あたし、奥沢美咲は恋をしている。
そのきっかけが何なのかはわからない。気がついた時には彼の事が好きになっていた…と言うべきかもしれない。
そうは言っても何の理由もなくその人を好きになった訳じゃない。ちゃんと好きだと言える理由もある。が、ちょっと恥ずかしいからここではやめておくよ。
ところで、恋をすると人は変わるという言葉があるけど、今のあたしがまさにそれだと思う。ある人に恋をして、突然彼のことを考えてしまうことがある。昔のあたしが「いずれあたしが誰かに恋をする」なんて聞いたら多分信じられないんだろうな。
でもその思いが実るかどうかはわからない。
それでもあたしは…。
◆ ◆ ◆ ◆
「ほら美咲、お前の分。」
「ありがと。」
遼が2人分のアイスを買ってきてその内の1つを美咲に渡した。2人はベンチに座り、自分のアイスを食べ始めた。
「今日は色々とありがと。だいぶ目的とズレちゃったけど…。」
「でも俺は楽しかったぞ。」
お互い買ってきたアイスを食べながら話をしていた。美咲はじっとアイスを見つめながらなにかを考えていた。
「どうした?もしかして…アイスのフレーバー、好きじゃなかったとか?」
「へっ?いや大丈夫だよ。ちょっと考え事を…ね。」
美咲の返答に「そうか?」と答えると再びアイスを食べ始めた。美咲も「はぁ…。」とため息をつきながらアイスを口にしていた。
「おお~。まさかこんなところで遼と会えるとは奇遇ですな~。」
2人でアイスを食べていると1人の少女が彼らに近づいてきた。
「モカ?なんでここにいるんだ?」
「いや~、アイスを買おうと思ってたんだけどその時ちょうど2人を見かけちゃってね~。」
「ふーん。でも大丈夫か?だいぶアイス並んでるけど…。」
「本当だ~。モカちゃん失敗しちゃったかな~。」
「何やってんだよお前…。」
モカの行動に遼は苦笑いした。
「じゃあ~、遼のアイス一口貰おうかな~?」
「お前な…。人前で容赦なく人のアイスに口つけようとするなよ。」
「いただきま~す。」
「いや人の話聞いて?」
遼が持つアイスを食べようとしているモカを必死に止める。いつも通りであり、2人にとっては意外と悪くないと思わせるこのやり取り。それを美咲は苦笑いしながらも複雑そうな目で見ていた。
「…美咲?どうした?」
「えっ!?…いや何でもないよ。ちょっと…仲いいな~って思っただけだし…。」
「それは勿論~。モカちゃんと遼は~ちょー仲良しだからね~。」
「とは言ってももうちょっと人目気にしろよお前は。」
「とか言って~。本当は楽しんでるくせに~?」
「しばくぞ?」
(本当に仲いいんだね2人は…。)
そう思いながら美咲は自分の持つアイスをしばらく見て、少しずつ食べていった。
しばらくして遼とモカの幼なじみ騒ぎも終わり、それぞれアイスを食べ終わった。
「さて、そろそろここも見て回ったし解散するか?」
「じゃあ~モカちゃんは遼の後をつけてようかな~?」
「こんな堂々としたストーカー宣言は始めただ。」
「あのさ…遼。」
2人が話していたところで美咲が遼をつつきながら声をかけた。
「ちょっと…ついてきて欲しいところがあるんだけど良いかな…?」
この時、美咲の体温は少し高いように感じたんだとか。
◆ ◆ ◆ ◆
美咲の誘いでやって来たのはファッションショップ。因みにモカも何故かついてきたらしい。
「どうしたんだ?ここメンズの服しかないけど…。」
「じ…実はさ、もうすぐお父さんが誕生日なんだ。だから…あたしメンズの服のことなんかわからないから遼の意見が聞きたいなって…。」
「なるほど。」
そういいながら遼の手を引く美咲。そして突然、反対側の手をモカがつかんだ。
「モカ?」
「いや~?ここ人多いじゃ~ん?はぐれたら大変だな~と思ってさ~。こうしたら見失うことも無いでしょ~?」
「えっ?いや、そうかもしれないけどこれは~?」
「え~?モカちゃんに手握られるの嫌かな~?」
「いやそうじゃないけど…」
「じゃ、このままレッツゴー。」
