いつも通りの日常に夕焼けを   作:キズカナ

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多分タイトル詐欺



開幕!炎の体育祭!

 

「熱くなれよおおおおおお!!」

「うるせえええええええ!!」

 

 開幕そうそう始まる謎のやり取り。因みに今俺に修○さんみたいなことを言ってきたのはクラスの体育委員会の岡崎。こいつの性格は…一言で言うと灼熱。下手に近寄ると色んな意味で火傷するバリバリの体育会系だ。しかも体育会系の癖に成績は良い。キャラを守れお前は。

 

「というか何で教室入ってきて第一声がそれなんだよお前は!松○修○か!」

「何を言うか!今日は体育祭だぞ!待ちに待った体育祭だ!この日を俺はどれ程待ち望んでいたか…。」

「あーはいはい。」

 

 正直熱血も時と場所を選ぶなこれは。こっちは蘭が出してきた新曲の最終調整とかで昨日のあんまり寝てないのに。

 

 

《ピーンポーンパーンポーン》

《お知らせします。各クラスの体育委員の人は運動場の受付テントに集合してください。繰り返します、受付テントに集合してください。》

《ピーンポーンパーンポーン》

 

 

「おっと、俺は少しいかなきゃいけないらしいな!それじゃまたグラウンドで会おう!」

 

 そう言うと岡崎は去っていった。いや、マジであいつ何であそこまでテンション高くなれんの?

 

「遼~。今日体育祭なんだって~。」

「知ってる。」

 

 俺の後ろでモカが乗っかかりながらパンを食べている。というか何でこいつはいつもいつも俺に乗っかかるんだよ。もうなんかなれてきたけど。

 

「まあアタシも岡崎の気持ちはわからないでもないな。」

「巴、体育祭の練習頑張ってたもんね。」

「というか巴は応援団の太鼓が叩きたいだけでしょ。」

「バレたか~。」

 

 後ろで巴と蘭、ひまりが話しているが…正直今の俺はそこまで気分が乗らない。くそ、調子に乗って昨日の3時まで作曲してるんじゃなかった。しかも起床が6時だから3時間くらいしか寝てないんだよな。

 

「遼くん、眠そうだけど大丈夫?」

 

 そんな俺を見かねてかつぐみが心配してくれた。ホントこの子良いお嫁さんになりそうだよな。

 

「まあ…少し眠いな。昨日の寝たの3時で起きたの6時だし。」

「もう!夜はちゃんと寝なきゃ駄目だよ!」

 

 まるで母親に叱られてる息子の気分だ。やっぱつぐみってお母さん気質凄いよな。

 

「まあ体育祭だし居眠りはないだろ。」

「そういう問題じゃないよ!もし体壊したりしたらどうするの?」

「あー…多分大丈夫だろ。」

「そうやって無理ばかりしてると私みたいになるんだよ?だから昨日は仕方ないにしても今日はちゃんと日付が変わる前に寝ること!いい!?」

「……はい。」

 

 つぐみにこの事を言われるとなんだか反論が出来なくなってしまう。というか説得力あるんだよなあ…。

 

「流石つぐ~。相変わらずつぐってるね~。」

「まあ、それがつぐみだからな。まあつぐみも頑張り過ぎるなよ。」

「今の遼も人のこと言えないけどね~。」

「うっ…。」

 

 モカ相手なのに反論出来ない…。というかまさかモカに一本とられようとは…。

 

「モカ、つぐみ、そろそろ更衣室行くよ。」

 

 蘭が二人を呼びに来て五人は更衣室に向かった。

 

「朝から大変だね。」

「…まあな。」

「それじゃ俺たちも着替えるか。」

「だな。」

 

 俺と匡も男子更衣室に向かい準備をした。

 

 

 

 

 

 

◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

 

 

「宣誓!我々選手一同は、日頃の努力を精一杯発揮し戦うことを誓います!」

 

 体育委員長による選手宣誓が終わり、その後ラジオ体操をしたことで開会式が終わり次の種目の準備が始まる。俺が出る種目は次の次だから次の種目の途中くらいに準備をすれば十分間に合う。因みに俺が出るのは借り物競争と騎馬戦だ。

 

「眠っ…。」

 

 待ち時間の間俺はクラスのテントの下で椅子に座りグラウンドを眺めていたがここに来て今まで我慢していた睡魔が襲ってきた。次の次に俺が出る種目なのにここで寝たら絶対まずいと思いなんとか葛藤していた。だが睡魔と言うものは俺が思っているよりも強力でもの凄い力で俺を夢の世界に旅立たせようとする。なんとか耐えなければ…しかしもう限界が…。

