氷菓 ....引出しの中の記憶....   作:ばなナイン

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第10話

「ありがと〜!! みんなおつかれ〜!!」

 

「おう・・・・」

 

「おわった、のか....?」

 

「出来たのですね!? よかったです!!」

 

「もう少しで9時....結局二晩かかったわけだね....」

 

二日目の残業....部活時間の延長でようやく伊原達の原稿が収まった。基本何の報酬もないこの作業にこんな労力を費やすなんて....プロの日常はこれが延々と続くのか....それに姉貴め....! ここの部活はただ籍を置いて本を読むだけでよかったんじゃなかったのか!?

 

「ごめんねみんな! こんど何かご馳走するから!」

 

「ご馳走ですか? あ! どうでしょう摩耶花さん! 今度わたしとなにかご馳走を拵えるのは!!」

 

「本当かい千反田さん! 摩耶花も!」

 

「おい....お前もこき遣われた方だぞ....なんなら俺ラーメンな」

 

「ふーん相変らず味気ないヤツねあんたって....ラーメンでいいならアンタだけそうしてやるけど....?」

 

「オレも....ラーメン喰いてえわ....」

 

さすが薫嬢はわかってらっしゃる。こういうチマチマした労働の後には思いっ切り麺類をズズ〜っ!! と胃に掻き込むってのが定番だってのに。て....俺そこまで労働に勤むことってなかったな....

 

 

 

「ではこれで今日はお開きです! 皆さんお疲れ様でした!」

 

「おう・・・・」「・・・・ねねっ!?」

 

「ん? どうしたのねねちゃん?」

 

 

 

それまで伊原の懐で丸くなっていたあの生き物が急に起き上がった。ここんとこ毎日こいつはずっと寝通し気味だったが。

 

「クンクン、ねねね!!!」

 

「....ん!? おい....! まずいっ!! お前ら早くこの校舎からは離れろ!!」「ねねー!!」

 

薫が例の端末を取り出した....バイブだったのか音はしないが....

 

「何があったんです!?!」

「マーちゃん!?」

 

「いいから早く! て....まずい....御刀が....」

「そういや薫、装備は?」

「寝床だ....油断した! 兎に角お前等はっ!!」

 

そうだ、このところ薫は装備を外して仕事を手伝ってた....

 

「わかった....いくぞみん....」

「待って折木! あれって....」

「グランドに....あれは....!」

「荒魂さん、でしょうか....」

 

 

特別棟四階の窓から観える....赤い煙のようなものを纏って....地鳴りも....この前と同じぐらい....

間違いない....でも何でまた!

 

 

「正面玄関からじゃダメだ! 裏の方から出られないか!?」

「一階の渡り廊下からなら! じゃチーちゃん! はやく!!」

「どうした千反田!!」

 

 

・・・・千反田のやつ窓から離れない....食い入ってるのか? あの時とは訳が違う....!

おい....お前の目....好奇心に駆られてる場合か!?

 

「おいっ! はやく! ....しょうがない!!」

 

・・・・千反田の腕を掴んで廊下に....

 

「ちょっ!! ふくちゃん....」

「おいホータロー....こっちも....」

 

廊下側の窓からも赤黒い煙が....まだ裏の校舎の丘の向う側ぐらいか?

 

「クッ! 裏からもか....一度に二つか? こんなことって....とにかくお前等はオレと一階へ!

オレの部屋に来い!!」

 

「行くよ! 摩耶花! ホータロー! 千反田さん! ....千反田さん....?!」

「おい....!」

 

・・・・千反田....廊下の窓にまで....おい!! 仕方がないまた腕を!

 

「どうしたっ! はやく一階へ!!」

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

....おい! ....目の輝きがまたさっきとは....なんだ! 何故窓を開ける!? ちょっ....!

身を乗り出して....ここは四階だ! おいっ!?!

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・わたし・・・・いかなければなりません・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

「はっ!? 何いってんだ早く窓から離れろ千反田!!」

「千反田さん!?!」

「ちょっ! チーちゃんっ!? オレキっ!! チーちゃんを!!」

「おいっ!! 千反田!!」

 

止む得ん! こいつの腰を! おい!! 何のつもりだ千反田!! ....はっ!?

