「はあ…。」
その日、俺は学校で机にもたれ掛かるようにぐでっとしていた。もうすぐ夏休み、皆が今か今かと待ちわびる
(結局…どうすればいいんだろうな…。)
数日前、美咲に告白されてからずっとこんな感じだ。あの時俺は告白の返答を保留にした状態でその日を終えた。その場で答えを出すことも出来たかもしれないがあの時の俺はかなり動揺していてちゃんとした判断が出来そうではなかったのだ。
(好き…好き…恋人…か…。どうすればいいんだよ、この整理は…。)
「遼~?遼~?聞いてるか~?」
「………ん?」
俺を呼ぶ声が聞こえ、声の先を見ると匡がそこにいた。
「遼、終礼終わったよ?」
「そうか………ん?モカたちは?」
「ああ、女子は少し別の話があるから教室を移動して先生の話聞いてるよ。」
「話?なんでまた…。」
「最近女子を狙う物騒な事件が多くなったらしくてさ。その防犯の為に少しお話するんだって。」
「そうなのか…。」
「あ、因みにモカちゃんたちから伝言なんだけど『長くなりそうだから先に帰ってて』だってさ。」
「……わかった。何から何まですまないな。」
そう言って鞄に教科書などを入れた俺は匡と共に教室を出た。そして下駄箱についたところで再び匡が話しかけてきた。
「それにしても遼が上の空で先生の話を聞いてなかった何て珍しいね。何か気になることでもあったの?」
なにかを見透かしたかのように匡は聞いてきた。普段はフワッとしてるイメージなのに時々鋭いところをついてくるんだよなこいつは…。
「まあ…あったけど…。」
「へえー。どんなことなの?」
「あー……話しても良いけどさ…ちょっと場所変えようか。」
◆ ◆ ◆ ◆
学校を後にしてしばらく歩いた俺たちは人気のない公園に到着して、そこのベンチに腰を掛けた。
「で、どうしたの?もしかして聞いちゃ不味いことだった?」
「いや、気にしないでくれ。ただな…1つ抱えてるものがあってだな…。」
「えっ?」
「あのさ、もし自分を好きだって言ってくれる子がいたとするだろ?それでいてこっちは恋愛のなんたるかを全然わかっていないとする。
そんな中で突然告白されてさ、自分の気持ちが整理出来てないってなった場合さ、どうしたらいいと思う?」
「うん、ちょっと待ってくれる?」
俺の質問を聞いた匡だったが、当の本人は少し理解に追い付いてないのか首をかしげていた。
「えっと……とりあえずなんだけどさ、それってもしかして遼、君のことをいっているのかな?」
「いや…まあそれはだな…。」
妙に歯切れの悪い俺を見ていた匡は口には出さなかったが「あ、これそういうことか。」と確信していたらしい。
「まあ、さっきの俺の質問に関してはおいとくとしてその人は告白されてなんで整理出来てないの?」
匡の問いに俺は答えるのを少し戸惑ったが、流石に自分から聞いておいてここで答えないのは不味いだろうと思い覚悟を決めることにした。
「確かにその人の気持ちは嬉しいんだけどさ、実は他に気持ちの整理がつかなくなるような思いになる相手がいるんだ。そいつは昔からずっと一緒にいて、最早兄妹みたいな感じになっているくらいだった。
でもそれが友好的な感情とは少し違うような気もしたんだ。そんな中で告白されて少し戸惑っているような感覚に襲われてるってとこかな。」
空を眺めながら俺は自身の心情を呟いた。
「うーん…。遼はさ、その『ずっと一緒にいた人』のことが好きなの?」
「いや…それがわからないんだよな…。」
「でもさっきの話を聞いている限りだと遼はその告白してきた人よりも一緒にいた人の方が好きって聞こえるけど?」
そう言われて俺は自分の気持ちを振り返ってみる。
確かに美咲のことを恋愛的な方で見ているかと聞かれるとはっきりと肯定は出来ない。一方でモカはどうだろうか?肯定なのかはわからないが否定でもない。確かに時々モカに対する思いにどこか違和感のようなものを感じてはいたがこれがなんなのかは未だにわかっては……いや、なんとなくではあるが予想はついていた。しかし、それを確信に持ち込むことが出来ないのは自分でもわかっていた。
「どーなんだろうな。結局、今のままで落ち着いてるから……それ以上にもそれ以下にも考えられなくなってるのかも知れないけどな。」
結局、こういう肝心な時に必要な決断をくだせないんだよな俺は。そう心の中で自分を嘲笑った。
「えっと…要するに好きな人はいるけどその人はずっと友達としての関係だったからいざ恋人として見れるかとしたらそうもいかないってこと?」
「まー…そうなるのかな?」
「何て言うかその……凄く複雑なんだけど。」
「お前の言い分はごもっともだ。」
