歴オタミリオタ介護福祉士が異世界転生して外道鬼畜と言われようと手段選ばず天下と美少女の眼差しを受け続ける退屈じゃない毎日を目指す様です。   作:オラニエ公ジャン・バルジャン

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4話 アマル奪還戦 1

(お母さん、エルフの街付近の村々を荒らし回る盗賊団が討伐されて2ヶ月が経ちました。この街を中心に色んな村に資材や人が集まり少しでも傷跡を癒そうとしています。もう復興できない村はエルフの街のすぐ近くに新しい村を作り、そこで生活を始めました。私がお仕えする方はその新しい村や町、他の村々の街繋ぐ馬車便の整備を王都に進言してより往来を多くしようと苦労されています。

 

かつては盗賊団に怯える人々でしたが、街や村を守ってくれる新たな千人隊の存在があって、今や怯える人は居ません。みなその肩や腕に巻かれた黒い襷や翻る獅子と六枚の銅貨が描かれた旗に安心感を覚えているみたいです。旗の意味はアルトヘイムの象徴である獅子と死後の世界でこの世とあの世を隔てる川を渡る渡し船の船賃だそうです。

 

自分達はアルトヘイム王国とアルトヘイム国王の為に戦い、祖国と国王の為に死ぬ。そのための覚悟は出来ている。道連れにしてでも敵を倒すといった意味だそうです。

怖いですよね?でもその旗印の通り、みんな忠義心に溢れる人達ばっかりですし、200人隊長のお胸の大きいお姉さんは最初は怖い人かと思ったけど、話してみるとすごい優しい人だったし、筋肉モリモリのお兄さんはかっこいいし、同じくらい筋肉モリモリだけど顔が綺麗なお兄さんは最初はすごい軽い人かと思ったらすごい熱血漢だし、私より一つ年下だけど200人隊長をやっている男の子はみんなから天才って言われるだけあってすごい頭が良いんだけどそれを鼻に掛けることなく誰彼構わず敬語を使ってみんなから信頼されるいわゆる好少年みたいな男の子です。

 

そんな人達を率いる千人隊長、私がお仕えする方は異世界から来た人なんです!凄いですよ‼︎お伽話は本当だったんですねお母さん‼︎でも私はこの人が少し怖いです。いつもは凄い優しいお兄さんなんですが、たまにある戦闘になると性格が豹変してしまいます。まるで戦争を楽しんでいるかのような…でも私はこの人から離れようと思いません。私達がアマルで暮らしていた所をゴブリンに襲われ、お父さんを殺され、お母さんと私がゴブリンに…乱暴にされて、最後は犯されて…。あの人がやった事がどんなに残酷でも結果的には私達を助けてくれたあの人を…綾瀬昌幸千人隊長にお仕えするってリリィは決めました!また手紙を書きます。どうか王都でお元気でいて下さい。貴方の娘 リリィより)

 

リリィ

『おはようございます皆さん‼︎』

 

胸の大きいお姉さん→マシュ

『おはようリリィ!』

 

筋肉モリモリの顔の綺麗なお兄さん→ガストン 『相変わらず元気だなリリィちゃん。』

 

筋肉モリモリのお兄さん→ヤートン

『おはようリリィ‼︎今日もよろしくな!』

 

一個年下の好少年→トマス

『おはようございますリリィさん。これで皆さん揃いましたね兄さん!』

 

そうトマスが投げ掛けると皆に背を向けていた椅子が周り座っている人物が姿を現した。

黒い鎧を身につけ、白いマントを身につけた若い男である。千人隊長になって日が浅いが、もう既に一軍の将としての風格が出始めていた。

 

頭のおかしい異世界人→昌幸

『やぁ、リリィ。さて皆先ずは俺の話を聞いて欲しい。今、王都に戻っていたアッシュが帰ってきた。話によると遂にアマル攻めを行う事が決定した!もう既にアリス大将軍麾下アルトヘイム軍8万が各地より出撃した。』

 

