歴オタミリオタ介護福祉士が異世界転生して外道鬼畜と言われようと手段選ばず天下と美少女の眼差しを受け続ける退屈じゃない毎日を目指す様です。   作:オラニエ公ジャン・バルジャン

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7話 ハザムス王国軍撃退

アルトヘイム、ハザムス国境線では血煙が上がっていた。クブルス老のアルトヘイム軍とハザムス王の軍が会敵していた。地の利と歴戦の大将軍に付き従ってきた3万の精鋭軍は良く持ち堪えていたが数の差を覆す程の力を出す事は出来ず受け身を取ることしか出来ずにいた。逆にハザムス軍は全力の攻めを徹底していた。

 

そもそも如何にノーロット帝国の属国とはいえ宗主国が軍を挙げていないのにアルトヘイムの半分の規模にも満たない小国が軍を上げる事自体が自殺行為であった。だがそれこそがノーロット帝国の目的でもあった。つまるところハザムス、メノス両国は捨て駒であった。言ってしまえばアルトヘイムに痛手を与えられれば良し。その程度の認識であった。もっと言えば完全な飛び地なっていた衛星国各国の管理がナンセンスに感じ出した為破棄すると判断したのだろう。そこは効率官僚制国家らしいと言える。衛星国抜きでも大陸の六割を支配する大帝国にとってはまさしく微々たる存在でしかないのだ。

 

勿論、それは両国の国王も理解するところであった。だが皇帝への絶対の忠誠心と恐怖心が彼らを無謀な行動に走らせたのだ。だが事実上背水の陣を構えることになったハザムス軍、メノス軍の力は想像を超えていたという。そんなハザムス軍を大将軍クブルスは見つめている。

 

クブルス

『むぅ…敵も必死じゃのう。親に縋る子供のように見えるが、その親に見捨てられているのを知ってか知らずかより必死に我らの囲いを破ろうとしておる。』

 

クブルス軍副将

『しかし我らもそろそろ攻撃に出ませんと、この前では本当に破られてしまいます。』

 

クブルス

『それでも攻める為の兵が足らん我らにはどうする事も出来ん。騎馬ですら徒歩で戦わしてる始末じゃからな。』

 

そう言い終わったあと後方から雄叫びと太鼓とラッパの音が高らかに鳴り響いた。そして兵達の『アルトヘイム王国万歳‼︎』『フレデリック王万歳‼︎』のシュプレヒコールが上がった。クブルスが後ろを振り向くと全身黒づくめの鎧をつけ、首や頭に黒い襷を身につけた三千の軍勢が到着した。黒襷隊の到着である。この三千人の内訳はこうである。

 

三千人長 アヤセ・マサユキ

 

副官 執事長アッシュ(もはや普通の執事長では無いと思う。)

 

五百人長 ヤートン

五百人長ガストン

五百人長マシュ

五百人長トマス

五百人長ミシェエラ(アマル戦後ソフィアに任官、その後加入。当人曰く御姫様とマサユキのボウヤが可愛いからおねぇさんが助けちゃう☆…だそうだ。)

 

部隊編成

マサユキ直衛騎馬隊500

 

主力歩兵団1500(黒襷隊は盾持ちのハルバード兵と剣兵で構成)

指揮官ヤートン ガストン トマス

 

長弓クロスボウ連合部隊500

指揮官マシュ

 

正規兵魔導士部隊500

指揮官ミシェエラ

 

そんな連中を従えたマサユキは馬でクブルスの手前まで行き、馬から降りて他の将達と共にクブルスの前に膝を屈した。

 

マサユキ

『遊撃三千人隊黒襷隊ただいま参陣‼これより我ら︎クブルス大将軍の下知に従います。』

 

さて初めて大将軍と対面したマサユキである。彼は飄々としたポーカーフェイスを維持するので精一杯であった。近づくたびに感じるこの重々しい威圧感。そして偉大さが彼にのしかかってきていた。

 

マサユキ

(でっけぇ…コレが大将軍か…。アリスにはここまでの威圧感は無かった、だがこの人は違う。数十年間も大将軍という名の地位にいた人間はやっぱり違う!)

