いつも通りの日常に夕焼けを   作:キズカナ

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どうもキズカナです!
今回はなんと……キズカナ、初コラボです!
コラボさせて頂くのは「日常の中にチョコより甘い香りを」を初めとするいろんな作品を書かれているぴぽさんです!
コラボということでこれまでとは少し違ったキズカナ作品となっておりますが楽しんでくださると光栄です!
それではどうぞ!




巡りあった2つの日常(コラボ回)

 

 ここはCiRCLE。

 世はまさに『大ガールズバンド時代』なるものを迎えており、多くの少女がここでバンドの活動に励んでいる。

 

「さて、そろそろ潤くんも上がる時間だね。」

「そうですね。じゃあその前に部屋の掃除して来ますね。」

 

 まりなの掛け声によって1人の青年が行動を開始する。その男の名は一宮潤。CiRCLEでバイトをしていて、とても真面目な青年である。因みにどこかで聞いた話だが、彼にはとても可愛らしい彼女が……おっと失礼、うっかり先まで読んでしまいそうになりました。

 

「あれ…?2番スタジオってAfterglowが使ってて……月島さん、Afterglowの皆さんって確か帰られた筈ですよね?」

 

 潤はその時、外の掃除をしていた為彼女らの接客はしていなかったが、確かに掃除をしていた際、Afterglowのメンバーが帰っているのを目撃してた。

 

「あ、そこはまだ彼が使っているんだ。」

「彼?」

「うん。Afterglowの6人目の子なんだけど…会ったこと無いかな?」

「いえ。というか6人目がいたこと事体初耳なんですが…。」

 

 彼は突然の事実に驚いていた。何しろAfterglowはガールズバンドであり5人。どこにも6人目がいるなんて話は聞いたことが無かったのだ。それも男であると言われてもにわかには信じがたいものだ。

 

「彼もそろそろ時間だしせっかくだから会ってきたら?潤くんと気があうかも知れないよ?」

「いや、でも僕バイト中なんですが…「じゃあ掃除も兼ねて行ってくれば良いじゃん!」…はい…。」

 

 潤はまりなに言われて2番スタジオに向かう。6人目のAfterglowと言われて少し気になるところはあったが、それがどんな人なのか情報が無いため少し不安になるところもあった。スタジオに着き、扉を開けると中からギターの音が聞こえてきた。

 アコースティックギターの音と思われる音色は優しく、力強く、それでいて軽やかなものだった。聞こえて来るのはAfterglowの曲『Scerlet Sky』だろう。彼女らの演奏が心を弾ませるような熱いものとするなら、彼の演奏はアコギの特徴を生かしたような、しなやかでありクールなもの…というべきだろうか。

 その演奏に潤は聴きいってしまった。6人目のAfterglowの演奏はAfterglowでありながらAfterglowでない、そんな感じがした。しかし、その演奏の中にも傍ら彼女たちの面影が見えた。彼女らの音楽の特徴、彼女たちらしさを残した上で彼らしさをそこに加えている。そんな感じがしたのだった。

 

「ふう…。とりあえずはこんな感じか?」

 

 演奏を終え、時計を見た遼は「もうこんな時間か。」と言いながら片付けを開始し始めた。そんな中で遼は潤がいたことに気づいた。

 

「あ、すみません。すぐに撤収しますので。」

「えっ?…あの、あなたがAfterglowの関係者ですか?」

「ん?何処かで会ったことありましたっけ?」

「いや、初めてですが…。」

「そうか…。あれ?じゃあなんで俺のことを?」

「実は月島さんが『Afterglowの6人目』がいると言ってたので気になって…。」

「なるほど…。じゃあもしかして君はモカ達のこと知ってるのか?」

「ええ。よくここを利用してくださっているので。」

「そっか。」

「それと多分僕とあなた同年代ですよね?」

「え?俺は16ですけど。」

「僕も同じですね。」

「そうなのか。じゃあそこまで畏まる必要もない…のか?じゃあ折角だしもうちょっと砕けるか?」

「いや…今は仕事中なのでお客様には丁寧に対応すべきかと…。」

「あ、そうなの?」

「すみません、仕事中以外なら砕けて話しますので…。」

「いやいや。俺も無理言って悪かったよ。」

 

 潤に言われて軽く遼は咳込んだ。

 