おお!と皆は声を上げた。アルトヘイム国境の町アマル…。ノーロット帝国との国境に位置するこの城塞都市はありとあらゆる防衛兵器や通常より高めに作られた城壁を保有する鉄壁の城塞都市であった。然し、ノーロット帝国の侵攻でこの堅牢な城壁に穴を穿たれ、そこから間髪入れずゴブリンの大軍勢の侵攻を受けてしまった為陥落してしまったのだ。然し未だ国の内側の城壁は無傷に近く、ゴブリン軍はどうやら上手くその防衛兵器を使いこなし、しっかり拠点化してしまっている。

その国家としては重要拠点であるアマル奪還を遂に王国は決断。王都近郊の平原での大勝利を収めて士気旺盛の勢いを維持している今が好機と捉えたのだ。

 

昌幸

『既に各部隊出撃して集結点であるこのエルフの街に向かっている。一番早く来るのは王都防衛についているオーラン将軍の兵2万だそうだ。オーラン将軍が到着次第、我が黒襷隊はアマル近郊の村であるへドン村に進駐、そこに陣を構え偵察を行う。既にへドン村の村長には了承を取っている他おまけに面白い情報もゲットした。』

 

その場に居るものは昌幸の言葉に耳を傾けた。そして昌幸の表情を見た。昌幸の表情は『あまり良い状況では無いぞ』と言っていた。その表情で皆はある程度の覚悟をした。

 

昌幸

『なんでも連中、アマルに残ってた攻城用の櫓とか引っ張り出して城壁外に設置してそこに見張りと弓兵を配置してるらしい。城壁にたどり着く前に先ずこの連中をなんとかしないとのんびり攻城戦も出来ないという訳だ。連中もなかなか考える。』

 

ガストン

『マジかよ…』

 

マシュ

『まともに突っ込んだら頭上から弓矢を放たれ続ける訳ね。』

 

ヤートン

『ゴブリン共め…小賢しい真似をする!』

 

トマス

『然し、所詮攻城用の櫓を防衛に当てがっている事情を考えると、連中が防壁の兵器を扱いきれなかった可能性も示唆できる。ちゃんと使えるなら防壁の兵器だけで十分迎撃できる。こんな事をする必要はない。』

 

昌幸

『その通りだ。だからこそ必ず糸口があるはずだ。王都はあまりこのアマル攻城に時間を掛けるつもりは毛頭無いそうだ。出来ることは全てやって当たる。総がかりだ、恐らくアマル周辺は森が多いがその辺を恐らく切り倒してその場でトレビュシェット(投石機)を作るなり、そこに持ってくるなりして櫓を潰す算段で行くはずだ。だがそこで生じるのは敵の配置だ。どこに櫓を置き、堀や兵はいかほど居るのか。我々はへドンに着き次第偵察を行う。』

 

昌幸はそう言うと椅子から立ち上がり、他の皆もそれに従った。そして昌幸は剣を引き抜くと天井に掲げた。

 

昌幸

『これより我らは城塞都市アマルを奪還せんとする!いざぁ‼︎』

 

一同

『『いざ‼︎‼︎』』

 

翌日、オーラン将軍麾下二万がエルフの街に到着した。昌幸は主だったものを連れオーランを迎えに行った。

 

昌幸

『オーラン隊長!…じゃなくて将軍‼︎お待ちしておりました‼︎』

 

オーラン

『昌幸か?千人隊長の務めはちゃんと果たしているんだろうな?』

 

昌幸

『勿論です!他の同僚達は?』

 

オーラン

『皆負けじと軍功を稼いどるよ。今回はそう言った連中を前線に置いてみようと思ってる。先の戦を生き残った連中はもう十分頼りになる兵になったしな。』

 

昌幸

『では早速ですが、我々はへドンへ向かおうと思います。』

 

オーラン

『ウム、宜しく頼む。それとな、王都から攻撃延期の伝令が来た。もう少し兵を動員するそうだ。黒襷隊はへドン待機後三日は待機して欲しいそうだ。理由はまたその時通達する。良いな?』

 

昌幸

『はっ。』

 

