歴オタミリオタ介護福祉士が異世界転生して外道鬼畜と言われようと手段選ばず天下と美少女の眼差しを受け続ける退屈じゃない毎日を目指す様です。 作:オラニエ公ジャン・バルジャン
アルトヘイム王城ではマサユキ達の勝利を聞き、ほくそ笑んでいる国王フレデリックと宰相ホルサスがニヤニヤしながら趣味のチェスに勤しんでいた。
ホルサス
『チェック‼︎』
フレデリック
『ああ⁉︎ちょっと待て‼︎頼む‼︎一回でいい‼︎』
ホルサス
『なりません陛下、待てが使えるのは一敗多い者のみと決めたではありませんか?』
フレデリック
『ムゥ…これでまた同点か。して本物の戦場での君の策も成就したのだからさぞ機嫌が良いだろうなクリストフ?』
ホルサス
『ハハハ…馬鹿息子共の尻拭いをしたまでの事、見ておけませんでしたからな、かつての我々のように。どうしようもない理由で啀み合う者を友人とは行かずとも戦友として認め合うには戦場で窮地になり、それを突破するのが一番と決まっておりますから敵将には偽の情報を流しました。まんまと引っかかって敵将は要塞を出て、三人は力を合わせた…。無事に成ってようございました。』
フレデリック
『かつての我々か、私と君と…そして…。』
ホルサス
『彼女です。オートクレール卿は…マサユキは彼女に似ています。こちらに飛ばされた年齢はマサユキの方が上ですがな彼女は17で我らの世界に来ましたから。』
フレデリック
『この後彼女に逢いに行こうか…長らく会っていない。彼女に彼らの幸運の女神になってもらうよう頼もう。』
ホルサス
(君と同じ世界、国から来た青年は今君と同じように暗黒騎士の素養を示し、戦ってくれている。君達はどうして平和の世の住人なのに良くも悪くも自ら修羅の道を行く。そう言うふうに作られているのかい?日本人は…。ひょっとして彼を使わしてくれたのは君なのかい?死して私達を心配してくれるのか。)
フレデリック
『そう言えば彼らについて一つ提案があると言っていたな宰相。今聞こうか。』
ホルサス
『はい。彼らが将軍に昇進する前にもう少し戦功を上げさせねば他の者達に示しがつきません。ならばそこで彼らの師にふさわしい将軍達の元につけ修行させようと思うのです。彼らの長所を伸ばし短所を克服できるように教えられる師に。』
フレデリック
『ほう、師か。其々につけるのであろう、誰につけるのだ?』
ホルサス
『先ず我が息子は私自らの手で鍛え上げようと思います。近々出立する我が第二王室近衛軍団に合流させます。』
フレデリック
『ホルサス家の定めを継承する気か…良かろう。して次は?』
ホルサス
『モーティアスは、我が父クブルス老に。フィンガーフート卿たっての要請でして、師を得るのであれば気心の知れている戦友が良いと…彼にとってもモーティアスはたった一人の孫息子、ただ一人の肉親。過保護とも言えますがそれで信用における師としてこの国最長齢の大将軍を推薦するのですから流石は宮内卿といった所でしょうな。』
フレデリック
『クブルス老から学べば知略に優れた将になるのは確実だな。…して最後は?』
ホルサス
『マサユキは…あの御仁に託そうかと…もう一人の暗黒騎士にして、我が国が北方より襲来する騎馬民族やオーク、ゴブリンの大群を防ぐ為だけに創設され、秘匿され続けた北方軍総大将にして影の大将軍に。』
フレデリック
『あの御老人か⁉︎他の将と違い一切中央に顔を出さず、最後に顔を見せた時は我が祖父の代だと言うがそんな彼が首を縦に振ったのか?あの変人が、一体どんな魔法を使ったのだ宰相。』
ホルサス
『どうやら何処かでマサユキの話を聞きつけたようで要請を出したら直ぐに二つ返事で良しと帰ってきましたよ。併せて今後は総力戦になりますので北方、ハドシア商業王国領と教皇庁の間に伸びる蛮族を防ぐためにアマルガム帝国時代に築かれた『帝国の石壁』を守る為の戦力をアーシェ殿下の軍より割いてくれるので将軍には北方よりノーロット帝国攻めに参加すべしと。すると返事には畏まった、もう二度と敵が来れぬよう完膚無きまで殲滅致すと返してきました。』
フレデリック
