氷菓 ....引出しの中の記憶....   作:ばなナイン

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第3話

 

「・・・・うす、昨日アレからどうだった?」「ねね??」

 

「おう、旦那」

 

「おはようございます!薫さん! 摩耶花さんの事ですか? あの後二人で喫茶店に寄ってあの方のお話をたくさんしてもらいましたよ? とても素敵な方なのですね! 獅童さんて!」

 

「まあ、知らぬがナントカとも言うしな....」

 

「ハイ??」

 

「いや....オレはコイツのこと直接には知らんしなー! ヒヒ!」

 

「ほーさいで、まあ、聞いた話では相当のエリートらしいしなー。益子の旦那には縁もゆかりもないか」

 

「おう....そう言うことだ、折木の旦那、よく分かってるじゃないか....」

 

「それと折木さん、薫さん? 摩耶花さん、しばらく漫研の方での活動が多くなるそうですよ。

『皆んなに宜しく....』だそうです! とくに折木さんには『・・・・覚えておきなさいよね!』とのことです! どういうことです?? 折木さん!」

 

お、おう....またも逆恨みか....伊原め! まあ憶えておけ! というなら昨日の事を忘れないでやることもやぶさかではないが....ウム。

 

 

 

 

「薫さんお昼を食べるようになりましたね!」

 

「おおう、ここんとこ体調がいいんだ。メシもほら! サンドウィッチだけじゃなく、

おむすびもだ」

「ねねっ!」

 

「たしかによく食うようになったよな。血色もいいし、

授業もわりと起きてる時が多い気がするぞ」

 

「そうです! きっとここでの生活に慣れてきたんです! そのうちに成績の方にも結果が出てくるかも知れませんよ!」

 

「もう二週間近くにならないか? あれから荒魂も出てこないし、

もう大丈夫なんじゃないか?」

 

「そうならいいんだがな....まだ油断がならないようだ。上からの指示もあるし」

 

「もし、ここでの任務が終了したら、長船にもどってしまうんですか?

私、寂しいです....」

 

「おう....こればかりは、オレにもどうにもならない。荒魂が多数出現すればここでの任務も長引くだろうが、そんなこと望んじゃいけねえからな....」

 

「そうだな。益子の旦那の任務、て割に合わないお仕事だな....」

 

「まあな、でもこれも御刀に選ばれた重要な天職みたいなものだしな」

 

 

俺たちの昼食は時にこんなしんみりとした会話を交わすこともある。その時の益子の旦那の目は窓の外をただ眺めてボーとしている。こころここにあらずと....

 

 

「なあ、折木の旦那....旦那のこと、ほうたろう、て呼んでいいか....」

 

「....ん? なんだ、別に構わんが」

 

「だからよー....旦那もオレのこと、カオル、て呼んでくれないか....?」

 

「いいぞ、何か知らんが。薫、でいいか?」

 

「おっ、おう....じゃ、ホウタロウ....」

 

「ん?」

 

「いや! ....何でもねえ....フゥ」「ねねね???」

 

「おう」

 

どういう心境の変化か? らしく無いな....まあ、俺たちはまだコイ....薫に出逢ってからまだ日が浅い。何を持って『らしくない』なんて、言える権利もないわけだが。まあ、これも体調の変化のなせる....ということなのか....

 

 

 

 

 

「・・・・だから、出る....て話なのよ....! 音楽室に!」

 

「お、おう・・・・」「ねねね・・・・」

 

「おい、里志、あれって....」

 

「まあまあホータロー! ここはひとつ、摩耶花の話の続きを聞こうじゃないか!」

 

「そうです! また新しい都市伝説が生まれるところかも知れませんよ!」

 

学校の怪談か七不思議だろ....まあこの神山高校にも御多分に洩れずその手の話は代々受け継がれてさらに尾ひれが付いたりまた新しいのも....しかも伊原、そのネタは一年以上も前のだぞ。どれだけ情報が遅いというんだ。

