結構長め。
具体的には9000字弱。
実を言うとキリが悪いからもう書いてしまおうと思ってさっさと書いたので書き直しするかもです。
それと、ヤンデレが好評過ぎてちょっとビックリしました。
作者なりに期待に応えられるように頑張りましたが無理でした。
いや、だってタダですら難しいのにその上会話無しなんて難易度高過ぎますって。
なので会話文がマジで無かった事に気付いたのもあって、最初の方に後から付け足した感満載のセリフ入れました。
ヤンデレ分、これで補給って事でいいですかね?
P.S.
原作キャラ一部強化と精神的BL(報告忘れ)を追加しました。
気を抜けばすぐに何処かへ行ってしまう。お姉ちゃんがそうだと知ったアリサは、自分の事など二の次になった。
例えば、寝ている時。アリサは深く寝るどころか、浅過ぎる程の睡眠しかとらなくなった。自分が寝ている時にお姉ちゃんが何処かへ行っている事に気付いたから。
手遅れになって後悔するくらいなら、この身など壊れようが構わないとすら思うようになった。だから、全身を襲う激痛なぞ気にならなかった。
だが、当のお姉ちゃん本人がそれを許さない。現に早朝になって早々引き剥がされている最中だからだ。
(ねぇ、なんで?どうしてそんな酷い事をするの?)
アリサには理解できなかった。何故、引き剥がそうとするのかを。自分はお姉ちゃんと一緒に居たいだけなのに。それを許してくれないのか。
それでもお姉ちゃんは引き剥がす事を止めない。
子供とは言え、人間の100%の力を引き出し続けるアリサと片手で逆綱引きを容易く行って見せるお姉ちゃん。そんな時にお姉ちゃんの目が批難するかのように自分を見ている事に気が付いた。
それに気付いた瞬間、今まで湧き上がっていた力がふっと抜けた。
(あ・・・)
力を引き出していた目的がお姉ちゃんと一緒にいる為ではあったが、だからと言って嫌われてもいいという訳ではない。
生きる意味がお姉ちゃんと居る事くらいしかなくなったアリサには、一緒に居られないのは勿論、そこまで執着している人物に嫌われるというのは耐え難かった。
そんな心境から力を入れる意味が無くなり、抵抗をいきなり止めたアリサは宙に投げ出された。それがいきなり離したから、なんて考えに至るよりも投げ飛ばされたから、という考えに至る方が早かった。
受け身をとる所か身体が硬直する事すらしない。そんな無気力なアリサだったが、襲った衝撃が思ったよりも小さかった事には疑問を持った。
思考を再開すると、身に覚えのある感触に温度、そして安心感。それだけで、お姉ちゃんに抱き締められていると感じ取れた。守ってくれたのがお姉ちゃんという事実に嬉しくて堪らないアリサは力が戻り、自分のものと遜色無い胸に顔を埋めて抱き着いた。
先程の事を許してくれたのかは分からないが、抱き着いた位置が殆ど同じ。また引き剥がされるかと思ったが、そんな心配は無く、お姉ちゃんは立ち上がった。
力が戻ったと言っても、微妙なインターバルを挟んだ事により疲労が顕著になった為、全身を襲う痛みが強く感じられ、今にもずり落ちそうだった。
それでも必死にしがみついて離れないアリサにお姉ちゃんがそっと身体を抱っこするように支えてくれた。一気に身体が楽になり、痛みはあるもののさっきよりも格段に楽になった。
その後、お姉ちゃんがコートを羽織り、ジッパーを閉めてアリサごと自分の身体を包み込んだ。真っ暗になった視界ではよく分からなかったが、高速で移動している事はなんとなく分かった。
(ふぁ~・・・♡)
少し窮屈に感じたものの、それ以上にこの閉鎖空間がアリサにとっては楽園のように感じられた。いつもの抱き着くような包み方ではなく、お姉ちゃんの身体とコートに文字通り包み込まれた、そんな状態。その上、一定のリズムを刻みながら聞こえてくる心臓の鼓動。
未だに精神が不安定なアリサを正常(?)に戻す程に彼女の心は幸せに満たされていた。そして、今までの大人ですら堪え難い程の疲労を溜め込んできたアリサはあっさりと深い深い眠りに就いた。
◇
怖い夢を見て目が覚めた。時間的にパパとママが帰って来てる頃だったが、隣にパパとママはいない。何度も寝直そうとしたが、怖くて上手く寝れなかった。もしかしたら、もう少しでパパとママが帰って来るかもしれないので布団に
するとリビングの方からギシ、ギシという物音が聞こえた。パパとママ達が帰って来たのかと嬉しくなったが、怖い夢を思い出し、布団を被ったまま恐る恐る部屋を出た。リビングの方を見ると明かりが点いていなかった。その事実がアリサに更なる恐怖が襲ってくる。
