「あとは....この二つをどうするかだ....」「ねね....」
俺達はここ薫の寝床に戻って思案にくれている....この御刀、ノロ、そして千反田の事....今夜現れた二つの荒魂を薫一人で鎮圧したと管理局の現場担当者に報告してしまったため、地学準備室で発見したこのノロ....アナログ式探知機と、千反田の家の蔵に眠っているはずの御刀....観た目は軍刀....を改めてどう管理局側に説明すればよいのか....ここはいつもの薫の手癖の悪さを利用して....
「....御刀の事は無かった事にすることは出来ないのか?」
「....それではこのノロと御刀は!? ....離ればなれになってしまうのではないですか....?」
「....そうよね....せっかくまた出逢えたというのに....」
「それにこのノロ....管理局に没収されたら、どうなるんだい? 益子さん」
「おそらく....他のノロと融合されて....祀られるか研究材料にされるか....」
「ではもうこの御刀とは....!」
「融合されて個性を失ったら....この御刀との共鳴関係も....だね」
これまで玉鋼と分離されてきた多くのノロは御神体として祀られるたびに各々の祠の寝所で融合され、元の玉鋼との親和関係を失っていったという。『彼ら』は祀られることで元の玉鋼から分離された『寂しさ』を慰撫されてきた存在なのだそうだ。
「でもこのノロさんは....この御刀となら祀られる必要はないようですね....」
「だがこれが今回の荒魂騒動の大元になった原因だ。確認した以上管理局には報告しなければだな....」
「なんとかならないのかい? 益子さん....!」
「オレの伝手を頼るか....オレの知合いにも話の分る奴がいる。そいつ等に頼めば....」
薫が端末でどこかへ連絡を取り出した。話は直ぐ付いたようだ....
《コンコン!》
「おう、入ってくれ....」
「....WOW!! ヒサシブリだネー!! カオルのダンナサマー!!」
ギューッ!「ねねー!!」
「お、おう....」
....突然乱入してきたこの外人....いきなりアメリカンなフレンドリーさを発揮している....何者だ??
「....OH! 君タチは何者かネ?」
こっちの科白だ....いきなり場違いな外国の爺さんが入ってきたら俺達田舎者は戸惑うしかない....
「いきなりだな....やっぱりここに来てたか爺さん....!」
「さっきここでの荒魂発生の報告を受けてネ! 美濃関の研究所にいたからヒトットビだヨー!!」
「なら話は早い、これを見てくれ」
「OH! これワ!!」
「折木さんが発見したんです!!」
「WHO? オレキ??」
馬鹿っ千反田!! ここで俺の名前をだすな!! 話がややこしくなるだろう!!
「....キミがソのオレキ君と言うのかネ?」
「え....ええ....そうですが....」
ややこしくなったじゃないか....俺は英会話は....!
「WOW! WONDARFUUUL!! キミがアノ有名な名探偵折木コゴロウ君だネー!!」
「ホウタロウです....」
俺にはアメリカンなシェイクハンド....千反田並のPSの無さ....
「ナルホド....キミ達が報告にあったスコンブ! の皆サンだネ! 報告通りだヨ!」
コテンブだ....薫のヤツどういう報告をしたんだ....! 名探偵だと!? 俺にはそんな面倒な肩書きなど要らんわ!!
「こんにちは! わたくしがこの古典部の部長千反田えるです! えーと....? お名前は....?」
「ああ、この爺さんフリードマンていうんだ。博士でいい....」
「はい! では博士! あとこの二人も古典部の部員なんです!」
「えーと....初めまして....伊原摩耶花です....」
「僕は福部里志といいます。よろしく!」
「ヨロシク頼むヨー! では本題だ! あとはこの御刀だネ?」
切り替えの早い爺さんだ....御刀を手に取ったな....
「刀の見分け方は分からないガ....確かに普通の御刀とは違うようだネ」
「昭和の初期に造られた物だって益子さんが言ってたよ」
「Oh....昭和....コレが....これを視たまエ君達」
「これは....なんです?」
爺さんの取り出したのは....薫の端末と同じくらいの計測器? 画面に数値が....
