イリヤと不死身のサーヴァント【完結】   作:水泡人形イムス

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EPILOGUE

 

 

 

 

 

 

 ――――世界は白く――

 

    ――けれど不思議と、寒くはなかった――

 

 

 

 

 

 

 雪道を歩いている。一晩かけて足首ほどの高さまで積もった、真っ白な雪の絨毯を。

 朝の空は高く、冷たく、澄み渡った青。

 クルミが芽吹く森の中、イリヤスフィールはゆったりとした足取りで歩いている。

 

 ザク、ザク、ザク――小気味いい足音が心を躍らせる。

 ズシ、ズシ、ズシ――重たい足音が見守ってくれている。

 サク、サク、サク――しなやかな足音が寄り添ってくれる。

 

 イリヤの横を、とっても強くて頼もしいサーヴァントがついてきていた。

 左隣には筋骨隆々の巨漢。

 右隣には紅白衣装の少女。

 側にいて、守ってくれる存在。

 二人のコトが大好きで、二人もイリヤを大好きだった。

 

 イリヤと不死身のサーヴァント――みんなで一緒に、庭園へ向かおう。

 

 蒼天の下、真っ白なテーブルの上で紅茶とコーヒーが湯気を立てていた。

 黒い男と、白い女が、向かい合って座っている。

 黒い男が振り向き、不器用に笑う。

 白い女が振り向き、優しく笑う。

 

 衛宮切嗣とアイリスフィールが、幸せそうに笑っている。

 愛おしい娘の姿を見て、愛おしい娘が幸せでいるのを確かめて、安心したように笑っている。

 

「――――――――」

 

 なぜだか無性に嬉しくなって、イリヤスフィールは駆け出した。

 愛しきサーヴァントの足音は止まってしまうが、その理由を思いつけない。

 失うのはもうイヤだ。

 走って、走って、愛する家族に手を伸ばして――遠ざかって――――。

 

 そこで、目が覚めた。

 

 

 

       ○ ○ ○ ○

 

 

 

 畳に敷かれた布団で寝起きする――そんな生活にもすっかり慣れてしまった。

 目覚まし時計はまだ鳴っていないが、外からは蝉の鳴き声がせわしなく聞こえてくる。

 障子の薄っぺらい紙を透き通して入ってくる朝陽の柔らかさが心地いい。

 布団を押しのけて立ち上がってテキパキと着替える。この純白のワンピースはこの夏に買ったばかりのお気に入りだ。

 ただでさえ白い肌に加え雪のような髪を背中まで伸ばしているため、頭から爪先まで真っ白。まるで童話から抜け出してきた妖精のよう。

 それでいて常人離れした朱い瞳によって小悪魔のような妖艶さをも身にまとっている。

 

 ――妖精はやかましいだけで小悪魔はただの中ボスだ。などという無粋なツッコミも無い。

 

「…………ん?」

 

 一瞬、思考にノイズが走ったような違和感を抱きつつ、白に染まったイリヤは障子戸を開けて縁側に出る。ガラス戸の向こうは青々とした青空で、夏の陽射しがさんさんと庭に降り注いでいた。

 庭木としてところどころに植えられている紫陽花も、清楚で高貴な薄紫色をキラキラと輝かせている。アインツベルンの庭園とは趣が違うけど、これはこれでいいものだ。いったいいつから植えられているのだろう? 武家屋敷を購入する以前からあったのか、藤村組が気を利かせてくれたのか、それとも……いや、家主はこういうのを用意するタイプでは無さそうだ。

 

「んっ……ふう」

 

 うんと背伸びをする。背筋から脳天までプルプルと震え、意識がハッキリした。

 蒸し暑さに辟易とする事もあるけれど、今日は空気も心地いい。

 

 イリヤは洗面所で改めて身嗜みを整えると、朝食の匂いが漂う居間へと向かう。

 戸を開いてみれば、黒いTシャツ姿の衛宮士郎が座卓に朝食を並べていた。焼き立てのトーストに、ふわふわのオムレツと、野菜たっぷりのヘルシーなスープ。紅茶もバッチリだ。

 

「ああ、おはようイリヤ」

「――おはよう、お兄ちゃん」

 

 当たり前になった日常が愛しくて、嬉しくて。

 イリヤは自然とほほ笑んだ。

 

 

 

 

「おはようございますお嬢様。今日の朝食は私の担当。腕によりをかけてお作りしました」

 

「おはよー、イリヤ」

 

 

 

 幸せな夢から覚めたのに、現実もまた夢のように幸せだ。

 ()()()()()()()()()()()に支えられる――かつて"当然"であったそれが、今はこんなにも尊い。

 

 台所からセラも料理を運んでくる。

 長い銀色の髪を首の後で束ね、市販の洋服にエプロンというスタイルはなんだか"若奥様"って感じだ。――士郎と一緒に家事をしているのを見ると若夫婦のようにも見え、少々複雑である。

 それを言ったらセラは烈火の如く怒るのだろうが――。

 

 リズはというと、Tシャツにショートパンツというラフな格好で、だらし無く座布団を枕にして寝転がり、日曜日の朝に流れるテレビアニメを眺めてしまっている。

 題名は『魔法少女マジカル☆ブシドームサシSLASH』というふざけたもので、愛と正義と仁義の名の下に悪者どもをバッタバッタと切り倒すアニメだ。今は春から始まった第二期を放送しているらしく、リズは第一期のDVDボックスを買いたがっている。

 魔法少女とは言うが戦闘スタイルはインファイト一辺倒で、サーヴァントで例えればキャスターと言うよりセイバーなんじゃないかとさえ思う。しかも平然と飛行魔術を使っている。

 一般人の考える魔法少女とはいったいどういうイメージなのか。

 

 ――まあ、第三魔法に至っていた()()()でさえ()()()だったのだ。魔術を非実在のオカルトなどと思っている一般人にとって、魔法なんて子供の玩具と同価値なのだろう。

 

 座布団に座り、朝食が四人分並ぶのを待つ。

 お嬢様を待たせる訳にはいかないとセラの配膳速度がアップした。

 

「リズ! いつまでも寝転がってないで姿勢を正しなさい!」

「今いーとこなのにー」

 

 賑やかで、穏やかで、平和な日々。

 いつも通りの朝に、イリヤは安堵を覚えた。

 今朝見た夢はとても眩しくて、叶わなかったけれど――これが今のイリヤの幸せの形。

 

 

 

       ○ ○ ○ ○

 

 

 

 セラにとって、イリヤのために行う家事は生き甲斐である。

 故に、その役目を奪い合う関係にある士郎との相性はすこぶる悪い。

 アインツベルン城にいた頃は居候を使う側だからまだよかったが、衛宮家ではセラの方こそ居候なのだ。主導権は士郎にあり、また、居候だからといって家事すべてを押しつける厚顔さを持ち合わせてもいなかった。

 なので熱心に強弁し、家事分担で少しでも多くの仕事をもぎ取るのがセラの日課である。

 だからといって士郎も負けてはいない。セラにいいようにされていては、掃除できるのは自室のみ、洗濯できるのは自分の衣類のみとなってしまう。――いや、さすがに女性陣の下着はセラに任せているが。