昌幸達はオーランに挨拶をすませると前もって出発の用意を済ましていたのでそのまま馬に跨ると一路へドンへ向けて出発した。

千人の兵達が完全装備で馬や徒歩で行軍する様は道中の村や農地の住人からすればとても物珍しい光景だったが、後に数万の兵が同じ道を通るのだからその時は腰を抜かすなり失神してしまうだろう。1日と半日かけてへドンに着いた昌幸達は、簡易的な拠点化をへドンに施した。そしてへドン村の村長にはもしもの時に備えて避難できるように指示を出した。村長は素直に従ったが内心穏やかでは無いと言うことは昌幸には感じ取れたし、言った本人も心苦しい表情を浮かべた。昌幸は傍にいるリリィに呟いた。

 

昌幸

『住民を全員避難させるって言うのはな…』

 

リリィ

『はい?』

 

昌幸

『住民を全員避難させるって言うのはな、そこに住む人間全てに今の生活を捨てさせる事なんだ。それが未然に防がれれば良い。だがそうなる確証は無い。村長としては内心『簡単に言うな若僧』位に思ってるだろうさ。』

 

リリィ

『しかし‼︎それで村民が守れるなら本望では無いのですか?本来ならそれは正しい筈、その様に思われる筋合いは無いのではありませんか?』

 

昌幸

『リリィ、国民の本音はね国家の存亡や主導者の良し悪しや入れ替わり、主義思想なんかどうでも良いのさ。ただ自分達の明日の仕事や飯が食えれば彼らは何でも良いのだ。例え僕らが悉く討ち死にして、アルトヘイム中がゴブリンの娼館になった場合、委ねられた民達は過酷な環境と耐え難き屈辱に晒されるだろう、だが少なくとも女性陣は彼らの性の掃き溜めと子作りの母体としての利用価値があるからそう簡単には殺されない。

 

つまり生命を維持するに足りるというより最低限の食料や環境は保証されるということだ。なら彼らはどうする?たとえその辺の性玩具の如く扱われようと、牛や驢馬のように使い捨ての労働力にされたとしても、その日の生活さえ維持できれば、死の存在から離れる事が出来れば実の所文句は言わない。少なくとも暴動は起こさないだろう。絶望的に叩きのめされてるとしたら尚更ね。彼らは簡単に流されやすいが本質は賢い。自己の利益になる物を瞬時に理解できる。その為ならプライドやアイデンティティと言った自己をも平気で捨てる。それでも飯があるから生きていける。飯無くとも、誇りと尊厳さえあれば生きていける。この三つが一気に無くなる…というよりかなぐり捨てて立ち向かう人間はそうは居ない。もし居たとしてもそこの穀物の入った袋に同じ形をした金の粒を混ぜてたった一回でそれを掬い上げる事に成功する確率程度しか無いんだ。』

 

昌幸は更に口を開こうとしたが、リリィの境遇や自身がいた世界の住人に対しての誹謗中傷に近い民衆論を語るのは不謹慎極まると気づき、それ以上は言わず謝罪した。

 

昌幸

『いや、すまない。君達は望まずして虜囚の辱めを受けた訳だから今の話は関係無いし、それにこの認識は僕の前いた人間達への認識だからここの世界の連中は関係無いな。忘れてくれ。』

 

昌幸はそう言うと兜を被り直してアッシュとヤートンに弓兵を集めて見張りの順番決めを行うよう指示を出した。後ろからそれを見ていたリリィは昌幸の価値観の相違に驚愕するしかなかった。リリィは言ってしまえば専制君主国家としてのアルトヘイムの水を飲んで生活してきた。だが昌幸は日本国としての立憲君主国家(米国はそう認定している。)…まぁ名ばかりの立憲君主国家で実質民主主義国家と変わりないがともかくこの二人はそれぞれ違う水を飲んで暮らしていた。結果この民衆論の相違が生まれたのだ。

 

リリィをしてみれば国民は国王にのみ忠誠を誓い、例え虜囚の辱め受けようと決して裏切らず、そして国家自体も国民のために動いている。そして自分たちを生活を守ってくれるのも国なのだから、その方針には必ず従い、命に代えても守らねばならんというものだが、

 

昌幸をしてみれば自身の生活に支障をきたすならば国、君主、主義思想そして何より、自身の同胞を肥溜めに平気で捨てるのが民衆であり、そう言った私益の集まりが所詮国家として形を成しているだけなので崩れれば平気で己がアイデンティティも捨てる自分勝手な連中なので実際今起きているこの事態も彼らからすればその辺の安酒よりも関心を持ってはいないと言いたいのだ。

