前線異常あり   作:杜甫kuresu

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倫理観サヨナラ、コンニチワ変態人形。

ところで世の作者は前書きと後書きに困るだって!!??
俺は文字数嵩み過ぎて頭抱えます。


第二話

「全く、何で私が副官をしなくちゃいけない訳!?」

 

 ようやく一息とデスクチェアに腰かけるなり、きゃんきゃん五月蝿いパピーの叫び。

 グリムゾンレッドの髪と瞳が印象的な自称「殺しのために生まれてきた女」ことWA2000。俺はわーちゃんって呼んでる、名前長い。

 

 Karが反逆罪に問われてウェルロッドと一〇〇式、と何とも頼りないメンツに連行されたおかげで彼女が副官になっている。ちなみにネゲヴは俺の部屋に不法侵入した疑いがあるが、証拠不十分により不起訴。解せぬ。

 

「ぼくにきれないで」

「キレてないわよ!」

 

 怒ってるような張り上げた声で返してくる。

 でもわーちゃん仕事できるし、俺の起床時間の平均取らないし、一服盛ってこないから凄く助かるんだよ。

 

「でもわーちゃんに任せれば俺も安心だし…………」

「――――――――ふ、ふーん。そうなんだ」

「後、殺し以外も結構ちゃんと仕事できるというかむしろ優秀だろ?」

「ゆ、ゆうちゅう!?」

 

 噛んだ。何故に。

 Karは仕事は非常によく出来る。朝食を用意する気遣いはあるし(一服盛るためだけに作ってたらどうしようもないけど)、雑務はぱぱっと整理して俺に寄越してくれるし「仕事だけなら」むしろ理想の副官たる人形だ。

 

 まあでも一服盛りやガールな以上は駄目だよね。まあモコモコしてる所は褒めてやる、モコモコ。

 

「そ、そうなんだ。まあ当然よね、比較対象が酷すぎるから…………」

「まさか媚薬を盛るとは俺も思わなんだ」

 

 媚薬、という言葉を聞くなりにわーちゃんが眉をしかめて俺に尋ねる。

 

「ビヤクって何?」

「えっ」

「いや、だからビヤクって何」

 

 それをお兄さんに聞いちゃうか~。いやこれマジで分かってないやつや~ん?

 TCGの新作カードの話題で拗ねてる貧乏小学生的な表情で俺にズイと詰め寄ってくるわーちゃん、ズイズイ踊りすんぞこの野郎。

 

 このままでは俺は無知シチュでイジめられてしまう、わーちゃんはむしろイジワルをされていると判断しているのかどんどん機嫌を悪くする。

 

「教えなさいよ、早く」

「え、ええ~…………ホントに? 聞いても殴らない?」

 

 わーちゃんがバカを見るような冷たい目つきをする。

 

「何で殴るのよ、そんな事しないわ」

 

 多分殴られるなコレ。でも仕方ないね。

 

「………………えっとな、媚薬ってのは「指揮官さん、47分も副官の席から離れてしまったことお詫び申し上げますわ! この完璧な副官RF人形のモーゼルカラビーナアハトウントノイツィヒクルツが戻ってきたからには安心してくださいまし! 例え火の中水の中草の中森の中土の中雲の中指揮官さんのベッドの中でも完璧な副官として務めあげてみせる事をお約束致します!」

 

 名乗り口上がなげえよ変態人形。そしてちゃっかり俺と懇ろになろうとするな、もう突っ込みどころしかねえ。

 

「アンタの中での副官ってのは正妻とイコールで繋がってるのか? この脳直プロバガンダ型変態モコモコドイツライフル」

「指揮官、ゲットですわ!」

「もう俺にはついていけねえ…………」

 

 この人はもしかすると俺はボールを投げれば捕まえられる程度のチョロ男と思っているのか?

 思わず肩を竦めて溜息をついていると、火照ったような顔つきのKarがもじもじとして上ずった声を出す。

 

「呆れられたり罵られるのも、その、堪りませんね…………」

 

 キレるぞ俺キレちゃうぞ?

 

 そのまま頬を隠してデレデレしながらにじり寄るKarに俺は貞操の危機どころか生命の危機とか感じちゃってしまっているが、正直わーちゃんの気が逸れたことだけは内心感謝したりしている。

 流石に危険すぎてわーちゃんが間に入ってくれる、天使かな?