2人の美少女に手を引かれながら店内を進む。時たま目が合う男性客からの視線が痛く、遼にとっては少々その視線が辛くなっていたとか。
しばらく歩いて、トップスが売っているコーナーに付き、美咲は色々な服を見ていた。
「それでこの柄って男性目線だとどうなのかな?」
「結構派手じゃないか?お前のお父さん普段こんなの着ているのか…?」
「いや…それは…。うん、これは無し。」
美咲は持っていた服を置いて、近くにあった無地のTシャツとストライプ柄のシャツを手に取った。
「じゃあさ、これとこれだったら遼としてはどっちがアリだと思う?」
「そうだな。俺ならこっちだと思うな。」
遼が指差したストライプ柄の服を再度見ると「なるほど。」と言って、持っていた服を2つとも元に戻した。
「今は買わないのか?」
「うん。他のお店のも見て決めようかなと思って。遼が選んでくれたのはキープするよ。」
「そうか。まあ、日付がそう近くないのなら焦る必要はない。ゆっくり探して納得の行くものを買いに行けばいい。」
「まあ~、遼のファッションセンスって結構おっさんみたいだけどね~。」
「お前な…余計なことを言うんじゃない。」
モカのからかいに軽くチョップを入れた。
「痛~い。モカちゃん傷物にされちゃった~。」
「いや言い方。」
「じゃあそろそろ他の所見に行っても良いかな?」
「おっと、それじゃ行くか。」
それから暫くして色々な洋服店を見て回り、大体の目安を着けた美咲たちは近くのベンチに座り休憩していた。
「ふう…。そろそろ疲れたな…。」
「モカちゃんもいっぱい歩いて疲れたよ~。」
「ごめんね。わざわざ振り回しちゃって…。」
「まあ気にするな。友達の頼みなんだし遠慮はいらないさ。」
「……そっか。」
「とりあえず俺何か飲み物買ってくるけど飲みたいものあるか?」
その場を立ち上がった遼はモカと美咲に聞いた。
「モカちゃんは~カフェオレ飲みたいな~。」
「カフェオレな。無かったら勝手に選ぶけど良いか?」
「了解~。」
「美咲はどうする?」
「あたしは……遼にお任せしようかな?」
「わかった。じゃあ買ってくる。」
そう言って遼はその場から去っていった。ベンチに残されたモカと美咲の間には暫く沈黙が続いたが、少しすると美咲が口を開いた。
「ねえ青葉さん。…1つ聞きたいことがあるんだけど良いかな?」
「ん~?」
「青葉さんはさ…遼のことをどんな風に思ってるの?」
美咲の質問にモカは「う~ん。」と暫く悩んでいた。
「多分さ…好きなんじゃないかな~って思ってるよ~。」
「それは幼なじみとしてってこと?」
「うーん…きっと両方の意味だろうね~。少し考えたけどあたしは遼のことは幼なじみとしても、1人の人間としても好き。……モカちゃんの心はそういってる気がするんだよね~。」
「そっか…。」
モカは不思議そうに美咲のことを見ていた。
「美咲ちん、何で突然そんなこと聞くの~?」
「青葉さんはさ、遼に思い伝えるの?」
美咲の発言に少し驚いた。彼女の表情は本気の顔をしていて、とてもいつものノリで軽く返事を出来るような感じではなかった。
「えーと…今はまだ…このままでも良いかな~って思ってるかな。」
「まだ…?」
「うん。あたしは遼のことが好きだと思う。でもどこかで今のままでも良いのかな~って思ってるところがあるんだよね~。」
「そうなんだ…。」
モカの答えを聞いた美咲はなにかを決意したかのようにモカの方に向き直った。
「ねえ青葉さん。大事なことを1つ言っても良いかな?」
真剣な眼差しにモカは少し怯んでしまった。普段、無気力そうで苦労している彼女の表情からは考えられないほど…何かを見ている目だった。
「あたしね…。」
「遼に告白しようと思う。」
はい、という訳で残り話数も少ないのに急展開入ります。
この展開は割りと始めから考えていたものなんです。
因みに美咲が遼に恋しているような雰囲気を醸し出してる描写は過去にいくつかあったのですが気付いてた方はいらっしゃるでしょうか?気付いてた方にはキズカナ検定1級を差し上げましょう!←いらねえ
コメントや評価くださると嬉しいです!
@kanata_kizuna