「それにしても僕結構ここでバイトしていたんですけど1度もあなたを見たことが無いんですが…。」

「奇遇だな。俺も同じことを考えていた。」

「うーん…。Afterglowの皆がカウンター来るときはいつも5人だったし…。」

「俺は立場上よく彼女達と来る時間がズレたりするからな。おそらく君がカウンターにいるタイミングと俺が来ているタイミングが微妙にズレていたんだろう。その為、お互いこれまで出会わなかったんだと思われるが。」

 

 遼が推測した答えに対して「そんなに偶然って重なるものなのかな…。」と潤は反応に困っていた。

 

「ともかく、こうして遭遇出来たんだしいいんじゃないか?」

「そうですね。」

 

 そう言いながら潤は遼が片付けている途中だった年期の入ったギターを見た。

 

「そのギターって…。」

「これか?俺のじいちゃんから譲り受けたものだ。時々こうして使っているんだ。」

「そう言えばさっきの演奏凄かったです。」

「聴かれていたのか。そんなにたいしたものじゃ無いんだけどな。」

「なんか…Afterglowの面影を残しながら自分自身を取り入れてるって雰囲気でしたけど…あってるんですかね?」

「おお。君、中々やるな。俺が気を付けていることを見抜くとは。」

 

 そこから2人の会話は盛り上がり、10分ほど話していた。

 だが、彼らは重要なことを見落としていた。普段ならこんなことは気づくことが出来る彼らなのだが、お互いの話が予想以上に盛り上がったせいか些細なことに気づかなかった。

 えっ?何を見落としていたのかって?それは…。

 

「ふーたーりーとーもー?」

 

 突如スタジオの扉を恐ろしいほどの笑顔で開けてきたまりなに2人は驚いた。

 

「潤くん、スタジオの掃除いつまでかかっているのかな~?それと遼くんはこれ以上ここに居座るなら延長料金払ってもらうよ~?2人とも今の時間わかってる?」

「「・・・・・すみません。」」

 

 2人が時計を見ると既に遼の使用終了時刻、そして潤のバイト上がり時刻を過ぎていた。その為、まりなもご立腹なのか顔は笑っていたものの、声と纏っているオーラから普段の優しい姿からは想像出来ない何かを発していた。

 

「と、いうわけで2人とも早急に撤収お願いね?あ、ここの掃除はペナルティとして2人でやって貰えるかな?」

「「……はい。」」

 

 彼女に言われるまま2人は協力して掃除を行った。そしてその際に気付いたことだが…

 

まりなさん(この人)は絶対に怒らせてはならない。』

 

 それを痛いほど実感したのだった。

 

 

 

 ◆ ◆ ◆ ◆ ◆

 

 

 

 後日、遼は羽沢珈琲店でアイスカフェオレを飲んでいた。はいそこ、「こいついっつもこのシーン使うな」とか言うんじゃないよ。大人の事情につっこむやつは馬に蹴られるぞ。

 

「……なんだか気が合いそうな人だったな。」

 

 遼は以前あった青年『一宮潤』のことを思い出していた。

 遼から見た潤の印象はとても真面目で不器用な感じだった。なんとなくではあるが自分と似たようなところがあると感じていた。

 

「遼くん、今日もモカちゃんと待ち合わせ?」

 

 この店の看板娘でもある羽沢つぐみが遼に声をかけてきた。因みに彼女の言う『モカちゃん』というのは遼の彼女である『青葉モカ』という少女である。まあこの作品をいつも読んでくれている読書様はわかってくれている筈(メタい)

 

「いや、別に待ち合わせとかはしてないんだ。」

「そうなの?」

「ところで…つぐみは一宮潤という人物を知っているか?」

「一宮さん?知ってるけどどうしたの?」

「いや…この間ちょっとな…。」

 

 そんなことを話しているとお店の扉が開き1人の青年が入店した。

 

「いらっしゃいませ……一宮さん!」

 

 つぐみがその人物の名を呼び遼もその方向に視線を向ける。

 

「あ、羽沢さん。すみません…お邪魔するね?」

「いえいえ…それにしても本当久しぶりですね。」

「うん、確か前に来たのは夏希ちゃんと待ち合わせした時だったかな?」

「そうでしたっけ?」

「うん。今日はちょっと暑いから…帰る前に少し休憩しようかと思って。」

「全然大丈夫ですよ!とりあえずお冷持ってきますね?」

 

 つぐみはそう言って奥にお冷を取りに行った。

 

