擬戦の終わった直後に戻る。勝手に結界を破り互いに殺傷しようとしたマサユキ、シルヴァン、モーティアスはそれぞれアリス、リューネ、アーシェに捕縛されフレデリック王の前に連れてかれていた。不殺が徹底されている中の命令無視(正確に未然だが)を冒した彼らは反逆者であった。そんな阿呆三人を見渡したフレデリックは口を開いた。
フレデリック
『そなたらが初対面から折りが悪いのは知っていた。だがまさか殺し合いをする程とはな。この模擬戦は知っての通り我が祖先と女神に捧げる儀式でも有る。その事は理解した上で血で汚さんとしたのか?』
阿呆共の中で最初に口を開いたのはマサユキである。
マサユキ
『陛下‼︎他の二名は知りませぬし、その覚悟は無いでしょうが王命に反したのは紛れもない事実どうぞ我が首をお獲り下さい‼︎されど我が将兵の命だけは安堵して頂きたく‼︎そしてそこの男(シルヴァン)は私のみならず我が配下の将も殺しかねない行為に及んでおりますので何卒ご考慮願いたい‼︎』
シルヴァン
『陛下、言い訳をする訳では有りませんがこの平民は先に正々堂々の理念を破り模擬戦に挑み、モーティアス五千人長は戦闘を避け続け今の今まで逃亡しておりました‼︎その事を告発した上で王命に反した罪を受け入れ貴族の務めを果たさせて頂くとお伝え申し上げまする‼︎‼︎』
モーティアス
『陛下!二将はこの後に及んでまで自分の罪を棚に上げておりますが私はただこの王命に反した罪を認め王のご随意に従います‼︎』
マサユキ・シルヴァン
『貴様も同じ事をした癖に何を言うか‼︎‼︎』
フレデリック王は滅多に見せない鬼気迫る表情を浮かべ怒りを露わにした。
フレデリック
『もう良いわ‼︎‼︎‼︎』
三人は此処に来て己の愚かさを自覚しすっかり沈み込み首を垂れた。それを見た王は内心ほくそ笑みながら続けた。
フレデリック
『本来なら打ち首も当然だが…お前達の才は惜しい。追って沙汰を下すのでそれぞれ自領にて謹慎せよ。』
『『『はっ…。』』』
王はそのまま王妃と共に城に去り、アリスを除く女大将軍二人を始め側近達も後に続いた。シルヴァン、モーティアスも無言のまま配下の将に連れられ去っていた。その場にはマサユキ、アリス、様子を見守っていた黒襷隊の将兵が残された。
アリスは溜息をつくとマサユキに呆れた顔で問いただした。
アリス
『何故あんな事をしたんだ。先の昇進式より様子が変だったぞ。』
マサユキ
『分からない…でも一つだけ言える事が有るとすれば。絶対に負けたく無いと思った。そしたら周りが見えなくなった。』
アリスはまた大きく溜息をつくと頭を冷やせ、悪い様にはならない様にこっちでも手を打ってやると言い残し馬に跨り去っていた。
マサユキは2、3日掛けて自領に戻ると諸将とも顔を合わせなかった。ヤートンとガストンが昼飯に誘っても、マシュやトマスがお茶に誘っても、ミシェエラが美女を伴って夜這…では無く舞を披露しようと訪れても彼はアッシュ以外に顔を見せなかった。翌日遂に城が完成したがその式典の日にも彼は暗い表情を浮かべながら淡々と感謝と祝辞を述べさっさと引き下がってしまった。流石にこれには兵と領民を不安になり噂が立ち始めた。
その夜マサユキはアッシュを伴い城のすぐ近くにある森の中を散策していた。実はマサユキは散々絞られて気落ちしているのでは無く、どうやってあの二人を亡き者に出来るかを模索していたのだ。此処数日の暗い表情はカモフラージュだったのだ。(尚他の二人も同じ事をしていたの言うまでも無い)だがマサユキは何も思い付かず、アッシュも何とも言えない顔を浮かべながら見守っていた。
マサユキ
『そろそろ帰ろうか。』
アッシュ
『はっ、では馬を連れて参ります。』
⁇
『連れないなぁ、夜は長いんだ。折角だからお姉さんともう少しお話ししてかない?』
聴き慣れない女の声に二人は驚きそれぞれアッシュは双剣を、マサユキは森での戦いでは大剣は不利になると判断して佩刀として下げていた剣を引き抜いた。
すると影から西方の大陸風の格好をした猫人の女が二人出てきた。
?
