人間やめてるやつ多いから入れかねた。それじゃ本編です。
「久しぶりだなイチゴちゃん」
「AR-15です」
真顔で返された。つれないやつだ、イチゴちゃんは。
モニター越しのヘリアンが咳払い。どうやらこの前の狙撃ポイントの件で未だに怒っていらっしゃると見た。
「ヘリアン、俺に怒ってるのは分かるんだ。でも絶対合コンで負けた腹いせとか含めてそうだから、もうちょい優しくしてくれない?」
『貴官…………前任の悪い所ばかり引き継いだな、全く』
は? アレの何を俺が受け継いだって? そりゃもうスコープじゃなくてモノクルの見過ぎでピント合わなくなってると思う。
さてさて。イチゴちゃん改めST AR-15。彼女はAR小隊という特殊な小隊のメンバーで、今回の調査の片手間に拾われた重要参考人だ。
何でも裏で糸を引いているらしき鉄血と接触が有ったとかで、ヘリアンを呼んで大事になってるわけ。
「イチゴちゃん、それで鉄血のやべーやつと会ったっていうのは大マジなの?」
「それは事実ですよ。前ならともかく今のあなたは指揮官、上官に対して私は嘘なんてつきません」
「だそうですよ、やっぱイチゴちゃんもヘリアンも合コンで負ける感じする」
【何を失礼な!】
そこで躍起になるあたりが合コン負け組臭すると思うんだけど…………言うだけ無駄か。
というかさり気なく話をズラしたことに突っ込めない感じとか、もうだめだよね。
気づいたらしいヘリアンが話を戻――――――――さない。
『コホン! それで指揮官、少し尋ねたいことが有るが…………いや出来れば聞きたくないのだが』
「どっちだよ」
『聞く』
「よろしい、どうぞ?」
手を差し出すと横で見ていたゾンビみたいな顔のブラック勤務者カリーナが
「何で指揮官さまの方が偉そうなのでしょうか…………」
と青白い顔で冷静なツッコミをして倒れる。
『なぜ、AR15と貴官の副官の筈のKar98kが縄で縛られているのか。これは、多分、うん聞いた方が良いはずだ。答えなくても良い、私は正直聞かないまま生涯を過ごすべきだと思っている』
「これにはふか~い事情が有ってですね、ここは指揮官の浅ヂエを信じて話を取り進めてくだされ」
この二人はマガマガしいからね、縄で縛るのもやむなし。
ヘリアンが面食らった後に何事もなかったように話を進めようとしたが、ところがどっこいそうは問屋がおろしません。
縛られていたKarが騒ぎ出す。
「ヘリアン! 指揮官さんは人形に対して不当な制限を課しているわ、これは上級代行官として見過ごすべきではない逸脱行為でしてよ!?」
「馬鹿野郎、お前が今入れたコーヒーからどうせ媚薬出てくるだろうが! 騙されねえぞ俺は!」
何をいけしゃあしゃあと涙目で泣き落とし狙ってんだこのクソ○ッチめ。
大体そこで目を泳がせるぐらいならもうちっとマシな建前もってこいや、アンタもうヘリアンに溜息吐かれてるぞ。
何となく事情を察したらしき上級代行官殿は、俺に一瞥すると申し訳なさそうに目を逸らす。全くだよ。
『えー、あー。話題を戻そうか』
「ヘリアン!? これはおかしいわ、あまり酷いと合コンの連敗記録を言いふらすんですからね!?」
『待て、おいそれは辞めろ!』
「何でそんなの知ってんだこの変態女…………っ!?」
昔はヘリアンに密接な関係にある部隊に居た、とは聞いちゃいたがそれにしたって脅し文句にどストレートに有効打な情報だなオイ。
まあそれなりに彼女にも守るものは有るのだろう、ヘリアンが唸ってこめかみを押さえだす。マトモなやつは居ないですかそうですか。
『くっ…………だが、だが仕事は仕事だ! 好きにしろぉ!』
ぐぬぬと唸ったヘリアンの死にかけの返答。何を見せられてるんだ俺は。
『私は合コンにも負け、同世代の結婚競争にも負け、子供の顔を拝めと宣う同級生に精神的に殺され!? そして職務まで全うできずして何が残る!? 本当に唯の枯れた女になるからな!?』
「そんな切実なお話聞きたくないんだよなあ…………」
「チッ、駄目でしたか」
アンタおっかねえなあ。Karは違う手を考え出したと見える、やっぱ別れて正解だわ。
