氷菓 ....引出しの中の記憶....   作:ばなナイン

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第5話

「はあ....わかった。その千反田の違和感というのは去年の十一月のあのゲームの事だろう。あの時は俺と二人だったからな」

 

「さっき言ってた『前にも』のことだね。それじゃ僕にはお手上げだよ千反田さん」

 

そこで他三人に事の次第を手短に説明した。労力も最小限に....

 

「そういえばあの頃に『その』ニュースが飛び交ってたね。たった一回の校内放送でホータローが解決したのかい!? 」

 

「ふーん....チーちゃんがそう言うなら....折木やるじゃない」

 

「俺は別に当局に協力したわけじゃ無い....! たまたまその日に千反田に披露した俺の推論が次の日に証明されただけだ!」

 

「でもよ、もしこの推論を前持って地元のお偉方に吹き込んでいたら....東京米花市の某高校生探偵と肩を並べるほどの有名人になってたんじゃねーかホウタロウ!」

 

「冗談じゃ無い! おちおち授業中に居眠りも出来なくなるわ....!」

 

「つまり、どういうことです? 折木さん??」

 

千反田....オマエというヤツは....お前のその違和感というものを払拭するために去年の事まで持ち出したんだろうが....!

 

「つまり、お前の違和感というのは....たぶん金だ」

 

「お金、ですか....? まさか! また....!」

 

「いや、もうそれは無いだろう。つまり、お前の違和感は、記憶の中にあるあの時の情報と今回の放送内容に類似点があったということだ。それに、放送の中の『心当たりのある者は』という下りだな」

 

「....ハイ!! そうです! それでした! これでスッキリしました! ありがとうございます折木さん!!」

 

「ちょ、ちょっと待ってチーちゃん! 私たち全然わかんない! どういう事! 折木!!」

 

俺だって....こんな事で当人に納得されても....それにコイツは瞬時の記憶力はあっても持続はしないということだな。やはり千反田は宇宙人だ....

 

「千反田....あとはお前が説明しろ。スッキリしたんだろ?」

 

「わたしがですか....! ハイ! 皆さんを巻き込んでしまったのでここでお詫び替りにお披露目したいと思います!」

 

「千反田さんまってました!!」

 

「ふくちゃん!」

 

「じゃあ、改めてお手並み拝見だな」「ねねー!」

 

「では! まず、その小物入れというのは、お財布です!」

 

「へ!? そうなのかい千反田さん! ホータローも....!」

 

「ああ、たぶんな」

 

「わたしも折木さんにお金と言われるまで気がつきませんでした! でもそう言われるとその小物入れがお財布以外考えられなくなったんです」

 

「まあそうよね....でも何で放送では小物入れ、て? お財布じゃ駄目だったの?」

 

「たぶんです、そのお財布の中にはお金が入っていたんです! それも大金が!」

 

「確かに、お金の入った財布を落し物コーナーに置いとく、てわけにはいかないからね。でも放送でも金額を提示しなければ....」

 

「おそらく、千反田の言いたいのは....その財布を拾ったのは先生で、しかも高校生にはそぐわない程の札束が入っていた。あわてた教師が財布、というところをあえて小物入れ、と放送したのは動揺してたのと他の生徒たちにこの事を知られないためにだ。もし正直に金額まで放送したら....だな」

 

「どうなるんだホウタロウ?」

 

「職員室の門前に市が建つほどの賑わいをみせるからだ....」

 

「野次馬ね....あるいは自分のだとも言い張ったりして....なる程ね折木」

 

「でも名前で呼び出せば....て、身分証明になるものは財布の中に入ってなかった、て事だね千反田さん、ホータロー」

 

「ああ、さして事件性も無いだろう。言っとくがこれは仮説だ。真に受けるものでも無い」

 

「でも折木さん、わたしは納得できましたよ? これで今晩悩まされずに熟睡できます!」

 

ったくコイツは....また無駄な労力を消費しちまったじゃないか....!

 

「なるほど、こういうものか....ウム」「ねね!」

 

「でも、大金てどのくらいなのでしょう? 折木さんは札束と言いましたよね! きっと、千円札が五枚ぐらい....五千円でしょうか!?!」

 

「えー・・・・と、まあそれぐらいよねー・・・・ふくちゃん」

 

「うん・・・・そうだね、摩耶花のいうとおりさ・・・・」

 

「お、おう・・・・一般の高校生の金銭感覚というのはそのぐらいが普通なのか....!」

 

・・・・千反田家の家庭環境というのは相当手堅いことが判明した。代々地元の名家を続けていられるわけだ....

