いつも通りの日常に夕焼けを   作:キズカナ

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看病から出た本音

 

 

 

 

「モカ早退したの?」

 

昼休みに集まったモカを除くAfterglowのメンバーは屋上で緊急ミーティングを開いていた。何しろ今日の3限目の途中でモカが頭痛で早退したのだから。

 

「それでさ、今日なんだけど…放課後みんなでお見舞いに行かない?」

 

「そうだな。モカの様子も気になるし。」

 

「うん。モカちゃんなんだかつらそうな顔してたし…。」

 

ひまりの提案に巴とつぐみが乗った。

 

「でもさ、やっぱりみんな一斉に行くと迷惑じゃないかな?」

 

そんな中で蘭が口を開いた。だが蘭の言葉は的を得ている。いくら幼なじみのグループとはいえ突然五人も来たら親御さんも大変だろう。

 

それに以前、蘭の家にお見舞いに行った際に俺は途中で皆と別れスーパーに行き、お見舞いの品としてゼリーとスポーツドリンクを買って後から向かうと何が起きていたのかわからないが葱やらニンニクやらを首に巻いたりした上に、ババンボだかモモンガだか知らないがよくわからない儀式が始まっていたのだ。皆には悪いが看病に関しては集まり過ぎると不安要素が強くなってしまう。

 

「それでも心配だよね…。」

 

「なら誰か一人がモカの家に行って様子をみてくるってのはどうだ?それならそこまで迷惑にもならないと思うが。」

 

「あたしもそれがいいと思う。」

 

「でも誰が行くの?」

 

つぐみの発言で皆が黙りこむ。別に行きたくないというわけではない。どちらかというと皆行ってあげたいと思ってるくらいだからな。

 

「私は遼が良いと思う!」

 

ここでひまりが提案する………って俺?

 

「いや、なんで俺?」

 

「だってこの間の蘭のお見舞いの時も遼結構手際良かったし、この中でこういうの得意なの遼だから。」

 

「なるほど。」

 

確かにそうだな。まあいくら看病慣れしてないとはいえどどっかの文化の神様?に関する儀式的なものをするとは思わなかったが。ホント誰だよババンボ。

 

「じゃあ遼くん、モカちゃんのことお願いするね?」

 

「了解した。」

 

「あ、モカと何か進展あった場合教えてね!」

 

「ひまり、お前は何を言ってるんだ?」

 

こうして俺は皆の代わりにモカの家に放課後向かうことになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 

 

 

 

そして時は流れ、モカの家に行くことに。俺はモカ用に今日の欠席した分のノートをルーズリーフにまとめたものと途中でモカが好きそうなゼリーとスポーツドリンクを買ってから向かうのだった。

 

それから歩くこと数分。

モカ宅のインターホンを押すと出てきたのはモカの母親だった。

 

「はーい…あ、遼くんいらっしゃ~い。どうしたの突然?」

 

「ご無沙汰しております。今日モカが早退したので学校からのプリントを持ってきたのと少しお見舞いにと思いまして。」

 

「そーなんだ。とりあえず上がっていって。」

 

「すみません。失礼します。」

 

 俺はモカの家に上がらせて貰う。そのままモカ母は俺をモカの部屋へと案内した。

 

「モカ?遼くんがお見舞いに来たよ?」

 

モカの母さんがドアをノックして呼び掛けるが返事がない。寝ているのだろうか。

 

「すみません、モカ大丈夫なんですか?」

 

「うーん?まあ、入っても大丈夫だと思うし遼くんはモカの側にいてあげてくれる?」

 

「はい。わかりました。」

 

「じゃあ飲み物持ってくるから待っててね。何がいい?」

 

「あ、いえ。大丈夫です。お気遣いなく。」

 

そのまま俺はモカの部屋に残ることになった。モカは今ベッドの中で寝ていた。だが少し顔が赤かったり頭痛のせいか苦しそうな表情をしていた。

 

「大丈夫かモカ?……って寝てる人に聞いても答えないか…。」

 

俺はベットの側の空いてる場所に座る。あまり人の部屋をジロジロ見るのもあれだが改めて見ると私生活がだらだらしてそうなモカも部屋は綺麗にしてるんだなと感じた。

そんな中で俺は写真立てに入った写真に目がいった。それは昔六人で撮ったものだった。夕焼けをバックに皆が笑っている。この頃から皆あまり変わってないとふと思う。強いていうなら蘭がちょっと癖のある奴になったかなと言うくらいだ。

 

「ん…。」

 