 リズは縁側で外の空気を浴びながらアイスをかじっており、居間に残されたイリヤはのんびりと()()()()宿()()をしていた。

 ホムンクルスであるイリヤは必要な知識を事前に植えつけられているし、訓練も受けている。だがそれは聖杯戦争に必要な知識であり、聖杯戦争の期間中、日本で暮らせていけるだけの知識である。日本に根を下ろし、世間一般の中で生きていくための知識ではない。

 だが、それを差し引いても学校の勉強というものは退屈だった――。

 

「はぁ……またセラに仕事を取られちまった」

「おーにーいーちゃん。お勉強教えてー」

 

 なので、手の空いた士郎を目ざとく見つけ、居間に引きずり込む。

 勉強なんて退屈で面倒なだけだが、それでも、士郎と並んでお勉強をするのは『兄妹!』って感じで楽しかった。

 ああ、こんな穏やかな時間がいつまでも続けば――。

 

「こんにちはー! 衛宮くん、イリヤ、相変わらずイチャイチャしてるー?」

 

 …………一緒にお勉強を始めてそう経たないうちに、遠坂凛が訪ねてきた。

 赤い衣装のイメージが強い彼女だが、今は半袖の白いブラウスに黒いスカートと、涼し気な装いだ。季節が変われば衣服も変わる。そんな当たり前は、冬の城で育ったイリヤにとって新鮮なものであった。凛の変化を楽しむのもちょっぴり楽しい。

 しかしなぜこのタイミングで来るのだ。

 ――聖杯戦争当時、凛を下宿させてしまったためハードルが下がったのだろう。結構頻繁に我が物顔で衛宮邸にやって来るようになってしまっている。

 イリヤがふくれっ面をすると、士郎は手際よく凛を招き入れる。

 

「今日は遠坂と一緒に夏休みの宿題をする約束をしてたんだ」

「という訳でお邪魔するわねー」

 

 なんだかんだ凛にはお世話になってるので強く出れない。

 遠坂は聖杯戦争を運営する御三家の一角であり、ここ冬木の管理者(セカンドオーナー)でもある。

 ――本国アインツベルンが活動停止し、音信不通となった今、イリヤ達が冬木で暮らしていくためには遠坂の力が不可欠だったのだ。主に法的な手続きで。

 

 衛宮切嗣とアイリスフィールの実子で、年齢は11歳。

 長らく母方の実家ドイツで暮らしていたが、家庭の事情で二人のメイドを連れて日本に引っ越してきて、父の養子と共に生活している――それが今のイリヤの立場だ。

 それはそれとして、18歳の免許証も持っているのだが。

 

「ほらほら、ふくれないの。お菓子も持ってきたからさ」

「どーせコンビニで売ってるような安物でしょ?」

 

 持ってこられたのはキノコとタケノコの形を模したチョコレート菓子だった。

 ――キノコの方が指を汚さず食べられるのだけど、イリヤはなんとはなしにタケノコ型を選ぶ。甘い。甘ったるい。所詮は安物だ。でも、こういうのも悪くない。

 

 

 

 

 

 

 夏休みの宿題が一段落すると、三人での雑談タイムに突入する。

 話題は日常やら、魔術の事やらだ。

 聖杯戦争終了後、士郎は改めて魔術師として修行し直しているのだが――よりにもよって遠坂凛の弟子になってしまったのだ。

 聖杯戦争中からすでに師事を受けていたのだから妥当と言えば妥当だ。

 しかし! 士郎が望むならイリヤみずからじっくりたっぷり魔術を教えて上げるのに!

 

「そういえばイリヤ。あんた、また車を運転してたんですって?」

「魔術でセラが運転してるように見せてるから問題ないって言ってるでしょ」

「あんたねぇ……戸籍上は11歳なんだから、もうちょっと自重しなさいよ」

「自重してるから、大人しく()()()()()()()()()()んでしょ」

 

 四ヶ月ほども前の春、イリヤは目出度く小学校に編入した。

 入学進学のシーズンである春だったため都合がよかった反面、急な話だったため手続きや裏工作をすべく遠坂凛は大忙しだった。

 おかげさまで春から()()()()()という肩書きがイリヤに追加され、学校で色々と問題を起こしたりしながらも一学期を終えた。

 

 日本文化の勘違いを指摘されて恥をかいたり、体育の授業を休んでばかりで陰口を叩かれたり、調理実習でパウンドケーキを作るも失敗してしまったり、マンション暮らしの友人宅を訪ねてその狭さにドン引きして雰囲気を悪くしてしまったり、終業式では夏休みだと狂喜乱舞する友人を暗示で大人しくさせた記憶は新しいし、夏休み早々にみんなで海に行って友達のバースデイパーティーを開いたりもした。

 なぜそんな事になってしまったのか、イリヤにもよく分からない。

 

 

 

 聖杯戦争が終わって間もない頃、士郎が学校から帰ってくるのを待っていた際、近場の公園で適当に時間を潰していたら――小学生の女の子に声をかけられてしまったのがすべての始まり。

 サボりかと疑われたり、外人だと騒がれたりして、その中でも特にテンションが高くて言葉の通じない変な子に()()()()()()()()()()()()()ら――ものすごい感心されてしまった。

 そんなタイミングで士郎と凛がやって来たものだから「そうかイリヤも学校に行くべきだよな」とか妙な流れになって、声をかけてきた小学生達と同じ学年に編入させられる事になった。

 本当にもう、どうしてこうなったのか。

 森で拾った変なのをサーヴァントとして召し抱えるくらいありえない。

 ――だから、ありえてしまったのか。

 

 

 

 苛立ちをあらわにして凛を睨みつけるが、凛は呆れた態度を崩さない。

 まだ自動車の取り扱いについて異論があるようだ。

 メルセデス・ベンツェ300SLクーペ――第四次聖杯戦争の頃からアインツベルン家が愛用している名車だ。ベンツではなくベンツェと発音するのがセラのこだわり。

 維持費が結構な金額になってはいるが、アインツベルンの遺産で何とかなるしイリヤも手放す気は無い。かっ飛ばすとストレス解消に丁度いいし、セラもメルセデスのエンジンにウットリするほど車好きだったりする。

 

「正直、あんたの体格で運転されると怖いのよ。がきんちょの手足は短いんだから」

「問題なく運転できるもーん」

「それにあの車、藤村先生の家の駐車場使わせてもらってるんでしょ? セラに化けて車で出かけた後、セラが藤村家の人達に会っちゃったらどうするのよ」

「適当に暗示かけて誤魔化せばいいじゃない」

「魔術の秘匿の常套手段だけどさぁ……そもそも、誤魔化さなきゃならないような事するなって話よ。……そういういい加減なところ、誰かさんから悪影響でも受けたんじゃないの?」

「うぐっ……」

 

 否めない。

 魔術師のルールも知らない不良サーヴァントにさんざん振り回されたせいだ。

 ――アインツベルンは堕落してしまった。第三魔法の成就を放棄し、聖杯戦争を続ける気はもう無い。イリヤは士郎と共に生きると決めたのだから。

 

 ()が、()のようにならないよう――見守ってもいきたい。

 