『ちょっとちょっと何で武器を構えてるのさ?話をしようって言ったじゃない?』
アッシュ
『どう見ても怪しい。話は城の中でだ‼︎』
アッシュが黒衣の猫人の方に飛び出し、マサユキも続いて話しかけてきた猫人の貴人の方に飛び出した。
?→トウカ
『やれやれ、しょうがない。キル、適当にやって押さえておいて。私はこの坊やを折檻するから。』
キル
『かしこまりました我が君。』
何とこの二人はアルサス帝国大商人クットゥーア商会総代トウカ・クットゥーアとその従者キルピコンナであったが当然マサユキは知らない。キルは双剣を抜き、トウカも短剣で応戦した。
キルピコンナとアッシュは互角の戦いを繰り広げ、そんな中キルピコンナは攻撃をいなしつつ後ろに後退し、遂に巨木まで後退する。
アッシュ
『命は獲らん。だが痛い思いはしてもらう‼喰らえ‼︎‼︎︎』
アッシュがトドメを刺そうとしたが、キルピコンナはまるで猫の様に身をかわしアッシュの後ろに立った。
キルピコンナ
『確かに手練れですね。でもまだ足りません。修行しなさい!』
キルピコンナに当て身を喰らわされアッシュは倒れた。その頃マサユキはトウカと剣と短剣で打ち合っていた。トウカは想像以上の手練れであり不利な短剣でマサユキと対等に戦っていたが流石に押され出していた。
マサユキ
『おおおおおお‼︎‼︎』
そんなトウカをマサユキがトドメの一撃を振りかぶりそのまま振り下ろすが何と剣は短剣の中央に入り、そのまま抜けなくなってしまった。実はその短剣は二つに割れており、根本には返しが設けられていた。その形状を今更になって見て取ったマサユキは声を挙げた
マサユキ
『しまった⁉︎ソードブレイカーか‼︎‼︎』
言い終わるが早いか、剣が折られるのが早いか、武器を無くしたマサユキはそのままトウカに腹を蹴られ木に当たりそのまま倒れた。
トウカ
『マサユキ・アヤセ、聞いた通りの子だったわね。ね?キル。』
キルピコンナ
『はっ、聞いた通りでした。』
マサユキ
『あんたら何処の間者だ?』
トウカ
『私の名前はトウカ・クットゥーア。アルサス帝国大商人。君達に鉄砲あげたのは私達よ?そして私達が手に入れる筈だった富の4分の1を台無しにした男がどんな奴か顔を見たかっただけ。』
マサユキ
『ああ、火薬の話か?残念だったな俺はあんたらの900年分は先の文明を持ってる世界から来た異世界人と言うものらしいからな。火薬製造の知識も趣味で覚えた位の代物だが十分使えたよ。今頃ドワーフのおっちゃんとかコボルトの学者先生達がモリモリ鉄砲と火薬を作りまくってるぜ。思い通りにならなくて残念だったなぁ。』
トウカ
『それくらいは予想はしてたわさ。別に気にはして無い。ふーん…、美男子では無いけど、なかなか良い顔してるじゃない。また会いましょ?未来の大将軍君。あ、ついでに教えてあげるけど、貴方あと少しで出陣するわよ。貴方と悶着起こし二人の子と一緒に。話を少し聞いてたからアドバイスしてあげれるとしたらチャンスは最大限に活かすことね。いつがその時なのか、どうやって使うのかを…ね?帝都に帰りましょキル。』
キルピコンナ
『それではお二人方ご機嫌様。』
そうして二人はまた森の影に消えていった。
マサユキと途中で気がついたアッシュは終始呆気にとられていた。
『『何しに来たんだあの猫娘共は?』』
後日…トウカの言う通り、マサユキ、シルヴァン、モーティアスに出陣の命令が下る。
マサユキは驚いたがそれでも久し振りの実戦、そして何より鉄砲部隊の初実戦であったから少し緊張気味であった。軍を率いて王都に着いたマサユキを迎えたのはカズマ、カテキ兄妹であった。
カズマ
『マサユキ殿‼︎』
マサユキ
『カズマ殿、カテキ殿。まさかお迎えに来て頂けるとは。』
カテキ
『此度の事は聞き及んでおります。どうか武運がありますようにと激励に参りました。そして五千人長の就任のお祝いの品をと思いまして。どうぞお受け取りください!』