 

 

 

 

「・・・・きえた・・・・」

 

 

 

 

腰に触れた瞬間スッ・・・・と・・・・

 

「・・・・イヤーッ!! チーちゃんっ!!オレキなにバカなこといってんのよっ!!

下よ下っ!!中庭にチーちゃんがっ!! マーちゃんは!?」

「先に部屋に....!! とにかく中庭だホータロー!!」

「ん!? お、おう!!」

 

 

 

 

 

「チーちゃんっ! チーちゃんっ!?!」

「....落ちたとしたら....この辺だよね....」

「ああ....でもあれは落ちたというより....」

「オレキっ!! まだそんなこと言ってんのっ!! チーちゃんが!!」

 

俺だっておかしいと思ってる....だが....

 

 

 

『キエーーーーーェっ!!』

 

 

 

「・・・・なに....!? いまの!?!」

「益子さんじゃ....気合かな....」

「あの方向だとグランドだな....」

「でもほら....丘の方が....」

 

 

裏の校舎の上空がますます赤黒くなっている....地鳴り....? 木の倒される音か....?

 

 

「おいっ!! まだこんなとこに!! 何してる!!」

「マーちゃんっ!! チーちゃんが!!」

「千反田さんが四階から落ちて....見つからないんだ!!」

「おい! ホウタロウ! どうしたっ!!」

「あれ・・・・」

 

 

 

丘の上からだな・・・・赤黒いのが・・・・下りて来ているのか....

 

 

 

「ここは中庭だな....裏の校舎が盾になってくれるか....よしもう一度....」

「・・・・どうしたのマーちゃん?」

「『写シ』が貼れねえ・・・・さっきは・・・・ダラけ過ぎたのか・・・・クッ!!」

「ねね・・・・」

 

薫まで・・・・いきなり過ぎてまだ状況が・・・・とにかく千反田を探し出して病院に! ん!?

 

「ヘリだな....連絡が云ったからお前達だけでも!」

「でもチーちゃんがっ!!」

「! おいっ!?!」

 

 

なんだ...おい!?! 赤黒いのが裏の校舎の上から覗き込んで....こんなに速く....!

跳べるヤツなのか!?

 

 

「いや・・・・ヤダ・・・・あれが・・・・」

「クソッ!! お前等はこっちの校舎の中に!! オレの部屋にいけ!!」

「でもお前....!」

「いいからっ!!!」

「・・・・チーちゃんっ!?!」

「なに!? 摩耶花!!」

「あの....校舎の....屋上....チーちゃんっ!!」

「千反田が!?」

 

 

 

千反田が....俺達のいた特別棟の屋上の手摺を越えて....門際に....手には....

 

 

 

「チーちゃん危ないっ!! 早く中にっ!!」

「千反田さん!!」

「何で....また....」

「まさか....あの旦那....」

 

おい!? 何を言い掛けたのか質そうとした瞬間....

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『・・・・荒魂様!!! ・・・・どうか御鎮まり下さいっ・・・・!!!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「・・・・キャーーーーッ!!!!」

「摩耶花!?・・・・千反田さん!!」

 

 

 

 

 

飛び降りた!? いや跳んだのかっ!?!

 

「・・・・! いけねえっ!!」

 

薫も跳んで....迅移か!? 空中で千反田を....

 

「・・・・ふう・・・・旦那・・・・気を失ってる・・・・」

 

抱きかかえてから舞い戻って....おい千反田!!

 

 

「・・・・チーちゃん無事なの・・・・?」

「・・・・よかった・・・・」

「ああ・・・・」

 

 

俺まで腰が・・・・一体何が起きたんだ・・・・!?

 

 

「・・・・ふくちゃん、あれ・・・・」

 

 

・・・・! 裏の校舎の荒魂は!?

 

 

「・・・・うそ・・・・」

「・・・・首が・・・・落ちたのか....?」

「これ・・・・チーちゃんが・・・・?」

「・・・・としか・・・・あっと言う間だったしね・・・・」

「おう・・・・オレにも・・・・でもこれで納まったようだ・・・・」

「ねね・・・・」

 

 

 

 

 

荒魂の首と思しき赤黒い何かが直ぐ近くの中庭に....もう原形は留めてないようだな....

裏の校舎の上のも....そして千反田の右手には....

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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