「久しぶりだな。」

「えっと…常乃さんでしたっけ?」

「あー……俺たち確か同年代だったよな?だったら『さん』とか敬語無しでいいんだけど…」

「そう何ですか?」

「ああ。なんか同じ歳くらいの人に敬語とか使われると落ち着かなくてな…。」

「じゃあ…遼君でいいのかな?」

「ああ…なんか悪いな。」

 

 そのまま「相席いいかな?」と潤は遼に聞き、遼もそれを承諾した。

 

「・・・・・・・・」

「・・・・・・・・」

 

 と、同じテーブルに設置された椅子に座ったことのは良いもののいきなり過ぎた為か全く話題がなく、2人の間にだんまりが続いていた。

 

「「あーあのさ?」」

「あっ。」

「すまん、先にどうぞ。」

「いやいやそちらこそ…。」

「では遠慮なく…。夏希ちゃんって誰?ひょっとして彼女?」

「違います…じゃなかった違うよ。え~と、説明が難しいんだけど…」

 

 潤は「話せば長くなるよ?」とだけ呟き、遼はなにかを感じながらも彼の言葉に頷いた。それを見た潤はゆっくりと過去の出来事……夏希という少女、そしてその少女の姉…秋帆のことを…。

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

 

 それから少しの時が経ち、潤は一件に関する出来事を一通り話終えた。それを聞いた遼は少し難しい表情をしていた。

 

「そうか…。……悪かったな、嫌なことを思い出させたみたいで。」

「いや、何でか遼君には話しても大丈夫だと思ったんだ。理由はわからないけど。」

 

「そっか…」と言い、再びアイスカフェオレを啜った。

 

「はい潤くん、アイスコーヒーお待ちどうさま!遼くんも、アップルパイです!」

 

 そこにつぐみが2人が注文していた品を運んできた。商品を受けとるとそれぞれが注文したものに手をつけていた。

 

「ん?そう言えばさっきの話し聞いてて思ったんだけど…潤は今他に彼女がいるってことか?」

「うん、そうなるかな?」

 

 そう言いながら再び潤はアイスコーヒーを啜った。

 

「その子とは今も仲良いのか?」

「うん。」

「それでなんだけど…遼君はいるの?」

「……?なにがだ?」

「いや…彼女とか…。」

 

 そう聞くと遼は「そういうことか…。」と納得したように顔を上げた。

 

「まあ、いるのはいるけど……対して面白い話でもないぞ?」

「うん、全然大丈夫だよ。」

「わかった。」

 

 そして今度は遼が語り始めた。Afterglowと自身のこと、そしてその中でも最も自分を気にかけ、そばにいてくれた1人の少女について。

 

 

「…………というのが大まかなところだな。」

「なるほどね。」

 

 遼の話を聞いた潤はアイスコーヒーを一口啜っていた。

 

「やっぱり遼君はAfterglowが大切なんだね。」

「まあな。あいつらと出会って無かったら多分俺は今ここにはいない。あいつらに会えたからこそここまで折れずにやって来れたと言えるほどだからな。」

「成る程ね。」

 

 潤は納得したように頷いていたが、遼が語っていた中で1つ気になるところがあった。それは…。

 

「そう言えば遼君が言ってたモカって……青葉さんのこと?」

「ん?そうだけど?」

「………マジで?」

 

 潤はどういうわけか驚いたような表情をしていたが、遼にはその理由がわからなかった。

 

「どうした?」

「いや…遼君と青葉さんって結構雰囲気正反対だったから少し意外だなって…。」

「あー…。それよく言われるわ。」

 

 苦笑いをしながら遼は返答した。

 

「そう言えばさっきはハッキリとは言ってなかったが潤の彼女って誰なんだ?……あ、言いにくいことを聞いたのならすまん。」

「いや、大丈夫だよ。別に隠してる訳じゃないしね。……ポピパの子達はしってるよね?」

「ああ。交流も意外とあるからな。」

「実はそのポピパのベース担当の子なんだけどさ」

「牛込さんか?」

「うん、僕の彼女……りみなんだ。」

 

 そう言われて遼は「ああー…。」と納得していた。

 

「なんか最近牛込さんの雰囲気がなんか違うな~って感じはしてたんだがまさかそういうことだったとは。」

「あはは…最近よく言われてるみたいなんだ。」

 