マサユキに贈られた品はとても美しい刀であった。刄は銀色に光り輝き、淡い曲線を描いていた。(後にマサユキはドワーフの鍛冶屋にこの刀を見せたところ玉鋼をなんと四つも使って打たれてる事が分かり、刃こぼれはおろか鉄製の鎧ですら簡単に切断し得ると代物である事が後に判明する。)
マサユキは早速もらった刀を佩き、礼を述べるとそのまま王都閲兵場まで軍を率いた。王都の民はマサユキ達黒襷隊一同に歓呼の声で迎え入れ、数人の身分分け隔てなく集められた子供達が黒襷隊将校全員分の花束を持ち群衆の列から飛び出し、マサユキらは馬を降りそれぞれが走り寄ってきた子供達から受け取った。
閲兵場に着いた時にはモーティアス、シルヴァンの軍は既に着いており、マサユキも自軍を整列させると他の二人に倣い今回の指揮官になるオーランの前に整列した。
オーラン
『若造どもが、話は聞かせて貰ったぞ。全く血気に流行るのも良いが少しは考えろ。』
オーランは三人に言うと全軍に此度の出陣の理由を説明した。5カ国同盟は成立したが、それでも戦力に心許ない面がある為、この同盟に北方の騎馬民族を引き入れるべくソフィアが交渉に赴く。その間注意の目と時間稼ぎ、そして威力偵察を込めてマサユキ達に出陣の命が下ったのだという。将兵は騒ついた、長らく中央大陸を所狭しと暴れ回った蛮族との共闘など誰も考えた事がなかったのだ。オーランは将兵を黙らせると早速出陣の命令を下した。オーラン将軍幾何二万五千はこうして王都より出陣した。王都を行進中マサユキはロープで身を隠したソフィアを見つけた。ソフィアは指を唇に当てた。それを見たマサユキは胸に手を当てた。そしてこの一連の出来事をシルヴァンは見逃さなかった…。
王都を出て、アマルを過ぎ、遂にマサユキ達は帝国領に足を踏み入れた。遠征軍の攻撃目標として国境付近に中規模の要塞があり、アマルと要塞の間には幾つかの村落や町、そして砦が幾つかありそれらを全て占領ないしは破壊する事がマサユキ達の目的であった。尚この時アルトヘイムはおろか5カ国同盟参加国はノーロット帝国に対し宣戦を布告しておらず、完全な奇襲であり、マサユキ達は電撃的に侵攻することが求められてもいた。
オーラン軍の編成はこうだ。
オーラン将軍幾何軍1万(重装の槍兵や弓兵、弩兵、投石機、そして鉄砲隊で編成)
他の三人は模擬戦と編成は変わらないがモーティアス隊は投射兵500を鉄砲隊に更新している。戦列中央をシルヴァン隊が務め両翼をマサユキ、シルヴァンが務め後方にオーランが控えた。
奇襲と言うこともあったが帝国軍の抵抗は殆ど無くオーラン軍は次々と村落や町、砦を落としていき、出陣より僅か三週間で攻撃目標の砦の手前の地域まで攻め寄せたのだ。オーラン軍は町に駐屯し、他の三人は要塞に近い村落を見つけそこに滞在した。
マサユキは村落に滞在中(と言うより占領した町、村、砦どれも共通するが)占領地の民間人に対しての暴行を禁止、掠奪も最小限に留めていた。士気の低下を抑える為娼館への出入りの自由や酒舗の開放、多少の軍規の乱れは許したが、それが仇となったのかどうかは定かではないが軍は弛み切ってしまっていた。アマルからそれほど離れていないとは言え、広大な帝国領の進軍は兵達には応えるものがあったのだろう。マサユキはそんな現状を打開する為諸将を伴って村の食堂まで出かけていた。
マサユキ
『流石に不味いな…』
マシュ
『ご飯が?貴方フリカッセ好きだったでしょ?』
ヤートン
『飯じゃない今の俺たちがって事さ。』
マサユキ
『今後の占領統治を考えて行動してたが流石に締め付け過ぎたかも知れないな。兵達の不満が募ってるのが感じ取れるよ。』
アッシュ
『お館様。実を言うと我らの見えないところで兵達の暴行事件や強姦、掠奪事件が幾つか起きており、直属の上司により厳罰には処しておりますが、各部隊指揮官より対応の指示が殺到しております。』
マサユキ
