幻の原石ガチャを求めて 作:実質無課金
朝起きると変な装置につながれていて呼吸し辛い。
点滴らしきものも何本か打たれていた。
赤い液体のものは輸血か?
手足から流血しているのでそれを補っているのだろう。
あれ、なぜ流血している?
手足を動かそうとしたが、動かない。
時計を見れないけど体感時間的には6時、朝ガチャの時間だ。
ナースコールは手が動かないので無理か、まあいいや。
俺は能力ガチャを発動させた。
今回は当たりだ。
胴体は外れたけど。
研究所で初めて能力を発動した時の幻覚と幻聴と頭痛がする。あの時と同じ様に、頭への衝撃で気絶した。
「私が来たからには、どうか安心なさい
全ての命を救いましょう
全ての命を奪ってでも――私は必ずそうします」
目を覚ますと変な装置も点滴も無くなっていた。
全身の痛みも無い。
あの状態から数時間でここまで回復させられるのか。
医者ってすごい。
朝、手が動かなかったせいで出来なかったゲームのデイリーミッションでもこなすか。
ゲームで遊んでいると蛙顔の医者が病室に入ってくる。
「君の超能力はなんだね」
「ガチャ」
「はぁ……僕は自分のことを多少腕の立つ医者だと思っていたのだけど、君の怪我を治せなかった。それなのにあっさりと君は回復した。少し自信を失うよ。君は一体どうやって回復したんだい?」
「あれ?治してくれてないの?」
「少なくとも6時まで君は延命措置以外、手のうちようのない状態だったよ。あれほど、無力感を感じたことは無いね。回復したのは喜ばしいのだけど、原因が知りたい。何か心当たりはないかね」
「あ、そういえば6時に回したガチャで当たりが出た」
「当たり?君の超能力にそんなものがあるのかね」
「うん。そういえば、昔の俺はいつも幻覚と幻聴が聞こえていたのだけど、一度研究所で当たりが出て以来、日常生活で幻覚と幻聴を聞くことは無くなっていた。そういう効果だったのか」
「一人で納得しないでくれ。当たりというのは何だね」
「能力ガチャをした時、いつも以上に幻覚と幻聴と頭痛が激しかった時を当たりと称している。といっても今まで研究所とここでの2回しか当たりが出てないのだけど」
「君の超能力は、ごく稀に医者でも治すことが出来ないような難病を治せるという解釈をすれば良いのかね」
「多分」
「それだと君の能力は治癒系になる。どうして君が能力を発動する度に死にかけているのか分からないね」
「詳しいことは知らないから研究者に訊いて」
「研究者はどこに?」
「そういえば逃げられたんだった」
「君には保護者に当たる人が居ないということかね」
「うん。今から探しに行く」
「こちらから紹介しようか?」
「能力開発出来る研究者が良いから要らない」
とりあえずデイリーミッションはある程度終わらしたので俺は立ち上がった。体が軽くて驚く。
いつもの寝不足と栄養失調と頭痛のコンボが無いとこんなにも快適なのか。
でも、持久力がないせいかすぐ疲れる。
金はガチャ以外に使いたくないけど、後援者探しの方が優先だし、仕方ないか。
使った以上の金を後援者にたかればいい。
俺は医者に言った。
「車椅子売ってくれない?