 話をしながら2人は再びドリンクを口にした。アイスコーヒーを飲み干した潤は窓の外を見ながら「秋帆にも色々迷惑かけちゃったな…。」と呟いていた。

 

「…え?」

「いや、実はりみと付き合う前の出来事でね、夢だったのかどうかはわからないけど…秋帆とあったんだ。その時に色々と怒られたんだ。

 でも……もし夢だとしてもあの時秋帆に会えて良かったと思ってる。秋帆にあんなに言われなかったら…僕はまだ決心がついてなかったかもしれないからね。」

 

 その時の潤はまるで凄く昔のことを話しているみたいだった。

 

「それに…秋帆と約束したんだ。りみを大切にするって。」

 

 そう言いながら窓から空を見上げる。そこに彼女がいるという訳ではないがきっと彼女も今の彼らを見守っている。そう潤は思っていた。

 

「そうか…。君も前に進み続けてるって訳か。」

「うん。」

「まあ俺もモカと……いや、Afterglowの皆と色々とぶつかることはあった。その時に蘭に言われたんだよ、俺たちは6人でAfterglowなんだって。それまでさ、俺はあいつらの為ならって自分を疎かにしてたんだけどさ、俺があいつらにとってどれだけ重要な存在なのか…改めて思い知らされたことがあった。……だから俺もあいつらには感謝してもしきれないんだよな。」

「……いい仲間だね。」

「ああ、俺の自慢の仲間だ。」

 

 男同士の思い出話を繰り広げている中で突然お互いのスマホの着信音が鳴った。それにより2人は一時話を中断してそれぞれの電話に出た。

 

「もしもし?」

『遼~?今どこ~?』

「今?つぐみのところにいるけど…。どうしたよ。」

『それがね~きんきゅー事態なんだよ~。』

「何?」

『5時からやまぶきベーカリーでタイムセールやるんだってさ~。』

「……マジで?」

『マジ~。でも今モカちゃんバイトで行けないんだよ~。』

「……はあ、お前が何を言いたいのか大体わかったよ。」

『ごめんね~。』

「わかったわかった。とりあえずお前はバイトに集中してろ。」

 

 そうして遼がスマホを閉じると潤の方も通話が終わったのかスマホをポケットにしまっていた。

 

「すまん、急用が出来てしまった。」

「実は…僕もなんだ…。」

「……ははは。奇遇だな。」

「本当だね…。」

「全く…モカは何から何まで急なんだよなぁ…。」

「え?今の電話って青葉さんからだったの?」

「そうだけど?」

「実は…僕もりみからかかってきて…」

「マジかよ…。ここまで偶然が重なるとと裏で打ち合わせされてないかと疑ってしまうな…。」

「あはは…。」

 

 苦笑いをしながらコップに残ったドリンクをそれぞれ飲み干し、その場を立つ。そして2人は順番に会計を済ませて外に出た。

 

「そうだ。もし差し支えなければ連絡先を交換しないか?また君とは話をしてみたいからな。」

「いいよ。僕も遼君と話したいことはあるからね。」

 

 連絡先を交換し、2人のスマホにはお互いのアドレスと電話番号、そして○INEのアカウントが登録された。

 

「もしかしたらまたCiRCLEで会えるかな?」

「会えるだろ。その時はAfterglow共々よろしく頼む。」

「勿論。今後ともよろしくお願いします!」

 

 「こちらこそ。」と言い2人は握手をする。その後、別れを惜しみつつもまた会えるという期待を胸にそれぞれ大切な人の元に向かった。

 今ここで2つの日常は交ざりあった。彼らの物語はこれからもそれぞれ紡がれてゆく。

 チョコより甘い香りと共にいつも通りの夕焼けが照らす2つの日常。その日々が再び交差する日はきっとまたやって来るでしょう…。

 

 

 

 





いかがでしたでしょうか?
今回、自分の作品以外のオリキャラを使用させていただいたのですが、色々と苦労したと共にいつもと違うキャラを書けて楽しかったです!
ぴぽさんの方ではこの話とは違うオリジナルストーリーが繰り広げれてます!とても面白いので是非読んでください!
そして、ぴぽさんの作品はどれも面白くて続きが気になるものばかりなので私のオススメです!皆も読もう!(隙あらば宣伝)

ぴぽさん、この度は貴重な機会をくださりありがとうございました!

ぴぽさんの作者ページ↓
https://syosetu.org/?mode=user&uid=252908



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