皆が解散してそれぞれが帰路につく中であたしは蘭と一緒に帰っていた。
「どーしたの?久しぶりにモカちゃんと帰りたくなった~?」
「モカ、単刀直入に聞くけど遼と何かあった?」
蘭の言葉にあたしは一瞬ビクッとなった。そして蘭はそれを見逃さなかった。
「…あったんだね?」
相変わらずよく見てるな~。まるでずっとあたしのことを見ていたかのようにズバッと当てて来た。
「この間のこともあるし、遼がまた何か隠してるってことはないとは思うけど…。」
「いや~そうじゃないんだよね~。どっちかと言うと…あたしの方かな?」
「モカ、何かあったのなら教えてよ。……あたしも力になれるなら…なりたいし…。」
ほんのり赤くなってる顔を背けながら、最後になるに連れて蘭の声は小さくなっていた。恥ずかしさ故の行動なのかな?それでも…やっぱり蘭は蘭だよね。
「…蘭には敵わないかな~。」
もうこのまま隠してるのもあたしとしても辛いし……たまには甘えてもいいかな…?
「ね~蘭~。」
夕暮れの空を見ながらあたしは呟いた。
「誰かを好きなるってどういうことなんだろうね~?」
◆ ◆ ◆ ◆
話をするためにあたしたちは近くの公園に移動した。
ブランコに座って先ほど自動販売機で買った缶コーヒーを飲みながら、あたしの胸の中にあるモノをすべて話した。
「つまりモカは遼のことを好きになった理由がわからなくて悩んでるってこと?」
「まあそうなるのかな~。」
そう呟きながらあたしはブランコを漕いでいた。蘭は隣でそれを聞くとコーヒーを一口すすった。
「でもさ、話を聞いてるとモカは奥沢さんが告白しようとしてることで焦って自分も告白しようとしているように感じるけど?」
一番気にしているところを指摘された。確かにそう思われても仕方ない。
「それにその理由って言うのもなんか…それが無きゃダメって感じになってるよね?」
再び鋭い刃のような指摘が飛んできた。我が幼なじみながらなかなか厳しいことを言われてあたしもちょっとキツイかな~。
「あたしさ~、昔からずっと遼と一緒で…もしかしたら蘭以上に一緒にいたかもしれないんだよね。
だからずっと隣にいて、一緒に笑って、おかしなことしたり、バンドだって形はどうであってもずっと支えてくれていた。そんな日々が当たり前過ぎてさ…いつの間にか遼に引かれていて…遼に対する思いが変わってきたんだ。
それでも…やっぱり今のこの関係が心地よくて…ずっとこのままでもいいかなって思ってたけど…。」
あたしは顔を俯けた。
理由は美咲ちんのことだ。彼女は遼のことを本気で好きなんだ。遼との関係はガールズバンドのメンバーの中でも多く、とても仲がいい。だからもしかしたら…2人が付き合う可能性が無いわけじゃない。
そこでふと思った。もし2人が付き合ったら?遼はあたしから離れて行くの?ずっと一緒にいて…いつの間にか一緒にいるのが当たり前みたいになっていたあたしには考え付かなかった。
「……モカ?」
「ねえ蘭…。ずっと一緒にいた人が…大事な人がそのうち傍にいなくなるってなったらさ…蘭はどう思う?」
あたしの質問に蘭は少し考え込んだ。
「あくまであたしの意見なんだけど…そうなると寂しい…かな。」
「そっか…。そうだよね…。」
「でも人生ってわからないからさ…突然、別れなきゃいけなくなるって可能性はどこかにあるんだと思う。ずっと一緒って言うのはもしかしたら…どこかで切れてしまうのかも知れない。」
蘭の重い返答を聞いたあたしは何も返せなくなった。そんなとき蘭は「でもさ」と話を続けた。
「きっとあたしたちの関係は簡単には切れない。例え、離れることがあっても…心だけは繋がっていられるんだって…あの時気づくことが出来たから。
そうあたしは信じてる。」
その返答に少しだけ…あたしは口元が緩んだ。やっぱり蘭は蘭だ。素直じゃなくて、気が強くて、それでまっすぐと前を見ているあたしの親友の美竹蘭だ。
「……何笑ってるの?」
「別に~?蘭は蘭だな~って思っただけ~。」
