生意気邪竜嫁がトホってワイプ顔オチする話 作:おはようグッドモーニング朝田
現在、11月22日の119時30分です。良い夫婦の日らしいので、短いですがよろしくお願いします。
脳ミソ無回転で書きました。
良い夫婦の日らしいので
「今日って良い夫婦の日らしいね」
「へぇ~」
ジャンヌ・オルタは心底興味無いと言いたげに、スマホを見ながら耳を掻く。
ホジホジ(耳をほじっている)
フッ!(ほじった指をこちらに向けて息を吹きかけている)
一瞬その指をへし折りたくなる衝動に駆られたが、俺は我慢強く心の広い漢なので脳内でオルタの痴態を想像することによってその熱情を抑える。命拾いしたな、オルタ。俺が関東平野より広い心の持ち主で。まぁ脳内で近所の子犬に泣かされて俺にしがみついて許しを請うているけど。
冷静になり、好きな女の子に意地悪しちゃう小学4年生男子を間近で見る新人小学校教師(23歳、女性)のような気持ちで肩をすくめる。やれやれ、困った子猫ちゃんだ。みたいな。
「やれやれ。困った子猫ちゃんだ」
プッ!(こちらに唾を吐く)
ふぅ、と息を1つ落としてティッシュで顔を拭う。ゴミ箱に後ろ手でシュート。スタイリッシュ。もちろん外れたが。
スマホを操作し、SNSを開く。オルタのユーザープロフィール画面に移動して、目当てのものを探す。ミーハーな彼女のことだ。きっとあるはず。……ビンゴ。
俺が何を探していたか。今目の前の画面に映っているそれは。
『良い夫婦の日ということで日頃の感謝を伝えようとするが普段ツンツンした態度を取っているせいでいざ言おうとしてもつまらない見栄が邪魔して上手く言葉にできない漫画』
これだ。2時間前。画像2枚。4万いいね。ふざけんな。
なんじゃこれこんなモンSNSにアップしといて何が「へぇ~」だよ。バリバリあやかってんじゃないか。それがなんだ?さも興味ありませんよ、みたいなすまし顔!美人!そして「そんなの今知ったわ。11月って可哀そうね。すぐ良い〇〇の日、なんて言われてしまって」とでも言いたげな態度!はぁぁ~!
「そんなの今知ったわ。11月って可哀そうね。すぐ良い〇〇の日、なんて言われてしまって」
はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!
しょうがない。これだけはやりたくなかったが、ここまで強情なら奥の手を解放せざるを得ない。たぶん5発くらいビンタを貰うだろうが、やるしかない。5……5発かぁ。しかも左右5発。計10発。結構厳しいな、ウチの嫁。
……それでもやると決めたらやるんだ。漢は退かない。媚びない。顧みない。今がその時だ。脈をたたせろ。魂を燃やせ。さぁ、切札召喚!
「い、言えない!たった一言だけなのに!それすら言えないなんて……!」
オルタは未だ無表情で雑誌を眺めている。だが俺にはわかってしまう。その手が完全に停止したことが。目が一瞬泳いだことが。ページを握るその指に余計な力が入っていることが!
効いているようなので続行する。
「こんなに難しいこと?自分からありがとうって言うなんて、そこら辺のガキンチョでも出来るでしょ!」
ビリィ!
哀れなページが1枚、本体から切り離されてしまった。鼻をかんだティッシュもかくや。無残にもよれよれのよれにされてしまった雑誌の断章は、俺の命を狙う1発の銃弾に生まれ変わった。しかし残念。当たったところで痛くも痒くもない。
もちろん作戦は続行。「自分の書いた(恥ずかしい)漫画のセリフを読み上げる作戦」。意地とプライドで塗装した虚勢と見栄の集合体のような人間であるオルタにはさぞかし応えるだろう。なんて恐ろしい精神攻撃。マインドブレイクしてしまい「金だらけだー!嬉しい!」みたいな状態になってしまっても、誰にも責められない。許せ、オルタよ。それもこれも普段からツンケンした態度で俺の誕生日にすら「愛しているわよ、チュッ!」ってしてくれない君が悪いんだ。せめて今日この日くらい、良い夢見せてくれたっていいじゃあないか!頬を赤らめてもじもじと手足を擦り合わせて「いい?1度しか言わないから。あの……いつもありがと。愛しているわよ、チュッ!」ってしてくれよ!頼むから!