 

(昌幸隊長は、かつて住んでいた世界で民衆に絶望でもしたのかしら…さもなくばこれ程口汚く罵れない筈だ。)

 

だが、リリィにはそう考える確証は無かった。というのも昌幸は心から民衆に対しての軽蔑や侮蔑しているわけでは無いことがリリィは昌幸の口調から感じ取り、寧ろそう言ったしぶとさや自己決定する点については敬意を持って口にした感じだったとリリィは受け取っていた。

 

(隊長にとって民衆は何だろう…敵?それとも味方?それ以外?)

 

ヘドンの村に待機して三日が経った。村に騎馬が複数近づいてきた。見張りが目を凝らし、その騎列を確認すると友軍である事は判ったが先頭の騎馬だけは明らかに様子が違った。見張りは暫く見つめるとその正体に気づいたのか慌てて鐘を鳴らして開門の指示を出した。

 

開門したヘドンの村に伝令が走る。それを受けた黒襷隊は主要人物と手空きの者で儀礼整列して待ち構えた。そして村に入ってきたのは先の戦で大将軍に昇進したアリスとその護衛の水龍騎士団(水魔法を使う魔法騎士団)とオーラン将軍とその護衛兵である。

 

アリス

『久しいな昌幸隊長!』

 

昌幸

『シェフィールド(アリスのホームネーム)卿!わざわざお越し下さるとは‼︎』

 

アリス

『堅苦しいのは抜きで構わん。アリスで良い。大分一軍の将らしくなってきたな昌幸。私が来たのはお前達と敵の偵察に行くのが目的だ。あと、コレをお前にな。』

 

アリスは一通の手紙を昌幸に手渡した。それは王家の刻印が押されたものであった。送り主はソフィアであった。

 

昌幸

『姫様か…何々。風が少し冷たくなってきました、昌幸はいまどうしてますか?私は…』

 

(私は、貴方達が戦場にいるのと同じ様に、このアルトヘイム王国の局面を乗り切るべく宮廷という戦場にいます。アマル奪還の兵を挙げることが出来たのは良いですが、兵の損耗を恐れる各地の諸侯や貴族、騎士の一部はこの出兵に反対する動きを見せていて、彼らの言う通りにしていればいつまで経ってもアマルを奪還できなくなってしまう。ここ最近のアマルの状況はこちらにも届いています。攻城用の櫓や防衛用の兵器の使用など、間違いなく私はノーロット帝国(アルトヘイムの北にある巨大帝国。効率官僚制度が整備されており、屈強な重装騎兵や重装歩兵、高位魔導師部隊を多く所有し、広大な穀物地や鉱山を保有する人間至上主義を掲げる資源超大国でもある。各地に従属国を持ち昌幸達のいる大陸で一番強い)の息が掛かっていると思います。彼らは主に自国の貧困層や敵国の女奴隷をオーク、ゴブリンに代金として支払って使役しているそうです。先の戦でもゴブリン達が使っている兵装が整っていたのはその為だと思います。…どうもイヤな予感がします。敵は敗残兵ばかりですが、油断せず気をしっかり持って任務に当たって下さい。王都で帰りを待っています。

真心を込めて、ソフィア・ド・アルトヘイム)

 

昌幸

『…。』

 

アリス

『なんて書いてあったんだ?』

 

昌幸

『連中の裏にノーロット帝国が居るんじゃないかって、もし居たら気をつけてくれとさ。姫様の御温情に感謝だな。』

 

昌幸は手紙を畳んでリリィに渡すとシャムシュに跨り、矛を手にした。

 

昌幸

『では行くなら早く行きましょう。私からはトマスとマシュを同行させます。』

 

アリス

『私は一人で良い。我が騎士団の装備は目立ち過ぎる。』

 

オーラン

『ではワシからも2名同行させます。』

 

昌幸

『7名か、まぁ先ず先ずな偵察隊が出来たな。リリィ!アッシュが帰ってきたら例の奴を冷やしておいて置く様に言っておいてくれ。頼むぞ。』

 

リリィ

『畏まりました!どうかご無事で‼︎』

 

