いつも通りの日常に夕焼けを   作:キズカナ

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奥沢美咲、動く

 

 

 ある日のこと、俺は美咲とある約束をしていた為ある場所にいた。

 

「遼くん、誰かと待ち合わせでもしてるの?」

 

 頼んだカフェオレ(ぬるめ)を飲んでいるとつぐみが近くに来て俺に尋ねた。

 

「ああ、ちょっとな。」

 

 時計を見ながら待っているとカランカラン…とお店の扉が開き、1人の少女が入ってきた。

 

「ごめん、遼。待たせた?」

 

 遼が待ち合わせていた人物、それは奥沢美咲だった。

 

「いや大丈夫だ。」

「そう?なら良いんだけど…。」

「それよりどうしたんだ?突然予定空いてるかなんて聞いてきて。」

「いや…その…この間、一緒に買い物言ったときに次ハロハピが幼稚園でライブするときにあたしの羊毛フェルトを子供たちにプレゼントするって言ったじゃん?」

「うん。」

「それで昨日から頑張って作ってたんだけど流石に1人でやるのは辛くてさ…。遼さえよければ手伝って欲しいんだけど良いかな?」

「なんだそういうことか。」

 

 申し訳なさそうに頼む美咲に対して遼は何も気にせずに話を続けた。

 

「あの時協力を申し出たのはこっちだ。寧ろ遠慮せずに頼ってくれ。」

「……ありがとう。」

「とりあえず美咲も何か頼めよ。今日は代金は俺が持つから。」

「えっ?それは流石に申し訳ないよ。あたしは無理言って協力してもらう側なんだからここはあたしが出すよ。」

「いやいや、俺が出そう。」

「いやいや、あたしが…」

「いやいや」

「いやいやいや」

「いやいやいやいや」

 

 

 ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 結局あれから代金を割り勘にして払った2人はそのままお店を後にした。

 

「モカちゃん?遼くんもう帰っちゃったよ?」

 

 つぐみが声をかけるとお店の奥からモカが出てきた。

 

「ふ~。なんとかやり過ごせたみたいだね~。」

 

 のんびりとした口調で奥から出てきたモカ。因みに奥から出てきたと言ったが、別にモカはここで働いてる訳ではない。

 

「でもどうしたの?突然『少し奥であたしを匿って欲しい』なんて言い出して…。」

「ん~?いや~ちょっと動向を知りたくてね~。」

「動向…?もしかしてモカちゃん…遼くんと喧嘩したの?」

「いやいや~。そういう訳ではないのだよ~。己を知るためには敵を知ることがまず重要…と言いますかね~。」

 

 モカの言葉につぐみは「訳がわからない」という顔をしていたが、そんなことはお構いなしにモカは2人が出ていった扉の先を見つめていた。

 

(美咲ちん……本気だ。

 あたしも絶対伝えなきゃ…。どんな結果になっても…。)

 

 モカは心の中でそう誓ったのだった。

 

 

 

 ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 

「ほら、ついたよ。」

 

 美咲に誘われて辿り着いたのは彼女の家だった。

 

「ここでやるのか?」

「うん。ここなら道具も材料も揃ってるから安心してやれるよ?」

「いや、それより親御さんの方は良いのか?いきなりお邪魔してるとお前の親にとやかく聞きこまれそうで怖いんだけど。」

「それなら大丈夫だよ。両親は仕事で夕方までいないし、華燐は友達の家に遊びに行ってるから今誰もいないんだ。」

「華燐?」

「あたしの妹だけど?」

「あ、そういうことか。」

「まあ立ち話もなんだし上がってってよ。」

 

 美咲に言われ、家の中にお邪魔した遼はそのまま言われるままに美咲の部屋に。

 

「ほお。結構かわいらしい内装だな。」

「あのさ…恥ずかしいからあんまりまじまじと見ないで欲しいんだけど…。」

「おっとすまない。」

「じゃあどこか適当な場所に座っててよ。あたしは何か飲み物持ってくるからさ。」

 

 そう言って美咲は部屋を出て行き、遼は用意されていた座布団の上に座って静かに待つことに。それから3分もするとお盆にジュースが入ったグラスを乗せて美咲は戻ってきた。

 

「どーぞ。」 

「悪いな。」 

「じゃあ早速始めよっか。」

 

 そう言ってこの間買ってきた羊毛フェルトに必要なフェルト羊毛、ニードル、マットなどを取り出して2人が互いにとりやすいところに並べた。

 