『ハハハハハハハ‼︎そうかあの御仁が殲滅!これはオークもゴブリンも、騎馬民族ももう二度とアルトヘイム軍を相手するのを拒むようになるかも知れぬな。しかし宰相、将軍の返事、これは…。』
ホルサス
『普段であれば応か否でしか返してこない将軍がえらく饒舌になりましたからな、何か意図があるかと、そしてそれは…』
フレデリック
『マサユキに先ず己が戦い方を見せ、見て学べと言うことか。』
ホルサス
『あの方らしい。もう既にオーラン軍の元にはクブルス老の軍が向かっており、合流次第、兵員の回復と我が幾何軍に合流する為シルヴァンは王都に、マサユキには北方に向かうよう伝令を送りました。』
フレデリック
『仕事が早いな。して娘は順調に彼の地に向かっているのか?』
ホルサス
『はっ。アリスを供につけました。ひとまず安心かと。アリス騎士団長の軍はリューネ騎士団長が一時的に指揮を代行しております。』
フレデリックは席を立つと窓の外に浮かぶ月を見ながら呟いた。
フレデリック
『女神よ、どうか若者達をお守り下さい。』
そして遠く西方の地、マサユキ達が死闘の末奪い取った要塞の広場では怒号と歓声の渦が起きていた。剣と槍を戦わせるマサユキとシルヴァンがおり、その中心にモーティアスが居る。三人はあの戦い以降行動を共にすることが多くなり三人はここで稽古していたがいつの間にか人集りが出来るほどになっていた。オーランも酒に焼いた川魚を片手にのんびり鑑賞していた。
マサユキ
『約束忘れてないよな⁉︎』
シルヴァン
『勿論だ。三人のうち一番多く取られたやつが!』
モーティアス
『今日の飯を奢る。俺は兎も角二人は大飯食らいだからな本音を言えば此処で共倒れしていただきたいね。』
シルヴァン
『残念ながらそうは行かないな‼︎』
強烈な突きをマサユキは間一髪で躱し、空いた右手で刀を抜き二刀で反撃した。シルヴァンも負けじと槍と短剣で応戦する。
マサユキ
『ダァー‼︎クソあともう少しだったのに‼︎』
モーティアス
『ハハッ!左利きの人間は器用だからな。そりゃ警戒されるわな。』
するとオーランが立ち上がり三人の稽古を止めさせた。
オーラン
『お前達、今日はわしが持とう。客じゃ。』
そう言うと深々と頭を下げ道を譲るオーランの後ろから現れたのは大将軍クブルスであった。全将兵が跪いた。勿論それは三人も例外ではない。
クブルス
『ホッホッホッ。そんな畏まらんでも良いわい。オーラン、お主の軍はワシの軍に編入じゃ。それとフィンガーフートの孫っ子はおるかの?』
モーティアスは呼ばれ直ぐに老将軍の前に出て跪いた。
モーティアス
『モーティアス・ド・フィンガーフート参上仕りました。』
クブルス
『お主はワシの特別遊軍として我が軍に配属じゃ。次にシルヴァン、お主は父の軍に所属せよ。王都に帰還するのじゃ。』
シルヴァンは祖父に言われ、モーティアスと同じ様に行動した。
クブルス
『そして最後にオートクレール子爵マサユキ。』
クブルスの呼び声に応え、マサユキは他の2人の様に老将軍の前に跪いた。
マサユキ
『はっ、これに。』
クブルス
『お主は北方、帝国の石壁に向かえ。』
居並ぶ全ての将兵が驚愕の表情を隠せなかった。帝国の石壁の説明は先にしたが、そこに派遣されるという公の意味は本来なら帝国方面からしか来れるはずのない北方の騎馬民族やオーク、ゴブリンを見張るという程のいい左遷であった。勿論、マサユキはそれを承知していた。だから衝撃を隠せなかった事に加え、シルヴァンやモーティアスもあまりの事態に開いた口が塞がらなかった。この場にいる全ての将兵が認識している事が有るとすれば、アルトヘイム軍の中で頭角を表している若手の将の筆頭格三人のうちの1人がまさかの左遷誰が素直に認められようか。だが現実である。
マサユキは己に突きつけられた現実と戦いながらも震える声で答えた。
マサユキ
『は、拝命…致しました…。しからば準備がありますので…御免』
マサユキはふらつく足でその場を後にし、黒襷隊諸将や兵達も声を掛けられず、当然他の兵達も出来ず、ただ見送る事しか出来ず、他の2人や上官の2人にも簡単な挨拶のみを残し、トボトボとマサユキは去っていた。