それと花火と拡声器もあるなら売って」
昼ガチャして、病院食をとった後、電動車椅子と花火と拡声器を購入した。
手持ちがないからツケだ。有り難い。
表通りを移動している間は、道行く人の多くが避けて通ってくれる。
手で押してくれる人も居た。
電気の節約になるので有り難い。
でも、頭を撫でてくるのは迷惑。
路地裏に入るとゴミがたくさん湧いてくる。
民度が低いのであまりこういう路地裏には近付きたくないけど、後援者探しのためだから仕方ない。
邪魔だから人払いをする。
「自爆テロのために移動しています。
巻き込まれたくなければ逃げてください」
大体の人はこうやって声を掛けた後、お手製の腹巻きを見せると逃げてくれる。
どうしても逃げない人も、花火に火をつけると逃げていく。
表情は笑顔で固定するのがポイントだ。
コネの無い俺にとって後援者探しは難しい。
どこに後援者となってくれる人がいるのか分からないからだ。
だから、宗教団体や乳製品販売員と同じ様に各建物を訪問することになる。
後ろ暗い所のある団体は、どんな理由であれ騒がれたくないだろうから俺と接触してくるはずだ。
ほら、また人が寄ってきた。
だるい。失敗した。
俺は公園でぐたっとしていた。
声をかけてきた連中が揃いも揃って年齢的に非合法な人を雇った風俗関係だったからだ。
確かに騒がれたくない後ろ暗い所だよ。
でも、俺が求めている後ろ暗いとは違うんだよ。
せめて、カジノとか闇金にしろよ。
いや、ある意味それらの場所より闇が深いけど……
場所を変えて続けるか、次の作戦を考えるか。
いや、夕ガチャの時間だから、病室に戻るか。
ついでに病院食食べよう。
夕ガチャした後は、夜の散歩に出掛けた。
夜こそ一番暗くて非合法な場所が活動する時間だ。
つまり、俺の求めているような非合法な能力開発を行っている研究所が活発に活動しているはず。
スカウト来ないかな。
まあ、就活1日目だし、流石に来ないかと思っていたらオバサンみたいな人が寄ってきた。
「おや、あんた、迷子かい?」
「違う」
「なら、バイト探しているのかい?」
「まあ、そうだよ。報酬良いやつ」
「なら、ちょうど良いのがある。来なさい」
車椅子を押されて無理矢理連れていかれる。
これは、当たりか?
このオバサン、研究員には見えないし、事務員か営業担当なのかな?
そんなことを考えているとやけに電飾の多い派手な建物に着いた。
あれ?思ってたのと違う。
こういう研究所もあるのかな?
目立つことであえて世間の目を逸らすみたいな?
世の中広いなぁ。
「今日は何時まで入れるかい?」
「時間?24時には帰らないといけない」
「おや、良い設定だね。それなら、この服と靴ね。あそこが更衣室。手伝いはいるかい?」
「要らない。着替えないと仕事が出来ない?」
「いくらなんでもその服は流石に駄目だね」
「分かった」
潜入みたいな仕事なのかな。
渡された袋を持って更衣室に入る。
袋の中身を見ると動き辛そうな水色の服と足が痛くなりそうな白い靴とカツラが入っていた。
こんなものまで支給されるのか。
結構本格的。
とりあえず服を着て、靴を履き、カツラを被る。
車椅子に乗って更衣室を出るとオバサンが寄ってきた。
「予想以上に似合っているね。あんた、稼ぎたいんだっけ?」
「うん」
「なら、そこでちょっと飾り付けようか」
粉やクリームを塗りつけたり、服や車椅子に小道具を飾り付けた。
うん?なんで?
「はい、完成。うんうん、完璧だね。後は接客してもらうよ」
「接客?情報を聞き出すとかではなく?」
「過度な暴力さえしなければ好きにしな。ほら、着いたよ」
「えっ」
エレベーターの扉が開いた。
長居したく無い場所だ。
小さい子供達が接客しているのはいいけど、客の顔が緩みまくっている。
オバサンが車椅子を部屋に押し込んで大声を出した。
「この子、新人のエラちゃん。見ての通りちょっと足が悪いようだからそこに配慮してやって」
思ってたのと違う。
これが学園都市の暗部か……
24時、夜ガチャの時間だ。
俺が求めているのは、非合法な能力開発を行っている研究所であって、非合法な営業と性癖開発を行っている店ではない。
時給は良かったし、客が緩みまくっているお陰で収穫も有った。
原石ガチャを知らないか訊いたら、君が原石だと言われたから、少なくとも原石の見分け方を知っているんだろう。それも気になる。
しかし、能力開発が出来ない以上、また来てねと言われたが、わざわざ行く気は無い。
明日は場所を変えよう。
今回のガチャも外れか。
今日の昼以降のガチャは、指が何本か外れるだけだった。平和だな。