『慰安制度や補給戦の概念が無いと此処まで兵達の不満に悩まされるとはな…よし暴行、強姦は当然ダメだが食料以外の金品等の掠奪も少し多めに見るとしよう。あくまで最低限だ。その分軍の資金から配当金を多めに出す。オーランの伯父貴に伝令を送ってくれ、配当金を少し多めに出す故可能であれば支援を要請したいと。俺たちも街とかに駐屯できれば良かったんだがな。』
トマス
『あっ、それじゃあ僕から提案が!』
ガストン
『おっ‼︎我らがトマス先生の知恵袋が開かれたぞ?良い考えを期待してるぜ?』
トマス
『買いかぶりすぎですよガストン兄さん。この辺は生き物が豊富だって聞いてます。駐屯中の間何回かに分けて狩猟祭をやったら如何でしょうマサユキ兄さ…いや、お館様?』
ミシェエラ
『良いじゃない‼︎兵達もそれで憂さ晴らしになる事間違い無しよ‼︎マーくん(マサユキ)やりましょうよ?』
マサユキ
『ん、じゃあやるか。あと2、3日の滞在のうちに2回くらいは出来るだろうから希望者を募ってやろう。あっ、女将さんお勘定此処おくよ〜。』
飯屋の女将
『あいよ、またどうぞ〜。』
マサユキ達が飯屋を出た瞬間黒いロープに身を包んだ人物にマサユキは襲われた。手には鋭い短剣が握られていた。
ガストン
『お館様ァァァァ‼︎‼︎』
一早く気がついたガストンが槍でマサユキを守ると今度は反対から同じ格好をした人間が飛び出してきた今度はマサユキが佩刀にしていた刀を引き抜きそのまま斬り伏せた。相棒の死に襲撃者は闇に姿を眩ました。そして少し後に近くにいた黒襷隊の兵士数人が慌てて駆け寄ってきた。
兵士
『殿ご無事ですか‼︎‼︎』
アッシュ
『お館様が襲撃された‼︎まだ下手人は一人生き残っている。探し出し、引っ捕らえろ‼︎』
兵士一同
『『ハッ‼︎‼︎』』
兵士達は剣や槍や鎧をガチャガチャ音を立てながら走り去っていった。その間ミシェエラとトマスが死体を見聞していた。フードの下は男であった。顔は誰も知らなかったが何処から放たれたのかは掴む事が出来た。
トマス
『お館様、下手人の兵装が帝国の物では有りません!』
ミシェエラ
『アルトヘイムの物に間違いないわ。この短剣や籠手はアルトヘイムのかなり高位の貴族に仕える兵や暗殺者が持ってる物と一緒ね。随分下手を打ったものだわ。』
ヤートン
『きっとシルヴァンの奴に違いねぇ‼︎オーラン将軍に伝えよう‼︎』
ガストン
『いや待て、モーティアスの可能性もあるんじゃないか?シルヴァンの奴は親父の宰相閣下とは違い政治はあまり得意じゃないと聞く、ひょっとしたら敢えて証拠を残させて俺達を潰し合わせる気かも知れないぞ。』
マサユキ
『または帝国が我々の中に混乱を齎そうとしたかも知れない。何にしてもこの事は部隊内に閑口令を牽き、オーラン将軍、モーティアス、そしてシルヴァンに警告を送れ。今は戦時、つまらない理由で軍の規律を乱す事はならない。それに誰が犯人であれ、この警告は我々からのメッセージにもなる。この程度でやられはしないという意味のな。』
場面は変わりシルヴァンの駐屯する村落では
シルヴァン
『そうか…ご苦労。公に宜しく頼む。』
怪しい風貌の男
『ハッ…それでは失礼致す。』
この時、シルヴァンは何者かと密約し暗躍していた。三人の五千人長はそれぞれ同僚二人を亡き者にしようと画策していたとは言えこの戦時で直接な行動を取る事を控えようと考えていたマサユキとモーティアスであったがもしやシルヴァンだけは直接的行動を取ったのだろうか?暗殺者を送り込んだのシルヴァンなのか?そしてそれを問い正さんとする男がいた。軍師ヨーステンであった。ヨーステンはシルヴァンの天幕に入るとすぐに問いただした。
ヨーステン
『若‼︎マサユキ五千人長の元に暗殺者が送くられたそうですがよもや若ではありますまいな⁇もしそうなら何故そのようなことをなさったのです⁉︎ましてや暗殺者を得るために大貴族共に頭をお下げになられた訳ではありますまいな⁉︎何故です‼︎変な対抗心や身分から来る自尊心が今回の件を引き起こしたのであればそんなの捨てておしまいなさい‼︎』