 

「あら、どうかしましたか? 私は指揮官さんとそろそろ愛を確かめ合おうと――――」

「いやいやいやいやいや、指揮官からアンタへの愛を感じられなかったんだけど」

「その解釈で正しいぞわーちゃん」

 

 Karの愛の桁ってジンバブエドルみたいに膨らみまくってるから俺は返してない、愛情負債がたっぷりだ。

 息の荒いKar(息荒くなるんだな、人形って)にわーちゃんは若干引きつつも良識を振り絞って変態に立ち向かう――――――とかじゃなくて俺の方へガバリと振り向く。

 

「というかアンタもアンタだからね! メーワクならはっきりメーワクって言いなさいよ、アッチも分かってないじゃない!」

 

 お前それでもアッチを庇ったりしちゃうのかよ…………身体は良心で出来ているんですかね。

 とはいえわーちゃんの指摘はごもっともだ。

 

「全くその通りなんだが、俺一回告白しちゃったことが有って」

「こ、ここここ告白!? 何で!? アレと!?」

 

 色々有ったんだよ、血迷っただけとも言うんだろうが。

 俺達の会話は勿論丸聞こえなので、Karは俺の発言が終わるなり気持ち悪いくらい得意げに俺の左腕に抱きつく。

 

「という訳でわーちゃん? 残念ながら私達は正しくそういう関係ですので」

「それは違う、アンタをこの前フッたじゃないか」

 

 流石にこれはキツすぎたのでちょっと前にな。

 Karがぎこちない動作で俺の顔を見ると凄い作り笑いをして弁明を始める。額からえげつない脂汗が出ている。

 

「なななな何のことかしら指揮官さん? 私そんな記憶は全く、いやこれっぽっちも無いのだけど………………」

「じゃあフッた時の台詞を再現してやるよ、まず「俺アンタのこと好きだけど恋愛的なやつじゃなかったわ――――――」

「ああそうでしたね思い出しました。だからもう一度言うのだけは勘弁してくださるかしら!?」

 

 相当あの時ダメージ入ったらしい、Karはかなり支離滅裂に取り繕う。俺は別にKarを殺したいわけではないので手を振り払って此処は引くことにした。

 今のはKarがあんまりにもしつこい時の最終兵器であって、別にいじめる為のやり口じゃない。

 

 問題はわーちゃんが口をアワアワとさせながら俺の肩をブンブン振り始めた事か。

 

「あ、アンタ告白してたの!?」

「だから別れたって」

「いやそうじゃなくて、人形とそういうのが考えられるかって私は聞いてるのっ!」

 

 まあ、イエスかノーかで言えばイエスだな。頷く。

 するとわーちゃんが俺の肩を放り投げると、顔をリンゴみたいに真赤にするなり顔を覆ってブツブツと一人で喋りだす。

 

「え、要するにチャンスがないわけじゃないってこと? いやでもKarちゃんはフラれてるわけだし、いやでもでも私はこんなにアレじゃないしやっぱりチャンスはゼロじゃないのよね…………ってそうじゃなくてアンタの事なんか別に興味ないわよ!」

 

 いきなりビンタされた。勢い余ってデスクチェアを回転させながら後ろに倒れる。

 

「何で!? クルーガーのおっさんにだってぶたれたこと無いのに!」

「指揮官さん、それは普通経験出来ないかと」

 

 急に神妙な顔して突っ込まないで欲しい。

 

「何か私がアンタのこと好きみたいじゃない!」

「え、俺のこと嫌いなの…………?」

「~~~~~ッ! 嫌いなわけ無いでしょ!」

 

 ありゃ、どっか行っちゃった。

 

 

 

 

 

 

 

「じゃなくて仕事だ仕事。それで、そちらのえらく仕事慣れしてそうな姉さん。名前は?」

 

 この直前にあったKarの元カノがずるずる迫ってくる系の下りは長すぎたのでカット。多分お気に入り限定とかで特典作品としてついてくるよ、嘘だけどさ。そもそもそんな下りは書かれておりません。

 

 閑話休題。

 取り敢えず目の前に居るショートのお洒落なお姉さんのお話をしよう。

 

「ああ、随分取り込んでたみたいだから待ってたけど、終わった?」

 

 取り込んでたというより身の危険が迫ってましたね。

 

「取り込んでたと言うかワンチャン俺は襲われるので、今後は積極的に止めてください」

「オーケー、Kar98kはあなたを襲う相当アレなライフルってことは取り敢えず理解したかな」

「誤解です! 私は合意のもとそういうプレイをですね!」

 

 彼女は察しが良いらしく、Karの戯言はそれなりに上手く流してみせた。マトモかもしれない、ウチにマトモな人形が来たのかもしれない…………!?

 

 改めて軽くニコッと笑うと俺に名乗り口上を始める。

 

「私はグリズリーマグナム、よろしく…………それは良いんだけどさ、こっちの指揮官はウチとはだいぶ空気感が違うね。ちょっと今カルチャーショックみたいなのを受けてる最中」

 

 そっちの指揮官と同類ではないですね、当たり前だ。

 

――彼女、グリズリーはウチに派遣された人形だ。送り主はあろう事かあの試験の変態三連星が一人、堅物ゴリラお爺ちゃんだ。何でこんな酷すぎる渾名なのかはアンタも何時か分かる。

 というか何気に同期の指揮官内では俺もやべーやつ扱いらしい、勘弁してくれ。

 

「俺をあのゴリラオジサンと一緒にしないで。まさか作戦でも単騎突撃とかしてないだろうな、あの人」

「えー、ああ~。うん、してる」

「一緒にするな、頼む。俺はマトモだ」

 

