現在あたしは部屋である計画を練っていた。机の上に並んでいるのはデートスポットなどが書き記された本の数々。ある程度見終わったところで本を閉じ、机にぐでっと倒れこんでいた。
「うーん…どうすればいいことやら…。」
先ほど閉じた本をパラパラと捲りながら色々と考えたがこれといったものはなかなか思いつかなかった。
「こーいうのはやっぱりひーちゃんの方があっさり決めれそうだよね~。」
本人の前でこんなことを言ったら「それどういう事なの?というか私、彼氏自体いないんだけど!?」とか言われそうな気がした。
そもそもデートスポットとか見てても遼がどういったところが好きでよくどういった場所に行くのかは実はよくわからない。強いて言うならゲームセンター…位しか思い浮かばないんだよね~。
こうして考えてみると知っているようで以外と知らないことが多いなと実感する。今まで幼なじみとして多くの時間を共に過ごして来た為、彼のことはかなりわかっていると思っていた。でも改めて考えてみるとわかっていた『つもり』だったのもがほとんどだった。確かに遼があたしといつも行く場所はあたしが行きたいところばかりだった。やまぶきベーカリー、羽沢珈琲店、ファーストフードショップ……学校帰りなどであたしがさりげなく誘うといつも付き合ってくれていた。実際に遼からどこかに誘うということは殆ど無かった故かこの形があたし達の間に定着していた。
「……もうちょっと遼の好みとか知っておくべきだったな~。」
まあこんな展開が訪れようなんて思いもしなかったのだから無理もない…って言うのは言い訳に過ぎないのかもしれないよね…。こうなったらやっぱりひーちゃんにでも相談すべきなのかな~?
「うーん…」
「モカ?お昼ご飯出来たわよ?」
悩んでいた時、ママに呼ばれて時計を見ると時刻は既に12時を迎えていた。今日は特に予定も無いしご飯食べたら気分転換に商店街でも歩いていようかな~と思い衣装ケースを開けてお気に入りの半袖のパーカーを手に取る。その時、ふと思ったことがあった。
(そう言えば…遼にだけ無いんだよね~…。)
そう考えてると再びママが呼ぶ声が聞こえた為、あたしは急いでリビングに向かった。さっきのことについては今度みんなに相談してみようと思った。
◆ ◆ ◆ ◆
美咲から告白されてから5日がたった。
あれから匡、そして姉ちゃんの助言もあり少し考えていた。そしてようやくその答えが出た。
今日俺はある場所でその人物が来るのを待っている。因みにL○NEには「話したいことがあるから○○公園に来てほしい。何時くらいに来れそうかな?」と送信したところ、相手の都合と合わせて17時に待ち合わせすることになった。
呼び出した張本人である俺は遅れるわけにもいかないので、予定よりも少し早く集合場所について今はベンチに座りながら待ち合わせしている人がここに来るのを待っていた。
「遼?」
名前を呼ばれて振り向くとそこには待ち合わせをしていた人物…奥沢美咲がいた。
「美咲…。」
「えっと……待った?」
「いや、全然大丈夫だ。」
ベンチから立った俺は美咲と向き合い、そのまましばらく黙り混んだ。
俺は今から彼女に思いを伝えなければならない。今日はそのために彼女を呼んだんだ。彼女の告白に…返答するために…。
「遼…?」
「あのさ…美咲はなんで俺に告白しようと思ったの?」
「遼のことが好きだからだよ。」
俺がそう聞くと美咲は迷うことなくそう答えた。
「あたしって結構さっぱりしてるというか…何事もほどほどにすませようとするタイプでしょ?」
「まあ…そうだな。」
「そんなあたしがさ、本気で誰かに負けたくないって思うようになったんだ、この気持ちは。あたしって頑張ってなにかを成し遂げたり…っていうのは苦手だったんだけどこの思いのことだけは手を抜きたく無かった。いつぶりなのかは覚えてないけど…こんな気持ちになったのは凄く久しぶりだったんだ。」
「・・・・・・・」
「だからあたしは努力したんだ。絶対に後悔しないためにも。」
俺の目を真っ直ぐに捉えながらそう語る彼女の顔には迷いなどはなかった。
彼女を見ていると少し前の自分がみっともなく感じてしまった。美咲はきっと俺が気づかないだけでたくさんの努力を重ねてきた。自分の思いに嘘をつかない為か…それとも何かに負けないという思いだったのかはわからない。でもそれは俺への気持ちの為だけじゃなくて自分自身の為でもあるのだ。きっとそれを決意するために……ちゃんと覚悟は決めてきたのだろう。例えどんな結果になろうと自分の思いには正直にありたい…そんな思いが黙っていても伝わってきた。
