氷菓 ....引出しの中の記憶....   作:ばなナイン

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第4話

 

 

 

 

 

 

 

「里志....さっきは肝を冷やしたぞ。薫の奴に余計な事を吹き込むだけじゃない、 これ以上千反田の好奇心をだな....」

 

「そう言うなよホータロー、僕だって久しぶりにホータローの名調子を拝みたくなってきたところさ。ただその対象がなかなか転がっていないんだよねー」

 

「そんなもん、そうそう転がっててたまるか。ったく」

 

古典部の活動を終えて今は里志と二人で帰宅中。今日のコイツの言動に愚痴のいくつかは零したくなるというものだ。

 

「でも以外だったよね、益子さんがあんな怪談話に怯えてるなんて! あの荒魂相手にも怯まないほどの豪胆さなのに」

 

「そうだな、現実に目に見える化け物よりも、いるかいないか分からないもののほうが得体の知れない怖ろしさを感じるのかも知れんしな」

 

「まあ僕としてはその目に見える化け物のほうがよほど恐いんだけどね」

 

「もうここんとこ荒魂の大発生のニュースも聞かないよな。去年から今年の始めぐらいは関東の方でのニュースでは聞かない日はなかったのに」

 

「その代わりここ神山地区周辺でも三つほどポツリポツリ、だよね。全国に分散、という事だよ、ホータロー」

 

「いい迷惑だよな。でも、それを末端の刀使に押し付ける、てのもな」

 

「益子さんのことだろ? 僕たちと同い年なのに....酷だよね」

 

昨年の鎌倉、東京での騒動で刀剣類管理局への批判はいまだ根強い。それでも現場で剣を振るう刀使の子達に対してはむしろ同情のほうが上回っている。俺達と同年代の女子生徒が命懸けであの化け物と戦っているんだ。だから彼女達の負担を減らすため地方へ分祀する、という方針は曲りなりともノロを祀る地元の理解を得てはいるはずだ。しかしながら....

 

「少なくとも荒魂が発生した時点で位置を公表してくれたらな....」

 

「台風の進路予報みたいにだね。でも荒魂はどちらかっていうと地震に近い方かな。突然だからね」

 

「どちらも天災だな....なあ里志、お前のケータイの例のアプリ、荒魂の感知機能、て付いていないのか?」

 

「ホータローはスマホはおろか普通の携帯も持っていないからね。去年の講習会の内容もうる覚えなんじゃない?」

 

「ああそうだ。必要ないと思って聞き流してた」

 

去年の秋ごろ、荒魂に遭遇した際の対処法の講義で現役の刀使二人が俺等の高校に出向いて来て講習会を体育館で開いたことがあった。主にスマートフォンに載せる『例の』アプリの使用法の説明だ。全国の小中高を持ち回りで行っているらしい。鎌倉での事故がきっかけとも言われているが。

 

「パソコンでもアプリの追加は可能なんだけどね。それにせっかく美濃関から刀使の子達が来てくれてたのに。可愛い子だったのにな〜!」

 

「うるさい....で、付いてるのかその機能」

 

「残念ながら、かな。このアプリは通報と警報、あと発生を確認された後の位置情報の表示ぐらいだね。避難のための。直接荒魂を感知することは出来ないみたいなんだ」

 

「じゃあ前に薫が見せてくれたあのスペクトルなんとかっていう端末とは....」

 

薫が伊原の奴と連絡先の交換をする際取り出した端末だが....一見して普通のスマホの様に見えたが千反田の好奇心に押されて説明を余儀なくされてたな。アノ目は俺だけではなく薫にも適応可能だったわけだ....

 

「あれとはね....あれは刀剣類管理局から刀使達や関係者だけに配備される特別品ということだったよね。本来、僕たち一般人がおいそれと拝める物でもないはずなんだ。益子さん、気前がいいんだね」

 

「なるほど。あれなら直接荒魂を感知できるというわけか。でもその前はどうしてたんだ? スマホなんてここ十年かそこらの技術だろう」

 

「携帯そのものがまだ二十年ぐらいだしね。それ以前の刀使は確か....

そう、これを使って荒魂を確認してたらしいよ」

 

「ん?」

 

里志のスマホの画面に映っているのは....方位磁針? でも真ん中でオレンジ色に光っているのは....

 

「そう、この半円形の硝子ケースの中にあるノロの動きで荒魂を感知していたそうなんだ」

 

「....ノロ!? これ、ノロを使っているのか!?」

 

なんて直接的な....でも何でまたノロを....?