ある意味仲は良いのか、なんて適当に済ませて俺が本題に引っ張り戻す。この二人で会話させてるとこのまま南極付近まで話題が逸れて俺達は凍りつく。
凍りつけばおしまいだ、もうお通夜ムードの負け組女達のほろ酔いつらつら自分語りで殺されるのみよ。後、俺が性的に襲われかねない。
「はいはい、それでイチゴちゃん」
「AR15です」
「しつこい、イチゴちゃん。鉄血のハイエンドモデルと会ったんだっけ、ソイツはどんなやつ?」
イチゴちゃんがすらすらと答える。
「身体的特徴は細身の白い肌、鋼色の瞳、片方をだんご? だんごというか、そんな感じのツインテールにしていました」
「ああ、要するにセーラームーンね。それで?」
「丈の短い夏物のセーラー服…………! そう、そうよ! あのクズ、82/57/80だったわ! 見せつけるみたいにへそ出しルックなんかして、許さない…………ッ!?」
俺はスリーサイズを言えだなんて一言も言ってない。何時になったらお前の貧乳コンプレックスはマシになるんですかね。
わなわなと縛られた手を震えさせて今にも縄を千切りそうなイチゴちゃん。ステイ、ステイと必死で宥めると何とか落ち着いた。
「ドウドウ。それで?」
「一人称は「わたし」もしくは「わたし達」、私のことは「AR15」「お主」「阿呆」って呼んだわ。後すっごい自信家、何回か自分の額に銃口を突きつけて煽ってきたもの」
「随分変なやつだな」
鉄血で変なやつじゃないのも珍しいか。
しかしハイエンドモデルでも更に自信家、となるとソイツは何らかの特殊な製造とか、AI構築環境に居た可能性が高そうだよな。
まあまずは話に戻ろうか。
「他には有るか?」
「ないです」
「あ、そっかあ…………」
品切れ思ったより早かったわ。
「指揮官」
「駄目だ動くな」
くう、と耳をたたんだ犬のような表情にぐっと歯を食いしばる。
結局Karとイチゴちゃんは縄で縛ったまま俺の執務室まで連れてきた。
道中機嫌良さげにクラッカーを食いながら歩いてるアイツに
『縛りプレイとは若いやつはお盛んだなあ、女だったら部下でも変態でも何でも良いのか? 全く恐ろしいやつだ、流石ソゲキチ*1』
って煽られた時には殺意を覚えたが、まあ45にアイツの居場所を報告できたから許してやろう。後は45が何とかしてくれる。
――ってあれ? 何か書類が足りてないな。
「おかしい、何回か確認したはずなんだがな…………」
机の引き出しを開けたくってみるが出てくる訳もない、鼻息荒くしたイチゴちゃんが俺に迫る。
「取ってきますよ」
「いや良いから、俺取ってくるから少し待っててくれ。動くなよ、取り敢えず動くなよ」
「ふう…………変な所に挟まれてた――――――おい」
見事に引き出しという引き出しがひっくり返されてていっそ感心するわ。
それこそやらかした犬のように此方を見て固まるイチゴちゃん。Karは何で縄解かれてんだよもしかしなくてもイチゴちゃんですよねコレ。
こっちを見るなり放心状態のイチゴちゃんを引っ張って、Karが威風堂々と躍り出る。
「お、どうやらマジで懲罰喰らいたいらしいな?」
「指揮官さん、私達は人形として上官をサポートしようと努めていました!」
「よく言った、アンタには後で話がある」
もじもじするな、ひょっとしなくてもそんなピンク色のお誘いじゃねえよバカ。
顔を真赤にしたKarに逃げるようにヒソヒソと尋ねるイチゴちゃん、火照った顔でニヤニヤと何かおかしなことを吹き込んだ。
多分予想通りの内容なんだろうなあクソッタレ、イチゴちゃんが顔まで真っ赤になる。
「し、指揮官!? 二人きりならとにかく、私が居るのにそういう事を堂々と仰るのは如何なものかと…………っ!?」
「いや違う」
「というか私だって…………」
今変なこと言わなかった? 俺の耳がおかしいだけ? そうかそうか、じゃあ今は忘れておこうな。
喋りながら引き出しを弄り倒していたイチゴちゃんの手を投げ、引き出しをバンバン閉じる。要らない引き出しはどんどん閉めちゃおうね~。その調子で俺の個人情報とかの漏洩先も締め出したいよチクショウ!
