Я   作:きろ

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4 Defense Against the Dark Arts

「アスフォデルの球根の粉末にニガヨモギを煎じたものを加えると何になる?」

「知らねぇよ」

「とりあえず多分苦い」

「ベゾアール石を見つけて来いと言われたらどこを探す?」

「河原でも探せば?」

「ここ川遠いから湖でもいい?」

「モンクスフードとウルフスベーンの違いは?」

「字数」

「同じだよ」

 

「……とまあ、俺たちもこんな感じだ!気にすることないからなハリー!」

「全然わかんねぇ!なに言ってんだスネイプのヤツ!!」

 今日も賑やかなのはグリフィンドールの談話室。

 はじめての魔法薬学で非常に熱い歓迎をされたというハリーたち一年生を、たまたま居合わせた君たちが頼れる先輩として励ましていた。疲れきった顔を笑わせることが出来たが、若干の苦笑と不安げな顔(とくにハーマイオニー・グレンジャーから)も見てしまった気がする。

 しまった。ふざけすぎたか。

 モンクスフードとウルフスベーンくらいはさすがに分かるんだけれど(『薬草ときのこ1000種』540ページ薬草学2年次の授業を参照)そんな目で見ないでくれよ、ハーマイオニー。

 

「スネイプなぁ…」ソファに飛び込みながら君たちは振り返る「たしかにスリザリン贔屓だけど、そこまでめちゃくちゃされた事あったっけ?」

「むしろめちゃくちゃにするのはフレッドとジョージだ」

「「「違いない」」」

「ユニゾンやめろ」「遺憾の意」

 教師陣の中でも一二を争うくらい厳しい授業はするけれども、内容自体はためになるし量の多い宿題も理解さえ出来れば応用問題まで発展させやすい。むしろ取り上げる内容の難しさで言ったらマクゴガナルの変身術の方がよっぽどサディスティックだ。

 

 などと、言い合ってるとその横でハリーがまた見る間にしょげていった。

「やっぱりなにかしたのかな、僕…」

 ああもう!

 励まそうとは思ったけど、そんな風にさせようとは思ってないぞ。

 君たちはあわてて取り繕う。

 

「気にすんな、ハリー」

「そうそう、どうせたいしたことじゃないさ」

「ハリー少年、今日はしかたなかったのだよ」

「なにせ今日はスネイプ先生はあの日であらせられる」

 急に双子が芝居がかった口調になり、純粋なハリーが首を傾げる。

「あの日?」

「そう。何を隠そう教授殿はせいr…」

 最後まで言う前にフレッドの頭にスリッパが刺さった。

 クッションやマグカップその他もろもろが談話室中の女子から飛んで行き、その日一日中、グリフィンドール中の女子生徒が双子と口をきかなかった。

 

 ちなみに君たちは双子の口調が変わった時点で避難を始めていたので、二次被害はハリーの額の痣程度で済んだ。

「まぁこうやって学ぶ事も多いから」

 肩を叩かれハリーはため息をついた。

 そのため息が授業料だよ、新入生(ニュービー)

 

- - - - -

 

 そんなことが休憩時間にあったが、君たちも遊んでばかりいられる訳ではない。

 午後2番目の授業は今年はじめての闇の魔術に対する防衛術の授業だ。

 

「クィレルってマグル学だった?なんでまた闇の魔術に対する防衛術に?」

「去年休んでた間になにかあったんじゃないか?たしか、アルバニア?」

「アルバニアって吸血鬼伝説の?大丈夫か?クィレルちゃんと人間か?」

「今年の闇の魔術に対する防衛術教授はニンニクが原因で学校を去るのか…」

 そんなやりとりで君たちなりに楽しみにしていたクィレル教授の闇の魔術に対する防衛術だったが、蓋を開けてみたら授業内容自体はいたって普通だった。

 

 最初の課題は武装解除術を中心とした杖にまつわる授業。

 武装解除術の呪文の使い方と杖の忠誠心、直前呪文の仕組みなど多少の横道にずれながらも、極度のどもり以外非常にまともな授業が進められた。

 授業時間の半分を使って説明と板書を終えると、武装解除呪文の実践は次の授業にまわし(座学用の教室で実践できる呪文ではたしかにない)、それぞれ自分の杖を観察してレポート形式にまとめる時間になった。大きさを測ったりスケッチをとったり、材質と芯の特性を調べたり。クィレルは生徒達の間を回ってアドバイスをしながら、早々に終えた生徒のレポートを添削する。

 

 …本当にまともな授業だ。

 これなら1年以上続くんじゃないか?

