「....クククン! ねねっ!?」
「....おいっ! ねね!」
ねね? がさっきの標本棚に....ん? 取り出した後の引出しの奥を....
「クンクン! ねねっ!!」
「....そこか! その奥に....!」
「あの引出し....そうか」
「奥行が....棚に比べて狭かったね....」
「あの時、わたし....」
「チーちゃん引出しを取り出してたとき、御刀を置いていたからね....」
棚の引出しの奥に....隠された引出しが....薫がそっと引き出してみる....
「・・・・これは・・・・」
取り出した引出しの中に....何か光るもの....これは....
「これ....なに....? マーちゃん....」
「....アナログ式スペクトラム計....荒魂探知機だ....こんなものが....
こんなところで眠っていたとは....」
「アナログ式って....! じゃあこの光るものは....! 益子さん....」
「....ああ、ノロだ....」
「この前里志がスマホで見せてくれたあれだな....」
「あれって? 折木さん....」
「まさかホータロー....! あの時から気付いてたんじゃ....!」
「まさか....いくら俺の運がいいからといって....今夜現れた荒魂、御刀、千反田....
まあ刀使としてのだな....とくればもう一つは....」
「....ノロ....という事か? ホウタロウ」
「そうだ。まず最初の三つが揃ってようやく俺の勘が働き出したんだ....
ノロへの道筋をな....勝手にだが....」
「でも....どうしてわたしの御刀が....なんですか? わたしにそのような能力でも....」
「いや....俺にもそれは....ん?」
テーブルに置いてある千反田の御刀が....音を立てて震え出した....なんだ....!?
「え....なに....?」
「千反田さん、触っていないよね?」
「え? ええ....」
「....! そうか! このノロを....!」
薫がアナログ式探知機を御刀へと運ぶ....側に置くと...
「なに....これ....どうしたの....」
「中のノロさんが....暴れてます!!」
「いや....引き寄せあってるのかも....」
「薫....これは....」
「オレも....初めてだ....じゃあ、これなら....」
探知機を御刀の上に置いた....ん?
「治まりました....」
「え....なに? 中のノロが球体に....!」
「真ん丸だね....写真のように垂れ下っていない....」
「....おい....! ノロが....!!」
「飛び跳ねてる....薫!?」
「ねねね???」
半円形のガラスケースの中でリズミカルにピョンピョンと飛び跳ねるノロ....ユーモラスでもある....
「これは....凄いね....こんなもの滅多に拝めるものでも無いよ....」
「おう....こんな事って....里志....」
・・・・俺達男共が宇宙的神秘の感に撃たれてる時....隣の連中は....!
「なんか....ヘンだけど....カワイーっ!!」
「そうですね!! とても喜んでいるみたいです!!」
「喜んで....そうか! このノロとこの御刀は....!!」
薫もお隣さんでした....
「この中のノロは....この御刀を造る際に取り出されたノロ....そのものだ....」
「そうなのか....? でもノロっていうのは....」
「普通は玉鋼を形成させる時に抽出されるものだが....おそらくこの御刀を造る時、工業用鉄鋼に直接砂鉄を混ぜ込んだんじゃないのか....だから軍刀を造る工場か工房でノロが....」
「....それをこのガラスケースの中に、ということかい?」
「明治以降御刀を造る際には刀剣類管理局管轄の鑪場から刀鍛冶に玉鋼を譲渡していたんだ。ノロを直接管理局を通じて祀るためにな。それ以前は鑪場の職人集団が自らの祠を建てて祀っていたんだが。その後玉鋼そのものも造られる事も稀になった....ノロの処理にも限界がきたんだろう。だが、昭和の初期....物資不足で軍刀用の鉄鋼も不足して....止むを得ずこの国の砂鉄を....という可能性も....当時は違法行為だったかもしれんが」
「....そうなのかい?でもこのノロはなんでここに....どうしてこんな事になったんだろう....
ホータローは....?」
「もうこれ以上は俺にもお手上げだ....どこかに資料でも残ってなければな....」
「ねえ....私の漫画的想像力でいいなら....こんな事もありえるかも....」
「....言ってみてくれ、....摩耶花....さん....」
「御刀って、男の人が持っていても、刀使としての能力は目覚めないんでしょ?」
「ああ、そうだ」
「昔、この御刀が....軍刀としてだけど....チーちゃんの家に持ち込まれた時、チーちゃんの家の女の人....誰か知らないけど....触っちゃったんじゃない? そしたらその女の人....刀使としての能力に目覚めちゃって....それからこの御刀を蔵の中でずっと保管していたとか....」
「なるほど....ありうるかも知れん。千反田さんも刀使の能力を持っているなら遡って....さっきの話のように嫁入した誰かの家系で....」
「で、このノロは?」
「オレキ....突っ込んで来るわね....その事情を知って、この御刀を造った職人さんがノロもチーちゃんの家に持ち込んで....」
「で、この高校に?」
「分かってるわよ....何らかの理由でこの高校の地学準備室に隠しておいたのよ....! 満足!?!」
「はは....そういう想像もあり得るかも知れないけど....しかしまた地学準備室とはピッタリな
隠し場所だよね」
「....そうでした! なんでここなんですか!? 折木さん!
どうやってここを特定出来たんですか!? わたし、気に....」
「....お前以外はもう気付いているみたいだぞ....」
「へ!? そうなんですか? 薫さん? 摩耶花さん? 福部さん??」
「チーちゃん....私もあのノロを見てから気づいたの....ノロって砂鉄から出来るでしょ?」
「はい!」
「....だから鉱物資料も置いてあるここ地学準備室に....てこと....」
「・・・・ええー!! そうなんですか!?! ・・・・そうですよね・・・・
折木さん!! どうしてもっと早く教えてくれなかったんですか!!!・・・・」
・・・・いやお前だって聞かなかっただろ....ナンダそのプクーとした頬は!!
「....チーちゃん声....!」
「はっ! ごめんなさい....! でも....」
....まだムー! と睨みつけるか....! かわいいモンだが....いや俺は悪くない、
ここに隠した奴が悪い!
「....隠した、というなら根拠が無い訳ではないな....機械式の荒魂探知機が開発された時、それまで使っていたこのアナログ式の探知機....つまりはノロを管理局が強制的に回収したことがあるしな....」
「それは何年前だ?」
「二十年前だ....」
「じゃあ少なくとも二十年も前にここに隠されていることになるね....管理局から隠すためか、砂鉄入りの軍刀を造ったことを隠す為か....」
「この校舎もたしか二、三十年前に建替えになったって言ってたよな。これを収めていたこの木製の標本棚....前の校舎から運んだ物かも知れんし」
「それにです....! 母方の....わたしの叔父も....この高校の出身....ですから....他の身内も....
かもしれません....!」
「つまり、伊原のマンガ脳の可能性も捨てたもんでも無かった。よかったな」
「なによ! バカにして!!」
「摩耶花さん....! シーですよ....!」
「....ウン....オレキ〜!!」
おう....これで二人目か....真実を話すにもリスクが伴う、ということだな....
慎むべし慎むべし....
元ネタ
校舎の建て替え 第5話
わたしの叔父 第3・4・5話