俺は心を鬼にして作戦を続行する。全てはオルタに恥じらいながら「いい?1度しか言わないから。あの……いつもありがと。私ってご覧の性格だから、こういう機会じゃないと言えないけど……毎日、いつだって、感謝してるわ。もうアナタがいないと生きていけない。愛しているわよ、チュッ!」ってしてもらうため!
「あぁ、これはきっと罰なんだわ。これくらい察してほしいなんて、優しい貴方に背負わせて甘えてしまった、私への罰。いずれ声が出なくなり、四肢の先から凍るようにその動きを止め、天は裂け海が干上がり、草木は枯れ果て大地が叫び、私は翼をもがれて泡となって消えてしまうのね……」
え、どういう漫画なのこれ。
続きが気になって画面をスワイプする。そこに差し込む不穏な影。どうやらついにオルタが動いたらしい。あぁ、来てしまったか。これで俺は、彼女の羞恥に震える表情と引き換えに厳しい折檻を食らうのだろう。せめてもの抵抗として歯を食いしばり、痛みに耐えようと全身に力をこめる。右からくるか?左からくるか?どちらからでもかかってこい。準備は出来ているぞ。
しかし、予想していた衝撃は未だ訪れず。はて、どうしたものかと目の前の彼女を見遣ると、そこには恥じらいの赤を顔いっぱいに張り付けるオルタの表情……ではなく。今まさに罪人を裁こうと言わんばかりの無表情なオルタが、拳を振り上げ腰を捻り、パワーを溜めに溜めていた。あぁ、これが裁きの鉄槌か。平手ですら無いのね。
良い夫婦の日。俺はテーブルと熱烈なキッスをかました。
俺が何をしたというのだろうか。何が悲しくて机と接吻なんてしなければいけないのだろう。俺が泣きながら号泣してテーブルをペロリペロリと舐めていると、「ざまぁないわね」とオルタが鼻を鳴らした。
この野郎……!(野郎ではない)
絶対泣かせてやる……!脳内でオルタがどんどん辱められていく。子犬でベソかくなんてレベルじゃないぞ。盛大にちびらせてやるぞ!まずは遊園地にサプライズで連れて行ってやろう。オルタ、好きだからなこういうの。そしたら目隠ししてヘッドホンつけて、楽し気な音楽で気を逸らせてからどぎついホラーハウスのど真ん中に放置してやろう。俺はそれを後方から眺める。くく、次の休みが楽しみだなぁオルタ。
俺がテーブルに頭を打ち付けながら「計画通り……」みたいな顔をしていると、オルタが「いつまでやってんのよ」と呆れながら、俺の肩をつかんでその身を引き起こした。
「うわキモ。……ったく、風呂入るから」
「……?おう、ほかってら?」
風呂入る宣言?なんぜ?あ、風呂入るついでに洗濯物回収するから出しときなさいよってこと?
俺が頭にクエスチョンマークを浮かべていると、扉を開けて立ち止まった彼女が振り向きもせずにぼそりと言葉を足元に落とす。
「アンタも一緒に入るわよ。ぼさっとしてないで、準備をなさい」
俺は人類の限界を超え、光になった。
<おまけ>
光の速さで風呂場に突入したらオルタが水着姿でドヤ顔していたことでまたも号泣するはめになった。
しかしこれはこれでアリと思った結果、その後は彼女が盛大に鳴きまくるハメになった。
<おしり>
ありがとうございました。次回もよろしくお願いします。