「衛宮くん。イリヤを甘やかしてばっかじゃダメよ? ちゃんと一般常識を教えなきゃ」

「いや、俺も色々がんばってるんだけど……セラがな……」

「あの過保護メイドか……」

 

 士郎と凛が、まるで子育てに悩む夫婦のように疲れたため息を吐く。

 確かにセラは過保護なところがある。アインツベルン城を失ってますます顕著になったようにも思える。

 一方リズは逆に怠け癖がついてしまったが、あれで一応、優秀な()()()()()なのだ。

 幸い――英雄王に壊されてしまったハルバードも、予備のものをアインツベルン城跡地から回収できている。アインツベルンの忘れ形見を狙う魔術師が現れても、生半可な奴は返り討ちだ。

 

 

 

「まっ、イリヤの寿命が()()()()()()()()ならともかく――()()()()()()()()んだから、ちゃんとなさいよ?」

 

 

 

 気安い口調で凛が言うもので、イリヤは困り顔になってしまった。

 聖杯戦争終了後イリヤの体調はすこぶるよくなり、それは単に小聖杯としての機能を終えたからだと思っていたのだが――。

 なぜか、イリヤの小聖杯としての機能が停止してしまい、遠坂凛による診察の結果――。

 

 寿()()()()()()()()()()()()()

 

 第三魔法を起動するための大聖杯に()()()()()()()()()()()()()()せいで、何か意味不明なバグが発生し、イリヤに逆流でもしたのだろうか?

 それとも大聖杯の中で何かやらかしたのか? 一時期は聖杯に『イリヤの寿命を伸ばす』なんて願おうとしていたが、汚染聖杯でそれが実現するはずもない。

 

 ともかく、()()()()()()()()()()()か――()()()()()()の寿命を、イリヤは得た。

 ――ついでに言えばそれはリズの寿命でもある。イリヤに深く同調しているリズは、イリヤが死ねば機能を停止する。最後に残るのは寿命の概念を持たないセラだが、肉体的脆弱さからダメージを蓄積させていき、いつか朽ち果てるだろう。

 

 寿命問題に一息つけるようになった今、イリヤは自分自身を見つめ直す事ができた。

 どうせ長生きできないからという自棄の心があった。

 それでもなお、一年だけでもいいと、士郎の手を取ったのに。

 

 なんだかその決心を馬鹿にされた気分だ。

 馬鹿にしたのはあの馬鹿なんじゃないかと直感だけで思う。

 馬鹿馬鹿しいのは承知の上だ。

 イリヤは深々とため息をつく。

 

「だからこうして、セラの反対を抑えて小学校通ってるんじゃない」

「あの時は大変だったわねぇ……市井に落ちたとはいえお嬢様は高貴なうんぬんかんぬん」

「まっ、わたしも本当は行きたくなかったけどさ……どうせ昼間はシロウも学校だし……っと」

 

 雑談は、パタパタという足音によって途切れた。

 噂をすればなんとやら。掃除を終えたセラが昼食の準備をすべくやって来たのだ。何分、居間と台所が繋がっているもので。

 

「お昼はシーフードグラタンを予定しております。――で、リン様は今日も食べていかれるのですか?」

「うん、お願いねーセラ」

「……はぁ……畏まりました」

 

 セラが台所で調理を開始したため、雑談もセラを刺激しない内容へとシフトする。

 しばらくして、料理の匂いを嗅ぎつけたリズがどこからともなく現れた。

 

 セラの料理は相変わらず絶品だ。

 というかむしろ、以前より上達している。

 ライバルがいると対抗心を燃やして腕を磨くためだろう。今のライバルは士郎だ。得意分野の西洋料理のみならず、和食も身につけて完全に士郎を打ち負かしてやろうと張り切っている。

 ああ、なんて賑やかな食生活。

 

 

 

       ○ ○ ○ ○

 

 

 

 ――同時刻。聖杯戦争を司っていた御三家の一角である間桐の家。

 ダイニングに家族三人が食卓を囲んでいた。

 

「どうでしょうお爺様、お口に合いますか?」

「うむ。腕を上げたようだな」

 

 間桐臓硯が穏やかな表情でシーフードグラタンを食べており、間桐桜もそれを見守ってやわらかにほほ笑んでいた。エビと貝柱がたっぷり入っていて味わい深く、アクセントとしてタケノコも交ぜてある。

 どこにでもある、普通の祖父と孫娘といった風だ。

 いや、今時こんなに仲のいい祖父と孫娘というのも珍しいかもしれない。

 しかし家族仲が円満なのはいい事だ。

 間桐家は今日も平和。

 

 だが一人だけ、明らかに不機嫌だった。

 フォークをブラブラさせながら、()()()()は嫌味ったらしく言う。

 

「――――フンッ。すっかりお爺様を籠絡したみたいだな? 桜」

 

 二人の家族がいぶかしげにこちらを見やる。まるで慎二一人がおかしいとでも言うように。

 籠絡なんかしてないし、されてもいない。

 臓硯はフォークを止めた。

 

「まったく。この半年間、凝りもせず混ぜっ返すのう……」

「だっておかしいだろ、何で仲良くなってんだよ。クソッ」

 

 臓硯と桜、顔を見合わせてしまう。

 面倒臭がっているのか、間桐慎二のツッコミを。

 割と真面目に苛立ちをつのらせた慎二は、つい、傷口を深くえぐる言葉を吐く。

 

「桜さぁ……僕やお爺様に()()()()()()()()()()()()()

 

 桜の――表情が強張った。

 ほんのわずかに肩をすくめさせ、ほんのわずかにうつむいて。

 けれど、声を震えさせながらも桜は答える。

 

「もう……いいじゃないですか。済んだ事ですし」

「済んだ……事?」

「いつまでもつらい思い出に縋りつくより、家族仲良く暮らせれば、それで……」

「っ…………」

 

 本気で言ってるのか。実は新しい教育の賜物なんじゃないのか。

 慎二は頭を抱えながら、臓硯を見る。

 ――明るいと感じた。

 底知れぬ暗闇を這い回る毒蟲のようなおぞましさが薄れている。苦手だったはずの日向ぼっこや散歩もするようになったせいで血色も良くなっているし、健康的な姿が逆に不気味だ。

 

「――フンッ、馬鹿馬鹿しい。家族ごっこがしたいなら、すればいいさ」

 

 言い捨てて、慎二はその場を立ち去ろうとした。

 せっかく桜が作ったグラタンなど見向きもしない。一口たりとも食べていない。

 そのままダイニングを立ち去ろうとする背中に、桜は慌てて告げる。

 

「そっ――そのグラタン! セラさんから教わったものなんです」

 

 ピタリと、慎二の足が止まった。

 臓硯はマイペースにグラタンを食べながらうなずく。

 

「ふむ、アインツベルンのメイドか。なるほどのう」

 

 静まり返った空気の中、臓硯の咀嚼音だけが響く。

 迷っていたのは十秒くらいだろうか、慎二は舌打ちしながら踵を返すと無言で席に戻り、やはり無言でグラタンを食べ始める。

 しかめっ面のまま、いかにも渋々という風体でグラタンを口に運び続けた。

 桜はホッと一息つき、自身も食事を再開する。

 その後、無言が続きはしたものの、三人前のグラタンは綺麗に片づけられるのだった。

 

