いつも通りの日常に夕焼けを   作:キズカナ

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二人はお出かけ中

 

 

 

ジリリリリ…

 

 

「………しまった。つい平日の感覚でアラーム切るのを忘れてた。」

 

 

今日は日曜日。当然学校はないし予定もない。そして親も仕事でいない。そしてバイトも入ってない。

 

 

「…………よし。もう一度寝るか。」

 

やることがないときの殿下の宝刀『二度寝』である。

こうして俺はもう一度夢の世界に……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 行けませんでした。

 

 

 とりあえず布団から出て服を着替えるとキッチンに行き、食パンにハムとスライスチーズを乗せてレンジで焼く、その間にインスタントコーヒーを入れてテレビのニュース番組を見ながらゆっくりする。せっかく早起きしたし天気予報も1日晴れだと言っているから布団でも干してその間ゲームでもしてようと思っていた。

 

ピピピピ…

 

そこに間髪入れずに携帯電話が鳴り響く。こんな早くに誰だよと思い手に取ると『青葉モカ』と表記されておりそのまま電話に出る。

 

『あたしモカちゃん~。今遼の家の前にいるよ~。』

「唐突なメリーさんやめろ。」

 

いつものように突然やってくるモカに突っ込み玄関のドアを開けると言葉の通り家の前にいた。

 

「おはようございま~す。」

「おう、おはよう。とりあえず中入れ。」

 

 家の中にモカを入れて再びリビングに戻る。

 

「どうしたこんな早くから。」

「今日日曜日でしょ~?」

「そうだな。」

「遼予定ないでしょ?」

「人を暇人みたいに言うな。無いけども。」

「じゃああたしとお出かけしない?」

「どうした?どこか行きたい所でもあったのか?」

 

 話をしながら慣れた手つきでモカのコーヒーを淹れていく。というかいつの間にかモカのマグカップがうちにあるのはどういうことだ。

 

「うーん…。遼と行きたいところならあるけどな~。」

「やまぶきベーカリーか?」

「それもいいけど~。せっかくのお休みなんだから違うところにも行ってみない?」

「違うところってどこ…」

 

 モカのコーヒーが淹れ終わったところで持っていくと既にモカはコーヒーを飲んでいた。

 因みにモカのコーヒーは俺が持っている。じゃあモカが飲んでいるコーヒーは…。

 

「それ俺のコーヒーだろ!?」

「そうだったの~?ごめんね~。」

 

 本人もわかってなかったのかちょっとびっくりしていた。

 

「遼飲んでたの~?」

「ああ、既に少し飲んだ後だ。一応お前のこっちな。」

「おお~。ありがと~。」

 

 因みに俺のはミルクを少し多めにしている。それでもモカは飲んでしまうんだよな…。

 俺のカップを置き自分のカップを受け取ったモカはゆっくりと飲む。不本意ではあるがその仕草が可愛いと思ってしまったのは内緒だ。

 

「そう言えばさ~あたしそのカップで飲んだじゃん?」

「そうだな。」

「それで遼もそれで飲んだじゃん?」

「ああ。」

 

 突然ニヤニヤしながら喋り出す。……嫌な予感しかしない。

 

「これっていわゆる間接キスだよね~?」

 

 ………ナンテコッタパンナコッタ

 

「ふっふっふ~!どうかなモカちゃんとの間接キスは~?」

「………わかった。今日1日付き合ってやる。」

「おお~。まだモカちゃん何も言ってないのに…。もしかして本当は一緒にお出かけしたかったの~?」

「用意してくるから大人しく待ってろ。」

 

 コーヒーを飲み干した俺は部屋に戻りショルダーバッグに財布やらハンカチやらを用意してリビングに戻る。

 

「………複雑だな。」

 

 そんなことを呟きながらモカの待つリビングに戻り声をかけると部屋の戸締まりを確認して2人で家を出た。

 

 

 

 

 

──────────────────

 

 

 

 

「それで?どこに行くんだ?」

「ふっふっふ~。モカちゃんにおまかせあれ~。」

 

