いつも通りの日常に夕焼けを   作:キズカナ

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夕焼けを襲う暗雲

 

「ただいまー!」

「ただいま。」

「お帰り~。照!いつ帰ってきたの!?こっち着いてたら連絡してよ~!」

「いや~ごめんごめん!久しぶりに商店街見てたら懐かしくなっててさ~。あ、これお土産の紅葉饅頭!」

 

 横で感動の親子の再会をしている中、遼は手洗いとうがいをしてソファーに座っていた。

 

「遼、これあげるよ。」

「っと…なにこれ?」

「厳島神社で買ってきたお守り。学問必勝に恋愛長寿とかに効果があるんだって。まあ幸運よせよ。」

「ありがと。」

 

 受け取ったお守りをしまい照が買ってきた紅葉饅頭を食べ始めた。

 

「そういや姉ちゃん大学どうなの?」

「うーん…まあまあかな~。好きなこと勉強出来るのは良いんだけど先生の連絡がちょっと雑だからね~。」

 

 と言いながら近くのクッションの上に胡座をかきながら座る。横で遼が「まるでおっさんだな~」と思いながら見ているとギロッと睨まれた。

 

「で?あんたはどうなのよ?彼女達とバンドやってるみたいだけど。あんたもステージ立つの?」

「いや、俺は裏方でサポートしてるだけ。ガールズバンドの方が良いと思ってさ。」

「……本音は?」

「本音?」

「またか…。まあ良いんだけど。」ボソッ

 

 照の言葉に首を傾げながらもう1つの饅頭を口にする遼。だが照はそんな彼に対して少しだけ何時もと違う視線を向けていた。

 

 

 それが何を意味するかは不明だが…。

 

 

 

 

 ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 

 

「やほやほ~。皆さんお揃いですな~。」

 

 次の日の朝、モカと共に登校していた遼は校門前で待っていたAfterglowの面々と合流した。

 

「よっ。」

「遅いよ二人とも。」

「悪いな。こいつのパン選びに付き合ってたら時間かかった。」

「今日は~チョココロネを買うことが出来たのです~。」

 

 いつも通りの朝を迎えながら彼らは下駄箱に向かう。昇降口は男子と女子で少し離れているので遼は彼女らと一時別れ、下駄箱を開けた。

 

「なんだこれ?」

 

 下駄箱を開けると何時もは無い筈の謎の長方形の封筒が入っていた。差出人の名前は無し、しかも紙もくしゃっとしていた為何か嫌な予感はした。

 

(果たし状…とかか?ヤンキーじゃあるまいし…。)

 

『常乃遼さんへ

 あなたにお話したいことがあります。今日の放課後校門でお待ちしております。』

 

 内容はこれだけだった。

 文章は丁寧な言葉遣いがされているが怪しい要素はごまんとあった。

 まず、差出人の名前がない。そして手紙自体も汚なくそれが不信感を爆上げしていた。こんな呼び出しをするやつは大抵がおバカさん、もしくはろくでなしだ。大体こういう手紙に乗ってホイホイ行くとボコボコにされて金を奪われるというのがオチだと言うことはすぐにわかる。

 

「遼~どうしたの~。」

「ああ、すぐ行く。」

 

 送ってきたやつには悪いがどこかで手紙をジョブしよう。そう考えながらその手紙を小さく畳んでポケットにしまい、彼女らと共に自分たちの教室に向かった。

 

 

 

 

 ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 

「はい、日誌は確かに預かりました。お疲れさま。」

「それでは失礼します。」

 

 日直の役目を終えた俺はお辞儀をして職員室から出た。今日は放課後は日直の仕事をしないとならなかったので5人には先にCircleに向かってもらっていた。自分も早くいかないとと思い、鞄を持って下駄箱に向かっていたところ今朝の出来事を思い出した。

 結局あれを差し出したのはどこのどいつなのかはわからない。それにあれが予想通りのよろしくないものだとしても俺は誰かに恨まれるようなことをした覚えはない。

 

(考えるのは止めるか…。)

 

 靴を履き変えて校門を出た。このまま何事もなくみんなの元に行けると思っていたのだが…。

 

「常乃遼だな?」

 

 何者かに声をかけられた。

 後ろを振り向くと1人の男がいた。言い方は悪いがパッとしないような地味な容姿の男が1人。

 

「なんだお前は。」

「手紙送ってやったのに約束破るとか信じられないよな?」

「なるほどな。あれはお前の仕業か。まさか他校の奴とは思わなかったが…何故俺を知っている?」

「まさか…覚えてないのか?」

「悪いがそのまさかだ。」

「……ついてこい。」

「ここでいいだろ。俺は急いでるんだ。」

「お前の意見は知らん。来なかったら…お前の大切ななにかを壊す。」

 

 そう言われて謎の男の後をついていった。これがあからさまな罠だというのは誰でもわかる。だが…こいつは俺の大切ななにかを壊すといった。それがまさか───だったらと思い着いていくことに。

 

 

 しばらく歩き、人通りの少ない場所に出た。

 

「なるほど。いかにも小物ワルが連れてきそうなところだな。で?さっさと要件を言ったらどうだ?」

「要件は…これだよっ!」

 

 振り向き様と同時に拳を向けてきた。それを交わし続く2発目も受け止め、拳を振り払うとそいつから距離をとった。

 