シルヴァン
『ヨーステン‼︎貴様、俺が貴族である事にどれだけの誇りを持っているのかは知っている筈だろう‼︎それが分かっていれば私があの成り上がり者を倒す為にあの腐敗した貴族共に頭を下げると思うか‼︎‼︎』
ヨーステン
『では身の潔白を証明していただきたいのです!先程マサユキ五千人長より書状が届き、暗殺者が出た事に対しての警告と暗殺者がアルトヘイムから来たことが書いてありました。恐らくオーラン将軍やモーティアス五千人長にも同様の書状を送ったと思われます。兵達の中には若の天幕から怪しい風貌の人物が出たり入ったりした所を見たという者も居るのです。そこから嫌疑が掛かればただでは済みませんぞ‼︎』
シルヴァン
『その者は懇意にしているさる貴族からの使いの者だ、怪しい者ではない。ヨーステン…俺は見た。行進の最中、群衆に紛れたソフィア殿下を、そして殿下と奴が別れを惜しむ恋人がやる仕草をしていた事を‼︎奴はソフィア殿下に取入り我がアルトヘイムをこの手に掴もうとしているかも知れんのだ‼だがな、だからと言って暗殺でけりをつけようとは思わん。』
ヨーステン
『とにかく暗殺者を送り込んだのは若ではないと、しかしまさかそんな…あり得ない。仮に殿下とマサユキ五千人長がそのような関係にあったとしても我が国では身分相違の婚約等に制限は有りませぬし、かのゴブリン、オーク襲撃時にマサユキ五千人長と殿下は出会い共に轡を並べ戦ったと言います。特別な感情を抱いても無理ないかと思いますが。それにもしその気ならマサユキ五千人長は文官になるべきでした。遥か未来の異世界から来られた御人なのですからその知識を用いて文官としての栄達を図れば若の言う様に王国の差配もより容易く敵いましょう。それをせず武官として己の腕での栄達を図ろうとするのは並大抵の事ではない事は若もご存知のはず。信頼せよとは申しませんが信用しても宜しいのでは?』
シルヴァン
『異世界人など信用できん‼︎我が父も父だ‼︎何故あの男を重用したのだ‼︎今に奴は本性を曝け出すに違いない‼︎俺は我が祖国の為に何としても奴に負けるわけには行かない‼︎絶対にだ‼︎‼︎そしてそこから始まるんだ‼︎真なる祖国の為の戦いが‼︎』
そう言ってシルヴァンは天幕を出て行った。残されたヨーステンは椅子に座り込んだ。
ヨーステン
『若は…変わられてしまった。昔はこの様な物言いをし、猜疑心に囚われるお方では無かった…!父を超えるという使命感や同世代の諸将を活躍に焦りを抱いたのか、まるで人が変わったような…。』
ヨーステンは自身の発言にハッとした。シルヴァンは確かに人が変わった。だが変わった時、それはあまりにも突発的だった。
ヨーステン
『真なる祖国の為の戦いか、調べてみる必要がある…。だが全てはこの任務が終わってからだ。』(そして若、もし私が考えている事を貴方がやろうとしているのなら尚のことあの二人の力を借りるべきです。)
それから2日経った後、マサユキ達は狩猟祭を行った結果兵達の気晴らしや馬術訓練という効果を上げ、士気も取り戻しつつあった。
その晩は移動準備の為全部隊が完全武装の警戒態勢でいた。マサユキ達も甲冑を着け、明日の朝日と同時に敵の要塞に向かって進撃せんとしていた。
マサユキ
『皆楽しんだ様だから安心したがあれから暗殺者の影が見えなくなってしまったな。』
マシュ
『やはり二人のうち誰かでしょうか?出陣前なのと先の襲撃が失敗したから警戒して?』
マサユキ
『そもそも考えれば俺を消したいなら戦場でやるべきではないか?鉄砲や弓矢、方法は幾らでもある。なのに暗殺者を送ってきた、どうも真犯人は違う気がする。』
と言った瞬間物見の騎兵が慌ててマサユキの前に馬を飛ばして駆け込んできた。騎手は馬から降りるが慌てて降りた為降りると言うより転げ落ちる形になり、その状態からマサユキに跪いた。