 一瞬言い淀んでしまったグリズリーに珍しくガッツリ言い切ってしまう。

 

 ウチの基地はちょっと変わっていて、人材の貸与及び借用が結構多い。今はちょっと人材が足りて無くて…………って所で急にHGの人形を貸してくれるって言うから誰かと思ったらあのオッサンだったという運びだ。

 まあ別に嫌いではない、ついていけないだけだ。性格自体は良い、突っ込み癖が有るだけ。

 

「そう言えば指揮官と知り合いなんだっけ?」

「そうだなあ、アレは知り合いというか…………何だ、ジェットストリームアタックを決めた仲と言いますか」

「ナニソレ」

「要するにマトモな付き合いではないってことですね」

 

 へぇ~、と納得されてしまう。日常茶飯事なのかもしれない、あり得る。

 俺が相当苦い顔をしたので気を遣ってくれているのか、恐ろしいことにKarに積極的に話しかけに行くグリズリー。

 

「オイやめろバカ、アンタにはソイツはまだ早い!」

 

 制止虚しく会話が始まってしまった。

 

「えーっと、それでKarは指揮官にお熱なようだけど…………よし、直球で聞こうか。何処が好き?」

「私の前で息をしてくださることでしょうか」

「ああ、そう…………」

 

 会話が終わってしまった。だから早いと言ったのに。

 俺の放置プレイと狂愛極まって意味不明な言動しかしねえからなこのモーゼルカラビーナアハトウントノイツィヒクルツさんは。

 

 当たり前に苦笑いで逃げるグリズリーにKarが打って出る。オイやめろバカ、これ以上痴態を晒すな変態。

 

「グリズリーさんとしては、そちらの指揮官さんは何が好ましく感じますか?」

「流石に息をしてくれる事、とまでは言わないけど――――――――やっぱり何処となく愛嬌が有るよね」

 

 思わず身を乗り出しちまった。俺の中では素っ頓狂な爺さんみたいなイメージ有るからつい。

 

「時々銃を見てさ、ちょっとだけ触ろうとして躊躇ったりする所とか子供っぽいんだ」

「あぁ~、そういやコールドスリープしてたとか言ってたな。うちの陽電子狙撃砲の写真持っていって良いですよ、俺の私物だけど」

「んー、昔の銃が好きみたい。でも面白いからお土産としてもらっておこうかな」

 

 面白い兵装では有るよな。まあヘリアンはまさか俺が使う想定はしてないんだろうけど。

 グリズリーの語る目つきがだいぶ熱を帯びてくる。何となく「Kar程じゃないだけでこっちも中々なのではないか?」なんて気がしてきたが、そんな一抹の不安は置いておこう。

 

「後寝顔とかも好き。この前は――――――」

 

 この後Karと妙な意気投合なんてしちゃいながら語っていたグリズリーは、まあ馴染めてくれたようで何より。

 だが如何せん長いので、やはり特典ディスクのみの収録とさせていただきます。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「指揮官さま~、そろそろヘリアンさんから連絡が~……………」

「あっ」

 

 色々有ってKarに押し倒されている俺と、「その調子だ」とでも言わんばかりに手を組んでしきりに頷くグリズリーを目撃したカリーナ。事故も良いところだぜ全くぅ!?

 顔を真赤にした後、目を逸らして今までにない震え声を絞り出す。

 

「す、すみません…………いえ、人形との良好な関係ってだ、大事ですからね! 要件は後で!?」

「待ってくれカリーナ! 誤解だ! そしてヘリアンってことは急ぎだろ待て!」

 

 手を伸ばしてもKarのせいで届くに届かず逃げられた。

 グリズリーがぼそっと

 

「指揮官、浮気を見られた旦那みたい」

 

 と悲しげに呟いたのを俺は忘れない。アンタも止めろ、ノリノリで傍観しないでねお願いだから。




珍しく人形のやりたいようにしてもらってるんだけど、書き始めと逸れすぎ。「ああ~そっち転がっちゃったか~!」って感じ。Karが未練たらたら年上元カノお嬢様になってたり、何で。

ポジトロンスナイパーライフル兄貴は出番があるかもしれない、対消滅の放射能とかは多分無視する。許して。

【指揮官】
現代オタクっぽかったりメタかったりする。一応指揮官。
陽電子狙撃砲を「私物で持ってる」らしい。設定はある程度有る。

【Kar98k】
元カノ。指揮官を彼氏だと思い込もうとしているが別れた時の台詞を復唱すればトラウマで取り敢えず収まる。普通に外道戦法。
も、ってタイピングするとモーゼルカラビーナアハトウントノイツィヒクルツが出てくる。

【WA2000】
暴力系ツンデレ好きだからぼくはそれで行きます(半ギレ)

【グリズリー】
他所様から取ってきたけど結局おかしなお姉さんに片足突っ込んでる。
海外ドラマの強い女刑事とかみたい所すき。後何着ても着こなせるお姉さん感もすき。
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