リリィが応えたのと同時に7人は馬に拍車を入れて駆けていった。リリィはそれを手を振り見送った。

 

7人は暫く馬を走らせ、アマル近郊の森林まで近づいた。7人は森林に入ると、馬を繋ぎとめ、それぞれ茂みに入っていった。

 

7人は暫く茂みを進むと目の前が拓け、その前に巨大な城塞都市が見えた。アマルである。ヘドン村の村長の言う通り、城壁外に攻城用の櫓が何台か置かれており、そしてそれぞれに弓兵が複数乗っかっていた。

 

昌幸

『あちゃー…。これはノコノコ出て来たらすぐ見つかるし矢弾もわんさか飛んで来そうだな。先ずはあの櫓をどうにかせんと。』

 

アリス

『トレビュシェットを設営しようにもこの森だからな切り倒して場所を確保するのは容易いが…その間に攻撃されたら作業は遅々として進まないだろうな。』

 

オーラン

『最低でも兵を前線に敷くだけの空間は欲しいですな。幾らか櫓を潰して後にトレビュシェットを設置しましょう。』

 

アリス

『問題はどう潰す?占領する為に軍を前進しても悪戯に兵を失うだけだぞ。』

 

昌幸

『…。ちょうど今は乾季。マシュ、トレビュシェットの部品になってる木材は乾いてるか見てくれ。』

 

マシュは昌幸に言われると直ぐに目を凝らした。

 

アリス

『そんな事言って本当に分かるのか?』

 

昌幸

『マシュはハーフエルフですので、視力や身体能力はエルフ並み。だからあのトレビュシェットに乗ってるゴブリンのアホヅラもしっかり見えますよ。』

 

マシュは目を凝らし続けてやがて瞼を閉じて一息つくと一同に報告した。

 

マシュ

『古い中古品の櫓で、この乾季。ちょっと火をつけただけで一気に燃え上がるんじゃないかしら?』

 

昌幸

『で、あるか。なら火攻めと行こうか。』

 

と昌幸が言った瞬間。トマスがある方向に指を指した。

 

トマス

『皆さん!アレを‼︎』

 

全員がトマスの指差す方向を見るとそこには悍ましい光景が広がっていた。

 

アマル市の住人が全裸にひん剥かれ、老若男女問わず、鞭を打たれ農作業に従事しているのだ。

 

アリス

『馬鹿な‼︎ゴブリン達が農耕だと⁉︎いや出来ないから人間を奴隷に、奴隷以下にして、農作業に当てているのか!』

 

アリスが奴隷以下と言ったのは訳があった。農作業している人々とは別に木の枷に繋がれて尻を突き出すような形で繋がれている女達が居た。中には年幅もない少女やあろう事かそれくらいの少年までもが同じ様に全裸で繋がっていた。

 

すると近くにいたゴブリンがその枷につながれた人間達に近寄ると暫く吟味して気に入った女に自分の性欲をぶちこんだ。すると辺り一帯に女の苦痛と快楽が混じった悲鳴が響き渡った。するとそれを皮切りに次から次へとゴブリンがその奴隷達に群がり情事を始め出した。そしてその度に女と幼い子供達の悲鳴が轟いた。

 

皆は目を背け、マシュに至ってはハーフエルフなので奴隷達の喘ぎと断末魔が充分聞こえてしまうので耳も覆った。

 

昌幸

『これは…これでは都合の良い性玩具ではないか…。』

 

アリス

『全ては非力な我らの所為だ…すまない…すまない…!』

 

マシュは耳を覆っていたがある事に気がつき、目を開き、耳から手を離した。そして辛いがその断末魔と喘ぎ声に注意深く耳を傾けた。

 

マシュ

『昌幸!あの人達の中にアルトヘイム人じゃない人が居る‼︎あの人達の声の中に違う言葉を喋っている人たちがいる。間違いなくノーロット語だった‼︎』

 

オーラン

『ノーロットだと⁉︎と言うことはつまり…』

 

トマス

『このゴブリンの戦にノーロット帝国が関わっている。』

 

アリス

『その可能性はより確実になったな。見ろ。』

 