斥候
『殿ォ‼︎一大事にございます‼︎敵の要塞守備兵およそ一万五千、シルヴァン隊の駐屯する村に進撃し、既に戦闘に発展した模様‼︎‼︎』
ガストン
『なんだとぉ⁉︎』
マサユキ
『シルヴァン隊の状況は?』
斥候
『はっ!幸いにもシルヴァン隊の駐屯していた村は簡易的な城壁があり、敵も村落の被害を恐れてか積極的には攻めてはいませんが長くは持たぬかと思われます。』
ミシェエラ
『向こうと私たちの間にはちょっとした丘がある。それで戦塵が見えなかったんでしょうね。でも動きが早過ぎる。まるで…』
アッシュ
『機を窺っていたと見るが妥当でしょう。各個撃破の機を窺っていたんだ。』
トマス
『貴方はそのままオーラン将軍の本隊にも伝令に行って下さい。直ぐに援軍を呼ばなければ我々も危険です!』
斥候
『はっ‼︎』
諸将はマサユキを見た。チャンス到来、まさしくマサユキにとっては好機であった。シルヴァンを自らの手を汚さず敵に殺してもらえるという。更にこのままオーラン軍に合流し可能であればモーティアス隊とも合流出来れば2万、このまま優勢を維持しシルヴァン隊を悉く殺し尽くしたとしても敵は訳1万と少し圧倒的に数に於いての有利を維持しながら敵を叩けるのである。一石二鳥であるし、後者のみで見ても戦略的にはシルヴァン隊の救援は絶望的であり、本隊に合流するのは最適解とも言えた。だがそれは不義であった。マサユキの恩人はホルサス卿…つまりシルヴァンの父親であった。恩人の息子を死に追いやったなど、どうして出来ようか?マサユキにとって不義とは水と油のようなものであり、それは相性の悪い人間よりも忌み嫌うものであった。そしてマサユキは決断した。彼の中では普通なら信じられないが今この時は例外であると謎の整理が行われていたのか、数日前のマサユキならまず否定するであろう決断を下したのである。
マサユキ
『全部隊‼︎直ちにシルヴァン隊救援に向かえ‼︎モーティアス隊も、本隊も必ず援軍として現れる‼︎それまで何としても持たせるのだ‼︎』
諸将は立ち上がり敬礼の姿勢を取り、マサユキに一礼しながら応えた。
黒襷隊全将校
『『『はっ‼︎‼︎』』』
場面は変わり、既に戦場と化したシルヴァンの駐屯する村は敵の攻撃を受け続けていた。やはり敵は本格的には攻めて来なかったが、村の住民諸共踏み潰す用意は有るのか後方には投石機やバリスタが用意されていた。騎兵と近接歩兵は微動だにせずただ整列し、弓兵と魔道兵が激しい攻撃を加えていた。シルヴァン隊の兵達は住人を避難させながらその猛攻に耐えていた。
ヨーステン
『退くな‼︎援軍は必ず来る、防壁や盾から離れるな‼︎』
ヨーステンは村に防壁がある事を感謝したが空から飛んでくる矢や魔弾の前ではやはりその場しのぎにしかならない事を痛感していた。そしてノーロット帝国の恐ろしさを改めて実感していた。
ヨーステン
(この襲撃といい、村の損害を度外視した弾幕といいやはりかの国は他国と違う。彼らは効率官僚制国家。最も尊重されるのは効率だ。村人が何人死のうが我らを悉く討ち取れればそれで良いと考えているのだ。普通の連中じゃない。そして民がこの暴虐無人の振る舞いに怒りをあげないのはやはりその力による所なのだ…。)
すると遂にそうしようと考えたのか敵は歩兵まで動員し梯子と破城槌を持ち迫ってきたのだ。破滅の時は今訪れたのだ。ヨーステンは苦々しく観ていたが、彼も軍師、主君を支えるのが役目であったから直ぐにシルヴァンに迎撃すべきと進言した。
シルヴァン
『分かっている!聞け‼︎ホルサス家の兵達よ‼︎帝国軍は己が民すら手に掛ける畜生よ‼︎そんな者達に我等が負けるはずはない、皆気勢を上げ、立ち向かえ‼︎‼︎』
シルヴァン隊将兵
『ウオオオオオオオオ‼︎‼︎』