その後ろ姿をクブルスとオーランは見送っていた。オーランはクブルスに問うた。
オーラン
『マサユキの左遷の原因はやはり先日の昇格式でしょうか?他の貴族達がマサユキの栄達を邪魔する為に王室に圧力を掛け、戦時下においての諸侯の協力を得られないという事態を避ける為、貴族の行動を王室がお認めになったとか。』
クブルス
『そんな事があってはたまらんじゃろ?先ず陛下やワシの息子がそんな圧力で負けるタマの小さい小僧どもではないわ。寧ろこれを機にと貴族一掃の口実にするかも知れんぞ、あの性悪息子は。』
オーラン
『では何ですか?マサユキの戦功を考えても明らかに不当です。』
クブルスは暫く沈黙したがぽろっと口から溢れでた言葉はこうであった。
クブルス
『あの酒呑みめ、今度は何する気じゃ。』
オーラン
『酒呑み…?』
クブルスはかつての部下に聞かれ、しまった…。と思いつつも己の胸中を理解する仲間が欲しかったのか。そのまま溢し始めた。
クブルス
『オーラン、お主も覚えておるじゃろ。あの大酒呑みを…本能のまま戦わせたらおそらくこの大陸で最も強いあの男を…。ワシは忘れられんよ、あの戦友を、あの人騒がせな奴を、あやつの尻拭いをさせられ、振り回されてこっちは何度も死に掛けたからの。』
オーランはクブルスの言葉に思い出され、畏怖に包まれた、オーラン程の勇将が畏怖するなど先ず有り得ない。だが現にオーランは震えているのだ。身の毛がよだち歯がガタガタ言っている。
オーラン
『あ、あの方ですか…?ですがあの方は御隠居…為されたはずでは?ま、まさか…噂の北方軍ですか…?今もあの方は…大将軍として軍を率いておられるのですか…。そ…そんな…。』
クブルス
『帝国の石壁は以下に巨大な建物であろうとアマルの様な魔法障壁は無く、老朽化も進んでおる、それに敵もバカではない、長城を越える手段はいくらでもある。民達が考えてるようにのほほんとしていたらワシらは今頃馬に蹴られておるかオーク、ゴブリンに昼飯にされておるよ。』
オーラン
『人知れず戦い、第二次ノーロット帝国侵略戦争に際しても秘匿され正規軍の中に記録される事が無かったアルトヘイム精鋭にして、最恐の北方軍…実在しているとは…。』
クブルス
『国境の近いハドシア側にもうまく隠しているそうじゃ、ワシも大将軍になったときに知らされた。ともかく、マサユキは呼ばれたのじゃ。あの男に、生存する中では恐らく最高齢にして最強の暗黒騎士オグマに。』
______________________
北方に向かう黒襷隊は正しく幽鬼の列の如く暗いものに包まれていた。あれだけ武勲を重ねて、五千人隊になった自分達がありもしない襲撃に備える程のいい厄介払いを受ける事になるとは露にも思わなかった。普通の兵なら安全な後方と思うかもしれないが常に吹雪に襲われる激しい山間に建てられた帝国の石壁はお世辞にも安全な後方とは言い難く寒さに凍え死ぬか、運悪く氷柱が落ちてきてそのまま串刺しになることもしばしばあるとされる程の危険な僻地であった。それを知っているが故に快速を誇る黒襷隊の行軍速度は過去最低であった。(後年残される記録を比較して)
さてそんな中、先頭をゆく諸将の中で先に帝国の石壁を見たのはアッシュであった。
アッシュ
『殿、あれが帝国の石壁です。』
一行の前には巨大な建造物が現れたハドシアからアルトヘイム、そして教皇庁と跨がるように存在するハドアニアン山脈、そしてアルトヘイム内に自然に発生した窪地をいっぱいに作られたのが帝国の石壁である。険しいハドアニアン山脈のの中で唯一緩やかなこの地は蛮族の侵入にはもってこいであった。そこでアマルガム帝国はその地を山と認識するのが難しいほど平地に開拓して丘程度にし、さらにその先に手が加えられず険しいままの東西に分かたれた山脈に繋げるかのように巨大な城壁を作り誕生したのが帝国の石壁である。
吹雪の中にありながらもその巨大な城壁は誰の目にも堂々と姿を表していたがやはりその場には生命の息吹は感じられない。
マサユキ
『こんな石の塊が俺たちの当面の家か…』