 

クブルス

『よう来たの童マサユキよ。お主らには、まぁ我が息子より聴いておると思うが攻撃能力を失った我が軍の攻め手になってもらいたいのだ。我が軍は質の面では敵より勝るが数と破壊力は奴に譲る事になってな。』

 

マサユキ

『? 失礼ですが御子息とはどなたの事を指しておいででしょうか?』

 

クブルス

『そなた知らなんだか?宰相についているホルサスはな我が義息よ。』

 

マサユキはその場に倒れたくなった。国内でもそして国外でも自らの後継人の縁者がいる事にである。世界は思った以上に狭いとはよく言ったものである。むしろ彼の中にあるのは、『父が大将軍で、息子が宰相。どんな一族だよ!』と彼はただ呆気に取られるばかりであった。

 

クブルス

『まぁそのようなことはどうでも良い。ほれこの望遠鏡で見てみぃ。敵の先鋒じゃ、やけに暴れ散らしておる大男がおるじゃろ?』

 

マサユキは望遠鏡を覗き込みその指された大男を見た。荒々しい風貌で、大柄の馬に跨り大斧を振るいアルトヘイム軍を屠りまくっていた。

 

マサユキ

『あの暴れぶりに、見た目。もしや敵の総大将では?』

 

クブルス

『左様。ハザムス王自らの出陣といったところかの。元々ノーロット帝国の猛将じゃったが王になっていこう。ハザムスの地で暴君振りを見せつけておった男じゃ。元々ハザムスの民はアルトヘイムの民。奴はそれを知っているから普通なら罷り通らん圧政を敷いておる。ワシが今奴と同等の兵かそれ以上の兵が居ればあんな男などにしてやられることはないのだが…‼︎』

 

クブルス老は同胞を虐げてきた男に怒りを露わにしながら話した。マサユキはそこから出る怒りや覇気に更に威圧されていた。

だがその一方でこの男は俺がやらねばならんと思った。あの猛将を倒し将軍の地位を手に入れる第一歩にすると。飛ぶ鳥を落とすが如く三千人長になった若者は更に五千人長への野心を露わにしたのだ。増長は己の破滅をもたらすと分かっていながらもそれすらもものともしない力を彼は欲していた。そしてそれはこの老将軍と敵の暴君から得られるだろうと確信したのだ。

 

マサユキ

『分かり申した。黒襷隊先鋒を務めさせていただきます。そして必ずや敵将の首とって参りまする!』

 

クブルス

『まぁ、無理はせず気楽にの。敵も疲れ始めてきたし、今宵の戦はそろそろ終いにするでな。』

 

クブルスがそう言った後敵軍から一時撤退のラッパがなり、アルトヘイム軍もその直後に撤退のドラムが鳴り響き全軍がそれぞれの陣に撤退した。さて敵将を倒す為準備と話し合いを始めた黒襷隊の面々である。

 

アッシュ

『敵将は中々剛の者の様ですな。下手をすれば我らも討ち取られかねません。』

 

ヤートン

『何より敵将直衛の騎馬部隊が厄介だ。あの重装騎兵に突っ込まれた直後の乱戦となると兵が言うことを聞かなくなるぞ。』

 

トマス

『そもそも前衛が崩れかねない。クブルス軍は精鋭の重装歩兵を当てて対抗していましたが被害は軽くなく、更に我らの兵は幾分か戦いは経験していますが練度が違います。支えきれないでしょう。』

 

マシュ

『封殺は…無理そうね。矢弾は勿論、魔法もあの重装騎兵にはあまり効かないでしょうね。馬も騎手もがっちり鎧をつけてる。』

 

ミシェエラ

『私達に長槍兵は居ないのかい?』

 

アッシュ

『長槍兵は基本主力軍部隊優先の配属で、我々の様な遊撃軍には回すだけの余裕は我が国にはありません。そもそも機動力を犠牲にしてしまうので今の我が部隊では運用面での相性が悪いのです。』