 

 

「ごちそーさん」

 

 慎二はぶっきらぼうに言いながらダイニングを出ていく。

 桜は空の食器を集めてキッチンに運ぼうとし――。

 

「これ、桜」

 

 臓硯に呼び止められた。

 昔は、呼び止められるたび表情を殺していたと思う。

 いや、呼び止められる間でもなく表情は死んでいたと思う。

 けれど今の桜は笑顔で振り返った。

 

「はい、なんでしょう?」

「注文しておった高級マスクメロンゼリーのセットが二つ、そろそろ届く手はずでな」

「ええ、受け取っておきますね。それで、いつものように?」

「うむ。片方は()()()()()()()めにお裾分けしてくるがよい」

「…………はい。()()()()()にですね?」

 

 否定せず、桜はスイーツを届けるべき相手の名前を確認した。

 異なる名前が返ってきたにも関わらず、臓硯は気にした様子も見せない。

 

「うむ。衛宮の倅では、あの娘に高級スイーツを振る舞うような甲斐性はなさそうじゃからのう」

「でも、先輩とセラさんが競うようにお料理をしていて、毎日幸せそうですよ」

「やれやれ。()()()()()()()()め、すっかり凡俗に染まりおって」

 

 聖杯戦争が終わってから、臓硯はたびたび高級スイーツを購入するようになった。生の果物が苦手な桜に配慮してか、フルーツ系を購入する時もタルトやゼリーなど加工されたものを選んでくれている。

 そしてたびたび、イリヤスフィールにお裾分けをするようになった。

 そしてたびたび、イリヤスフィールの名前を言い間違える。

 

 ――ユスティーツァという名前が誰なのか、何なのか、桜には分からない。

 しかしその名前を愛おしそうに呼ぶ臓硯の姿が可愛らしくて、桜も幸せな気持ちになるのだ。

 

 

 

       ○ ○ ○ ○

 

 

 

 午後を回ってから、間桐桜が高級マスクメロンゼリーのセットを持って衛宮邸を訪れた。

 

「先輩こんにちは。これ、お爺様からです」

「ああ、ありがとう――桜」

 

 かつては家事を手伝うため、足繁く衛宮邸に通っていた桜だが――イリヤが住むようになって事情が変わってしまった。なにせ広大なアインツベルン城の家事をたった二人でこなすメイドを引き連れてきてしまったのだ。

 これにてお役御免かと思いきや、なんだかんだ、臓硯のお使いで頻繁にやって来る。

 今日のお土産もなかなかお値段が高そうだ。というか高い。毎度毎度、悪いなぁと士郎は遠慮してしまうのだが――。

 

「ああ! お嬢様のお口に相応しい物をまたもやいただけるとは。マトウのご老公には常々感謝しております」

「今日のおやつはメロンゼリー。イヤッフー」

 

 セラが、イリヤを甘やかすため全力で受け取ってしまうのだ。

 リズも、大喜びで欲望に忠実に喜んでしまうのだ。

 イリヤもなんだかんだマキリの心遣いが嫌ではないので邪険にできない。

 異を唱えるのは凛だ。昼食後も衛宮邸の居間に陣取り、学校やら魔術やらについて雑談していたもので。

 

「また差し入れ? 間桐臓硯をどうやってここまで()()()()()()のやら」

「あっ……遠坂先輩、いらしてたんですか?」

「ええ。…………元気してる?」

「は、はい。どうも、こんにちは……です」

 

 御三家の当主同士という事もあって、凛は臓硯の動向に気を配っている。

 そして桜とは余所余所しい態度を取っているし、桜もまた凛に遠慮しているように見える。

 その理由をイリヤは漠然と察してはいるが、いちいち指摘する気は無い。

 

「さあサクラさん、お茶をどうぞ。さっそく紅茶と一緒にお出しします」

「どうもありがとうございます」

 

 セラは桜を歓待すると、すぐに紅茶の準備を始めてしまった。

 リズもすでにメロンゼリーモードとなって奇妙な上下運動を始め、胸のメロンを弾ませながらテンションを上げている。

 

(うちのメイドって、こんな単純だったっけ――)

 

 これも不良サーヴァントの悪影響なのか、それとも()()()に頭でも打ったのか。

 リズは喜びのあまり、桜に後ろから抱きついたりしてしまった。

 

「サクラ。ゾウケンにいつもありがとうって言っといて」

「あはは……あの、兄さんにも何かお伝えする事はありませんか?」

「シンジ? シンジもゼリーセット買ってくれたの?」

「いえ……でも、先輩の家を訪ねた後は、リズさんとセラさんの話をしないと兄さん不機嫌になるんです」

「何それキモい」

 

 露骨に顔をしかめるリズ。

 イリヤも間桐慎二に抱くイメージは酷いものなので、気持ちはよく理解できた。

 情けなく命乞いしたり、調子こいて馬鹿にしてきたり――。

 嫌な予感がムクムクと膨れ上がり、イリヤはたまらず忠告した。

 

「シンジがセラとリズに変な事しないよう、ちゃんと見張ってなさいよ」

「そ、そんな事しないと思いますよ。()()()()()()()()()()()()()()()、感謝しているみたいですし――」

 

 

 

       ○ ○ ○ ○

 

 

 

 英雄王ギルガメッシュの襲撃を受け、アインツベルン城が崩壊したあの日――。

 戦いに巻き込まれ、セラとリズ、そして間桐慎二は命を落とした…………と、思われていた。

 

 実際はこうして無事だった。

 

 城をも切り裂く巨大な剣が降ってきたあの時、セラとリズはまとめて地下室まで落っこちて気絶してしまったそうだ。

 その際、イリヤは半ば恐慌状態だったし、ギルガメッシュを倒した後は聖杯の機能に感覚の大半を持って行かれてしまい、セラとリズの生存を知覚できなかったのだろう。

 

 さらに乱れ狂う炎の弾幕に焼かれて消えたと思われていた間桐慎二も、単に中庭にある対侵入者用トラップ――落とし穴にハマって、地下に落ちて気絶しただけだったという。

 

 その後、目を覚ました三人は地上への出口が瓦礫で塞がっている事に気づき、地下に備蓄されていた食料で食いつなぎながら瓦礫の撤去を始めた。

 本来ならサーヴァントに匹敵する腕力のリズが簡単にどかせたのだが、腕を負傷したためそうもいかなくなり、猫の手も借りたい状況――という事もあって、侵入者であり敵マスターである間桐慎二は生かされ、協力を強要されたのだ。

 

 そうして三人の地下生活が続いた。

 いかがわしい事は何一つ無かったという。まあ、ある訳ない。未遂を起こした時点で間桐慎二の命は物理的に途絶えるだろうし。

 

 実に4日もかけて地上へと這い出した三人だが、アインツベルン城はすでに瓦礫の山。

 人っ子一人いやしない。

 這い出た先に落ちていた紅いマフラーを拾ったセラは、最悪の事態を想像して途方に暮れた。

 本来、アインツベルン城に留まるのがセラとリズの役目。

 しかしあまりにも状況が不明。ともかくイリヤ達に合流せねばと徒歩で森を越える。

 