正直めんどくさいと思われても仕方ない。結局俺は今の関係に拘って他の世界を見ていないだけの話だ。かといって他の人物を恋愛対象としては考えられない。こんな状態で誰かと付き合い始めても相手を傷つけて終わるのは目に見えていた。
「でもさ、無責任なこというと……そのままが良いなら無理する必要ないんじゃ無いのかな?」
少し間があいたところで匡はそう呟いた。
「いや、遼が本当にその人が好きなら告白しても良いと思うけどさ、なんか…ちょっと今の感じたとさ……焦ってるというか…混乱してる感じがするからさ。」
確かに。俺は美咲に告白されてから少し混乱していた。そんなことはわかってはいたが、その気持ちは自分ではどうにも出来ないほどに大きなものとなっていた。その為、美咲のこともモカのこともごちゃごちゃになっていた。
「だからさ、一旦落ち着いてみなよ。」
俺の背中を叩きながら匡はそう言った。
結局俺はどうしたいんだろうか。そんなことを考えながら俺はそのまま帰路についた。
◆ ◆ ◆ ◆
家に帰ってからも俺の脳内での葛藤は続いた。
確かに俺の中ではモカが友達として好きかと言われたら素直に「はい」とは答えられないだろう。次に思いを恋愛感情として置き換えるとすれば確かに説明はつく。
「俺は本当にモカに…?」
考えれば考える度に何かに直面していた。
仮にそれがそうだったとしても美咲はどうなる?もし断って傷つけることになったら?そう考えるとやはり思考がこんがらがってしまう。もう何も考えたくない。そう思うほどに。
「はあ~!いいお湯だった~!」
そんな雰囲気をぶち壊すかのように姉である照がお風呂から上がってきた。彼女はそのまま冷蔵庫を漁って取り出したポケリをぐびぐびと飲んでいた。
「ふうー!風呂上がりにはこれしかな……ってどしたのよ。変な顔して。」
「とりあえず黙っててくれない?」
こちらが真剣に悩んでいる中で『変な顔』と言われたのが癪に触ったのかそう返してしまった。不味いな、結構気が立ってしまっている。
「何よ?この間の今日でまた悩み事?」
「問題ある?」
「無いけどあたしに当たらないでよ?」
そう言って再びポケリを飲んでいた姉を見て、「ダメ元でこの人に相談してみるか…」と考えた。
「なあ、姉ちゃん。1ついいか?」
「何~?」
「姉ちゃんって恋とかしたことあんの?」
「あるわよ?というか絶賛恋活中よ!」
「ふーん…」とぼやいていると姉ちゃんは「自分から聞いといてなんだその態度は。」と言わんがばかりにこちらを睨んできた。
「その人って大学入って出会った人?」
「ううん。高校時代からのお友達。」
「ふん…。それでさ、その人ってずっと好きなの?」
「うーん…好きになったのは1ヶ月前くらいかな~。それまではお友達って感じだし。」
「それでさ、もし付き合い始めてこれまでの関係が変わったら…とか考えないの?」
「どーだろ?変わるかもしれないよね。」
「怖くないの?」
そう聞くと姉ちゃんは飲み干したポケリを机に置いた。
「全然。まあ多少は色々変わるけどさ、肝心なものは変わらないんじゃないの?」
「肝心なもの?」
「ココ。」
そういいながら姉ちゃんは自身の胸に拳を当てた。
「ココが変わらなきゃきっとやっていける。相手を大切に思うのは友達の時でも恋人の時でも同じだと思う。変わりたいんなら新しい関係になったときに2人で育んで行けばいいの。」
「因みになんだけどさ…もし断られたら…とか考えないの?」
「そりゃ考えるよ~。でも伝えなきゃ何も始まらないじゃん。幸せは歩いてこないんだから自分から歩いて行かなきゃ。それにモカちゃんには前に言ったんだけど人ってのは完全に相手を傷つけないのは限界があるからね~。そこを覚悟の上で行動しなくちゃ。」
そう言いながら一息つくと再び語り続けた。
「結局のところ、伝えることが大切ってこと。どんな結果になってもその行動に意味がある!」
「……で最後に1つなんだけど、恋愛感情ってどんな感じなの?」
「どんな感じってそりゃ…その人のことを考えると次第に止まらなくなったり……なんかこう…胸が絞まるような感じ?」
そう語る姉を横に俺は再び考えた。
これまでの姉ちゃんの話を整理すると俺はモカのことが・・・・というみたいだ。
そして再び考え直してみた。
美咲のこと
モカのこと
そして…俺自身のこと。
(だとしたら俺は…)
俺の気持ち、そして美咲の告白。
それらに対する想いを俺は受け止めなければならない。どんな結論になっても。
その時は…そう遠く無かった。
若干グダってるのは許して。
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@kanata_kizuna