声が聞こえて振り替えるとモカが唸っていた。起きたのか、それとも寝ぼけているのかはわからないが、写真を元の場所に戻し再びベットの側に座り様子を伺う。

 

「……あれ?遼?」

 

 

 

 

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 

 

 

ふと目が覚めた。でもまだ眠気と頭痛が酷い。

 

「起きたのか?」

 

声がする。ママが入ってきてるのかな?でも男の人の声だから違う気がする。

 

「調子はどうだ?」

 

あたしの目の前に遼がいた。風邪のせいで頭がボーッとしてこれが現実なのか夢なのかよくわからない。でもこれが夢なら…。

 

「うーん…。まだ眠い…でもなんかお腹すいた…。」

 

もうちょっと夢の中に浸っていよう。そう思い少しずつ意識を身に任せることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 

 

 

 

「お腹すいたって…ゼリー買ってきといて正解だったな。ほら。」

 

俺は買ってきたフルーツゼリーの蓋を開け、お店で貰ってきた紙スプーンを出してモカに渡す。だがそれを受け取らずモカが言いはなった一言は…。

 

「食べさせて…。」

 

「はい?」

 

──寝ぼけているのかな?

まあ病人だしとやかく言うのはやめておこう。とりあえずスプーンでゼリーを掬い、口の中に入れてやる。そのままモカはそれを飲み込みまた口を開ける。そして俺はまた口の中にゼリーを入れてやるの繰り返しが何回か行われた。こうしてみるとまるで雛鳥に餌をやる親鳥の気分だ。そして食べ終わると再び布団にくるまった。

 

「ホントどこまでもマイペースだよな。」

 

「ふふふ~。ねえ遼~。」

 

「なんだ?山吹ベーカリーのパンは風邪直るまで我慢しろよ?」

 

「手握って~。」

 

───うん?

オーケーオーケー、ひとまず落ち着こう。これはおそらく完全に風邪にやられて思考回路止まってるな。

それにこいつが頼んだのは手を握ることだ。何もおかしなことではない。よし、とりあえずここで俺がやることは…。

 

「・・・・・・・・」

 

モカの望む通りそっと手を握ってやることだと思う。するとモカも俺の手を握り返して来た。

 

「えへへ~。あったかい~。」

 

何がそんなに幸せそうになるのか知らないがまあ良いだろう。

 

「遼~?」

 

「なんだ?」

 

「ありがとね~。」

 

「ありがとうって…俺そんなにお礼言われるようなことしたか?」

 

「なんでもいいからありがと~。」

 

 

この時のモカは風邪にしては凄く自然な笑顔だった。

いつも一緒にいた中でもこんなにいい笑顔の時はあっただろうか?

こう考えてみると俺はモカや皆のことをよく見てるようであまり見てないところが多いと思った。

 

「後もう1つ言っていい~?」

 

「いいけどなんだ?」

 

「遼~…アタシ遼がいてくれて良かったと思ってるよ~。」

 

「なに言ってるんだお前は…。」

 

「アタシ達と一緒にいてくれてありがと~。」

 

いくら風邪で頭が回ってないからとはいえ、突然こんなことを言われたらさすがに豆鉄砲どころかマグナムを食らったような感じだ。でも、どこかで凄く嬉しく思ってる自分もいた。

 

お前がいたから俺は皆に出会えた。お前がいたから俺は挫けずに前に進めた。もしモカと出会ってなかったら俺はどうなってただろうか。ちゃんと前を向けてただろうか。そんなことはわからない。

 

でも俺が今言いたい気持ちは1つだ。当たり前過ぎてなかなか言えない言葉。いざ言おうとするとなかなか口から出ない言葉。少しズルをするかも知れないがこういう時にこそ言おうと思う。

 

「こっちこそ、俺と一緒にいてくれてありがと。」

 

それを聞くとモカは微笑んでそのまま眠りについた。部屋には彼女の規則正しい呼吸だけが聞こえる。

 

「って…多分明日になったらこいつ忘れてるけどな。」

 

でもそれでいい。

モカが覚えてなくても俺が覚えているから。例えモカが話しているのが俺とは違う夢の中の俺だとしてもさっきの想いは嘘じゃない気がしている。

心の奥でそう思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

余談だが実はこの風景をモカの母親がこっそり見ていたらしく「青春してたね~♪」とからかわれた。まさかモカだけでなくその母にもからかわれることになろうとは…。

というかまじで見られてたことに気が付かなかった…。

 

 

 

 

ウソダソンナコトォォォォォ!!

 

 

 

 

 

 

 





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