そんな彼女に対して俺は何を戸惑っていたのだろうか。覚悟を決めてきた美咲に対して俺は決めた思いすらすぐに伝えられなかった。
(俺も……覚悟を決めないとな…。)
そう思った俺は再び美咲と向き合うと1度、2度と深呼吸して心を落ち着かせた。しかし、はじめてのことでもあり腎臓は未だに速いテンポで俺の心を焦らせていた。
「あのさ…美咲。俺もずっと考えてきた。美咲の俺に対する思い。それに俺の思いについて。」
覚悟は決めた。
俺はもう迷わない。
例えその決断で誰かを傷付けたとしても……俺はその結果を……受け止めてみせる。
「美咲…俺はお前のことを大切に思っている。」
俺の言葉に彼女は驚きの表情を見せた。
「お前の気持ちは凄く嬉しい。」
「でも…ごめん。俺は美咲の思いには応えられない。」
その瞬間、俺と美咲の間に沈黙が起きた。無理もないだろう。俺は彼女をふったのだ。
美咲の思いはとても嬉しかった。俺のことを好きと言ってくれた。俺と真っ直ぐと向き合ってくれた。そんな彼女に惹かれるところはたくさんあった。
しかし、俺は彼女のことを『友達以上』と見ることが出来なかった。
改めて考え直したことで気づいた。俺には…好きな人がいる。どんなときも傍にいてくれた人物が。俺はそんな彼女に…いつの間にか特別な思いを抱くようになっていた。
その思いを遂げる為には美咲からの告白に応えることが出来ない。そんなことは誰でもわかることだ。
俺は美咲をふった。つまり彼女の思いを拒否したのだ。もしかしたら今後美咲と会うときはどこか距離が出来てしまうかもしれない。今までのように友達でいられないかもしれない。それは言う前から覚悟していたことだが実際にそうなってしまうと互いに辛くなるだろう。増して美咲のことを俺が傷付けたようなものだから……。
俺たちの間に少しの沈黙の時間が流れた。
「そっか…。」
美咲は小さな声でそう呟いていた。
「ごめん…」
「ううん、それが遼の決断なんだよね。なら仕方ないよ。」
頭を下げる俺に対して美咲は「気にしないで。」という感じで俺にそう言った。
「……それにこうなるのはわかってたんだ…。」
「…えっ?」
「遼は好きなんでしょ?あの子のことが。」
「美咲…?」
顔をあげると美咲はいつもと変わらず彼女らしい笑顔だった。しかし、その頬には煌めく何かが蔦っていた。
「遼…。さっきあたしに聞いたよね?告白した理由を。」
沈み始めていた夕日を見ながら俺に語りかけてきた。
「あたしさ…わかってたんだ。遼に好きな人がいること。それでもどうしてもこの思いは伝えたかった。
例えどんな結果になってもこの思いだけは伝えたかった。伝えなきゃきっと後悔すると思った。だから…告白したんだ。言ってしまえばこれはあたしのワガママだね。
だからさ…遼は自分を責めないで。」
美咲は最初からフラれることは覚悟していたようだ。その上で俺に告白したんだ。そして今も自分よりも俺のことを気にしてくれている。
君は俺が思っていたよりも…そして俺なんかよりもよっぽど強い奴だよ…美咲。
「じゃあさ…あたしから最後のワガママ…聞いてくれる?」
「ああ。」
辛い思いをしてるのにも関わらず、彼女は笑いながら俺に問いかけた。勿論断るつもりはない。美咲の…俺を好きでいてくれた人の望みをどうしても叶えてあげたいから。
「青葉さんのこと、絶対幸せにしてあげてよ?」
嗚呼…
どうして君はそんなに優しいんだ…。
「…それでいいのか?」
「うん。それがいいんだ。」
「わかった。約束するよ。」
俺は全てを受け止める。
自分だけじゃない。モカへの思いも、美咲の願いも、今この瞬間も全て。
「後…これからもよろしくね。友達として。」
俺は決して忘れない。
彼女の思いも、今日ここで起きた出来事も全て。
沈む夕焼けをバックに悲しみを堪えて笑う彼女の姿は何よりも綺麗だった。
えー…多少無理があったかも知れませんが悩んだ末にこのようになりました。
美咲の覚悟…見届けて頂けたでしょうか。
この物語も佳境…そして結末へと向かっています。
残すところあと2話(予定)。最後までお付き合いください!
良ければコメントや評価よろしくお願いします!