「それじゃ今日はここまでにして帰ろっか!」
ひまりの一声によっては各々片付けを開始する。俺はノートを閉じて鞄にしまったら重みのある機材を元の位置に移動させる手伝いをした。
「さて、これで終了か?」
俺がそう言うと皆はそれぞれの荷物を持ちCiRCLEを後にした。
「ん~!今日も疲れた~!」
「あたしもだ。今すごく腹へってる!」
「じゃあ今からつぐのところ行く?」
「いや、さすがにもう遅いし今から行っても迷惑だろ。」
「そっかー…。」
ひまりと巴の提案に返答するとひまりは「残念…」といった感じに肩を落としていた。まあさすがに今から行くとつぐみのところのおじさんも大変なことになるだろうし。
「あ、そう言えば遼~。」
俺の後ろを歩くモカが俺にもたれながら喋り始めた…というかマジで乗っかるな。歩くのしんどいから。
「今日遼のところに泊まってもいい~?」
……………ゑ?
「おい、今何て言った?」
「今日遼のお家に泊まってもいい~?」
「……何で?」
唐突に重大なことを話始めたモカに対して理由を聞いてみた。モカの話によると今日はモカの両親は結婚記念日で休みが奇跡的に一致した為夫婦旅行に行ってて今日は家にいないらしい。それでうちに泊まりに来る…ということだとか。
「というかお前1人で留守番しとけばいいんじゃないか?」
「え~?遼はか弱き乙女を夜1人にするつもり~?」
「戸締まり念入りにしとけばいいんじゃないか?」
「モカちゃん不安だな~。夜に危険な人が入って来たら太刀打ち出来ないからな~。」
「そんな大袈裟な。」
「遼!」
そんな会話をしてるとひまりが「ちょっとこっちに…」と引っ張ってきた。
「なんだよ…。」
「ここは泊めてあげた方が良いよ!」
「は?」
「ほら、旅は道連れ世は情けっていうしここはモカのためを思って!」
「お前何か企んでるか?」
「別に~」と目をそらすひまり…本当分かりやすいよなこいつは。
「とりあえず親に連絡してみる。夕飯のこともあるし。」
そう言って俺はスマホを取り出しメッセージアプリを開くとすでに親から連絡が入っていた。
『ごめんね~。今日夜急に会議入っちゃったから帰るの遅くなりそうなの。夕食作ってる時間なかったから冷蔵庫にあるもので好きなもの食べてね~。』
「・・・・・・・」
『一応モカ泊まりに来るって言ってるんだけど冷蔵庫にあるもの適当に使って作っていいか?』
と打ってみた。すると1分後に返信が来た。
『いいよ~。後お父さんは夜勤だから考えなくても大丈夫だからね~。』
それを見ると俺はモカに許可が降りたことを伝えた後で皆と別れてそのままスーパーに2人で行くことに。
「とりあえずお前何が食べたい?」
「モカちゃんは~パンが食べたいかな~?」
「それ以外でな。今からパン作ってたら時間かかるから。」
「じゃあ~遼におまかせしま~す。」
とりあえずスーパーの前のチラシを確認した。なるほど。今日は生鮭の切り身と小松菜が安いらしい。確か人参と大根は家にあるし、後はごぼうでも買えばどうにかなるだろ。
「さっさと買って帰るか…。」
とカゴを持ってスーパーに足を踏み入れた。すると…
『ただいまより、魚の切り身が半額となるタイムセールが始まります。大変お買い得ですので安全に気をつけてお買い物してください。』
とアナウンスが流れた。魚の切り身が半額だと…?
「モカ。」
「ん~?」
「ちょっと小松菜持ってきてくれ。俺は魚を手に入れる。」
「…………?」
頭にハテナマークを浮かべながら俺を見るモカをよそに俺は魚売り場に向かう。周りのおばさん達も同じ目的と見た。
よろしい、ならば戦争だ。
『それではタイムセールスタートです。』
「行くぞゴルァアアアア!!」
戦わなければ生き残れない!
