幻の原石ガチャを求めて 作:実質無課金
一体何が起きたのか理解出来なかった。
目が覚めたら裁判所にいた。
そして、まったく心当たりの無い罪状を読み上げられ、一言も発する間もなく、死刑判決が下った。
冤罪なのに……
誰かに嵌められたんだ。
しかし、死刑執行は3日後であり、俺を嵌めた人物を探して復讐する機会は無いだろう。
そんなことより大事なことがある。
犯罪者にされたということは、牢屋に入れられるということである。
当然のことながら、そこでは能力の発動が禁じられ、端末も取りあげられる。
能力の発動阻害は能力ガチャが出来なくなっているため、どうでも良い。
しかし、端末を取り上げられるとガチャが出来ない。
ガチャしたいなぁ。
いつもなら就寝時以外、1時間に1回はガチャを回しているのにそれが出来ないなんてストレスがスゴい。
ガチャしたいなぁ。
ガチャしたいなぁ。
この鉄格子は、体をバラバラにしたら通り抜けられるんじゃないかな。
ガチャしたいなぁ。
ガチャしたいなぁ。
ガチャしたいなぁ。
頭部や胴体はバラバラでも無理か、それなら、三枚おろしにしたらいけないかな。
ガチャしたいなぁ。
ガチャしたいなぁ。
ガチャしたいなぁ。
ガチャしたいなぁ。
指一本でガチャ出来るし、それ以外の部分要らなくね?
ガチャしたいなぁ。
ガチャしたいなぁ。
ガチャしたいなぁ。
ガチャしたいなぁ。
ガチャしたいなぁ。
ガチャ出来ないストレスで眠れない。
ガチャ……
翌日、世界恐慌が起きた。
世界中のネット上で動かせる流動資産が、何故か複数のゲーム会社に移動していたためである。
回避できたのは、タンス貯金のようなネットに繋がっていない現金と、頭に花が咲いている人が所属する風紀委員支部のような、ごく一部のセキュリティの強い場所だけだった。
ゲーム会社が今回の事件の犯人ではないかなどと色々揉めた後、金が移動していたゲーム会社は、それらの資産すべてを返却することで存続を許された。
しかし、量が量であり、すべての返却がなされるのに数ヶ月かかり、その間経済は混乱した。
脱税が発覚して各国の国庫が少し潤ったことだけが、この騒動が起きて良かった点だろう。
目が覚めると、鉄格子の向こう側にお盆を持った人が居た。
食事を持ってきたようだ。
食べ物の中には、紙が挟まれていた。
こんな料理もあるのか。
世の中広いなぁ。
気にせず口に放り込もうとすると、食事を持ってきた人に慌てて止められた。
紙には、牢屋から出たいか?と書かれていた。
当然だ、ガチャを回したい。
出たいと言うと食事に指を指された。
食えってこと?
違う?
お盆の裏を見ろ?
お盆の裏には契約書が貼られていた。
要約すると、指示された仕事をするなら助けてやる。
ただし、現在の戸籍を失う必要がある。
つまり、今の自分は書類上、死人として処理されるわけだ。
学校は行ってないし、親族も居ないから、何も問題無いな。
同意するならサインしろと書かれていた。
書くもの無いけど、血でサインすれば良いのかと聞くと、箸に筆が仕込まれていると言われた。
サインした。
で、端末は?