 

「さあ僕にはね。たぶんノロはノロ同士、引きつけ合う性質でもあるんじゃないかな。荒魂も元はノロなんだし」

 

さいですか....どちらにせよ、俺達には縁のない技術だな。荒魂が発生したらただ一目散に逃げる! というのが俺たち庶民の知恵ってもんなのか....

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『本棟二階の東側通路で革製の茶色で折畳みの小物入れを落とした心当たりのある者は職員室の○○が預っている。至急受け取りに来なさい。繰り返す・・・・』

 

「折木さん、何かきな臭いですよ? 前にもこの様な事がありませんでしたか?」

 

始まってしまった....おい○○! 何て放送を....! しかし去年のアノ時とは....いや、千反田の目はまだそこまでいっていない。ここは穏便に....

 

「ただの落し物だろう。この五人の中にそういった物を落とした奴でもいるのか? いないなら俺たちには関係ない」

 

「ねえチーちゃん? 前にも、て?」

 

「そうだねホータロー、ここはひとつ説明してもらわないと」

 

「お、何の事だ? 何か事件の匂いでもするのか? チタンダの旦那!」

「ねね?」

 

薫まで....おいみんな、空気を読め。このままでは千反田が....いや、里志の奴め、明らかに火中の栗を俺に拾わせようとしているな? それなら....

 

「千反田....お前は今の校内放送の内容に違和感があって俺に訊ねたんだろ? それなら....なあ里志、たまにはお前が推論を出してみないか? 今の放送内容」

 

「え、僕がかい?」

 

「わあ! 福部さんがですか? ぜひ!!」

 

「ふーん、折木、あんたじゃ手に負えないわけ? ふん!」

 

「何か知らんが、推理か!? 高校生探偵か!! おお、お手並み拝見といこうぜ福部の旦那!!」「ねねー!!」

 

ふう....たまには俺を焚きつけるだけじゃない、千反田のアノ目の恐ろしさをとくと思い知るがいい。

 

「福部さん! わたし、あの放送の内容に違和感を覚えるんです....! でもその違和感が何なのかわたしには分からないんです! どうか、わたしに納得できるようにわたしに説明して下さい!!

わたし、気になります!!」

 

 

 

 

「・・・・え、えーと・・・・」

 

 

 

 

ふん! いい気味だ、ついでにいい機会だからこれまでの己れの身の振り方を顧みるがいいさ。

 

「凄えな....チタンダの旦那....確かにあの目に捕まったらオレも逃げられはしねえ....」

 

おおここにも千反田被害者の会の会員が。そして里志も入れてこれで三人だな。

 

「えーと、そうだね、まずは....んー・・・・放送内容が....」

 

「内容なら! ハイ!!」

 

「おい、今書き上げたのか? なんていう記憶力だ....」

 

「流石チーちゃんね!」

 

「里志、これで困らないよな....」

 

「はは....まずはその小物入れだね。でも革の折畳み、て巾着か何かなのかな....」

 

「ふくちゃん....袋状のを真ん中で縛ったって折畳みとは言わないんじゃない?」

 

「袋状で折畳み....おお、竹刀袋ってのはどーだ!!」

 

「マーちゃん、小物入れ、てことだけど....」

 

おい....色はともかく革製で折畳みっていったらアレしか無いだろう....里志め、日頃ご自慢の脳内データーベースはどうした? まあ、普通アレを小物入れとは言わんがな....

 

「そうですね、お化粧ポーチというのはどうでしょう! この高校ではお化粧は原則禁止ですからね!」

 

「うん、そうだね。どういう物か想像もつかないけど....学校に持込み禁止の物を先生が拾ったらお説教のため職員室に、てことはありそうだし、これなら小物入れ程度でも放送で呼び出すのは不自然じゃないよね」

 

「そういうことだ。これで万事解決、また俺たちに平穏な日々が戻ってきたという事だ! めでたしメデタシ!」

 

「なんだ、呆気ないな....」「ねね」

 

「....でも、まだ何か納得できません....わたしの中の違和感が払拭出来ないんです」

 

おい千反田!....自分から質問して勝手に解決を提示しておいて、それは無いだろう....!

 

「そうなのか? 旦那?」

 

「こうなったら、もうホータローの出番だね。観念しなよ! ホータロー!!」

 

冗談じゃ無い! と言ったところで....もう当たりは付けているんだがな....

 

「どうです!? 折木さん! 何かお気付きになる事は....! わたし、気になり....」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

元ネタ

校内放送 第19話

 

 

 

 

 

 

 

 

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