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なあ、あれからアノ一件の話の続き、聞かないか?」

 

「アノ一件、てこの前の校内放送の事かい? 益子さん」

 

「おう、あの推理、当たっているのか気になってな....」

 

「僕の周りではね。手芸部や総務委員会でも話は聞かないな。谷君、てヒトに聞いても『そんな放送あったか?』て反応だしね」

 

「ふーん、漫研でもそう。そんな事あったかなんて誰も気付いてないみたい」

 

「そんなモンだろ、だいたいあんな放送に食い付くなんて当の本人か千反田ぐらいだ」

 

「でも、薫さんの気持ちもわかります! あの事件の証明がなされないまま、というのももどかしいものです」

 

「事件って程では無いだろう....それにお前はあの時スッキリした、て言ってたじゃないか」

 

「でも、わたしも推理してみたんです! 結果がわからないのは....わたし、気に....」

 

「おう、それなら簡単だ。○○のとこへ行けば....」

 

ん? なにをムー! とした顔を晒してるんだ千反田....俺はお前にとばっちりを受ける筋合いなど無い!

 

「そうだね、結果がわからない、てそういうもんだよ。じゃ、ここは一つ、ゲームをしてみないかい? 予め答えのあるゲームを。それなら....」

 

「却下。ここは何の部活だ? 本を読むところだろう。部活動以外の活動は原則禁止! 以上!」

 

「折木....あんたいつから部長になったってわけ? ここはチーちゃんの意見が....」

 

「わあ! 面白そうですね福部さん! 早速始めましょう!」

 

「折木....部長命令よ。フフッ!」

 

「おう、ゲーム開始か!」「ねねっ!」

 

また面倒な事を....でも今回はあの千反田の叔父の話の時のように全員参加か? なら面倒も五分の一か....

 

「そうだな....オレが言い出しっぺみたいなものだからな....どうだ! オレがお題を出すというのは....!」

 

おい! 薫め! 逃げたのか....? これで面倒は四分の一になるじゃないか....!

 

「僕は構わないよ。みんなは?」

 

「私も。折木....あんたも参加させていいんだけど?」

 

お、俺はべつに参加させられなくったって....まあそう無理に、ということなら遠慮なく見送りに....

 

「折木さんも参加ですよね! では薫さん! お題をお願いします!!」

 

「おう! それじゃあな、ん〜・・・・」

 

結局強制参加か....千反田め、俺にズラかる隙も与えないとは....!

 

「・・・・そうだな、オレがここにいる理由....てのはどうだ....?」

 

「薫さんが、ですか....?」

 

「益子さん、それは....」

 

「前に任務で強制的に、て言ってなかった....? マーちゃん」

 

「つまり、答えは出てるじゃないか。はい! これにて....」

 

「いや、それは上からのお達しだからな....オレは直接は知らん。だからお前らの推理を聞きたいんだ。どうだ?」

 

「それって、答えは用意されてない、て事だよね....」

 

「うん....それじゃゲームには....」

 

「でも、去年の十一月のあの事件の時も答えはありませんでしたよ? たまたま次の日に真相が明らかになりましたけど」

 

つまり、あの時はもどかしさを感じる時間が短く済んだ、てことか。しかしな千反田、薫のお題を解いてみたところでそれを確認するには刀剣類管理局まで出向かなければならないんだぞ! しかもそれが機密事項だったら....お前は一生寝不足の人生を送ることになるんだが....それでもいいのか?

 

「まあ....オレが納得できればそれで終了! これならどうだ?」

 

「いいですね! わたしも薫さんがここに住む理由を知りたかったんです! どうでしょう皆さん!」

 

「まあ、チーちゃんがそう言うなら....」

 

「僕も構わないよ。そもそもゲーム、て言ったのは僕だしね」

 

「俺は....」

 

「決まりですね! では、誰からいきましょう!!」

 

またしても....もうこうなったら断る方が面倒だ....ここは早々に切り上げて....

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

元ネタ

『去年の十一月』『前にも』『その』 第19話

アニメ版の第19話のネタバレになってしまうのでこの辺の固有名詞は曖昧にさせて頂きます。ちなみにこの19話の題は『心あたりのある者は』です。

谷君 第12~17話

 

 

 

 

 

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