 道中、森の中の廃墟で休んだりしていたらしい。セラとリズは負傷が癒えていなかったし、間桐慎二は体力が尽きかけ、リズにおんぶされていたというのだから。

 恐らく、その時だろう。

 天のドレスを回収しに、イリヤと言峰綺礼がアインツベルン城跡地に戻ってきたのは。

 その際、入れ違いになっていなかったら――運命はどう変化していたのだろう――。

 

 そうして三人が冬木市にたどり着いた頃、士郎達はとっくに衛宮邸を出立して柳洞寺に向かっていた。慎二はボロボロのまま間桐邸に帰り、臓硯と桜からものすごい驚かれたそうだ。

 そして、臓硯と桜が仲良くなってる事に、慎二はもーっと驚いてパニックに陥ったそうだ。

 

 一方、衛宮邸に乗り込んだセラとリズは結界の警報に引っかかり、重傷癒えぬ遠坂凛が目を覚まして敵襲と勘違いし、覚悟を決めて戦おうとしたりしたらしい。

 

 

 

 一触即発。誤解がもたらす不幸な事件が発生する間際――。

 

 衛宮士郎が帰宅した。

 全裸にジャージの上着だけかぶせた、イリヤを背負って。

 

 一触即発。誤解がもたらす不幸な事件が発生した――。

 

 

 

       ○ ○ ○ ○

 

 

 

 桜には聖杯戦争の事は伏せ、イリヤの家の崩落に巻き込まれたと説明してある。

 その結果、切嗣の養子である士郎の家にイリヤ達が厄介になる事となったとも。

 

 慎二の言動は相変わらず面倒くさいが、恩人であるセラとリズを気にかけるようになった。

 魔術師としてのコンプレックスもなんやかや有耶無耶になってしまい、大人しくなって士郎とも仲直りしたようだ。

 

 ――正直、気持ち悪いから関わって欲しくないというのがイリヤの本音だ。

 

 しかし桜は兄と話す機会が増えたのを喜んでいるようで、邪魔をするのも気が引ける。

 臓硯からはいつも差し入れをもらってる事だし。

 

 ――当初、何か怪しい薬や蟲が仕込まれてるんじゃないかと疑ったものだ。

 

「皆様、紅茶が入りましたよー。ゼリーと一緒に頂きましょう」

「わぁい」

 

 イリヤが思い悩んでいると、ルンルン気分のセラが紅茶とマスクメロンゼリーを持ってきて、リズもルンルン気分になって席についた。

 凛と桜もご相伴に預かり、イリヤは士郎と並んで仲良くゼリーを頬張る。

 甘い汁が口いっぱいに広がって――。

 

 あの二人にも、食べさせたかったなと思うのだった。

          

 

 

       ○ ○ ○ ○

 

 

 

 メロンゼリーを食べて一服した後、イリヤ、士郎、凛、桜でお出かけをした。

 強い陽射しはジリジリと肌を焼いてしまうため、心配性のセラが日傘を持たせてくれた。

 これもまた純白の日傘であり、靴まで白で揃えてあるため、イリヤは本当に全身真っ白だ。

 違う色なんて瞳の赤だけである。

 四人でマウント深山まで歩いて行く道中、道端に黄色い向日葵が列をなして花開いていた。黄色くて丸くて、太陽みたいな花。――夏を象徴する花だ。小学校にも向日葵の花壇がある。

 冬の城で育ったイリヤにとって、知識はあってもその存在は遠いものだった。けれど今はほら、ちょっと手を伸ばすだけで花びらを撫でられる。――やわらかい。

 思わずくすくすと笑ってしまう。

 

「向日葵って、タイガみたいな花よね」

「ハハッ、そうかもな。すごく前向きでエネルギーに満ちてて……」

 

 イリヤが呟くと、士郎も笑いながら肯定する。

 聖杯戦争後、体力の回復した藤村大河は学校と衛宮邸の襲撃を再開し、イリヤにもあれこれ絡んできている。その子供っぽい言動が愛らしくて、イリヤもついつい可愛がってしまう。

 そんな大河が両手に向日葵を持って「ガオー!」とはしゃいでいる姿を想像し、なんだかおかしくなって噴き出した。

 凛も向日葵と大河の組み合わせを想像したのか含み笑いを浮かべると、イリヤの横顔をじーっと眺めた。

 

「藤村先生が向日葵なら、イリヤはスズラン……いえ、テッポウユリかしら?」

 

 スノードロップやスノーフレークも合いそうだが、雪というのも安直すぎるし、以前の儚げな頃ならともかく今の元気なイリヤにはテッポウユリくらいが丁度いい。

 イリヤの背景に咲かせたら似合いそうだ。

 ほのぼのアニメのオープニング映像になりそうだ。

 

「そう言う凛は花よりお金って感じね」

「なんですってぇ~?」

「あら、宝石の方がよかったかしら?」

 

 フフンと笑って見せると、凛は分かりやすく怒ったポーズをした。

 きゃっきゃと笑いながら二人が追いかけっこを始めたのを見て、桜が羨ましそうにする。

 

「……私が花だったら……」

「桜は、桜だろ」

 

 桜の呟きを士郎が拾う。名前そのまんまではあるが、実際、やわらかな春の印象を受ける後輩には桜の花がよく似合う。

 

「…………はいっ」

 

 嬉しそうにうなずく桜。

 一方、イリヤは凛に掴まって抱きかかえられながらブラブラ揺らされている。

 

「このー! 子供扱いするなー!」

「ふっふーん。小学生が何を言うかー! うりうりうり~」

 

 本当に平和で脳天気な一幕だった。

 

 

 

 ジリジリと肌を焼く夏の陽射しの中、商店街は日曜日の活気に満ち溢れていた。雑談しながら適当に店を回る。

 ワゴン車を使った移動式のクレープ屋に小学生らしき集団が集まっているが、こちらはついさっき高級メロンゼリーを堪能したばかりである。クレープはまた今度にしよう。

 日曜日なんてお構いなしにスーツ姿で歩いているおじさんもいた。ハンカチで額を拭いながら、きっと家族のために働いているのだろう。

 イリヤよりちょっと年下の男の子とすれ違う。日傘の下のイリヤの端正な顔立ちを見るや、その男の子は息を呑んで頬を朱に染めた。――何だったのだろう?