捲し立ててくるイチゴちゃんの高いお声をシャットダウン。議論の余地なんかねえよ。
「指揮官! やはり一人で仕事をすることはありません、私も手伝い――――――」
がちゃり。懐かしく有って欲しかった金属音、思わず溜息。
「そんな台詞吐きながら人に手錠してくるバカは初めて見た。やっぱりお前はトチ狂った乙女だ、グレイラット先輩なんかお前のことトチ乙女ってこの前呼んでたからな」
「トチ狂ってるわけがないわ! 正常かつ有効な一手じゃない!」
お前にとってのプラマイ以前に倫理的におかしいってそれ一番言われてるから。
まず治安機関が死んで久しいこの時代、彼女は一体どこから手錠なんてオーパーツを手にしているのか。我々は答えを求めて南アフリカに向かった。
まあ予想はついてる。
「お前ダネルさんを泣き落として貰ったな?」
「エッ、ナンノコトデスカ~♪」
グレイラットに重なる下手くそな口笛。お前らアホっていう一点においてそっくりだわ。
――――改めてST AR-15。イチゴミルクみたいな髪だが油断するなよ、こいつの正体はトチ乙女だ。食っても食えねえイチゴちゃんなのである。
俺はさ、基本的にあの食えない鼠先輩が嫌いだ。嫌いだがネーミングセンスには唸るし、このピンク髪にトチ乙女というナイスでアイコニックな名前をつけれる的確な危機回避能力は尊敬してる。
言ってる側から扉が開くなり、何時も通り仏頂面のダネル――――NTW-20。うちのライフル陣は俺に恨みでも有るのかという対応ばかり目立つかもしれないが、この人は超まともだ。
一目散に書類を俺の机にスッと置くと、漸く俺が立っていることに気づいた。マイペースというか、ちょっと不思議ちゃんが入ってる。
「ああ、指揮官か。第三部隊、任務完了だ――――――簡単過ぎたぞ、もっとこき使っても構わない」
「おかえりダネルさん。でも俺はどっかのバカみたいな失踪者は出したくないし、今ぐらいで良いと思う」
ダネルは無表情のまま首を傾げて頭を掻く。
「あなたがそう言うなら強要はしない」
「ありがとう。さ、お風呂でも入ってきてください、もうクッタクタでしょう?」
俺の心配を笑い飛ばすように小さく笑ってサムズアップ。
「問題ない、だが好意には甘えよう。他の部隊員にも伝えてくるとする」
「素直で助かります」
そのままガチャリと扉を閉じてしまう………………閉じてしまう?
あ、ドタドタと走ってくる音。すぐさま扉が乱暴に開けられた。
「指揮官!? どうした、何故手錠で繋がれている!?」
「遅すぎる、まあ気にしなくていいですよ?」
良い先輩みたいな人形なのだが、私生活はだいぶ抜けてる。俺は可愛らしい人だなあと思うから正直好きだし指摘しない。
かなり整ったフォームでスライディング再入室したダネル、俺とイチゴちゃんの繋がれた手錠に目を白黒させる。
「待て、AR15。私はこんな用途で使うのは全く予想外だったのだが、ちょっと説明してもらっても構わないか?」
「はい? 勿論指揮官が逃げないための拘束です、というより手錠にそれ以外の使い方って私にはちょっと…………」
ダネルはツッコミ待ちなのだろうか、みたいな顔で俺を見る。俺も分かんないですね、半分マジだし。
イチゴちゃんはトチ乙女だから大真面目にこれが最善だと思ってる、俺と前任が散々な言いようをする理由はコレにある。
それでもマトモなダネルは言うだけ言ってみる、いい先輩ィ…………。
「AR15、これでは指揮官は業務に差し支えるだろう。外すべきだ」
「私が全て何とかしますから、問題はないかと」
「…………そうか。指揮官、あなたの幸運を祈る」
諦めたダネルが珍しく困惑した表情を見せると、扉を音もなく閉めた。
「指揮官、少し人形に付き合い過ぎじゃないか」