 

「おい・・・・マジか....オレ選択授業音楽だぞ....」

 

「そーなのよマーちゃん! で、グランドピアノがあったでしょ! ある雨の日の放課後合唱部の生徒が忘れ物を取りに音楽室に戻ったら....中からショパンの葬送行進曲のピアノの音が聴こえてきて.....扉を開けたら....」

 

「....お、おう....」

 

「ピアノの蓋がスーと開いてその中から髪を振り乱した血まみれの女子生徒が....!!」

 

「きゃっ・・・・!」

「・・・・うわ・・・・」

 

おい、千反田はともかく薫.... 真に受けるな....てかこの益子の旦那、ほんと真剣に....あんな荒魂を一刀両断するほどの剣の使い手がこんな程度の話に食い入るなんて....伍箇伝校の生徒といっても結構同世代には同じものかもしれんな。しかしこの話の盛り方も....

 

 

「一寸一寸、ホータロー....! 一年の間にこんな風に変わるもんなんだね。でも大筋は変わらないようだけど」

 

「まあな。それに、お前のことだからもうこの顛末は周りに言い触らしているのかと思ったぞ」

 

「まさか! 僕はね、こういう謎を解き明かしたり尤もらしい説明を言い触らしたりしないでただこういう情報を収集する事に喜びを見出すタイプなんだ」

 

「最初のほう、俺への悪意を感じるぞ....」

 

「ああアレ? ホータローの場合は自主的には動かないタイプだからね。高校に入って千反田さんと出逢って初めてホータローの潜在的な才能が開花したわけだから」

 

「やっぱり悪意じゃないか....それに、俺は何もそういう事をしようとした覚えはない。あれはみんな....」

 

「運、が良かった、て事だよね。ホータロー」

 

「おう、何の話だ? ホウタロウ! 福部の旦那!」

 

「そうです! 折木さん? 何か判ったんですか!? 今の話! ぜひ折木さんの推理を訊かせて下さい! わたし、気になります!!」

 

おい・・・・久しぶりに千反田の目が....だが一年前ならともかく、こうも怪談じみた話に発展してしまうと....説明するだけ野暮ってもんじゃないのか....?

 

「・・・・俺は霊能者じゃない。分野が違う」

 

「そうなんですか??」

 

「まあ折木には、この手の話はお手上げよねー!」

 

なんだ伊原の奴、挑発のつもりか? そんなものに乗るつもりはない。

俺はこの一年は安寧と怠惰の高校生活を送る事をこころに決めているんだ! この信念を覆すことは....

 

「薫さん! 折木さんはですね、この高校で起きた難事件をことごとく解決に導いたとても凄い才能の持ち主なんですよ!」

 

おい! 千反田! 余計なことを吹き込むな! それに難事件だと....他愛もない事ばかりだったじゃないか。あんな物は運がよければ誰だって....

 

「そうさ、ホータローは普段こんなに面倒くさそうにしてるけどいざとなったら....ここ伝統ある古典部が誇る神山高校きっての名探偵!とは!まさにここにおわしまする折木奉太郎のことでありまする!!てね」

 

里志まで....面白がりやがって!

 

「ほう、そうなのか? ホウタロウ」

 

「それはこいつ等が勝手に面白がってるだけだ。俺には関係ない!」

 

「でも、折木さんは....!」

 

「おう、あれだ!『湿布と 膏薬はどこにでもくっつく』てヤツだ!

ただ巡り合わせがよかっただけだ! 証明終了!!」

 

「折木....それを言うなら『理屈と膏薬』でしょ?」

 

「おお、そうだ! これにてQ・E・D! 終りだ!!」

 

おい・・・・俺はもう面倒は御免だ....それにあの千反田の目・・・・これ以上目覚醒させる訳にはいかない....!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

元ネタ

音楽室の怪談 氷菓・第1話

湿布、膏薬、理屈 第19話

 

 

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