「いきなり暴力か。随分と乱暴なやつみたいだが…何者だ。」

「石原一誠…と言えばわかるか?」

「石原…?そういや中学まで俺がいたバスケ部にそんなやつがいたな。別の高校に行ったと聞いていたが?」

「そう。羽丘程度のレベルじゃ俺は満足しないからな。もっとレベルの高いところに行ったのさ。」

「まあお前がどこ行こうがどうでも良い。今更なんのようだ。」

「まあそうだな……お前への復讐だよ!」

 

 復讐…?なんのことだかさっぱりわからなかった。俺はこいつと同じバスケ部にいたがろくに関わった事はない。それに会話も殆どしなかった為、恨みを売るようなことも無かった。

 

「復讐か。俺はお前に恨みを売るようなことはしてないが?」

「お前は気づいてないのか…。なら教えてやる。」

 

 

 それは遡ること1年前

「青葉さん!あなたのことが好きです!俺とお付き合いしてください!」

 

 石原は文化祭の後日、モカに告白をした。彼は前からモカのことが気になっていたのだが、モカ達が文化祭でバンドをやっていたのを見て本格的に好きになり告白を決意したのだ。

 

「ほほ~。これは告白されてるのかな~?」

「はい!始めて話した時からずっと気になってました!」

「いや~。モカちゃんも罪な女だね~。告白されるのも悪くないって感じ~?」

「じゃあ…」

「でも~君の期待には答えられないかな~?」

「えっ…。」

 

 モカの返答に石原は間の抜けた返答をした。

 

「何で…!俺はバスケも上手いし頭も良い!自分でも言えるほどにルックスもイケてるのにどうして…」

「いやいや、どこが悪いとかじゃないんだけどさ…あたしは君の気持ちに答えられないんだよ~。ごめんね?」

「誰か他に好きなやつでもいるんですか…?」

「それは言えないかな~?」

 

 こうして彼の恋は終わりを迎えた。だがその後、モカが遼と一緒にいるところを目撃した。モカが遼に乗っかかったりと2人にとってはいつものことだがそれを良く思わない奴もいた。それ石原()だ。

 

(何であいつが…俺よりも地味で冴えない陰キャの癖に!)

 

 これが全ての始まりだという。

 

 

「要するにあれだな。俺は完全な逆恨みされてる訳か。」

「逆恨みだと?ふざけるな!お前のせいで俺はフラれたんだ!彼女に!」

「いやいや、俺はあいつとは幼なじみなだけで恋人じゃない。だからお前はどのみち駄目だったって訳だろ!」

「黙れ!俺はお前なんかより素晴らしい男だ!頭も良い!スポーツも得意!見た目も良い!なのに何でお前なんかがあいつの幼なじみなんだ!」

「随分と自画自賛が激しいがお前ルックスたいして高くないぞ?というか逆にパッとしないとか近寄りがたいっ言われてたのに気づいてないのか?」

「知るか!俺の美的を理解できないバカはどうでもいい!」

「ホントそういうとこだぞ。というか顔以前に性格が悪いなお前は。」

 

 繰り出される拳をかわしたり受け止めながら口論を交わす。時間はかかるがなんとかやりきれそうだと思っていたその時…

 

 ガツン!

 

 後ろから鈍い衝撃を喰らった。痛みに耐えながら振り向くと石原の仲間と思われる男が鉄パイプを持ってそこにいた。

 

「ハハッ…ざまーねえな。オラッ!」

 

 痛みが癒える暇もなく追撃をかまされた。先程の打撃のせいで反応が鈍くなり、その攻撃を交わせずに食らってしまった。

 そこからは一方的ないじめだった。1発、また1発とどんどん暴力を浴びせられる。俺はただダメージの大きい左腕を庇いながらその攻撃に耐えるしかなかった。

 

「……っはあ!今日はこのくらいにしてやるよ。行くぞ!」

 

 ようやく帰るか…と思っていると石原は振り返った。

 

「そうだ、これ以上調子に乗ってると…今度はお前の夕焼け?をどうにかするかもな?それが嫌なら…お前が俺以上の屈辱を味わいな。」

 

 「また会おうぜ」と高笑いしながら立ち去った。

 

「あの野郎…何処まで腐ってるんだ。」

 

 そう言いながらなんとか起き上がり壁にもたれる。

 

「あいつらを壊すだと…。そんなことさせるか!」

 

 思い出しただけで腹がたった。あんな逆恨みしか出来ない卑怯者にあいつらに手を出させてたまるか。

 

「・・・・・・」

 

 ふと空を見上げた。そこには少しオレンジがかかり始め、青空が夕焼けになり始めていた。それを見ながら「綺麗な空だ…。」と呟く。

 Afterglow…それは夕焼けを意味する。この空はあいつらと同じ。なら俺がやるべきことはなんだろうか…。

 

「あいつらは絶対傷つけさせない。……俺が守る。守らなきゃいけないんだ。」

 

 そう決意し、傷を隠し、誇りを綺麗に払ってみんなの元に向かった。

 

 

 

 

 

 だが俺は気づいていなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 この決意が彼女らを苦しめることになろうとは。

 

 

 




シリアス「こんにちは!ぼくシリアスくんっていうんだ!」

急展開過ぎて作者もびっくり。

☆10評価をくださったもなせさん、ありがとうございます!
コメントをくださったユニバースファントムさん、伊咲濤さんありがとうございます!

高評価やコメントお待ちしております!

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@kanata_kizuna
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