「そう言えば遼は初めてだったよね?」

「そうだな。裁縫くらいならしたことはあるが羊毛フェルトは未経験だ。」

「わかったよ。じゃああたしが手取り足取り教えるから。」

 

 ため息をつきながらも笑いながらそう語る美咲は何処となく楽しそうな雰囲気をしていた。

 

 

 ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 作業を始めてから約1時間30分がたった。

 最初の方はやりながらどのように作るのかを説明して遼も実際に手を着けた。しかし、針を刺すときの力加減や羊毛の分量、繋ぎ方などで少し苦戦はしたものの、やり続けるうちに美咲程ではないが様になるようには上達した。

 それからは2人で1つずつ作っていき、遼の不備がある部分は美咲が修正を加えていった。そして、彼らが思っていたよりも早く作業が進んだため幼稚園の子供たちに配るフェルトは予定よりも早く完成したのだった。

 

「25、26、27、28……よし、ちゃんと数は揃ってるね。」

「ふう……思っていたよりも神経使うなこれは……。」

「まあ数が数だからね…。」

 

 手首を捻りながら呟く遼に対して美咲は完成した作品を丁寧に箱にしまいながら話した。

 

「それにしても遼が思っていたよりも飲み込みが早くて助かったよ。」

「まあな。自分で言うのもなんだが、俺は手先は器用な方だからな。」

「そうなんだ。あ、飲み物おかわりいる?」

「良いのか?」

「うん。」

「じゃあいただくよ。」

 

 美咲はグラスを受けとるとペットボトルのジュースを注ぎ、それを遼に渡した。

 

「ふう…。にしても美咲はいつもあれをやっているのか?」

「うん。まあ趣味の一貫としてね。作ったやつは大体華燐にあげてるんだけど。」

「お前は自分用とかは作らないのか?」

「まあ…やっぱり自分で持つとなると少し恥ずかしいって思ったりしちゃうから…。」

「そういうものなのか?」

「そういうものなの。」

 

 グラスに注いだジュースを飲みながらそんな会話をしていたが、暫くしてコップのジュースを飲み干すと美咲はなにかを決めたような真剣な目付きになった。

 

「ねえ、遼。変な話になるけどいいかな?」

 

 彼女の真剣な表情を見た遼はそれを疑問に思いながらも「いいけど…」と返答した。

 

「あのさ、遼って好きな人いるの?」

 

 突然の発言に遼は口に含んでいたジュースを吹き出しそうになるのを堪えた。

 

「だ、大丈夫!?」

「ゴホッ…まあなんとか…。それでなんで突然そんなこと…。」

「いや…それは…ちょっと後でもいい?」

 

 目を逸らしながら話す美咲に対して更に疑問は増えるが遼は彼女の頼み通りその事には触れないようにした。

 

「で、その好きっていうのは恋愛的な方なのか?それとも友達的な方なのか…。」

「前者だね。」

「なるほど……まあ、そこのところよくわからないな。正直経験なんて全くないし、かといって告白すらされないからな。」

「………そうなんだ。」

 

 今まで女友達は何人かいたものの基本的に一緒にいたのは小さい頃からの付き合いであるAfterglowの5人。この5人は友人関係で見ていた為、そういった感情にはならなかった。

 だが、ここ最近ある人物に対する思いで少し違和感が生じていた。ずっと一緒にいる時間が誰よりも長くて気づけば隣にいてくれた存在。友達として好きだった思いに何か別のものが混ざり始めている。そんな感覚はあった。しかし、その『何か』がなんなのかは遼には未だにわからないままだった。

 

「……あたしはいるんだ。好きな人。」

 

 そんな中、じっと遼を見つめながら美咲は語る。

 

「始めわさ、特に関わったこともないし、ただ1つの企画で顔合わせる程度にしか考えてなかったんだけど、その人は何も理由が無くてもあたしを気にかけてくれた。ううん、困っているとすぐ誰かの力になろうとしてた。多分あたしはその1人なんだと思う。」

 

「最初は変わった人だなって思ってたんだけど、その人と話したり、知ったりするうちにどんどん引かれていった。そしたら気付かないうちに意識するようになって……不思議な思いになった。友達じゃなくて、その先の関係に進みたい。そう思うようになってきた。」

 

「だから…言わせて」

 

 美咲は遼を見据えて、真っ直ぐに語りかけた。

 

「遼…」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あたしはあなたのことが好きです。」

 

 

 





台風マジゆるさん。
ベリーベリーガッデム←予定潰されてご乱心


☆10という最高評価をくださったメログレさん、☆9評価をくださったゴメゴメさん、門矢士さんありがとうございます!

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