「それ…どういう意味なの?」
「どういう意味なんだろうね~?」
あたしの緩い返答に蘭も「何それ」と言いながら笑っていた。
「それで話を戻すけど…モカは遼に告白するの?」
「それは…」
蘭からの質問にまた答えを戸惑った。
「モカが本気で遼のことを好きならあたしは告白するべきだと思う。」
真剣な目であたしに訴えかけてきた。
「でもさ、あたしは美咲ちんみたいにちゃんと好きな理由がわかってる訳じゃ…」
「ねえ、モカの恋に理由ってどうしても必要なことなの?」
「えっ?」
「そんな理由を考えてまで恋をする必要はないと思う。大雑把に言って『Yes』か『No』の選択肢だけでも良いんじゃないの?」
「Yesか、No?」
その返答にあたしは頭を硬いもので殴られたかのような感覚になった。
「それにさ、モカは告白して今の関係が壊れることを気にしているみたいだけど…そんなの心配するようなことでもないと思うよ。
あたしの家のこと、つぐみが倒れた時のこと、ガルジャムの時のこと、それに遼の時もあたしたちはバラバラになりかけた。それでも今こうやって6人が一緒にいる。
さっきも言ったけど…そう簡単には壊れないよ。あたしたちの絆は。」
蘭の言葉を聞いてあたしの中で何か…心に何かが起きた。
そうだ。あたしは遼が好き。理由はわからないし、その事について多く語ることは出来ない。それでもあたしは好きなんだ。彼のことが。
だったらあたしは何をすればいい?そんなことは簡単だ。きっとそれは…。
「蘭…ありがとう。」
「モカ?」
「モカちゃん、お陰でわかったよ。あたしの…望む思いが。」
蘭の方を見ながらそう呟くと「…そっか。」と笑いながら彼女も呟いていた。
あたしは…青葉モカは…
遼に告白する。
怖がってばかりじゃ駄目なのかも知れない。勇気を出して前に進む。そうすることがあたしにとって1番大切なことなんだと思う。だからもう…考えるのは止めた。
「と、言う訳で~モカちゃん大復活で~す。」
「復活が遅い。」
「も~蘭は冷たいな~。蘭の協力のお陰でモカちゃんはこうして元通りの美少女モカちゃんに帰りざることが出来たじゃありませんか~。」
「……そうだね。正直、ウジウジしてる遼とモカはなんか違うからやっぱりそういう感じだと思う。」
「お~?もしかして~蘭もモカちゃんに恋しちゃった~?」
「はあ!?そんなわけ無いでしょ!?」
「でも~蘭顔赤いよ~?」
「……怒るよ?」
「さーせーん。」
その後、ちょっとの間あたしたちに沈黙が起きたけどやっぱりこのやり取りがしっくり来たのか2人で思わず笑ってしまった。
「ねえモカ。本気で告白するんだよね?」
「もち~。今のモカちゃんは本気と書いてマジと読むよ~。」
「…そっか。」
暫く黙っていたけど蘭はあたしに再び言葉をかけた。
「モカ、あたしは応援してるよ。」
「蘭…。ありがとね~。」
あたしの言葉に蘭は思わず優しい笑顔になった。
「じゃあ~事件解決と言うことで~やまぶきベーカリーでパンでも買って帰りますか~。」
「ねえ、やまぶきベーカリーもう閉まってるんじゃないの?」
そう言われ時計を見ると時刻は既に19時を越えていた。蘭も言った通り、やまぶきベーカリーの閉店時間はとっくに過ぎていた。
「がーん…。モカちゃんのパンが…。」
「・・・・・・・・・。」
あたしがショックで倒れ混んでいると蘭は「ドンマイ」という感じに肩に手を置いてきた。
「……コンビニのパンならあたし買うけど?」
「おお~?もしかして~蘭がモカちゃんにパンを~?」
「嫌ならやめるよ?」
「いえいえ~これからは蘭のことをパンの救世主とお呼びしましょ~。」
「…やっぱりこの話無しでいい?」
あたしもこれで前に進める筈。
ありがとう、蘭。
☆9という高評価をくださった双剣使いさん、ありがとうございます!
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@kanata_kizuna