Blind Diva   作:クミちゃん

4 / 8


いつかはメンバーにも真実を告げなくてはいけない時が来る。例えそれが、残酷なものだとしても……真実は変わらないのだから。




告白

 

キーンコーン、カーンコーン

 

 

 いつもより音量が大きいように感じるチャイムの音が、まだ寝ていたいと訴える体を無視してアタシの目を叩く。

 

 目を叩かれては起きるしかない。機械のように頭を動かして周りを見るからに、今アタシがいるのがおそらく保健室だと言うことが分かった。

 

 

(あれ……? なんでアタシ此処にいるんだっけ?)

 

 

 頭がまだ覚めていないのか、ここに来るまでの出来事を思い出せない。そんな時、右手にほんの少しだけ残っていた暖かさが静かに記憶を思い出させた。

 

 

(ああ、そういえば自販機前で倒れてたアタシを、蘭がここまで連れてきてくれたんだっけ……)

 

 

 そして蘭がアタシの我儘に付き合ってくれて……本当に嬉しかった。まあ、蘭に言った言葉を思い出すとかなり恥ずかしいが。

 

 全く、いい後輩を持ったなと蘭達の事を考えるといつも思う。とりあえず蘭には、後でプレゼントを送るとしよう。

 

 

「蘭になにプレゼントしよっかな〜」

 

 

 そう言いながら、身体を起こし背伸びをする。寝た時間は短かったが、かなり疲れが取れて目がシャキッとしているのが分かる。

 

 アタシはベッドから出て靴を履き、先生の元へ向かう。

 

 

「あら? 今井さん、良いタイミングで起きたわね。今はもう下校時間だから、寄り道しないで真っ直ぐ帰りなさい」

 

「わかってますって〜先生。あ、でもアタシって意外と悪い子なんで、もしかしたら寄り道しちゃうかもしれないです! それじゃ、さようなら!」

 

「全く……気をつけなさいよ? もし、また何かあったらここ来なさい」

 

 

 はーい! と先生に元気に返事をして会話を終わらせて、アタシは保健室を後にする。

 

 

 

 

(今日は友希那の所へ行かなきゃ……『あの事』も話さないといけないし……)

 

 

 そう考えると、いつの間にか教室に向かう足が少しずつ重くなっているように感じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あっ、やっと来た! もうリサちー来るの遅いよ〜!」

 

「あ、ヒナ……」

 

 

 少し教室に入るのを戸惑ってしまったが、荷物を持たずに帰るわけにもいかない。意を決して入ってみると、ヒナがたった一人だけ、まるでアタシを待っていたかのように教室にいた。

 

 昼の出来事を思い出すと、アタシはあまり言葉を出せずに、ヒナとアタシの間に沈黙を作りだす。

 

 

「何ボーッとしてんの? ほら、一緒に行こっ!」

 

 

 その沈黙をいとも容易く壊したヒナは、アタシが帰る準備が出来た事を確認すると、いきなりアタシの手を掴んだ。

 

 

「ちょ、いきなりなになにーっ!?」

 

 

 一体なんだと困惑してるアタシに考える暇を与えず、まるでロケットのように外に向かって走り出すのだった。

 

 

 

 

 

「はぁ……はぁ……! もうヒナってば、思いっきり、走りすぎ……っ!」

 

「え? これでも結構ゆっくりだったんだけどなぁ〜。やっぱりリサちー無理してたから体力落ちたんじゃない?」

 

 

 何処が一体ゆっくりなのか。アタシが全力で走っても出せそうにないスピードだったように感じ、これには流石に苦笑いしか出来なかった。

 

 それにしても、ヒナは昼の出来事に関してなにも触れない。なんでだろうかと疑問に思ったアタシは、早速ヒナに聞いてみることにした。

 

 

「ねえ、ちょっと良い?」

 

「ん、なにリサちー?」

 

 

「あの……休憩時間の時の事、何も言わないの……? アタシ、あの時逃げちゃったのに」

 

 

 ヒナを前にして言おうとすると、何故か言葉をスラスラと喋られずに表情が固まってしまう。やはり昼の出来事が原因なのだろうか。なんだろう、やっぱり怖く感じる。

 

 

「あ〜あれね……別に今はもう気にしてないよ。休み終わり頃に蘭ちゃんからある程度説明されたし」

 

 

 ヒナの言葉に、ホッとする。これで実は怒ってましたなんて言われたらたまったもんじゃない。

 

 それにしても、また蘭に色々やってもらってしまった。後で蘭に好きな食べ物を満足させるまで食べさせてあげるとしよう。

 

 

「それよりほら、三人が待ってるよ!」

 

 

 ヒナの声でハッと小さい声を出す。

 

 ヒナの言う三人が待っているとはどう言う事なのか。疑問に思って歩いていると、校門前に見慣れた髪色が見えた。人数も三人で、おそらくヒナが言ってたのはあの三人だろう。

 

 

「あ、リサ姉!」

 

「今井さん。待っていましたよ」

 

「あれ、紗夜。それにあこと燐子も……どうかした? 何か用でもあるの?」

 

 

 あこと燐子ならよく羽丘に来てくれるが、紗夜まで来る事はそうそうない。用事があるのかと聞いてみると紗夜は首を縦に振る。

 

 

「ええ、私達は今井さんに聞きたいことがあって来ました。……ここで話すような内容ではないですし、私の家に行きましょう」

 

 

(ここで話すような内容じゃない……? そんなに深刻な事?)

