「待てコラアアアアア!!」
「ひいいいい!何なんだコイツはああああ!!」
ここで問題だ。俺は今一体何をしているだろうか。
答えは『盗んだ(俺の)自転車で走りだした奴がいるためそいつを追っている』です。
なぜこんなことになっているのか。それは5分ほど遡る。
俺は自転車で隣町のCDショップまで来ていた。いつもなら皆とよく行くショッピングモールの中の店に行くのだが今回に限り目的のCDが無かったのでわざわざ自転車を使い隣町に行くことにした。
そこで目的物を見つけて無事購入したのはいいのだが事件はここから起きた。
「お客さん!お釣忘れてますよ!」
中から出てきた店員さんに呼び止められて俺は自転車から降り店員さんからお金を受け取った。
…だがその一瞬の隙に…。
「はあ…はあ…。これで…」
俺が振り向くと何者かが俺の自転車を使い突然走り去って行った…。このままでは俺は早めに帰る為の手段が無くなってしまうため、奴を追いかけて自転車を取り戻すことに…。
まあ、ここまでか事件の回想で今は絶賛…
「俺の自転車返せえええええ!!」
全力疾走で犯人を追跡中である。こうして追いかけてるのは良いのだがやはり自転車と走りでは速度に差が出てしまう。本当に自分がこの状況になると銭形のとっつあんの気分がわかってくる(謎)。
なので俺は別の道を使い逃走犯を回り込んで捕まえることにした。
◆ ◆ ◆
~三人称視点~
「何なんだあいつは…。とにかくもう見えないし後はあっちから逃げ切れば…。」
犯人は遼の自転車を奪い逃走していたが意外としつこく追いかけてくる遼に驚きなんとか撒いていた。そして今後ろを見ると誰もいなかったので振り切ったと思いこんでいた。しかし…
「動くなああああ!!」
「おわああああああ!?」
突如道路脇から飛び出して来た遼にびっくりした自転車泥棒は急ブレーキをかけるが間に合わずにそのまま激突。右の膝にタイヤがクリーンヒットしもちろん遼は痛い思いをした。だがそのお陰で泥棒は自転車から倒れたのでなんとか取り戻すことに成功した。
「良かった…。自転車は無事だ。」
「おい!怪我人より自転車の心配してんじゃねえ!」
「加害者の心配をする被害者がどこにいる。それに怪我人である前にお前は犯罪者だということを自覚しろ。後この自転車、意外と高かったんだぞ。」
「知るかよ!ちょっと自転車使っただけだろ!」
「世間ではそれを犯罪というんだ。」
「大体お前が飛び出したせいで俺のズボン擦れただろ!これ高かったんだぞ!どうしてくれる!」
「お前の場合は自業自得だろ。」
「なんだとてめえ!」
泥棒は遼に殴りかかるがそれを難なく交わし、再び飛んできた泥棒の拳を今度は腕ごとつかんだ。そしてそのまま勢いを利用して一本背負いという柔道で使われる技で地面に叩きつけた。
「こちとら小中と柔道やってたんだ。そう簡単に負けるわけねえよ。まあとりあえず…お仕置きの時間だ。」
遼はかなり低い声で泥棒に迫っていった。その時の泥棒はどこか怯えていたようなそうで無かったような。
◆ ◆ ◆
それからかれこれ3分、一人の少女は息を切らしなから走っていた。じつはこの少女、つい先ほど何者かに鞄を引ったくられたのだ。その後犯人は走って逃走し途中で誰かの自転車を盗み逃走を続けてるとのこと。少女は走りにくいヒールの靴であり、犯人に逃げられてしまったが鞄の中には財布やスケジュール票等の貴重品が入っていた為このままにしておくわけにもいかなかった。
だがそもそも男性と女性では体力などに差があるためここまで来ては完全に見失った可能性もある。後は警察に連絡して任せるしかないかと思っていたその時、何かの声が聞こえそれが気になった。声の聞こえた方に向かうとそこには。
「いてててててて!おい離せ!離せって!」
「うるせえ黙ってろ!とりあえずどうにかして警察に連絡しないと…。」
そこには間接技をきめている一人の青年と必死でその間接技から逃れようとしている黒い服の男がいた。しかもその痛がってる男は自分から鞄をひったくっていった男だった。
一体何が…と考えていたらその二人の近くに少女の鞄が転がっていた。そして中身を確認して何もとられていないと判断したようだ。
「あ、すみませんそこの人!こいつ自転車泥棒なんです!とりあえず警察に連絡してくれませんか!?」
「おいふざけんな離せ!」
「お前はとにかく黙ってろ!」
(一体何が起こってたのかしら?)