寒さを凌ぐ程度しか期待出来ない新たな職場に一行の落胆は益々大きくなっていったがその時ハーフエルフ特有のエルフにも負けない聴力を持つマシュが不自然な音を捉えた。
マシュ
『まってマサユキ‼︎……何か聞こえる。』
マサユキ
『まさか雪崩か⁉︎』
マシュ
『いえ、でもこれは…馬の走る音、怒号、剣戟の音…これは戦の音よ‼︎』
ヤートン
『まさか‼︎ここの警備兵と近くの諸侯がダラダラ訓練してる音じゃないのか?』
マシュ
『そんなもんじゃない‼︎……間違いない、石壁の裏で戦が起こってる‼︎』
マサユキもピリッと異様な空気を感じ取ったのか辺りを見回し、石壁の近くに裏まで見渡せる岩場が出来ているのを見つけた。そのままマサユキは馬を走らせ、その岩場まで駆け上がり諸将もそれに続く兵達もその辺りで待機し、己が大将が何を見つけたのか理解できずとも血相を変えた程の事だとは理解していた。そしてまるで示し合わせように吹雪は止み、視界は良好、まさに晴天であった。そしてその次の瞬間、マサユキの目に飛び込んでいたのは、十万はいるオーク、ゴブリンの大群に立ち向かう…というより一方的に押し上げている白黒の出立の四万程のアルトヘイム軍旗を掲げる軍勢が戦っていたのだ。
それを見たものは信じられないという表情を隠せないでいる。
ミシェエラ
『なに…あれ。』
ガストン
『とんでもねぇ数のオークにゴブリン…あんなのが毎日帝国の石壁の裏にいたのかよ。』
ヤートン
『いやそれよりもそいつらと戦っているあいつらは何だ。味方みたいだが…強過ぎる。ゴブリンは兎も角体格差のあるオーク相手に全く怯まねぇ…槍兵がオークの突撃に動じないなんて信じられねぇ…。』
トマス
『御館様あれを‼︎』
トマスの指差す先には五千程の騎兵軍団が蛮族の大軍を蹴散らしながら突き進んでいく光景があった。そしてその先頭には装備の豪華な騎士数百名とそれよりも先を掛ける大剣を振るい戦う将軍の姿があった‼︎マサユキはその将軍が暗黒騎士である事を一目で見破った。大剣を持って居るだけの将ならいくらでも居る。だがその漆黒の鎧に纏わり付く魔力これはマサユキにも覚えがあるものだが力は桁外れである。いや寧ろマサユキを惹きつけたのはアリス達三人の女騎士やクブルス老のような物とはまるで違うが似通った威圧感、気配であった。将軍では到底出せないもの。つまり大将軍の威風であった。だがこの将が出して居るものは完全な武人の気風である。それに当てられたのか敵は前に力を踏み出せずそのまま吹き飛ばされ、味方はその後を狂ったように続く。
マサユキ
『まるで…まるで…漫画のキャラクターじゃないか…名前は思い出せないけど、あんな感じの爺さんが暴れてたな。』
マサユキはかつて転生する前の世界にいる時に読んでいた漫画のキャラクターを今破竹の勢いで突き進む将に重ね合わせていた。そしてその漫画の表現をそのまま使うのなら正しく天下の大将軍と言えるだろうその将はそのまま突き進み遂に指揮を取っていたキングオークやキングゴブリンを次から次へと己の手で討ち取り遂には指揮系統を全滅させた。そこからは蹂躙劇である。騎馬はその将に率いられ順応無尽に走り回り、歩兵は尸の山を築き、弓兵や弩兵、そして魔道兵は魔弾と矢とボルトの雨を降らせた。そして戦列後方に待機する投石機とバリスタは次から次へと火弾やボルトを撃ち込んでいた。普段なら歩兵部隊に投石機を当てるなんて至難の技だが、なにせ敵は十万の塊であるからどこに撃っても効果絶大のこの時は正しく敵側からしたら悪夢である。更に驚くべき事にマサユキは初めて見たがなんと数百程だが天馬…つまりペガサスに跨がる騎士達も騎馬軍団とはまた違う方向から突撃し、敵を敗走させていた。
マサユキ
『お、おい!あれはペガサスか⁉︎あんなもんが居るのか。この世界は。』
アッシュ
『我等の世界においては優秀な軍馬を除けばそれと同等、または凌ぐ存在といえばペガサスですから珍しくは有りません。我が国では三龍騎士団のアリス将軍やリューネ将軍、アーシェ殿下が騎乗する飛龍や近衛騎士の騎乗する地龍とは別にペガサス騎士が所属し、他国に於いてもペガサス騎士は精鋭騎士団として存在しますが、アルトヘイムはペガサス騎士団はその三騎士団しか存在しないと聞いていましたが、あの軍にも存在していたのですね。』