結局。紆余曲折有ってダネルが副官になると、呆れたように片目をつむって俺を見る。
彼女の具申は最もだ。薬を盛られても、統計を取られても、手錠を付けられても俺は懲罰という機能を使わない、自分でも頭おかしいんじゃないかなって。
が、理由はある。
「とはいえ、俺の所に来る時点でワケありだ。俺はそういうやつの面倒を見てやれる指揮官を期待されてるし、そうしたいと思ってるんですよ」
実はうちの人形は「この型ならこんなやつばっか」とか思わないで欲しい所がある。性能は悪くないのにイカれてるやつとか、コミュニケーションが取りにくい人形を俺は積極的に取ってるし、ヘリアンも俺にそういう能力を期待している。
何でも心理テストの結果的に、俺は妙なぐらい人形と噛み合う性質が有ると発覚していたりするのだとか。それはもう中々なものだから、是非尽力して欲しいとクルーガーのオッサンにまで頭を下げられた。
だがなあ、と唸るダネル。
「単純に心配している、距離感として色々とよろしくない」
「ロストした時とかの話ですか」
「それも含めて、な」
それはまあ起きてしまうのだから、考えざるを得ない観点だ。
でも俺が投げ捨てたら行き場を失うやつ居るし…………。
イチゴちゃんの待遇はアレだ、一応重要任務からは外された俺は「諸事情で預かっている」立場なのも有る。普通に手錠はイヤですね~。
「何だかんだ好きですよ、今の生活」
問題ないと笑ってみると、ダネルがしばらくじぃと俺の顔を見る。
――納得いただけたらしく、溜息をつくと俺の肩を叩く。
「――――――そう言うなら私は協力するだけだ」
「いよっ、ダネル姉貴!」
囃し立てるなりダネルがフッと溢れたように笑う。
「おだてるな。バイポッドぐらいしか出てこないぞ?」
「重いし俺はアレきら~い」
無くても腕で立てれるじゃん?
もうワードが出揃ってるけど、良い子の皆は感想でバラしちゃ駄目だゾ☆
例のアイツが出てくる、パワーバランスは保てるやろ。「闇鍋のお時間だぞ、愚か者共」
イチゴちゃんはね、俺じゃない人が考えた愛称。可愛いよね、トチ乙女。ダネルさん頑張れ、マトモポンコツおねーさん。
この前「お前のやべー女はリアリティ有って真面目に怖い」って言われた、失礼な! 可愛いだろ!?
次回はまたおっきいゲスト用意したからね、皆是非とも俺にドルフロ二次を布教されていこうな。
あ、そうだ(唐突)。すっげえこまけえネタ集な。
【ここは指揮官の浅ヂエを信じて(ry】
勇なまネタ。ここは魔王の悪ヂエを信じて、だったかな。
【Karとヘリアンが知り合い】
むかーしね、まだドルフロ二次が三件しか無くてね、そのうちの一作として俺が出してた作品の設定の流用。分かる人は分かる。
もう消しちゃったんだよね、ごめんね。
【ハイエンドモデルのスリーサイズ】
EXTRA遠坂。SN遠坂より何処と言わないがデカイ。
【AR15と手錠】
何もかもが懐かしい。キワモノより。
後今までのSpecial Thanksについて軽く紹介。これからは登場するたびにちょいちょいと。
【前線小話】
堅物ゴリラお爺ちゃんと呼ばれてるあの指揮官が出演。ドルフロ二次界隈でも一際落ち着いた空気感と、推しの緩やかな流れの会話による尊さ右ストレートが強い作品。
後マジで堅物ゴリラ。この作品の指揮官がおかしいのはあの堅物ゴリラとグレイラットに第三勢力として楔を打つため。
【前線日記】
404小隊のやべー小説、AEKは絶対おかしくなるぞ間違いない(適当)。
グレイラット先輩を拝借。内容は言わずもがな404小隊と逃げれるやべーやつがじゃれ合い(戦争)をしている感じの小説。
曰く「うちの指揮官は煽りレベル高い」らしい、結果三話で煽り倒すおっさんが出てきた次第。