 

 

 そう思うと同時に嫌な予感がした。

 

 もしかしたら……アタシ以外の四人は隠してる事に気付いてるかもしれない。やったー! おねーちゃんと一緒に帰れるー! とヒナが紗夜に抱きついているが、さっきからあこと燐子の表情が明らかに暗いのがどうしても気になるのだ。

 

 

 

「燐子、どうしたの? なんかさっきから暗いけど」

 

「え……? あっ! ……い、いえ……私は……大丈夫……です」

 

 

 紗夜の家に向かう途中で燐子に一度声をかけて、アタシは確信した。燐子は重要な何かを知っている。いつもなら、ここまで対応が遅れたりはしない。

 

 しかし、燐子が知っているからって別に悪いわけでも責めるわけでもない。いつかは三人に伝えようとは思ってはいたから。

 

 

(でも、どこで燐子はそれを知ったの?)

 

 

 まさか、Afterglowのメンバーが言う可能性は低いはずだ。そう重い話をポンポン他の人に言うような彼女たちではない。

 

 

(じゃあ、誰が……?)

 

 

「さあ、着きましたよ。皆さん入ってください」

 

「はい! お邪魔しまーす!」

 

「お、お邪魔……します」

 

 

 おっと、いつの間にかもう紗夜の家に到着したようだ。さて、アタシも中に入るとしよう。

 

 

「おっ邪魔しま〜す!」

 

 

 精一杯の笑顔を作って。

 

 

 

 

 

 

「それじゃあ、私の部屋に行きましょう」

 

 

 紗夜の後についていき、階段を上る。そういえば、何気に紗夜の部屋に入るのは今日が初めてのような気がする。

 

 

「ねー、おねーちゃん。あたしも部屋に入っていい?」

 

「……仕方ないわね、今日は入ってもいいわ。今井さん達もどうぞ」

 

 

 入室許可を得て喜んでいるヒナとともに、紗夜の部屋に入る。

 

 紗夜の部屋には余計なものがなく、とても綺麗に片付けられている。なんというか、明らかに滲み出ている紗夜らしさ満載の部屋だ。

 

 それぞれ座って、皆がアタシの方へ顔を向ける。

 

 

「それで、アタシに聞きたいことって何? って言ってもまあ、だいたい勘付いてはいるんだけど」

 

「ええ……私たちが今井さんに聞きたいのは、湊さんについてです」

 

 

 やっぱりか。早速話したいところだが、取り敢えずアタシが気になった事を聞くとしよう。

 

 

「ねえ、それを話す前に……紗夜たちはそれをどこで知ったの?」

 

「それはーー」

「はーい、あたしだよリサちー! 屋上でリサちーが泣きながら、蘭ちゃんたちに言っていたのを偶然聞いてさ〜。それをおねーちゃんに伝えたんだ」

 

 

 紗夜の言葉を遮ってアタシに説明をしたのはヒナだった。……なんだろう、ヒナにとても失礼だが、ヒナが盗み聞きして教えたのならなんか納得がいった。おそらく、屋上の扉付近にでもいたのだろう。

 

 

「そっか、ヒナが教えたんだね。……よし、アタシの疑問は無くなったし、それじゃあ友希那について知ってる事を全部話すよ。でも……」

 

「でも……?」

 

「今から言うのは全部事実だから……覚悟して聞いてね?」

 

 

 アタシの言葉に全員が頷いたのを見て、アタシは友希那の知っている事を話し始める。

 

 あの残酷で、恐ろしく悲しい事実を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ーーもし仮に貴方が燐子達の立場なら、真実を聞いて何を思う?

 

 

 

 ただ心を傷ませ涙を流すか?

 

 

 

 真実に対して絶望するか?

 

 

 

 友希那をそんな目に遭わせた者を憎むか?

 

 

 

 それとも……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そんな、そんなのってないよ……!」

 

「酷い……あまりにも、酷すぎます……っ!」

 

 

 今の友希那の状態、そして両親の事……アタシの口から語られた事実に、燐子とあこはそれぞれ涙を流している。紗夜とヒナも、言葉は発していないが唖然とした表情をしていた。アタシも未だにこの事実が受け入れがたいからか、話している途中で大量の涙を流してしまったが。

 

 

「まさか湊さんに……そんな事が……」

 

「……実は、友希那にまだ両親が亡くなった事話してなくてさ、今日伝えようと思ってるんだ。……いつまでも、隠せることじゃないし」

 

 

 ふと時計を見る。紗夜の家に来てからある程度の時間が経っており、外がより暗くなってきた。一度家に帰ってから、友希那の所へ向かうとしよう。

 

 

「ごめん。ずっとここに居座るわけにもいかないし、アタシそろそろ帰るね」

 

「確かに、かなり暗くなってきましたね。白金さんと宇田川さんも、今日はもう帰ったほうがいいのでは?」

 

「そ、そう……ですね……私も……帰り、ます」

 

「うん、あこも……」

 

 

 燐子やあこと共にその場に立ってバッグを持つ。紗夜の部屋から出て、玄関に向かう。

 

 

「それじゃ、またね。紗夜」

 

「はい、さようなら。……今井さん、頑張ってくださいね」

 

「! ……うん、わかった。任せといて!」

 

 

 紗夜がアタシにこんな事を言ってくれるなんて。おそらく友希那に事実を伝えるという役割を持つアタシを心配してくれているのだろう。紗夜を安心させる為、ピースして笑顔を見せた後、家に向かって歩き始める。

 

 友希那に伝えて本当に良いのだろうか? そして友希那はその事実を知ってどうなってしまうのだろうか? という多少の恐怖を抱えながら。

 

 




投稿が遅れてしまい、申し訳ございません。
今回は、リサが燐子達に友希那の状態を告げる話でした。


途中でもし貴方なら……と書いていますが、皆さんには是非燐子達が何を感じたのか、お考えになっていただきたいです。

次回は主人公の友希那が登場します。また投稿するまでに間が空くかもしれませんが、お待ちになっていただければ嬉しい限りです。

それではまた次回でお会いしましょう。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。