 親子連れも歩いている。小さな女の子の手を、左右からお父さんとお母さんが繋いでいる。

 

「………………」

 

 右手に日傘を持っているイリヤは、右隣を歩く士郎を見やった。

 士郎はそのさらに隣にいる凛と歓談しており、イリヤの目線に気づいた様子は無い。

 ――士郎の左手がすぐ側にある。日傘を左手に持ち替えれば、すぐにでも掴める。

 左手。かつて、そこに刻まれていた紅い紋様を思い出す。

 彼は三画の権利をすべて、イリヤのために捧げてくれた。

 悔しいけれどそれはイリヤへの愛と言うより、彼が律儀でお人好しなせいかもしれない。

 他に使う機会があれば使っていたはずだ。自分のため、凛のため、セイバーのため、きっと――見知らぬ誰かのためにも。

 そんな彼が愛しくて、そんな彼の危うさが心配だった

 

 

 

 適当にマウント深山を練り歩く。

 自販機で飲み物を買おうとした士郎が財布を取り出し――それをしまって、別の財布を取り出すところを見て凛が首を傾げた。

 

「……士郎って財布を二つ持ってる?」

「ああ、片方はイリヤ用なんだ。セラが持たせてくれた」

「なるほど。財産処分したお金、士郎は使わせてもらえない訳だ」

 

 イリヤ、セラ、リズの生活費は主にアインツベルンの遺産から捻出されている。

 本国のアインツベルンは活動を停止して資金援助は途絶え、クレジットカードも城の倒壊の際に紛失したままそれっきり。

 そのため瓦礫を掘り返して金目の物を回収し、凛の伝手を頼って財産を処分。これがイリヤ達が暮らしていくための資産となった。

 ホムンクルス製造に関する資料も、ムジークという錬金術の家系が大金を払って購入してくれたため、その気になれば一生働かずに暮らす事もできる。

 それでもセラは倹約を重視した。アインツベルンの忘れ形見を狙う不埒者が今後、出てこないとも限らない。そういった諸問題に備えるにはやはりお金が大事である。

 ――春用の服や夏用の服や日傘やなにやらは、日本社会で生きていくための必要経費なのでまったくもって無駄遣いではない。ちょっと高級なのを選んだのもイリヤに相応しい物を選んだだけで断固として無駄遣いではない。セラの理論武装は完璧です。

 イリヤは嘆息する。

 

「まったくもう。セラったら、融通が利かないんだから」

「まあまあ。イリヤさんを思っての事なんですから」

 

 それを桜が嗜めた。

 無邪気でワガママで遠慮がないイリヤと、のんびりした桜。

 正反対な性格ではあったが、意外と仲がよくなってしまった。桜が妙にイリヤを気遣っている風にも思える。臓硯が贔屓しているのが原因なのだろうとは察せられるが、凛が面白くなさそうに視線を向けてくるのでやめてもらいたい。

 それはそれとして桜に釘を刺しておく。

 

「セラはやりすぎだけど、サクラももうちょっと強く手綱を握った方がいいわ。シンジはうちに近づけない。ゾウケンはお昼に外に出さない」

 

 無茶な注文に、桜は困ってしまう。

 

「で、でも、日の光を浴びた方が健康に――」

「一見元気になってるように見えても、生命力を燃焼させてるだけよ。アレはもう日の光を浴びすぎると寿命縮むところまで行っちゃってるから」

「っ…………」

 

 そんな吸血鬼みたいなと士郎は呆れたが、桜はなぜか真に受けてしまっている。

 

「じゃあ、どうすれば……」

「散歩したいなら夜。日光浴より月光浴。ご飯は新鮮なお肉。レバーを食べさせなさいレバーを」

「は、はい!」

 

 臓硯は朽ちた魂を維持するため、()()()()を多く必要とする。しかも以前は()()()()()()を使っていただろうに、今は豚肉だの牛肉だので代用しているようだ。

 無論、それはそれで効果があるのだが――食肉として使用している訳ではない。

 食肉にも気を遣えばもうしばらくは元気でいられるはずだ。

 ――桜が一人前になり、一人でもやっていけるようになる頃までは。

 

 イリヤのアドバイスを受け、桜は両手をぎゅっと握って決意を固めてながら頭の中で献立を考えていた。レアのステーキとか、お刺身とか、生に近い方が効果的だろうか? 血のソーセージなんてものもあるし、内臓系の料理も世の中にはいっぱいある。

 心配そうに様子をうかがっていた士郎が、とうとう口を挟んできた。

 

「い、イリヤ……あまり桜をからかうのは……」

「……? からかってなんかないけど」

 

 間桐臓硯はとっくに吸血種の妖怪変化となっており、日光は敵だ。

 そういう説明を、はて、士郎にした事はあっただろうか? 無かったかもしれない。

 まあ別に臓硯のプライベート事情なんかいちいち説明しなくてもいいかと思っていると、イリヤの頬にピタリと冷たいものが貼りついた。

 

「ひゃん!?」

「ほら。水分補給」

 

 士郎にイタズラされてしまった。頬に当てられたのは、小さいサイズのペットボトルだ。

 まったく、子供っぽいんだから――そんな気持ちを抱くのがなんだか懐かしくて、ちょっぴり悔しく思いながら黄緑色の飲み物を受け取る。――ニホンチャだ。

 以前は苦くてあまり好きではなかったが、衛宮邸で暮らすうちにすっかり慣れてしまった。よく衛宮邸に遊びに来る藤村大河が飲みたがるもので、イリヤが飲む機会も自然と増える。

 今ではニホンチャの良し悪しだって判断できちゃうのだ。

 士郎は凛と桜にも飲み物を渡し、四人でくだらない雑談をしながら水分補給タイムをすごした。

 

 

 

       ○ ○ ○ ○

 

 

 

 その後も一通り楽しむが、そろそろ夕飯の支度をしなければならないという事で解散となった。

 凛は夕食まで厄介になるほど、今日は図々しくなかった。図々しい日もある。

 桜は基本的に家族と一緒に食べるため、一緒に食事する機会は少ない。今日はお爺様とステーキを食べに行くのだと嬉しそうに語っていた。間桐慎二は一人で外食してくる事が多々あるため、一緒に行くのかどうか分からない。

 

 さて。肝心の衛宮家はというと――。

 

「タケノコはセラが用意したのがまだ残ってるから、今日は鶏肉だけ買って帰ろう」

「タケノコ……」

「ああ。今日はイリヤの好きなタケノコご飯だ」

「わぁい、シロウ大好きー!」

 

 宣言通り精肉店で鶏肉だけ購入し、二人は帰路に着く。

 マウント深山の喧騒の中、士郎の左手がすぐ隣にあった。

 日傘を左手に持ち替えたイリヤは、右手をそっと伸ばし――。

 

「あっ、イリヤちゃん」

 

 手を引っ込める。

 見れば、クラスメイトの桂美々が向かいから歩いてきていた。日本人らしい黒髪をボブカットにした大人しい子だ。

 イリヤも日傘を後ろへと傾けて表情をあらわにし、愛想笑いを作る。

 

「こんにちは、ミミ」

「こんにちは。今日はお兄さんとお買い物?」

「そうね、もう帰るところ。ミミは――」

 

 イリヤは首を傾ける。

 美々の後ろに、やや年下の男の子が隠れていた。

 

「――その子、何?」

「あはは……わたしの弟なの」

 

 言われてみれば面影がある。ヤンチャそうな男の子だ。

 しかしなぜか赤面し、イリヤから顔を背けている。

 ――彼はさっきすれ違った男の子ではないだろうか?