 

マサユキ

『………あれを試すか。』

 

ガストン

『あれを?』

 

マシュ

『まだ碌に練習してないよ?』

 

マサユキ

『もはやそれしかあるまい。それにそもそも我々は敵将とその直衛の騎馬部隊を引きずり出さないといけないし、(まぁ俺ら目立つからそこは心配ないとして)あの重装騎兵部隊は脅威だ。潰してしまわねばな。』

 

マサユキは面々の顔を見ると更に続けた。

 

マサユキ

『先ずは挨拶がわりだ。ミシェエラ姐さん、全軍が布陣したら前に出て一回舞って欲しい。こっちの士気を上げ、敵を挑発するものが良い。軍記物をリクエストするよ。』

 

ミシェエラ

『よし、おねぇさんに任せなさい‼︎』

 

マサユキ

『敵が進撃したら魔導兵部隊と長弓、クロスボウ兵で間接攻撃、戦闘距離関係なく全部隊が前衛に居るため本隊よりも先に攻撃出来る俺たちの投射能力で少しでも削る。んで出てきた敵騎兵部隊を例のアレで無力化。その気に乗じて攻めかかる。俺らが攻めかかれば他の味方前衛部隊も同時に前に出る。怯んでる連中を撫で斬りにしてれば敵将に辿り着くか、怒り狂って出てくるからそこを俺が…!』

 

そういうとマサユキは天幕に置いてあった木偶を大剣で一刀両断にしてしまった。

 

トマス

『…お見事。』

 

マサユキ

『では各々抜かりなく。そしてオヤスヤ。』

 

一同

『オヤスヤ〜。』

 

諸将が其々の天幕に帰っていくと一人残ったマサユキは自軍の布陣を見直した。

 

マサユキ

(登り坂の両側を二つの崖が囲み崖に本隊の投射戦力、坂道に主力歩兵。坂を登りきった先に本陣と予備歩兵と騎兵部隊。がっちり守りを固めた上、坂の下の部隊がやられても投射兵と予備部隊と騎兵で逆落としと挟み撃ち。おまけに我が軍の後背に回り込むには結構な時間と距離がある上、裏どりされない様に警戒して防柵や伏兵を配置してある。俺ならこんな布陣されたら全力無視だな。無視して追っかけてきたら数の優位を生かせる広い場所で迎え撃ち、返り討ちを狙うが、兎に角流石は大将軍だ。この布陣は完璧だ。攻め手はひたすら削られる。これを突破するのは至難の技だ。地の利と人の和があってこそこの少ない兵力でここまで支えてこれたのだ。天の時は彼らに譲るにしてもこの二つは俺たちが揃えた。この戦いは勝つ。そしてその時は…明日だ‼︎)

 

翌日、両軍は相対した。ハザムス王が戦場を見渡すとアルトヘイム軍側から一人の美しい踊り子が現れた。そしてその踊り子は妖艶な姿で舞い始めた。それに合わせて楽器が音を上げた。ミシェエラが踊ったのは六十年前にノーロット帝国が遠征した際にアルトヘイム軍に完膚なきまでに粉砕され、挙句当時の皇帝は首のみで帝都に帰還する羽目になったアマル攻囲戦を讃える舞いであり、そしてこれは敵軍に対して、お前達もその様にしてやるという暗示も含まれていたのであった。ハザムス王としては自分の祖国の皇帝を貶める真似をしたアルトヘイム軍を許しておける筈もなく、自身の近衛重騎兵は勿論、予備騎兵隊まで最前列に配置し、歩兵もほぼ陣形無視の総突撃を掛けてきたのだ。マサユキの思惑通り、というよりも完全にそれ以上の事態になったので返って少し焦りを見せ始めた。

 

マサユキ

『まさか陣形無視、騎兵も全部突っ込んできたか。だが今日は幸いなことに快晴‼︎太陽は、いや天は我らに味方している!兵士諸君、今こそ奮起せよ‼︎‼︎我らの忠義試されるは今ぞ‼︎歩兵隊、盾を返せ‼︎‼︎』

