幻の原石ガチャを求めて 作:実質無課金
目が覚めた……気がする。
何も見えない。
指一本動かない。
体の中で何かが砕ける音だけが聞こえる。
あれ?
まだ、能力ガチャを回してないはずなのに何故か能力が発動し続けている。
一体何が起きている?
あの薬を飲み続けたのが悪かったのか?
何か雑多な声のようなものが聞こえ始めた気がする。
体から何かが砕けて溶けて無くなっていく感覚がある。
意識が混濁していく。
「さあ、神をも嘲る喜劇の幕開けです」
「解体の時間だよ」
「あまり美味しそうな方ではありませんね……」
「こ、ろ、す!」
「これより、強奪略奪の時間。即ち、子供は寝る時間ですなぁ!」
目が覚めた。
何となくスッキリした気分だ。
体から何かが無くなった気がする。
カレンダーを見ると1週間以上経過していた。
何が起きたのだろう?
6時なので朝の能力ガチャをしようとするが、出来ない。
どういうことだ?
1週間以上もログイン出来てないし、ゲームするか、と思ったが、ログインやデイリーミッションはこなされていたようだ。
すべてのゲームのゲーム内通貨やアイテムやガチャ限定のキャラは増えて、スタミナ的なものは減っている状態……
ん?ガチャ限定のキャラ?
しかも、最大まで拡張しているボックス一杯に?
バグか?
ほかのゲームも見たが同様の現象が見られた。
ゲームではなく、端末の方に異常があるのか?
今まで、知らない内にスタミナが減って、ゲーム内通貨やアイテムが増えていたことはあったが、ガチャ限定のキャラが増えていたことはない。
無意識にガチャを回していたのか?
いや、俺がガチャに関することを覚えていないはずがない。
寝ながら引いても覚えている自信がある。
ということは、誰かが勝手にガチャを回したのか?
金の出所は?
嫌な予感がして自分の口座を確認する。
そういえば、今日は給付金の支給日だったな。
やはり、口座の金が無くなっていて、ゲームの課金履歴に見覚えの無いものが増えている。
ふざけるな!
ガチャは自分で回すことに意味がある。
勝手にガチャ限定のキャラが増えていても何も嬉しくないから、勝手に増えていた分は消していく。
消しながら決意する。
こんなふざけたことをした奴め。
絶対に許さない!
必ず犯人を突き止めてやる!
しかし、一週間以上寝ていたせいか車椅子が無いと移動すら出来ない。
それに犯人の心当たりもない。
デイリーミッションをこなした後、ダラダラしていると蛙顔の医者が入ってきた。
少し怒っている?
「気分はどうかね」
「スッキリしすぎて寂しい気もする」
「それは良かったね。そうだ、能力開発を行う研究所を紹介するよ。また、こんなことがあってはいけないからね」
「うん。個人では無理」
「こんなことになるのなら、初めから強制しておけば良かったと後悔しているよ」
「俺に何が起きたの?」
「能力の暴走だよ。ドラッグによる中毒症状も起きていた。そのせいで君の回復も遅れた。中毒による症状もまだ完治はしていない。いいかい、もう二度と怪しい薬に手を出してはダメだよ」
「分かった」
多分、金がもらえるならやるけど。
「それと能力の再検査も受けるように。後遺症が残っていたらいけないからね」
「うん。そういえば、能力ガチャが出来なくなっていたけど何か知らない?」
「心身が乱れると能力が上手く出ないこともあるよ。でも能力が無くなるわけではなく、時間を開けて落ち着いたら再び使えるようになる。だから仮に再検査で良くない結果が起きても気落ちせず、気長に待つといいよ」
「なるほど」
良く分からないが、どうやらそういうことらしい。
そして、新しい車椅子を購入した。
以前よりも頑丈らしい。
ツケで良いのは有り難い。
それどころか無一文だと言うと、お小遣いまでもらえた。
貰ったお小遣いでは魔法のカードすら買えない。
暇なので散歩していると動物園の生き残りに出くわした。
そして、俺に近況報告してきた。
なんとか暮らしているらしい。
良かったね。
だが、1週間ほど前から惨殺死体が増えて怖いらしい。
路地裏ならいつものことだろうと言ったが、ここ最近急増しているとのことだ。
物騒だなあ。
さらに、いつの間にか電子マネーが減っている現象が頻発していて騒ぎになっているらしい。
俺もそれの被害にあった。
許せないよな!
