Я   作:きろ

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2 from Nine and Three Quarters(後)

 時計の針は進み、ロンドンを離れて走行中のホグワーツ特急車内。

 

 大小の差はあったけれど、汽車が出発してからも色々なことがあった。

 蛙チョコレートに驚いて解剖手術を始めようとしてしまったり。

 (電池みたいなものがどこにあるのか気になった)

 おまけのカードをつついていたら二枚の写真を合体させてしまったり。

 (悪気は全くなかった。天敵同士だった歴史上の魔法使いが大戦争をはじめてしまったけど)

 その他諸々。色々おかしなことをやらかしてしまった中心に君がいた。

 積み重ねでセドリックを爆発させてしまったんだろうということは想像に難くない。

 

 でも、ひとつひとつとればそんなに不思議なことでもない。

 ウィーズリーの双子の流星爆竹の火花を避けたり(窓の外に弾き返した火花で軽いクレーターができていた。どういうことだあの双子)、ペネロピーのペットの居場所を突き止めたり(振り子が上を向いたから何事かと思ったら、子猫は屋根の上から戻れなくなっていただけだった)迷惑ばかりもしてなかったはずだ。

 ひとつひとつはとるに足らない。マグル生まれの子なら、魔法界育ちの子なら、どれも当然のことだ。

 ………けれど、…つまり、そういうこと。

「これは簡単に説明できるから、ちょっと聞いて」

 

「僕は日本の八雲郷ってところから来た。

 そこは隠れ里みたいな感じで…隠れ里っていってわかるかな」

「…ニンジャとか…そういう??」

「まぁ大体そんな感じ。それの魔法使い版」

 

「村中全員魔法使いだから小さい頃から魔法が当たり前だったし、こことは制度が違うから魔法の学校ももう何年か通ってた。ここに入学するからって途中でやめちゃったけど、迷子の猫を探したり悪戯を避けるくらいはどうってない。

 けどさ、"隠れ里"って言っただろ。

 本当に隠れてたんだ。えーっと、マグル…だっけ?魔法使いじゃない人達からは勿論、里の外の魔法使いからも、国の外の魔法使いからも。一切。全部。

 それは里の内側も同じで、海外のことなんてほとんどなにも知らなかった。外側が誰も知らないのと同じ様に、内側もそれで全てだったんだ。申し訳ないけどイギリスとアメリカの違いもここに来る途中で知ったくらい。

 

 だから、僕は魔法は知ってるけど、ここの世界のことはなにも知らない。ついでに言うとマグルのことにも疎いから、…君たちの常識からしたら変な風に見えるのは当然だと思う。

 全然大したことじゃないけど、ちょっとだけ特殊なところから来てるんだ。

 …ここまで分かってもらえたかな?」

 

 一気に結構な量を説明してしまったが、セドリックはゆっくりと頷いた。

「うん、わかった。

 大丈夫、ありがとう」

 変な聞き方をして悪かったよ。

 バツが悪そうに謝る姿はエイモスとそっくりだ。人の良いところまでよく似た親子だ。

「…………、けどさ、その誰にも知られてない村にどうしてホグワーツの入学証が届いたの?わざわざ別の国に?もうそこの学校にも通っていたのに?

 それにやっぱり、君とキングズリーはどうして一緒にいたの?

 父さんから聞いてる限りでもあの人結構忙しい人のはずだよ。友達の子供のためでもそんなに長く休みが取れるとは思えないし…、

 見送りの時、何の話してたの?」

 盗み聞きみたいになっちゃってごめん。

 謝りながら、ここまで来たらもう引くつもりはない、と強い目が見据えてくる。

 

「ーーーねぇ、新。君 一体何者?」

 

 できれば、この前までで誤摩化されてくれれば有り難かったんだけど。

 答えあぐねて、頭をかく。

 どう言ったものだろう…。

 君はしばらく考え込んでから、ゆっくりと口を開いた。

 

「ーーー………、

 

- - - - -

 

「ーーーってこともあったねぇ。そう言えば」

「あー、思い出した。一年の時と同じ構図じゃん、これ」

 

 9月1日、ホグワーツ特急。

 ただし、時は2年分進んで、これが今現在。回想、終了。

 

 お菓子を広げた窓際を挟んで向かいに席に座る君とセドリックはあの頃と比べ背が伸びている。

 セドリックの方が伸びがいいということに君は気がつかない振りをしている。ずれてきた目線も気のせいだと言うことになっている。寮生活で大体同じ食事してるはずなのに。なんだろう、DNAの差か。

「真剣な顔してたよなぁ、あの時のセドリック」

「実際真剣だったんだよ。最悪宇宙人かなにかかと思ってたんだから」

「それはない。映画の見過ぎだ」

 

 百味ビーンズを選り好みしながら(やばそうな色は向こう側に押し付けながら)しみじみと思い出す。

 あの時との違いといえば、首にかけたネクタイの色くらいだろうか。

 セドリックは黄色とブロンズ、ハッフルパフ寮。

 君は赤とゴールド、グリフィンドール寮。

 あの後の組み分けで寮こそ分かれたが、なんだかんだで気が合うのか今日までこうしてつるんでいる。

 

「推定宇宙人も蓋を開けたら普通の同い年だったしなぁ」

「だからそう言っただろちゃんと」

「がっかりだ…」

「…キャトられたかったのか?」

「キャトられたら今年のクィディッチカップはとれると思うか?」

「………現実逃避せずにがんばろう、努力の鬼になるんだろハッフルパフ」

「ノリと勢いのグリフィンドールに言われてる現実がつらい…」

「僕はクィディッチチームじゃねえよ。一緒にすんな」

 …親しさも、2年で変わったと、言っていいだろう。

 

「けどさ、実際どうなんだ?新」

 セドリックが黄緑色のビーンズをほおばりながら尋ねる。

「ん?」

 君はカボチャジュースの瓶越しに首を傾げる。

 

「あの質問の答え。

 この2年で変わった?」

「ーーー聞いてみるか?」

 よもぎパン味、呟きながら呑み込むセドリック。

 瓶を窓際に置く君。

 

 セドリックが訊く。

「ーーーねぇ、新。君 一体何者?」

 

「ーーー知らないよ。

 僕が知りたい」

 君が答える。

 嘘はなにもない。

 君は、なにも知らない。

 

 2年前と何ら変わらない光景がホグワーツ特急の窓辺にあった。

 この2年はなにがあったということもなく普通に1人の生徒として学校生活を送ってきた。

 キングズリーの言いつけ、このままなら楽勝なんだけどな。

 ぼんやりそんなことを考える君を乗せ、車窓の向こうで段々ホグワーツ城が大きくなる。

 君にとって3年目のホグワーツが始まる。

 1991年のホグワーツが、始まる。




(主人公の出身地は東北の奥の方のイメージです。
教育制度は日本そのままなので、ホグワーツからの手紙をもらった1989年7月時点で主人公は5年生の1学期を終えたところでした。
冬は寒くお米とお水がおいしい村です)
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