ガチャしたいなぁ。
端末は後から返すらしい。
その後、別の人が現れて、鉄格子を開けた。
その人に付いていったら、奇妙な外観の建物の近くまで案内された。
出入り口も無いのにどうやって入るのだろうと思っていると急に視界が変わり、部屋の中に居た。
転移能力か。
目の前には水槽があり、その中には人が逆さまに浮かんでいた。
ガチャしたいなぁと声に出ていた。
返してもらったのでガチャする。
ああ~、やっぱりガチャを回すと落ち着く。
ガチャしながら話を聞くと、学園都市の外で活動して欲しいとのことだ。
活動といっても学園都市の外で普通にガチャして暮らすだけで良いとのことだ。
しかも、経済的に支援してくれるらしい。
血税で回すガチャはさぞかし楽しいことだろう。
具体的には、仕事の報酬とは別にレベル4相当のお小遣いをくれるらしい。
有り難い。
代わりに仕事を頼んだ時の拒否権は認めないと言われた。もちろん、ガチャを回すことを禁止するような仕事は与えないらしい。
断る理由が無い。
最初の仕事はある組織への潜入だった。
取りあえず潜入さえしとけば、後は特に何もしなくても良いらしい。
世界中で電波の繋がる連絡用端末と最新版の翻訳機を貰えたので早速仕事に取りかかろうと思う。
研究員視点
お偉方から、ある子供の能力を調べてくれと言われた。
医者と協力して調べた結果、暴走時の能力は分かったが、通常時の能力が分からなかった。
子供の能力開発を担当していた以前の研究所の記録から押収された端末を調べたが、何の成果も得られなかった。
代わりに代機の方で面白いことが起きていた記録が残っていた。
そこで、寝ている間に代機も取り上げて、その子供の手元に端末が無い状態にすると、とんでもない結果が得られたらしい。
お偉方から、レベル2で登録するようにと言われたが、少なくとも効果はレベル2なんてものではない。
日常生活に役立つかと言われると役立たないと返すしかないが……
ここまでが前の研究所の記録から得られた情報である。
前の研究所は金が無くなったため、悪事に手を出し捕まったが、実験の記録はしっかりしていた。
暴走時の能力について、我々と同じ結論に至ったことがそれを物語っている。
記録に度々出てくる能力ガチャという言葉は意味不明だが、我々よりもっと深く子供の能力について研究していたのだろう。
砕石妖精という能力名と関わりがあるのかもしれないが、我々には検討がつかない。
記録から能力は分かったが、本当かどうかの検証やより詳細な能力を調べたい。
そのため、子供を牢屋に入れて、ネット環境の無い状態にした。
寝ている間に取り上げた場合と違うのは、本人の自覚である。
牢屋に入れることでこれからずっと端末が触れないことを意識させたのだ。
そして発動した能力は、お偉方の手にすら余る事態を引き起こした。
お偉方は実験の中止を慌てて我々に言い渡した。
拾ってもらった恩があるので逆らいはしないが、研究が出来なくなってとても残念だ。
あの子供の通常時の能力の強度はレベル1だった。
学園都市に来た時から変化していない。
以前の研究所が申告したレベル2やレベル3は暴走状態だったのだろうか?
通常時の能力を簡潔に言えば、マクロあるいはbotに近い。
ソーシャルゲームのインストール、アンインストール、ログイン、ボックス整理やデイリーミッション達成のための周回などを手助けすることだ。
まるで、あの子供が、ガチャを快適に回すためだけに存在するような能力だった。
そして、暴走時は、ガチャを回し続ける能力となる。
能力者本人がガチャを回せない鬱憤を晴らすかのように。
ガチャ用の資金が無くなれば、別の場所から資金を奪ってガチャ用の石を購入し、ガチャを回す。
奪える金が無くなるか、端末が本人の手元に戻るまで止まることはない。
そして、1カ月の課金額に制限のあるゲームや回数制限のあるガチャなど、何らかの制限のためにガチャを回せなくなると、見境なく(現実・概念問わず)石を砕くようになる。
得られた情報を整理してみると、あの子供の暴走時の能力は、効果はレベル4、効果範囲だけならレベル5クラスかもしれない。
日常生活にはまったく役に立たないが、無差別テロにはさぞかし役立つだろう。
いや、能力を知れば、無差別過ぎて、テロを起こそうとする組織を最初に崩壊させることは容易に想像出来るから手を出さないか。
やっぱり役に立たないな。