 

「人見知り?」

「そ、そんなはずないんだけど……」

 

 真っ白い妖精のようなイリヤは、ちょっと意地悪な笑みを浮かべる。

 

「――こんにちは。わたしはイリヤスフィール・フォン・アインツベルン。貴方のお姉さんの……友達、なのかしら?」

「イリヤちゃん! なんで疑問系になるの!?」

「アハッ、このくらいで慌てちゃって。ミミはもっとしっかりしなさい。……()()()()()なら、弟を守らなくっちゃ」

 

 意地悪な笑みを作っていたはずなのに、自然と頬がほころんで――。

 美々の額をトンと指でタッチしてやると、顔を真っ赤にされてしまった。

 姉弟揃ってどうしたのだろう。赤面症でも患っているのか。

 

「さっ。行きましょう、()()()()()

「――ああ。それじゃあな。いつもイリヤと仲良くしてくれてありがとう」

 

 士郎も美々に挨拶をして、小さな姉弟の横を通り抜ける。

 あの二人は最初から姉弟で、きっと最初から仲良しだったはずだ。

 自分達は随分と回り道をしてしまった。

 すれ違って、傷ついて、悩んで、悔やんで――――掴めた未来を今、歩いている。

 

 

 

       ○ ○ ○ ○

 

 

 

 自宅に帰り着くやすぐ料理開始する士郎と、鶏肉を受け取ってこちらも料理開始するセラ。

 台所は戦場。イリヤを喜ばせるべく兄とメイドがしのぎを削る戦場だ。

 

「……セラ。そんなじっと見てられると、やりづらい」

「業腹ですが、和食の腕はシロウにかないません。なのでこうして技術を盗み見ているのです」

「洋食はセラが一番上手なんだから、それでいいじゃないか」

「いいえ、いいえ! お嬢様が和食を所望なさるなら、全力で応えるのが我々従僕の使命。こちらの鶏肉はすべて私が使わせていただきます。覚悟なさい」

 

 イリヤはそんな二人の背中を嬉しそうに眺め、リズは扇風機に向かって座り込んでいる。

 しばらくして料理は無事完成した。

 エプロンボーイが自慢気な笑顔で夕飯を運んでくる。セラも一緒だ。

 食卓の上に並ぶホッカホカのタケノコご飯とお吸い物。

 そしてセラ自作のタレを塗った――焼き鳥。

 

「いただきまーす」

 

 みんなで手を合わせる日本スタイルの挨拶をし、さっそくタケノコご飯を口に運ぶ。

 風味の染み込んだお米と、タケノコのコリコリとした食感がもたらすハーモニー。ニンジンの飾り切りと三つ葉も添えられていて彩りも美しい。

 お吸い物の出汁の取り方も丁寧だ。いい加減な人間では千年かけてもこの仕事はできない。

 焼き鳥も香ばしくて美味しくて、自家製のタレも甘さと塩辛さが調和して心地いい。

 

「ぐぬぬ……やはり和食ではまだシロウには……しかし、今日のタレはよく出来ました」

「タケノコご飯、おかわり」

 

 セラとリズもご満悦。士郎も喜んでメイドに給仕をする。

 すっかり馴染んだこの光景。この日常。

 違和感なんてもう、どこにもない。

 だから、だろうか。

 

 シロウのタケノコご飯は美味しくて、美味しくて、美味しくて――。

 セラの焼き鳥も美味しくて、タレの味付けに覚えがあって――。

 どちらもちょっぴり、切ない味がした。

 

 

 

       ○ ○ ○ ○

 

 

 

 冬は――夕食の時間にはもう暗くなっていたのに、夏は夕食を終えても日が沈んでいない。

 

 季節はめぐる。

 景色はめぐる。

 

 記憶は思い出に変わっていく――。

 

 

 

 食後、士郎とセラが皿洗いをめぐって何やら言い争い始めてしまった。

 イリヤはくだらないと思ってぼんやりしていたが、家の外が赤くなってるのに気づくとなんとはなしに庭へ向かう。

 縁側に行き、ガラス戸を開けると、ひぐらしの鳴き声が飛び込んでくる。

 虫の鳴き声の何がいいのか分からないが、日本の風物詩とはそういうものだと周りが言うので、そういった思い込みが働いてしまったのか最近は不快ではない。

 縁側にはサンダルが四つも並んでいる。士郎用と、女性用が二つ。これはセラとリズだけではなく、凛や桜や、大河なんかも使用する。

 ひとつだけ、小さなサンダルがある。イリヤのために用意された、可愛らしい赤のサンダルだ。いつものように履いて外に出る。

 

 衛宮の庭は狭い。まるで猫の額のようだ。

 しかし、知り合った小学生の家に招かれて分かった事だが――日本の一般家庭の庭はもっと狭いし、そもそもマンション暮らしで庭を持たない家庭もいっぱいある。

 弾幕ごっこどころか、ハルバードを振り回す事さえ無理だろう。

 だからといって、衛宮の庭が狭いと思ってしまう感性は変えられない。

 

 ――――庭の隅にある花壇もほら、こんなに小さい。

 

 庭木として紫陽花もあるが、それだけでは物足りないとセラが作りたがったのだ。紫陽花が咲くのは夏のみ。季節ごとに楽しめなくては庭としての価値が下がるという主張。

 場所が限られているため、植える花は厳選されている。

 形や色合いのバランスを整え、毎日丁寧に世話をされている。

 そんな花壇の一角に、紅い花があった

 

 ――吾亦紅(われもこう)

 日本に古くからある多年草。茎の先端に密集し、穂となって咲く生態をしている。

 何の花を植えるかは、セラが決めている。だからこれはイリヤの意思ではない。

 ただ、リズが勝手に吾亦紅の苗を買ってきた。今年に咲くと言われてつい、だそうだ。

 新しく花壇を作っていたセラは予定外の花を植えるスペースなど無いとあれこれ文句を重ねたのだけれど、結局、花壇の隅に植えてしまった。

 たったそれだけの花がこの夏、咲いた。

 紅い焔のような花。

 色鮮やかだとは思う。

 けれど思い出の中に、もっとも美しい光景がある。

 

 イリヤは、空を見上げた。

 

 塀の向こう、真っ赤な空が――意識を吸い込まれそうなくらい広々とした、鮮やかな夕焼けが、瞳に映る。

 空の遠さにわずかだが目が痛んだが、視線をそらす事はできなかった。

 トクンと、胸の奥が熱くなる。

 

 

 

「…………バーサーカー。モコウ」

 

 

 

 今はもういない二人のサーヴァントの名前を呼ぶ。

 返事などあるはずもない。あの日、あの時、二人は役目を果たして消えてしまった。

 

 吹雪の中、心を通じ合わせた優しい英雄。

 冬の夜、真っ赤な炎で着飾って舞った紅白の少女。

 

 もっと、ずっと、一緒にいたかった。

 一緒に美味しいものを食べたり、弾幕ごっこを興じたり、触れ合ったりしたかった。

 

 バーサーカーは、聖杯戦争の終わりが別離(わかれ)の時だと理解していた。

 藤原妹紅は、その魂と永遠を寄り添えると夢見ていた。

 

 でも結局、自分が選んだのは士郎だった。

 それは決して二人を捨てた訳ではない。叶うなら両方を掴み取りたかった。

 けれど、イリヤの小さな手で掴めるものなんてたかが知れていて――どうしてもこぼれ落ちてしまうものがあった。

 二人はイリヤの手を掴むためではなく、イリヤに士郎の手を掴ませるために身を投げ出し、闇へと消えた。

 