 

兵達が一斉に大盾を裏返すとその裏には金箔で加工されておりそれは太陽の光を反射させ、敵軍に強烈な太陽光を浴びせた。急な目潰しを食らった騎馬達は怯み、そのまま体勢を崩し、近くにいた騎馬や兵を巻き込み崩れ落ちてしまった。敵軍最前列を全て騎馬で固めていたハザムス軍の足は止まった。そこに魔法と矢とボルトの雨が襲い掛かる。そしてそれを見逃すほどアルトヘイム軍の諸将は甘くない。

 

クブルス

『それ、突撃じゃあ‼︎‼︎』

 

マサユキ

『すわ!掛かれ‼︎』

 

守勢の構えに徹していたアルトヘイム軍が打って変わって攻勢に出た為、ハザムス軍は大混乱に陥った。前衛騎馬部隊壊滅、更に終始強攻体勢で攻めかかったハザムス軍の疲労も相まって戦局はアルトヘイム軍圧倒的有利に傾いた。更に元々アルトヘイム人であるハザムス軍将兵達の造反が始まり、もはや士気崩壊を起こしていると言っても過言では無かった。

 

ハザムス王

『おのれ‼︎貴様ら逃げるな‼︎逃げる奴はこの大斧の錆にしてくれるぞ‼︎‼︎』

 

だがそこに黒い覇気と魔力を帯びた騎士が突っ込んできた。その後ろに明らかに手練れと思しき戦士四人とあの踊り子が三千の兵と共にその騎士に続いた。

 

ハザムス王は理解した。この事態を引き起こしたのはこの黒い騎士であると、一方のマサユキは内心驚いていた。彼の中では騎馬部隊を壊滅させて敵が怯んでくれればそれで良かったのだ。だがそこから士気崩壊、造反に繋がるとは考えていなかったのだ。あくまで歩兵戦有利の状況を作り出すのが目的だっただけにここまでの戦果は想定外であった。

 

マサユキ

(エビで鯛を釣る様なものだ。ハザムス王がちゃんと陣形を組んでこっちに突撃していたら騎兵は犠牲にするにしてもここまで酷い有様にはならなかっただろうに。)

 

内心でそう思いながらマサユキは魔力を纏わせた大剣を振り払った。ハザムス王を守ろうとした残り僅かの近衛兵は一人残らず胴体を跳ね飛ばされ、雑兵は既に言うことを聞かず、ハザムス王は数合打ち合ったが得体の知れぬ騎士に威圧され、一歩、また一歩と引いていく。だがマサユキも大剣に慣れておらずまだ振り回されている所があった。そしてそれをハザムス王は逃さなかった。

 

ハザムス王

『青二才が、小癪な真似をしおって‼︎』

 

大斧がマサユキの首に迫る。だがマサユキは動じない。正しく刃が当たるか当たらないかの距離になったその瞬間マサユキの目が急に赤く光りだし、ハザムス王は身動きが取れなくなった。そして自らの足に複数の魔力の剣山が刺さっていたのである。ハザムス王は悲鳴を上げた。暫く泣き叫んだと思ったら、その哀れな王の首を青年は無慈悲に跳ね飛ばしてしまった。そして近くに転がっていた自軍の軍旗の矛先に王の首を突き刺し、高く掲げたのだ。

 

マサユキ

『敵将はこの私、暗黒騎士アヤセ・マサユキが討ち取った‼︎皆、勝鬨を挙げよ‼︎‼︎』

 

クブルス軍全将兵

『栄ッ‼(エイ)︎永ッ‼︎(エイ)雄ォォォォォォォォォ‼︎‼︎‼︎‼︎』

 

戦場に勝鬨が上がりそれは天地を震わした!この日、アルトヘイムの歴史書にはこう記された。

 

『攻め寄せたハザムス軍に対し我がアルトヘイム王国軍は大将軍クブルスの智略と新たな暗黒騎士の奮闘により大勝利を収めけり!』

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