いつも通りの日常に夕焼けを   作:キズカナ

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秋と紅葉と変わるもの

 

 とある秋の日、遼は町外れの公園に来ていた。

 

 少し広めの敷地に並んだ紅葉の木は先が赤く染まっていて、そこから零れ落ちる葉っぱにより地面も紅く染まりそうな雰囲気だった。

 休日を利用してその場にやって来た遼はスマホのカメラ機能を使用してその場の風景を画面に納めていた。

 

「やっぱり去年とは違うな…」

 

 そう言いながら画像フォルダを探り、1年前にこの場所で撮影した紅葉の写真を見た。同じ場所、同じ季節に撮ったものではあるがよく見ると枝の形、葉っぱの色など異なる部分が色々と見られた。

 季節は巡り、再びやってくる。しかし、それが全く同じという訳ではない。時は進み、歴史は刻まれ、世界は変わっていく。以前がそうだったからといってずっとそのままであるとは限らない。それがこの世の理なのだろう。

 

 しかしそれは悲しいようでもある一方で、良い意味で変わっていくこともある。もちろん彼も…

 

「おお~ぜっけ~。」

 

 変わっている。

 去年までは1人でここに来ていたのだが、今年は恋人となった幼なじみと共に来たのだ。

 

「こんな良いところあったのならもっと早く連れてきてくれれば良かったのに~。」

「俺だって1人になりたい時はあるんだ。それに…」

「それに~?」

「いや、何でもない。」

 

 モカから目をそらし再び紅葉に目を向けた。

ひらりひらりと舞い散る赤い葉っぱはまさに秋の風物詩と言うべきだろう。

 近くのベンチに腰を下ろし、一息をついていた時、口の中に何かを入れられた。その拍子で隣をみるとお菓子のようなものが入った小袋を持っているモカがじーっと見ていた。

 

「……ところでお前何持ってんの?」

「ん~?紅葉クッキーってやつだよ~。さっきそこで売ってて気になったから買ってきちゃった~。」

 

 モカが持つ袋を見ると確かに『紅葉クッキー』という文字が書いてあり、彼女の奥に見える屋台ではそれっぽさそうなものを売っていた。

 

「成る程な。去年はあんなの無かったのに。」

「今年から始まったって感じ~?」

「おおよそな。もう一個もらって良いか?」

「どぞ~。」

 

 袋からもう一枚取り出すとモカも自分が食べる用にもう一枚取り出した。そして二人はほぼ同じタイミングで口にクッキーを入れた。サクサクとクッキーを食べる音が二人の間に流れるという不思議な時間を体感していた。

 

「どうですかな~?」

「……まあまあってところだな。」

「おお~同じ意見だ…。」

「というかリサさんのクッキーに舌が慣れたのかお菓子売り場のクッキーがどれも普通に感じてしまうんだよな…。」

「わかりみが深いですな~。」

 

 彼らの言うリサという少女は二人のバイト先のコンビニの先輩でもあり、Roseliaというバンドのベースも担当している。お菓子作り…というか彼女の作るクッキーはとても評判が良く、どんな人でも満足するような仕上がりになっているのだとか。

 

「俺もお菓子はたまに作るけどクッキーだけはあの人を越えられる気がしないな。」

「ま~リサさんは最強のお嫁さんになれる素質があるからね~。」

「だな。あの人と付き合った人は相当恵まれてるな。」

 

 因みにこの会話をしていた時、とあるお宅では銀髪ロングヘアーの少女と一緒にいるギャルっぽさそうな少女は思わずくしゃみをしてしまったらしい。

 

「それにしてもさ~どーして急にあたしを誘ったの~?」

 

 モカの口から出た疑問を聞いた遼は少しの間、近くの紅葉を眺めていた。そして何かを考え込むようにし、少ししたら口を開いた。

 

「……何でだろうな。俺にもわからん。」

「もしかしてただの気まぐれ~?」

「ま、そんなところだ。」

 

 彼の答えに納得がいかなかったのかモカは少しムスッとしていた。

 

「まあ理由があるとしたら……お前には俺が見ていた景色を知っておいて欲しかったのかもしれないのかもな。」

 

 モカの持つ小袋からクッキーを一つ取り再び口に入れて食べていた。そんな彼を見たモカは何を思ったのか遼の方に頭を乗せて寄り添うようにしていた。

 

「どうした?」

「いや~なんかこうしたくなっちゃって~。」

 

 顔が近いため表情は見えないが遼はなんとなく落ち着いたような雰囲気であるのは理解できた。

 

「なんかさ~こうして二人だけが覚えてる思い出の場所があるのって良いよね~。」

「確かにな。」

「ねーねー遼~」

 

 モカが呼び掛けたことにより遼は彼女の方を向く。

 