そうこう話して居るうちに戦は終局していった。十万いたはずの蛮族達は殲滅されていき、僅かに残った1万少しが小隊規模になり散り散りになりながら逃げていく。それを見ながら石壁の外で戦う軍勢は勝鬨を挙げていた。その声は山脈中に木霊し、自らは秘匿されて居る存在とは知ってか知らずかは知らぬが精一杯の気勢を挙げていた。そしてその総大将と思しきかの将は自信に満ちた笑みを浮かべながらマサユキ達の方を見た。そんなバカな話があるわけがない。マサユキ達の居る岩場はその位置からだとあまりにも遠い為マサユキ達は到底見えない筈だったがその将は間違いなくマサユキ達を見ていた。マシュですらその距離は見えるか見えないかの距離にも関わらずその将は見ている。実は彼は目でマサユキ達を捉えているのではないのだ。気配であった。だが、だとしてもデタラメである。
マサユキ
『俺たちを見てる…なんて人だ。』
マサユキは岩場を降りると諸将と兵を引き連れ、石壁の巨大な城門の前に馬を走らせ、自身は道の横に跪いた。すると巨大な城門が開きその将が自らの軍勢を引き連れ戻ってきたのだ。体格は大きく、白髪を肩まで伸ばし、髭も首ほど伸ばし、野性的見た目をした50後半程の男が馬に跨り片手に大剣、片手に盾を持ち、威風溢れる出で立ちで馬に跨っていた。そしてそのままマサユキの前まで馬を歩かせ、そこで止まり軍勢も同じように停止した。そしてその将はマサユキを見ず、そのまま問い掛けた。
?
『童マサユキ、これが大将軍の戦じゃ。ワシは軍略、計略を必死に事はせず、勘、本能に従ってワシは戦っておる。お主も目指すところはそこであるな?』
マサユキは聞かれたと同時に更に深々と頭を下げ答えた。
マサユキ
『はっ。左様でございます。私は故郷にいた時より知識として軍略計略を知りましたが、それを正確に使う力は持っていませんでした。これまで戦い抜いたのは将軍と同じく、本能と思っています。敵がどう動くか感覚的に分かるという才を生まれながらにして授けられました。その才を伸ばしたく存じます。』
?
『火じゃ…戦場には火がある。ワシら『本能型』(軍を指揮する指揮官には二つのタイプがあり、敵の動きや生物的本能で軍を動かし、敵の行動を読む本能型と、軍略計略を駆使して知恵で戦う知略型が存在する)の将はその火を燃え上がらせて戦う。方法は幾らでもある。味方の戦意、敵の弱点や行動、色々じゃ。だがそこから大きな火をつけてやればそれは消しようのない大火になる。童マサユキ‼︎』
マサユキは身を引き締め、老将の次の言葉を待った、そして理解した。自分がこの地に来たのはこの人に会う為なのだと。
?
『どんな局面に陥っても火だけは絶やすな。それがワシらの力になる。まぁワシから学んで行くうちに少しは言っている意味が分かるじゃろう。お主達黒襷隊は我が北方軍に編入じゃ、我等はこれよりハドシア領に入り、同地の軍を支援、共に戦列を組みながら当面の目標、ノーロット帝国第六都市を攻める。全軍、この大将軍オグマに続け‼︎前進じゃぁぁぁぁ‼︎‼︎‼︎‼︎』
全軍
『ウオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎』
これ程の熱気を持った軍勢はマサユキは知らなかった。当然アルトヘイム軍にも敵であるノーロット帝国軍にもこれ程の熱気を持った軍勢とそしてそれを起こす将は居なかった。そしてその熱気に初対面で全く知らない将軍にも関わらず己の部隊の兵が吊られて鬨の声を上げているのである。
マサユキは決意した。この人のような将軍になろうと、このオグマという大将軍から学びとれる事は全て学びとろうと。そしてこの時北西ではハドシア王国軍が、南西ではエルフラーシュ、サン・モシャスの連合軍がそれぞれ国門を越え、帝国領に進軍、それぞれの進路をとり、帝国第六都市に向かっていった。それと同時に反帝国同盟はノーロット帝国に対し正式に宣戦を布告、後に語られる統一戦争が幕を開けたのである。天下を手にする為の戦いが始まったのだ!