シルヴァン隊は城壁に登る兵を落とし、矢で射抜き、敵の矢弾に倒れながら必死に戦った。その様子を見ていた敵将ソドーは無言で手を前に出した。すると第二波の兵達が駆け出し、騎兵が歩き出し、来たる突入に備えて距離を詰めてきたのだ。それと合わせて遂に城門は破られたのだ。
帝国兵
『開いたぞ‼︎突っ込め!中で暴れろ‼︎』
そう言って突っ込んでいった兵達を見事な槍捌きと事前に門の前に配置した精鋭の槍兵と下馬した騎兵や騎士に斬り伏せられた。一人馬上で槍を振るうシルヴァンは大声で叫んだ
シルヴァン
『我が名はシルヴァン・ド・ホルサス‼︎雑兵共に遅れはとらぬ‼︎‼︎』
シルヴァンに気圧された兵達はジリジリと下がり出した。すると一人の兵が堪らず後ろに駆け出したがそれは斬られ、シルヴァンの前に放り投げられた。
ソドー
『ほぅ…若造が粋がるとはな。ならば相手をしてやろう!』
なんと総大将ソドー自らが馬を立てて来たのだ。理由は当然、中のシルヴァン達と逃げた兵を殺す為だ。
ソドーの大刀の様に大きく湾曲した槍とシルヴァンの槍が鋼鉄音をあげぶつかり出した。
実力は決してどちらかに傾いているということはなかったが体格差と経験のあるソドーに分があったのでシルヴァンは苦戦を強いられていた。ヨーステンは主君が一騎討ちになったのを確認したが、それの決着がつく前に城壁を越えられてしまう事を覚悟しなければならなかった。
ヨーステン
(流石に数の上では勝てん…持ち堪えられない…!抜かれてしまう…‼︎こうなれば…若だけでも…私の命を懸けてでも…。)
そう指示を飛ばそうとした瞬間…‼︎
?
『それは無いな‼︎』
なんと右から轟音が鳴り響き、鉛の弾幕と矢と魔弾の雨が帝国兵達を襲った。そしてそれは左からも襲いかかって来たのだ‼︎
目の利くシルヴァン隊の将兵はその左右から現れた存在の正体を見てとれた、そして声高く叫んだ。
シルヴァン隊兵士
『シルヴァン様‼︎ヨーステン様‼︎援軍です‼︎‼︎黒襷隊とモーティアス隊が到着‼︎‼︎』
ヨーステン
『来てくれたか…。』
ソドー
『ムゥ…。』
シルヴァン
『………。』
—————モーティアス隊本陣——————
モーティアス
『鉄砲第二射急げよ!ただでさえ向こうの方が数が多いんだ。削れるだけ削らないと俺たち迄巻き添えだ‼︎』
ヘルムート(モーティアス隊副将)
『若様、敵の後方部隊は如何致しますか?』
モーティアス
『それは黒襷隊に任せておけばいいさ。軽騎兵を余してるマサユキにやって貰おう。俺達は中遠距離から援護するんだ。マサユキ達には当てるなよ。啀み合う時間は終わったんだ。(こうなる事もまさかあなたの盤上では織り込み済みだったのですか?宰相閣下?)』
———————黒襷隊本陣———————
マサユキ
『モーティアスが支援攻撃に徹してくれるみたいだな。軽騎兵は敵の投射部隊を片付けてこい。指揮はアッシュが取れ、投射部隊はこの場に残り支援攻撃を続けろ指揮はマシュ、トマスに、残りは俺とこい‼︎』
アッシュ、ヤートン、ガストン、トマス、マシュ、ミシェエラ『『ハッ‼︎』』
マサユキは大剣を大きく掲げると歩兵と騎兵の戦闘に立ち叫んだ‼︎
マサユキ
『全軍‼︎突撃ィ‼︎‼︎速き事、風の如く‼︎』
黒襷隊全力の突撃はあっという間に帝国兵に届き城壁を登っていない帝国兵は背後から蹄やハルバードの餌食になり登ってる最中の兵は鉄砲と矢弾の餌食になった。ソドーは形勢が逆転する前に撤退する事を決めた。
ソドー
『鉄砲か…味な真似をする。お前達が先に用いるとはな。』
そう言うとソドーは馬を反転させて逃げていった。シルヴァンは後を追おうとするもまだ多くの兵がおり、それらが阻んだのだ。
シルヴァン
『待て‼︎クソッ…まだこんなに居たのか。』
しかし城門を超えた兵達はマサユキの大剣と魔法で屠られ、城門は再び外の風景を映し出した。
マサユキ
『シルヴァン‼︎無事か?城門は抜けたがまだ敵が多い‼︎敵将も逃げちまったぞ!』
シルヴァン
『マサユキ!奴は要塞まで戻り援軍を求める気だ‼︎』
