書き直し:2020年3/4 22:00
ある日一瞬だけ目の前が輝いたように見えた。ゆっくりと、でも確実に自分の中に染み込んでくるような光。それが最初は怖かった。自分がどんどん変わっていく気がして…。それでも彼女は恐れなかった。彼女の勢いを無謀だと、自棄だと思った。その光を追い求めた結果、どんな結末が待っているか知っていたから…。なのに何故なのだろう。認めたくない、そう思えば思う程理解してしまう。あの光が見えた理由を、あの光に気付いた訳を…。
やってみたい、そう思った。あの時、あの輝きを見たときから。私の足元に道は無かった。地面も土台も無い。でも暗くは無かった。目指す光が全てを照らしてくれたから…。
突然やってきた光の波は私を、そして周りを巻き込んでいった。条件反射で飛び込んだけど、やっぱりちょっと不安で心は揺れている。そんな思いでも動き出せたのは少し運命じみていて、無計画だけど確信的で…。もう少し、後一歩で全てが繋がる気がした。
今までの知識も経験も、なにもかもが通じなくて、どうしたらいいか疑問だけで頭が埋まる。それでも、身体は動く、声は出る。淡くて儚い期待だけどそれでも足は軽かった。認められなくても、上手くいかなくても、どんなに低い評価だっていつか全てを消しちゃおう。とにかく笑顔で元気を出して…。彼女達のように羽ばたくことは出来ないかもしれない…でも、飛び立てなくても、地面を蹴って強く蹴って、空を目指すことは今の私たちにも出来る。さあ、ジャンプだ!
自分の中で何かが変わった。別の時間が動き出したようだった。景色がいきなり色付いて閃光の様に輝きを放った。理由も原理も分からないけど、一つだけ分かった事は、世界が輝き、自分の中で変化が起きたとき、前にいたのは貴女だった。私をここに連れてきてくれた貴女はとても輝いていた。貴女を見ているともしかしたら自分の中にもあんな光があるのかなって思わせてくれる。そんな貴女の光が大好きで、少しづつ変れてる自分がちょっとだけ好きになれて…貴女が言ってくれた『大好きがあれば大丈夫』って言葉。貴女がいれば私のダイスキは消えないよ。
句点を描き一息ついてペンを置いた。
誰かを思って文を綴ったのは久しぶりかもしれない。私が思いを届けるツールは音楽だったけど、あの子は…千歌ちゃんはいつも言葉で、歌詞で私達を引っ張ってくれた。私を暗い海の底から引き上げてくれた。
背中を押されたのは一緒に文章を考えてくれた曜ちゃんも同じかな…。
梨子「ふう。こんな感じでいいの?ダイヤさん。」
ダイヤ「ええ。ありがとうございますわ。どうしてもおふたりの言葉が必要でしたので…」
曜「いいっていいって。でも3人の時のの思い出なんて何に使うの?…って今は決まってるか…」
そう言って閉じたノートを手渡した。
梨子「ダイヤさん。チカちゃんのこと、お願いしますね…」
曜「こればっかりは私達よりダイヤさんが適任だからね~」
ダイヤ「わかっていますわ。とにかく今日は助かりました。バスの時間もありますし少し急ぎましょうか。」
軽い挨拶を交わしてから生徒会室を出て行く二人を見送ってノートの表紙に書いた題を指でなぞる。
ダイヤ「さて…。」
もう少しすればびゅうおに太陽が沈むだろう。そして明日になればまた日は昇る。私達の太陽もそろそろ昇って貰わないと困るのだ。
しばらくしてノートを片手に部屋をあとにした。
強く脆い大切な少女がいるであろう砂浜へ歩を進めるために…。
静かに波音が繰り返される夕焼けの砂浜に彼女はいた。夕焼よりむこう。はるか遠くを見つめるように座り込んで。
ダイヤ「もうじき日が落ちます。風邪をひいてしまいますわよ」
彼女の肩にブランケットを掛けながら隣に腰を下ろす。
千歌「ダイヤさん…。珍しいねこっちまで来るなんて。」
彼女のはにかんだ笑顔にいつも通りの元気はない。
かつて背中を押されたその笑顔は今は影を落とし身を潜めている。
ダイヤ「貴女に会いに来たのですわ。千歌さん。」
千歌「私…に?」
ダイヤ「貴女の事が心配で来たのですわ。まだそれの事気にしてますの?」
それとは私の足元に転がっているスマートフォンだ。
正確にはスマホが写している掲示板の書き込み。
千歌「気にしてないって言ったら嘘になるかな…。別にショックって訳では無いけど…ね。」
ダイヤ「まったく…。曜さんと梨子さん、心配していましたわよ。」
千歌「知ってる。後で謝るよ…でも、これは」
ダイヤ「私の問題だから。ですか?」
千歌「え?」
ダイヤ「昔同じ事を言った友人がいますわ。友を頼らず1人で抱え込んで奔走し、本音も言えずにすれ違ってしまった頑固な女の子が。
すれ違った3人をもう一度繋いでくれたのは貴女なんですのよ?千歌さん。」
千歌「私は何もしてないよ。偉そうな事を言っただけ…今の私じゃ説得力ないけどね。それにもう、分からないんだ。何を思って、なんの為に走っていたのか…」
首を振る彼女の声は暗く、重い。
あの時私達は間違いなく彼女に救われた。友の手を引き背中を押せる彼女の光が私達を照らしてくれた。彼女の輝きが友を思う気持ちならば、その輝きを取り戻すのもまた友の思いの筈…
ダイヤ「これを。」
千歌「これ…ノート?」
ダイヤ「貴女が繋げた最初の想いですわ。開けば思い出す筈です。貴女がなにを思って走り出したのかを。」
ノートを受け取った彼女はゆっくりとページをめくる。ゆっくり、ゆっくりと文字を追っているのだろう。少しすると小さな震えと共に嗚咽が漏れ出して…
千歌「ごめんね…ダイヤさん。なんか目の前が滲んで見えないや…読んでくれないかな」
ダイヤ「仕方ありません。今日だけ、特別ですわよ?」
ダイヤ「こほんっ。ふふ…貴女の始まりの物語。《ダイスキだったらダイジョウブ》」
読んで頂きありがとうございます。