「これからもさ…二人の思い出いっぱい作っていこうね~。」

 

 にぱっと笑いながらそう言うモカを見た遼はなんだか心が温かくなったような気がした。季節は秋ということもあり周りの温度は少しずつ低下しているため、吹き付ける風が体を冷やしていたが、そんなことは全く気になっていなかった。

 遼は照れ隠しなのかモカの頭をくしゃくしゃと掻き撫で、一方のモカは「ん~」と少し抵抗しつつもどこか嬉しそうな表情を見せた。

 

「ね~、最近あたしの頭くしゃくしゃするの多くなってない~?」

「あー…すまん。つい癖で。」

「せっかく髪の毛纏めたのに~。」

「わかったわかった。これからはなるべくやらないようにするからさ。」

 

 そう言われたモカは意外にも「え?」と言いたそうな顔をした。

 

「……何その顔。」

「別に~。」

「……やって欲しいのか?」

「……さあ~?」

「いや、何で疑問形で返すんだよ。」

 

 と、こんな感じで恋人同士と言えば良いのか幼なじみ同士と言えば良いのかわからないような雰囲気を醸し出していた。

 その時、少しだけ拗ねたような表情をしていたモカを見て、遼は手元にあった自身のスマートフォンを取り素早くカメラ機能で彼女のその顔を写真に撮った。

 

「ね~今何撮ったの~?」

「いや、ちょっとそこの風景を…」

「怪し~。ちょっとそのスマホをこっちに渡してもらおうかな~?」

「断る。」

「え~モカちゃんも遼が撮った風景写真見たいな~。風景撮ってるなら勿論見ても良いよね~?」

「嫌だね。これは俺の最高の1枚なんだから。」

「あれ~?こんな可愛い彼女に隠し事かな~?なんと罪深い彼氏何だろうね~?」

 

 と……もし近くに人がいたら「家でやれ」と言いたくなるような2人のやり取り。結局このあとモカが彼のスマホを手にしたのか、それとも遼が自身のスマホを死守したのかはわからない。

 それでもこの展開も2人にとっては今しかない大切な思い出となるのは確かだった。

 

 

 

 

 

 

 尺が余ったのでちょっとしたおまけ 

 

 

 モカと紅葉狩りに行った後日、遼はいつものコンビニでアルバイトに励んでいた。

 

「ありがとうございましたー。」

 

 お客さんの対応を終え、お店から出ていくのを見送った後、一息つくように背伸びをしていた。

 

「お疲れー。今日も仕事熱心だねー。」

「お疲れ様です。今からですか?」

 

 彼のレジの隣に来たのは遼とモカの先輩(色んな意味で)である今井リサ。現時刻は朝10時だとういのに相変わらずテンションが高いなと心の中で遼は思っていた。

 

「遼は9時からだったっけ?」

「はい。何故かここ最近俺だけ早い出勤なんですよね。」

「あはは…。まあ…お疲れ様?」

 

 少し苛立っているのが口調からわかったのかリサは苦笑いしながら労いの言葉をかけた。

 

「そう言えば…この間モカとデートしたんだっけ?」

「……何故それを?」

「いや~ひまりが『皆、羽沢珈琲店で一緒になったけどモカと遼だけいなくて、モカに聞いたらデートしてたみたいなんです』って言ってたからね。」

「はぁ…。あいつは…」

 

 「ひまりのやつ…」とぼやいてる遼をリサは「まあまあ…」と落ち着かせていた。

 

「それにしても今回は遼から誘ったんだっけ?なんか珍しいね。」

「そうですか?」

「うん、いつもはモカが遼を引っ張ってて、遼はモカに振り回されている感じだからさ。」

 

 リサに言われて「そう言えば…」と遼はこれまでを思い返した。突然家にモカが押し掛けて、そのままモカに流されるままに一緒にいた感じだったと。だから端から見ても今回のようなケースは結構珍しいのかもしれない。

 

「……まあ、俺にもあいつに一緒にいて欲しくなる時はあるんですよ。」

「ふ~ん。それで~どんなことしたの?」

「………黙秘権を執行します。」

 

 そう言うとリサは「ええ~」と不満そうに言った。

 

「(まあ…こんなことモカの前ではそう言えないけどな。)」

「ね~。ちょっとくらい教えてよ~!」

「その前に仕事してくださいよ……」

 

 と、お客さんの来ない時間のレジで先輩と後輩の彼ららしいやり取りが行われていたとか。

 

 

 




お久しぶりです。
こっちは完結してるからもう更新されないと思った?
残念、気まぐれでこちらも更新していきます!
と、いうわけで今後もモカちゃんの可愛さをとにかく布教していきたいです。

良ければコメントや評価よろしくお願いします。

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