モーティアス
『だが追撃しようにも無理がある‼︎』
マサユキ
『モーティアス、抜けた来たのか?』
モーティアス
『ああ、だが帝国兵が大将を逃す為に戦列を整えてもう一回突っ込んでくるみたいだ。早い段階で引いたみたいだからまだ戦力もそれなりに残ってる。追撃に迎えば流石にこの村も落ちるぞ!』
シルヴァン
『クソ…どうすれば!』
するとラッパとドラムの音が鳴り響き三人の前に騎馬の一隊が現れた。先頭にいたのはオーランであった。
オーラン
『事情は把握している。ここはわしに任せてお前達は精鋭を率いて奴を討て!』
そう言った瞬間最後の力を振り絞って襲いかかって来た帝国兵がオーランに迫った。オーランは手に持ったフレイルで全員を叩きのめした。その手際に三人は口が塞がらなくなっていた。
オーラン
『何をボヤボヤしておる。早くいかんか‼︎‼︎』
マサユキ、シルヴァン、モーティアス
『ハ…ハハァ‼︎‼︎』
三人は精鋭の騎兵を集めるとソドーを追い掛けた。道中先頭を行く三人のうちシルヴァンが口を開いた。
シルヴァン
『二人とも…助力感謝する。そして謝らせてくれ…あの時はすまなかった。とても褒められた事はしていないと反省している。』
マサユキ
『謝るのは俺の方だ。俺は君達の誇りを足蹴にして馬鹿にした。義に反する行為だった。申し訳ない。』
モーティアス
『俺も謝らせてくれ…俺は二人のことを頭ごなしに見下し、無礼を重ねた…もう二度とするまい。許してくれ。』
マサユキ
『では和解したところで、三人であの男の首を取り、将軍への一歩を踏み出そう!』
シルヴァン
『ウム!』
モーティアス
『ああ!』
因みにこのやり取りを三隊の諸将は一安心と思い胸を撫で下ろしていた。
そうこうしている討ちにソドーに追いついた。マサユキは馬の鞍に下げていた鉄砲を取り出した。だがそれは銃身が切り詰められていた。初めて見るタイプに二人は目を丸くした。
シルヴァン
『マサユキ、それは鉄砲か?少し小さく無いか?』
マサユキ
『騎兵銃(カービン)と言う。馬上で扱いやすい様に普通の銃を切り詰めて作るものだ。だがこいつはドワーフの鉄砲工場に依頼して造らせた内の一つを貰い、さらにライフリングという銃身の中に螺旋状の溝を彫って弾の射程と精度を上げた特別製だ。』
モーティアス
『つまり普通の銃とは比べ物にならない程精度と射程に優れると?』
マサユキは構えながら答えた。
『そうだ、だが装填には時間が掛かるし、ライフリングは今の技術では量産は困難だ。』
轟音と共に騎兵銃は火を噴いた。マサユキはソドーを狙ったが馬上である為身体が揺れ、射線が僅かにずれ、ソドーの護衛に当たった
マサユキ
『クソ‼︎逸れた!だが問題無く殺せるな!』
ソドー
『…あの程度か蹴散らすぞ。』
帝国騎士
『ハッ…殿に続け。』
モーティアス
『来たぞ!みんな準備は良いな‼︎』
ソドーの護衛と追撃隊は激しい戦闘を繰り広げた馬上戦はと言うよりどの戦闘でもそうだが、正しく一瞬の隙が生死を分ける。三人の青年は邪魔する騎士を屠りソドーに挑んだが三人掛かりでも攻撃を防ぐので精一杯であった。
戦ってる最中ソドーの攻撃を諸に喰らったシルヴァンは体制を崩してしまう、ソドーはとどめを刺そうと槍を振り上げた。
マサユキ
『やらせるか‼︎』
間一髪‼︎マサユキのバルムンクは槍を弾き、モーティアスは氷の礫を槍を持つ右手に当て、ソドーの右腕を氷塊に変えてしまった。
ソドーは逃げ出そうとするがその隙を見逃さなかったシルヴァンが槍を突き入れ、ソドーは絶命した。
マサユキ
『勝った…。』
モーティアス
『勝ったな…。』
シルヴァン
『ああ、勝鬨を上げろ‼︎』
騎兵と騎士達の鬨の声が夜の闇に木霊する。それは村や要塞まで聞こえ、ソドーの兵を倒し終わったオーランはそのまま軍勢を率いてマサユキ達と合流すると勢いのまま、要塞を落としたのであった。5カ国連合の初の勝利であった。