犯人を見つけたら殴ってやる。
ジュースでも奢ろうかと言われたが、拒否した。
もっと出世してから良いものを奢れ。
魔法のカードとか魔法のカードとか魔法のカードとか。
数日後、再検査の用意が整ったという連絡が入った。
研究所の周りの砂利道を通って研究所に入る。
砂利は防犯用に敷くと聞いたことがあるが、車椅子に砂利道はガタガタして辛いのでやめてほしい。
研究所内で検査の際にいつも聴かされる注意事項を聴いた。
そして、再検査を行った。
再検査では、まず最初に、今まで受けていた試験項目を受けたが、まったく能力が発動しなかった。
かつての能力の片鱗すら無かった。
今まで出来ていた能力ガチャは何だったんだ?
能力開発を受けてレベル0(無能力者)ではなく、本当の意味での無能力だとは考え辛いと研究員は言った。
そして、学園都市に来て最初に行う、能力系統が分からない時用の検査を受けることになった。
それでも何も分からなかった。
そこで、薬こそ使わなかったものの、擬似的に能力の暴走状態を再現することになった。
結果、その場で目に見える変化は何も起きなかった。
おかしいと研究員は首を傾げていたため、後日再々検査を行うことになった。
帰る前にゲームのスタミナを消費しようかとアプリを開いた時、事件が発覚した。
俺のお小遣いが無くなり、課金履歴と引いた覚えのないゲームのガチャ限定キャラが増えていた。
ボックスが一杯を越えて、メールの上限まで貯まっている。
キャラ整理にどれだけ時間がかかることか分かったものではない。
ここまでくると嫌がらせの領域だ。
それに、魔法のカード1枚すら買えない端金でどうやったらここまでガチャを回せるのだろう?
それを研究員に報告すると、研究員が飛び付いてきた。
端末を取り上げられ、代機を借りることになった。
研究員の長話に付き合わされて帰りの時間は遅くなってしまったが、帰り道はスムーズに帰れた。
翌日、俺に2通のメールが届いた。
差出人不明のものと研究員からのものだ。
先に届いていた差出人不明の方から見ると、金融機関と第7位に近付くなとだけ書かれていた。
意味が分からない。
第7位はともかく、銀行に行かずにどう生活すれば良いんだよ。
もう一度読み直そうと手元の端末に目を落としたが、不思議なことにそのメールは消えていた。
消えたのなら問題ないな。
「明日は特に用も無いけど銀行に行こう」
その時、新しいメールを受信したので内容を確認する。
後ろを見ろ?
振り向くと請求書と書かれた紙切れが落ちていた。
……俺は何も見なかった。
次に研究員のメールを見た。
無駄に長文だったので要約すると
・通常状態の能力はいまだに不明
・現実、仮想問わず、小さな石を砕いたり溶かしたり出来る可能性がある
・研究員どころか研究所の口座も何故か無くなったので、研究を取り止めざるをえなくなったことが残念
最後の情報は要らない。
どうせ研究に金を掛けすぎたのだろう。
熱心な研究者ほどそういう傾向がある。
メールによると、学園都市は俺の暴走状態のレベルと能力の名称を決定したようだ。
レベル2 砕石妖精
まずい、レベルが下がると給付金も下がる。
能力名を見た俺は、早速蛙顔の医者に会って、尿結石などを砕くアルバイトをさせてくれないか提案し、人体実験はダメだよと却下された。
チクショウ、金稼ぎとレベリングが同時に出来ると思ったのに。
仕方がない。
夜逃げの動画でも見て来るべき日に備えようか。
自己破産 最善 方法と検索しているとまた差出人不明のメールが来ていた。
明日迎えにくるらしい。
いきなり差し押さえか。
夜逃げしかないのか?
いや、良く請求書を読んでみると書いてあることがおかしい。
複数の金融機関にハッキングして、電子マネーを抜くような芸当をレベル2ごときに出来るわけがない。
事実無根だ。
誰がこんなイタズラをしたのかは知らないが、逆に不法侵入や名誉毀損で訴えて、示談に持ち込み、ガチャ用の資金をむしりとってやる。
大義は俺にある。
負けるわけがない。
だから、俺にこんなイタズラをしてきたバカに告げる。
法廷で会おう!