 あと少しで眠りについてしまいそうなその時。

 

「冷たっ。」

 

 首もとにひんやりとしたものがあたった。それと同時に隣の席に蘭が座ってきて缶コーヒーを差し出してきた。

 

「良かったらこれ…」

「ありがとう。」

 

 缶コーヒーを受け取りそのまま飲む。冷たい、そしてブラックだからか苦い。だが今はこの苦さがありがたい。

 

「大丈夫?」

「何が?」

「つぐみから聞いたんだけど…遼、昨日の無理してたらしいって。」

「まあちょっと睡眠時間削ったが…。」

「ごめん。」

 

 蘭は突然謝って来た。

 

「何でだ?」

「その理由…あたしが昨日のお願いした新曲の最終調整じゃないのかなって…。」

「別に蘭は悪くないだろ。俺が勝手に遅くまでやってただけなんだし。」

「でも…。」

「それにちゃんと昼休みに寝るから安心しろ。心配しなくても体は壊さないようにしてるから。」

「うん…。」

 

 俺なりにフォローしてみたがそれでもやっぱり蘭としては罰が悪そうな顔をしていた。つぐみの時も色々あったからそこも心配なんだろうな。

 

「じゃあ蘭、今度のライブで今作ってる曲を最高な気分で歌ってくれ。そうすりゃ俺も報われるってもんだからな。」

「遼…。」

「それにな、俺はお前らのようにステージには出れないからさ、こうやって裏方でもAfterglowの役に立てることが出来れば十分嬉しい訳なんだよ。だから蘭が作った歌を調整してそれが認められたらさ…なんか自然と嬉しくなるんだよ。こんな俺でもちゃんと皆の役に立ててるんだって。」

「遼ってさ…時々バカだよね。」

「おい、俺さっき結構良いこと言ってた筈だろ?」

「そんなこと気にしなくても遼はあたしたちの仲間だしAfterglowの大切なメンバーだってことは変わらない。」

「……そっか。」

「ステージに立つとしても裏方だとしても誰にも無理はして欲しくない。だから大変な時は無理しないで。」

「わかった。次からそうさせて貰うよ。」

 

《次の種目は借り物競争です。選手の皆さんは入場門に集まり出場に備えてください。》

 

「さ~て、俺の出番みたいだな。」

「遼、頑張って。」

「おうよ。」

 

 蘭の応援を受けて俺は入場門に足を運ぶ。さて、つぐっていきますか。

 

 

 

 

◆ ◆ ◆ ◆ 

 

 

 

 

『ただいまより、一年生による借り物競争を始めます。』

 

 最初のランナー達がスタートラインに並ぶ俺の出番は三番目だからとりあえず他の人たちの様子を見ていよう。

 

「いちについて…よーい、スタート!」

 

 先生が掛け声と共に合図の銃みたいなヤツを発砲し、走者は一斉に走り出した。まあこれは借り物競争だし案外あっさりと…。

 

「「「「「・・・・・・・・・・・」」」」」

 

 いや待て。どうやらランナー達の様子がおかしい。さっきから借り物が書いてある紙を持ったまま微動だにしないのだ。一体何が…。

 

「誰かー!知り合いに巨乳ツンデレ少女はいないかー!」

 

 は?

 

「すみませーん!メイド服持ってる人がいたら貸してくださーい!」

「ここに高身長のイケメンのメガネ男子はいますかー!」

「誰かマイナスドライバー貸してくれー!」

「ギャルのパンティおくれーーーっ!」 

 

 いやなんだこれ?

 さっきから黙って聞いてればヤベーものしか借り物に入ってねーじゃねえか。いや、マイナスドライバーはマシか。てかこれ書いたの誰だよ。絶対そいつの趣味混ざってるだろ。

 

「ねえ遼。俺いまから凄く不安になってきたんだけどさ…。」

「俺もだ。」

「とりあえず…。」

「ああ。わかってる。」

「「(精神的に)生きて逢おう。」」

 

 俺と匡はこれから起こる借り物競争(混沌の舞台)に大きな不安を抱きながらグラウンドに向かうのであった。

 

 

 




次回、体育祭編後編
遼の借り物とは…?

新しくコメントをくださった水色( ^ω^ )さんありがとうございました!

コメント&高評価是非ともよろしくお願いいたします!

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