しばらく台詞中心の回が続きます。
「薄暗いから解り難いかもしれんが....この御刀から少し青白い微光が観えるだろう.....」
「うん、チーちゃんからの光とはまた違う光だけど....」
「おそらく、普通の製鉄法で造られた鋼と....この国の砂鉄が....折り込まれて造られた御刀じゃないか....だからこんな光に....」
「玉鋼の御刀では違うのかい?」
「んじゃ、オレの....全部は抜けないな....途中までなら....」
薫が座構えで御刀の五分の一ぐらいを抜いた....しかしバカデカい刀だな....改めて見ると....
「あ....」
「薫さんと御刀の光が....」
「同じだね、よく観るとこうも違うのか....」
「これが玉鋼の....そうか....」
「つまり....どういう事でしょうか....」
「この御刀にも微量だが砂鉄を含んでいる鋼を使って造られていた、だから千反田の身体と共鳴してあの荒魂を鎮めることが出来たと、そうだな、薫」
「・・・・え? あの荒魂さん....を鎮めたのは....この御刀を持った薫さん....なのですか??」
「....どうする? 千反田に言った方がいいのか?」
「....私は....! 分からないわよ....」
「僕にも....益子さん....」
「....本当の事を言う。エルさん、どうか気を確かに持ってくれ」
「?? はい....」
「....エルさんには記憶が無いようだが....あの時荒魂は二つ発生した。そのうちの一つはグランドでオレが鎮めたが、裏の....校舎に乗りかかっていたもう一つの荒魂は....エルさんが....」
「....はい? わたしがですか?? でもどうやって....わたし....全然憶えてません....すいません....」
「いや! それならそれでいい! ....ただ、御刀の力が強すぎると....だな」
「あとひとつ、この御刀なんだけど、千反田さんは蔵の中に、て言ってたよね。でもここから千反田さんの家は....結構あるよね....」
「それも....エルさんの能力だろう....『迅移』を使ったんだ」
「『迅移』って!....そうだね....今の千反田さんなら有り得る事だよね」
「じんいってなんです?? それがわたしと??」
「....千反田....お前のアタマはつくづく幸せにできてるんだな....」
「ちょっ! オレキ!」
「わあ! そうですか! とても嬉しいです! ありがとうございます折木さん!!」
「・・・・なんかオレの周りのダレかに似ているが....今は思い出したくない・・・・」
「・・・・なあ薫、俺の勘だが....この一件....荒魂の発生、校舎の中の原因、この御刀、そして千反田....これらは全て繋がっているんじゃないのか....?」
「どういう・・・・ああ....そうか....そうかもな....これで全てのコマが揃ったのかも知れん....」
「そうなのかいホータロー・・・・じゃ、いよいよ・・・・」
「原因の在りかがわかった、てこと・・・・?」
「では・・・・もう・・・・」
「今はまだだが....そうだな、....問題の原因は....」
「どこなんだい? ホータロー!」
「....校舎の中だ....」
「オレキ....あんたバカにしてんの!?」
「....その御刀と千反田を以てすれば....」
「わたしが、ですか?」
「おぅ....そうだな。エルさんがこれを構えて校内を歩いていれば、あるいは、だな....」
「....どうしてそんな事で原因が....益子さん、ホータロー....!」
「俺にもわからん。ただこれらの条件が揃ったのは何らかの運だな....」
「....そしてオレたちの勘もだ....エルさん、悪いがこの御刀を構えながらこの校舎を歩いてくれないか....?」
「はい??」
「・・・・いや、校内全部を捜す必要は無いかも知れない。俺はもう当たりをつけている」
「マジか....ホウタロウ....!」
「そうなんですか....! 折木さん! どこなんです!?」
「なんでもっと早く言わなかったのよ....!」
「言っとくがこれは勘だ。何の根拠も無い....」
「で....どこなんだい?ホータロー....」
「・・・・説明は後だ・・・・いくぞ」
「ええ・・・・もしかして灯りも点けずにかい・・・・僕は遠慮しとこうかな・・・・」
「私は行く。これでマーちゃんとも、なら・・・・」
ここ薫の寝床、特別棟一階階段下物置から四階東側教室手前....二時間ぶりの部屋の前....
「ホータロー・・・・ここって・・・・」
「ああ、俺達古典部の部室だ・・・・」
「おいホウタロウ・・・・」
「・・・・オレキ....! いいかげんおちょくるのも....」
「里志、この部屋のプレートには何て書いてある?」
「何てって・・・・あっ!! そんな・・・・そうなのかい?」
「いったいどういうことなんです??」
「まずは入るぞ」
「一応荷物はそのままだね....」
「ねねもいるか?」
「ねねっ?」
「ねね、お前もスタンバっとけ....エルさんの助手としてな」
「ねね!」
「エルさん....御刀を抜いてくれ....」
「はい....」
千反田が刀を抜いた....おい光が....
「まずい....! カーテンを! エルさんも御刀を鞘に....!」
「マーちゃん....もう外に人がいないみたいだけど....?」
「念のためだ....ゆっくりと閉めろ....」
「わたし、どうしたら....」
「わかった....三分の一ぐらいだ....」
部屋のカーテンを閉め、千反田が右手に柄、左手に鞘を持ってゆっくりと御刀を鞘から抜き、途中で留めた....千反田と御刀の光がさっきより....
「凄い....マーちゃんの部屋の時とは....」
「やはりこの部屋の中に....だね、ホータロー....」
「そういう事になるのか....」
「エルさん、御刀から何か感じないか....?」
「なにか....振動のようなものを感じます....! それに....」
「引き寄せられる感じか?」
「そう! そうです....! こちらです....」
古典部の俺たちが普段詰めているテーブルの場所の両側には全面ガラスの資料標本の棚が並んでいる。その東側のガラス棚の奥に間を空けて壁側にも資料棚が並んでいる。その中に....
「これは古そうだね....」
「木製の棚....この中なの? チーちゃん?」
「わかりません....ただ、どうも....ここでしょうか?」
千反田の持った御刀の抜き身が指し示す先には一番奥の木製の標本棚。これも上部はガラス棚、下部は木製の引戸、真中も....
「....この引出しでしょうか....」
「ねね、何か感じるか?」
「?....ねね....」
「....そうか、でも開けてみるか」
薫が棚の引出し....三つある内の真ん中....を引き出そうとする....
「....鍵か....」
「....どうするの....!? いまさら鍵まで探すなんて....!」
「薫、いつものテ、だな」
「な、なんのことだ....? て....わかってんじゃないか....ヒヒっ!」
薫がどこからか取り出しまするは! 針金....
「やっぱり手癖が悪いな....薫の旦那....!」
「ああ、だからここでの調査はオレが選ばれたんだ....だが、この部屋は盲点だったぜ....一度は調べたのによ....」
「調べた、て....どんな風にだい....?」
「あのスペクトラムファインダー、まあ荒魂探知機だな....あとはねねだ」
「ねねさんが、ですか?」
「この端末とねねの鼻と耳を使って校内を調べてたんだ。今となってはいい加減な捜査だったな....まさかこんな所に....」
「ねね....」
「開いた....よし!」
引出しを慎重に取り出す....テーブルに運んで中身を確認したが....
「ただの鉱石標本だね....」
「この中には....クソっ....!」
「ねねちゃんとその探知機は....?」
「反応が無い....」
「折木の勘もこれまでね....」
「ま....そういう事になるかな....」
「折木さん....」