アリスが示した方向から一人の大男が馬に跨り農作業を監督するゴブリンまで近寄ってきた。するとその場にいたゴブリン達はその男を見るや一斉にひざまづいた。その男は全身を高価な鎧で身を包み、片手に巨大な戟を持ち、全身から覇気が溢れ出していた。顔はまごう事なき美男であるがその目には邪気が宿っている。

 

昌幸

(アレがノーロット帝国の将か、まるで呂布だな…あの体格、あの武器。)

 

昌幸が見つめているとその呂布の様な敵将も何と昌幸を見つめ返したのだ!瞬間昌幸は寒気が走った。

 

昌幸

『だめだ…見つかった。』

 

マシュ

『えっ…?』

 

その直後敵将は昌幸達の方に戟を向けるとゴブリンの監督官は角笛を吹き鳴らした。すると櫓のゴブリン達は一斉に矢をつがえた。

 

オーラン

『いかん‼︎アレはゴブリン共の毒矢だ!逃げるぞ皆の衆!』

 

全員が森の奥に向かって走り出したと同時に矢が一斉に放たれた。幸い昌幸達は先に動き出したお陰で矢が刺さることは無かった。7人は全速力で走った。出口に着いた一同は馬にまたがった。その時アリスは跨る前に敵将が気になり振り返るとその瞬間矢が飛んできてそれはドワーフ達が丹精込めて作った魔鉱石オリハルコン製の鎧を貫き、その柔胸に刺さった。

 

アリス

『グッ…‼︎不覚…。』

 

昌幸

『アリス‼︎』

 

オーラン

『将軍をお守りしろ‼︎』

 

マシュ

『昌幸!これを使って‼︎エルフの薬よ。これを飲めば暫くは毒は回らず矢に止まるはず!』

 

トマス

『馬鹿な…他の櫓から放たれた矢は全然届いてないのになんでアレだけこっちに届いたんだ。』

 

昌幸

『トマス、今泣き言を言っている場合じゃない!近くの廃屋まで撤退するぞ!』

 

昌幸はアリスを馬に乗るまで支え自身も馬に跨ると皆を先導して、廃屋まで走り出した。

一向は廃屋までどうにか辿り着いた。マシュとオーランの護衛兵は付近の森に薬草を取りに行った。オーランとトマスは見張りに立ち、昌幸と意識を失って、荒い息を吐き苦しみ続けるアリスのみが残された。昌幸はアリスの鎧を外し服も脱がせると矢傷のある胸から矢を引き抜き更にに自らの唇を押し付け毒と血を吸い出した。痛みで年頃の娘らしい小さな悲鳴をあげるアリスを余所に、昌幸は吸い出した。毒と血を吐き出した昌幸は都合良く持参した白ワインと水で唇と口の中を荒い、残されていた消毒液をアリスのハンカチに浸し、矢傷に当てた。

 

しばらくしてマシュ達が解毒薬の材料になる薬草を持ち帰ってきたので薬づくりをマシュに任せ、昌幸とオーランは廃屋の外に出た。

 

オーラン

『あんな敵将が居ればアマルの奪還は一筋縄ではいかんな。』

 

昌幸

『全軍の結集を待ち、敵に打って出させる方が楽かと思いましたがあの手の将は野戦になれば滅法強い物です。然し兵を結集させねば我らは戦が出来ません。やはり初手で痛手を与え、搦め手を使いアマルを奪還するのが一番と思います。』

 

オーラン

『だが敵は化け物。内通者と言ったような手は使えんぞ。どうする気じゃ?』

 

昌幸

『あの敵将と敵の残存兵力を我が軍が布陣する森側の城壁に固めさせ、その間に工兵隊にトンネルを掘らせ、アマル市内に潜入、少数精鋭でアマル城門を占領させ、進入路を確保します。これを我が国では土竜攻めと言います。』

 

オーラン

『地中から這い出て敵の喉元に食らいつく、正しく土竜じゃな。』

 

昌幸

『この策を献策願いませんか、将軍?』

 

オーラン

『分かった。やってみよう!』

 

昌幸

(第1の難関だ。ここが俺の桶狭間か、それとも尾張統一か、はたまた河越夜戦か…ここを切り抜けたと同時に修羅の道だ。だが乗り越えてみせる‼︎)

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