その後、少女の連絡により駆けつけた警察によって男は窃盗の容疑で現行犯逮捕された。遼はその後警察の事情聴取を受け、数分後に解放された。少女も場所は違うがそのような感じだったらしい。
その後、遼は疲れきった為真っ先に家に帰ったので少女と出会うことはなかった…。
はずだった。
◆ ◆ ◆
次の日
遼は羽沢珈琲店に来て偶然居合わせたモカと巴と会話していた。
「と、言うことが昨日あったんだけど。」
「本当お前怒らせると何しだすかわからないよな…。」
「ま~遼の趣味が役にたったんだしいいんじゃない~?」
そう。彼の趣味の1つに「街探索」と言うものがありこれは言葉の通りなんの目的もなく徒歩や自転車で色々な道を行き来するというものだ。昔から好奇心が強かった遼ならではの趣味と言えるだろう。
「でもまさか自転車泥棒がひったくりもやってたなんてな-。」
「とりあえず俺の活躍に免じて明後日の物理の宿題無しにしてくれないかな。」
「いや、それは無理だろ。」
「だろうな。まあ、一応やってるけど。」
「じゃあいいじゃ~ん。」
「ただし正解してるという保証は無いけどな。」
カランカラン…
「いらっしゃいませ!」
新しいお客さんをつぐみが出迎える。そして入っていたのは水色の髪をサイドテールにした小動物のような少女とクリーム色の髪のモデルのような大人びた少女だった。
「………ん?」
「遼~?どうしたの~?」
「いや、なんでもない…。」
遼はそのクリーム色の少女に見覚えがあるような気がしたのだ。
「千聖ちゃんありがとう。ショッピングモールってやっぱり広いから…。」
「いいのよ。でも花音…ショッピングモールにつく前にいなくなられるのはちょっと大変だったわ。」
「ふえええ…。」
「とりあえず座らな…」
その時、そのクリーム色の少女と遼の目が会いその子がこちらに来た。
「すみません、あなたはもしかして昨日の…」
「えっと…何処かでお会いしましたっけ?」
「昨日警察に連絡を入れた人…と言えばわかるかしら?」
「……あ、昨日の!」
「遼~?千聖さんと知り合い~?」
「ああ、さっき警察に通報してくれた通りすがりの人がいたって言っただろ?それがこの人。」
「通りすがりというよりも私もあの逃走犯を追いかけてあそこまで来たのよ。私も鞄を盗まれちゃったから。」
「えっと…じゃあもしかして警察の人が言ってたひったくりの被害者って…。」
「なるほど~。千聖さんの目的と遼の目的は共通してたって訳か~。」
「ってちょっと待て。モカこそ知り合いなのか?」
「知り合いも何も千聖さん、パスパレのメンバーだよ~?」
「パスパレって……あ、イヴのいるところか。」
「あら?イヴちゃんを知ってるの?」
「いや、知ってるも何もここで良く会いますし。」
「そうだったの?」
「それで…どうかされたんですか?」
「いえ、昨日のことについてお礼を言っておきたくて。」
「お礼?」
「ええ。私の鞄が戻ってきたのはあなたのお陰でもあるからね。」
「といってもこっちも自転車盗まれて追いかけたから結果論みたいなものなんですけどね…。」
「それでもあなたがいなかったら戻って来なかった可能性もあるわ。本当にありがとう。」
「あ、いえ。」
「ところで突然なんだけど…」
「あなた、明日私と付き合って貰っていいかしら?」
「はい?」