 夕陽が赤々と燃えている。

 きっと美しいのだろう。心奪われる光景なのだろう。

 なのにイリヤの瞳に浮かぶのはサーヴァントの姿。

 

 不死の炎を身にまとい、燃え盛る夫婦剣を握り締めて、四枚の炎翼を羽ばたかせた――。

 イリヤの不死身のサーヴァントの姿だ。

 

 たとえこの先、何があろうとも。

 あのもっとも美しき光景を――きっと、ずっと、忘れない。

 

「ここにいたのか、イリヤ」

 

 後ろから優しい声がして、思わず、目元を拭う。

 足音が近づいてきて、イリヤの右隣で止まる。

 振り向けば、そこには(イリヤ)を見守る(シロウ)の姿があった。

 

「お兄ちゃん、皿洗いはいいの?」

「ああ。じゃんけんして、セラが全部やる事になった」

「そうなんだ」

 

 普通は負けた方が皿洗いを押しつけられるものだが、この場合、勝った方が皿洗いの権利を得るというトンチンカンな事をしたのだろう。そんなに家事が好きか。

 ただ、セラの仕事量は以前より大幅に減っていると言える。なにせアインツベルン城に比べたら切嗣の残した武家屋敷なんて、あまりにもちっぽけなものだから。

 

 ふと、士郎の左手がすぐ近くにあるのを自覚する。

 そうしたら自然と手が伸び、兄の手を掴んでいた。

 士郎はほんのちょっとだけ驚いて、けれどすぐ、そっと握り返してくれる。

 

 ――――大きな手。

 でもまだ、キリツグやアーチャーより小さい。

 

「……あったかい」

 

 夏の暑さの中でも、士郎の体温は心地いい。

 指の隙間に、みずからの小さな指を絡める。

 弾幕の隙間は心の隙間。相手を迎え入れるための空白。

 イリヤには、妹紅達のような弾幕ごっこはできない。

 バーサーカーのように飛び込めないし、セラやリズのようには踊れない。

 だから、これが精一杯。

 

「――イリヤ、大丈夫か?」

「うん、大丈夫。――大丈夫じゃないと、過保護なサーヴァントが安心できないしね」

 

 案じてくれる気持ちが嬉しくて、切ない。

 この庭に仁王立ちしていたバーサーカーも、夕焼けのように紅い妹紅も、もうイリヤの事を案じてはいないだろう。

 

「あの二人が、わたしをシロウに託してくれた。だから大丈夫、お兄ちゃんと一緒なんだもの」

 

 さみしくて、悲しくて、泣いた夜もある。

 士郎の布団に潜り込んで、有無を言わさずしがみついて眠った夜もある。

 

 ――今の生活が幸せで、学校の友達とも遊ぶようになって、輝く思い出が遠ざかっていく。

 鮮烈な戦いの記憶は少しずつこぼれ落ち、色褪せていくのだろう。

 けれど、あの四枚の炎翼の美しさだけは、きっと――。

 

 イリヤは夕陽を見上げた。

 その視線を追って、士郎もまた夕陽を眺める。

 遥か遠くで赤々と燃え続ける光を。

 

 

 

 一陣の風が吹いた。

 それは、夏の息吹を感じさせる暖かな風だった。

 

 風は背後からイリヤと士郎の合間を吹き抜け、吾亦紅の花を揺らしながら、夕陽に向かって昇って行き――。

 

 

 

       ★ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 

 美しい草花に包まれ、妖精達が歌い踊る、誰もが夢見た理想の楽園。

 そんな光景を眺めているのは白いドレスに身を包んだ、金髪碧眼の少女だった。

 穏やかな、あまりにも穏やかな日々は、かつての激しい戦いの記憶を優しく癒やしてくれる。

 そう、戦いがあったのだ。

 悲しい戦い、苦しい戦い、裏切りや失望――絶望にまみれた事もあった。

 けれど、奇妙な縁が紡いだ愛しき時間も確かにあって――。

 

 風が、思い出を載せて運んできた。

 覚えのある気配を感じ、少女はハッと顔を上げる。

 金砂の髪が揺らぎ、風は、遥か高みへと翔けていく。

 

 ――全て遠き理想郷(アヴァロン)

 彼の王が夢見たその場所を、懐かしき風が吹き抜けていった。

 

 

 

       ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ◆ ★

 

 

 

 妖精が踊り騒ぎ、妖怪が跋扈する、美しくも残酷な世界。

 忘れ去られた者達が、幻想となった存在が行き着く先。

 

 竹林の手前に突き出している、小高い丘の上で。

 雄々しき巨躯の男の黒髪と、その肩に座る少女の白髪(はくはつ)が、風に吹かれてなびいていた。

 風は丘の向こうに広がる景色へと――。

 美しき日本の原風景の彼方に浮かぶ、眩き夕陽に向かって流れるように波打つ。

 

 不意に、懐かしい思い出が風と共に駆け巡る。

 長い長い人生から思えば、あまりにも短い出逢いと別離(わかれ)だった。

 永すぎる生の記憶に、いつか埋没していく思い出なのだろう。

 けれど。

 心の奥底にずっと、残るはずだ。

 

 ――神々が恋した幻想郷。

 幾重もの夢に満ちたその場所を、懐かしき風が吹き抜けていった。

 

 

 

       ○ ○ ○ ○

 

 

 

 一瞬、同じ夢を見ていた気がした。

 士郎の手に少しだけ力がこもり、イリヤは兄の顔を見上げる。

 真っ直ぐな瞳が、守るべき妹を見つめ返してきた。

 

 どちらからともなく自然と笑みをこぼして、握った手のぬくもりを確かめる。

 

 イリヤスフィール・フォン・アインツベルンは、今が絶対、幸せなのだと確信して。

 

 

 

「行こうか、イリヤ」

 

「――うん!」

 

 

 

 風は遠のき、夏の夕陽へと吸い込まれていく。

 兄妹は時に、いなくなってしまった者へと思いを馳せながらも、めぐる日々を送っていく。

 一年後も、十年後も――もっと先の未来まで。

 

 少女の幸せを願っていた両親のためにも。

 少女の幸せのために戦ってくれたサーヴァントのためにも。

 

 思い出を胸に抱きながら。

 思い出を胸に灯しながら。

 

 繋いだ手を離さぬよう、共に生きていこう。

 色鮮やかに季節をめぐらせるこの空の下で。

 

 これからも、ずっと一緒に――――。

 

 

 

 

 

 

 

 

      イリヤと不死身のサーヴァント

      Fate/Imperishable Memories

 

      There is not the snowy fairy anymore.

      There is not the crying girl anymore.

      The chain of fate is cut off, curse was burned with flames.

 

      Memories are light up in my heart.

      Surely, forever, will not forget.

 

 

 

      ◇ FIN ◇

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 雪の妖精はもういない。
 泣いている女の子はもういない。
 運命の鎖は断ち切られて、呪いは炎で灼かれた。

 思い出は胸に灯っている。
 きっと、ずっと、忘れない。






 ――――みたいな事をグーグル翻訳しました。Fate/SNのエンディングの英文の真似。
 イリヤの物語はこれでおしまい。

 …………さて……東方的に考えてエンディングを見た後は……。
 余韻を大切にしたいので一週間後にでも。

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