「玉鋼のパーセンテージを測っているのだヨ。これによると....20%ぐらいかナ? 玉鋼を混合させた物ではないようだがネ」
「ではやはり砂鉄から....ですか? 博士?」
「そうだネ....玉鋼からだとこんなに巧く鋼同士が融合出来ないからネ」
「では薫さんの見立て通り....製作過程でノロが抽出されたんですね....」
「それがこのノロだネ....これを発見したのが....」
「ハイ! この折木さんです!」
「....どうも....」
ハア....どうしても俺の出番が周ってくるのか....ここは一つ、しなくてすむ説明は省略し、しなければならない説明は手短に....だな。
「....つまり、キミはこの御刀を使ってこのノロを発見に導いたわけだネ? よく気づいたヨー! マサカ御刀でとはネ! キミが持ってかネ?」
しまった....ここで千反田の能力の存在を明かしていいものなのか....もし管理局の関係者に知られたら....
「博士、わたしです....わたしがこの御刀を持って場所を特定しました....!」
「そうだ、爺さん....この千反田エルさんがこの御刀と....刀使の能力を使ってこの探知機を見つけたんだ....方法を思いついたのはホウタロウだがな....」
千反田....自分から明かすとは....後が面倒になるかも知れんのに....自覚がないのか....?
「キミがかね....? ウム、でもキミは刀剣類管理局に刀使としての登録はしていないのでワ?」
「....! はい、そうです....いけませんでしたか?」
「マ! 突然能力に目覚める事もあり得る事だしネ! 気にしないでくれたまエ! では、早速その能力を見せてくれないカナ? 千反田クン!」
アッケラカンだ....この人なら信用してもいいのか....? 千反田、御刀を構えたな....
「電気を消すぞ」
「・・・・OH・・・・ナルホド....コレは....コレでキミはもう一体の荒魂を鎮めたのだネ」
「・・・・マーちゃん! 言っちゃったの!?」
「・・・・いや、オレは....爺さん!?」
緊張か今まで黙っていた伊原が叫び声をあげた....俺も驚いたが....
「カオル君、キミの御刀の斬れ味はとうにお見通しだヨ。グランドの荒魂はキミが鎮めたガ、北の校舎の荒魂の斬り口は違う。御刀の長さでだネ」
この爺さん....やるじゃないの....
「わたしは....」
「爺さん! エルさんは何も憶えてないんだ!! このことは....!!」
「安心したまエ! 悪いようにはしないヨ。結果オーライならそれでヨシ! HAH!HAH!HAH!!」
確かに話は分かりそうだ。それでは....
「フリードマンさん....これからどうすればいい....ですか? 俺達としては、ノロと御刀を離したくないんです」
「....そうです! この二人は数十年ぶりに再開したんです! これを引き離すなんてこと、
わたし....!!」
二人は....ね。千反田の奴相当入れ込んでるな....
「マアマア待ちたまエ! とにかくこのノロと御刀の共鳴も観察して観ようじゃないカ!」
さっきのように御刀の上に探知機を乗せてみた....
「....WOOOOOOW!!! コレはワタシも初めて観るヨー! 確かにこのフタリは引き離せないネー!!」
「....よかった....よかったですね! 折木さん!」
「ん? ああ....よかったな....」
「この二人を引き離すナンてヤボな事はしないが....でも一つ気になる事がアル」
ナンだ....気になるって....俺その言い回しに過敏になっているのか....?
「マアいい! 研究所で調べれバ....」
「なんですか!? その『気になる』って!! 研究所で調べてたらここでは解りませんよね!!
それでは気になります! 博士! 何が『気になる』んですか?? わたし....気になりますっ!!!」
元ネタ
スコンブ....(酢昆布....) 第3話
氷菓の舞台の架空の街『神山市』のモデルは岐阜県『高山市』だそうです。美濃関も岐阜県ですからヘリコプターならヒトットビですかね。
....けっこう距離がありました。