 いつものように余裕の表情で語るモカを片目に少し不安になりながらも恐らくカフェとかだろうなと考えていた。

 

「ついたよ~。」

 

 たどり着いた場所はやはりカフェ…と言ってもいつものように羽沢珈琲店ではなく、全国チェーンのカフェだった。

 

「意外だな。自分から率先してこういうところに来ないとは考えていたが。」

「実はここの美味しいって言われてるスイーツが今日なら割引がきくんだよね~。」

「抜け目がないな。」

 

 「ほら行くよ~。」と手を引かれて俺たちは店内に入る。こういったカフェは羽沢珈琲店を除くと千聖さんと来た時以来だ。

 店に入り席に座ってしばらくすると俺たちのもとに店員さんが来て注文を聞いていた。俺はカフェオレを、モカはコーヒーを注文した後で再びモカが口を開いた。本来の目的の割引のスイーツを注文するのだろうか。

 

「このスペシャルハッピーパフェをお願いしま~す。」

 

 なんか凄く甘そうな名前だな。

 

「かしこまりました。こちらは現在カップルのお客様に割引のサービスをしておりますがよろしいでしょうか?」

「お願いしま~す。」

「それでは品物を用意しますのでお待ちください。」

 

 ………うん?

 

「おい、ちょっと待て。」

「どうしたの~?」

「どうしたのじゃねえよ。俺たちカップルじゃねえだろ。」

「え~?でも店員さんがカップルって行ってきたんだしいいんじゃないかな~?意外とそう見えてるってことだし?」

「そうじゃなくて…。いくら割引が効くからって嘘ついちゃ駄目だろ。」

「………遼は真面目だねー。」

 

 突然ジト目で語り出すモカ。しかも声のトーンも低くなり若干棒読みなのが少し怖い。

 

「遼はあたしとそう見えるのが嫌なのー?」

「いや、嫌とかそんなんじゃなくて嘘は良くないだろ…。」

「………あたしはそう見えてもいいよ。」

「えっ?」

 

 モカが呟いた言葉を聞き直そうと思ったら頼んでいた品物が運ばれてきた。

 元々カップルで食べることを想定して作られていたのか思ってたより大きいパフェだった。

 

「なんじゃこりゃ…。」

「ほら~。食べるよ~?」

「……しゃーないか。」

 

 それぞれパフェスプーンを取り食べ始めた。

 ……味としては結構いい。チョコソースがかかったバニラアイス、コーンフレーク、そして奥にはフルーツとコーヒーゼリーという甘さとほろ苦さをいい感じに調節した一品だ。チョコとアイスで甘さに慣れた舌をコーヒーゼリーの苦さでうまく調和している。

 

「すごいなこれ…。」

「遼~。」

 

 声をかけられてモカの方を見ると口にパフェスプーンを突っ込まれた。突然のことで少しの間思考が回らなくなった。

 

「美味しいでしょ~?」

 

 彼女の顔を見るとさっきまでの不機嫌はどこへやら。ニカッと笑いこちらを見ていた。

 

「今度は遼の番だよ~?」

「は?」

 

 それ以上は何も言わずにただ目を閉じて口を開けているだけだった。もしかして食べさせくれということなのか?

 

「…………………」

 

 少しの間悩んだがこうなったモカは止まってくれない。長年の経験が物語っている。ならばどうすべきか。

 

「ほら。」

 

 パフェからアイスの部分を掬うとモカの口に入れる。そのままアイスは口の中に入り飲み込まれた。

 

「美味しいね~。」

 

 凄く明るい笑顔だ。こんな笑顔あっただろうか。……多分俺が忘れてるだけであっただろうけど。

 

「ほらほら~。どんどん食べるよ~。」

 

 さっきのモカの笑顔でまだ食べてないのに何故か口の中が甘味で満たされている。正直色々と腑に落ちない点はあるがこれは口にするべきではないのかも知れない。

 それに…

 

「おいし~。」

 

 モカ(こいつ)が幸せそうだしそれでいいか。

 

 

 

 






2人のお出かけはまだまだ続きます。

新しくコメントをくれたユニバースファントムさん、ありがとうございます!

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