数分後…
「遼~生きてる~?」
「なんとか…というかあの中で一瞬三途の川見えたんだが…。」
「一体何したの…?」
「おばさんの人混みに飲まれて突き飛ばされたり足踏まれたりした…。」
「そんなに酷いものなの?タイムセールって…。」
「いや、ここのスーパーが異常なだけだと思う。」
なんせ只でさえ他のスーパーより商品価格が安いのにそれがさらに安くなるんだぞ?戦争にもなるわ本当。
「とりあえず買うもの買ったし帰って夕食にするか。」
「やった~。」
◆ ◆ ◆ ◆
「さて、始めるか。」
家につき手洗いうがいをして材料を揃えたことを確認するとキッチンで料理を開始する。今日の献立は白飯、味噌汁、鮭のホイル焼き、小松菜のごま和え、きりふき大根、きんぴらごぼうだ。今日は1人だけど客人が来てるからな。腕を奮ってやろう。
とりあえずお米を研ぎ炊飯器のスイッチを入れる。そのまま大根の皮を剥き輪切りにしてお湯の中に入れてしばらく待つ。余った皮は綺麗に洗って味噌汁の具にする。せっかくの食材だし綺麗に食べないとな。
「遼~。何か手伝おうか~?」
「え?モカって料理出来るのか?」
「もち~!」
「それじゃこのごぼうを細切りにしてくれるか?」
「了解~。」
別のまな板と包丁でごぼうを切ってる間に俺は大根の味噌とごま和えの出汁をつくる。というかモカって結構手際いいんだな。
「なんかさ~。」
「ん?」
「こうしてるとさ~恋人みたいだよね~。」
「そんなもんか?」
「さあね~。あ、ごぼう出来たよ~。」
モカからごぼうを受け取りさっそく人参といっしょに炒めて味をつける。それにしても恋人か。将来俺も誰かと家族になるとかそういうことがあるのかな…。まあ今のところその相手がいないんだけど。
「おお~美味しそ~。」
俺が作ってるきんぴらを横から見てるモカが呟いた。今回はモカが辛いもの苦手なことを考えて辛さ控えめの味付けにしたからこいつでも食べれるぞ。
「味見するか?」
「いただきま~す」
俺がごぼうを1つまみ箸で掴むとモカはそのままごぼうを口に入れる。
「おいし~。」
「そうか。今回は甘味を強めにしたからお前でも食べやすいだろ?」
「うんうん!それじゃもう一口…「駄目だぞ?」え~。」
ぶーぶー言いながらへばりついてくるモカを剥がしながら完成した料理を皿に盛り、ホイル焼きが出来上がったことを確認して皿にのせることで完成だ。
「さて、出来たぞ。」
「おお~。豪華~。」
目を輝かせながらよだれを垂らすモカ…っておい。よだれはやめろ。
「ほら。冷めないうちに食べるぞ。」
「待ってました~!」
それぞれ席について手を合わせる。これは食事前の大切な儀式みたいなものだからちゃんとやっとくのが俺の中の暗黙の了解だ。
「「いただきます!」」
そのまま味噌汁を二人で啜る。うん、我ながらいい味だ。
「遼~この味噌汁って出汁変えたの~?」
「よく気づいたな。いつもは鰹だしでつくるんだが今回はこっそり煮干しとスルメで出汁をとってたんだ。」
「なるほど~。」
小松菜のごま和えを食べながらモカを見ると鮭のホイル焼きに舌鼓をうっていた。今回のホイル焼きはえのきと人参、玉ねぎを一緒にコンソメで味をつけた。
「おいし~。」
そう言うモカの顔はとても幸せそうだった。本当モカって食べ物を食べるとき美味しそうに食べるよな。作った身としてはとても嬉しい限りだ。
「遼ってホントお嫁さんに行けるスキル持ってるよね~。」
「お嫁さんって…俺男だぞ?」
「でも~あたし達の中じゃオカンみたいなものだからね遼は~。」
「俺オカンかよ。」
「リサさんにも遼の料理スキルの話したら『流石Afterglowのオカンだね~』って言ってたし~。」
「リサさんもかよ…。」
「でもさ~あたしは遼の料理毎日食べたいと思うよ~。」
「そうか。そう言ってくれると嬉しいよ。」
嬉しいこと言ってくれるじゃないか。なんだかんだ言っても一緒に食事が出来て良かった。そう思いながら俺は更に味噌汁を啜った。
なんかモカが若干ムスッとしてたのは気のせいか?でもご飯食べてたら機嫌なおってたし多分大丈夫だろ。
因みにこのあとモカはご飯を1人で3杯食べてた。お粗末様でした。
まだまだ2人の夜は続きます。次回をお楽しみに!
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