 闇の魔術に対する防衛術の呪いもそろそろ息切れかな。

 添削の順番を待ちながら君はそんなことを考えていた。

「つ、次は ヒッ…!!ミ、ミスター…シ、シホ…」

 まぁこのどもりも…ぎりぎりセーフといえなくも……うん。頑張れば。

「…よろしくおねがいします」

 

 ぺこり、ととりあえず軽く礼だけはして。杖と一緒にレポートを提出する。

「一昨年オリバンダー杖店で買いました。

 34センチ、イチイとトネリコの寄せ木材。継ぎ目の扱いさえ心得ればしなやかに持ち主に馴染んでいく。 そういう杖だそうです」

「な、なっ…、なる…ほど、ねっ…。

 すこし、その、…もたせ、もたせて、もらうよ」

 ひとりでに襲ってくるわけでもなし、杖にまでなにをそんなに怖がっているのか。そのくらい震えながらクィレルは杖を手に取り、一振り、二振り、空を切った。

 

「………ヒッ、そ、その… この杖の、芯材はなんだね?シホ」

「その杖に芯はありません」やっぱり、まあ そこには気がつくよな。慣れた風に君は補足する「そのかわり柄頭の石がその役目を担っています」

 外からは見えないが赤い石から魔法で寄り合わせた糸が通っていて、杖全体に石の力を伝えている。具体的になんという石なのかは知らないけれど、これで充分普通の芯材と同じ役目を果たすそうだ。…以上、オリバンダー老人からの受け売りそのままである。

「…ふ、ふむ……これは…血の石だね」

「血?」

「あっ、ああ、ああ。見ただけでは、なんのっ、血かは、わからないが、生きたまま…取った血を石の形にかえた…そういう、ものだ」

 そうだったのか…。

 さすが、教授の知識はすごいな。

 

「……ヒッ!は、は、…はぁ。 …し、しかし、シホ。ひとつ聞かせてくれ。

 この、杖 君に本当に合っている品物かい?」

 

 無防備に感心のようなことをしていたから、その質問には息が止まった。

「……なぜ、そんな風に?」

「…………いや、ただ、思ったのだ。少し、この杖を振ってみて」

 頭に浮かんだのは二年前、この杖をはじめて手にした時。オリバンダー老人の言葉。けど、なぜ。どうして、そんなことが今?教授とは言え他人の杖を振った程度でわかることなのか?なにを知っているんだろう、この人は。

 混乱と当惑で全身が凍った様に動かなかった。

 

「先生、早く」「おいどうしたんだよ新」

 背中から怪訝そうな声がかけられる。

「あ…、ああ、次のレポートを、も、持っておいで。

 ミスター・シホ、席に も、戻って」

 杖を返され席へ促されても、思考回路は凍ったままだった。

「シホ。アラタ・シホ。詳しい話が知りたければいつでも私の所にくるといい」

 席に戻る背中越しにかけられた言葉が奇妙にしわがれていた事も気づかず。半ば呆然とした顔で友人達の元へ帰った。

 

- - - - -

 

「随分長かったな」

「顔色悪いけど、大丈夫か?」

 席に戻ってからも友人達に心配されたが、まともに相手できるような気分にはなれなかった。

「平気、もう終わったし。寝る」

 適当な返事だけして机に突っ伏す。

 

『この、杖 君に本当に合っている品物かい?』

 

 ぐるぐると頭を巡るのはクィレルの言葉。

 そして、かぶさる様に思い出したオリバンダー老人の言葉。

『この杖があなたにとって最適ではないことを、儂はあなたに会う前から分かっていた』

 申し訳ない。許してくれ。

 そう言って老人は頭を下げた。

『あなたを選ぶ杖はここにはない。しかし、この杖はあなたに馴染み、共に歩む杖となろう。やがてこの杖があなたの最適となる日を心から願っている』

 下げた頭を上げぬまま、老人は最後に

『ーーーすまない。

 ーーーだが、我々を信じてくれ』

 キングズリーと、そして、君の父親と同じ事を言った。

 

 これが杖に関して君が知る全ての事で、これ以上はなにも知らない。待てど暮らせど教えてもらえる気配のない答えに、もう疑問に持つ事は止めようと苦心してきた。

「…これが、僕の杖なんだよ」

 なんで今更揺さぶるんだ。

 呟いた言葉は誰にも届かず。

 君はただ自分だけに言い聞かせながらきつく腕を抱いた。

 




(モンクスフードとウルフスベーン以外は本当に答えがわかっていない上級生達です)
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