ゆっくりと歩を進めて、音がするリビングへと歩いていく。次第に音は大きくなり、扉をそっと開けると誰かが苦しむかのように押し殺した声が聞こえてきた。
強盗か、それともアラガミでも来たのか。そんな恐怖に支配されつつも、中が見える程に扉を開けてバレないように覗く。
そこで目にしたものは━━━━━━
━━━━ソファーで苦しそうに声を押し殺す裸の女性とそれに覆い被さる裸の男性だった。
それを見た瞬間にアリサは隠密行動を止め、扉を思いっ切り開けて二人の元へと走り、男性を女性から引き剥がそうとした。
「うわっ!なんだ!?」
「
「ふぇ?・・・どうしたの、アナ・・・タ・・・・・・え、アリサ!?」
「パパ!早く離れて!!」
「あ、いや違うんだ、アリサ。これはその・・・」
「ア、アリサ?ママは大丈夫だから、ね?だから・・・えーと・・・その・・・あ、お布団に戻りましょう?怖い夢でも見ちゃったのね?さぁ、ママが一緒に寝てあげるから、先にお布団に戻っておいで?」
「・・・ママも一緒じゃないとや」
「う、うぅ・・・行くから。後でちゃんと行くから。だから今は言う事を聞いて?」
「・・・でも、またママがパパに虐められちゃう」
「ま、待てアリサ。あれは・・・」
「アナタ!いつまでその格好でいるつもりなの!?早く着替えて来なさい!!」
「
「さ、アリサ。お部屋に戻りなさい?」
「いや、ママとがいい」
「うぅ・・・分かったわ。一緒に戻りましょうか」
「・・・うん」
◇
(・・・。・・・・・・・・・)
目が覚めたアリサ。
いつの日かから聞こえるようになった自身のモノとは異なる鼓動の音。それがきちんと聞こえる。それでも何処か心細くなり、お姉ちゃんの存在を確かめるように強く抱き締めた。
その動きでアリサの不安に気が付いたお姉ちゃんはちょうど拠点に戻った事もあり、ジッパーを上げてアリサの頭を撫でだした。それで安心したアリサはお姉ちゃんが離れてほしそうにしていたので身体から離れて、コートの裾を握って歩き出したお姉ちゃんの後を追った。
お姉ちゃんと出会ってからかなりの月日が過ぎた。その月日とお姉ちゃんという存在により、アリサの心を確かに癒されていった。
現にアラガミが出てくるような悪夢は見なくなったし、外への恐怖心が拠点内であるならばお姉ちゃんの一部に触れていればある程度の行動が出来るようになった。
変わりに過去の記憶を偶に見るようになり、その度に寂しくなるが、そこはお姉ちゃんに甘える事で欲求を満たして事無きを得ている。
外に少しずつ目を向けれるようになったアリサは、お姉ちゃんが普段どれだけ自分の為に尽くしてくれているのか気が付き出した。
そんな余裕が出来始めたアリサの心には、お姉ちゃんの役に立ちたいという気持ちが湧き始め、同時になんでもソツなくこなすお姉ちゃんに子供が持つ、身近な年上に憧れて真似をしたい、そんな欲求も抱くようになった。
そして部屋の中であり、お姉ちゃんの一部であるブレードを使用する調理はこれらの気持ちが満たされ、偶発的に刀の扱いが上手くなるという都合がいい事ばかりだった。
そこまで頭が回っているかはさておき、アリサはコートの裾をクイックイッと引っ張ってお姉ちゃんにジェスチャーで自分が魚を捌く事を伝えた。
お姉ちゃんは言葉が通じないのか、こちらの言っている事を理解出来ていない。だからアリサは、このようにジェスチャーを始めた訳だが、最近はちょっとの動きで伝わる事があり、本人的に心が通っているみたいで棚から牡丹餅のような気分だった。
意図が伝わり、お姉ちゃんはあっさりとブレードをアリサに渡した。早速、見てきた通りにしてみようと思ったが案の定、かなり不格好な事になった。
ショボーンとするアリサにお姉ちゃんは二人羽織りの形で捌き方を教えていった。
それから数日後。お姉ちゃん程では無いにしても、及第点程度には捌けるようになったアリサ。アリサ的にはもっと二人羽織りで教えて貰いたかったが、一日だけだったのが不満な所。ただ、そうなった原因が出来てしまった自分にあり、早くお姉ちゃんに近付けて嬉しいもののどこか複雑な心境だった。
そんな才能を見せたアリサにお姉ちゃんは、アリサにでも出来るような自らの技術を伝授していった。
お姉ちゃんに近付けるのも然る事ながら、アリサにとっては遊びのようなものでもあった。お姉ちゃんと別の意味での触れ合い。パパとママとはあまり出来なかったそれは、今のアリサには一瞬で時間が過ぎていく程に充実していた。
次から次へと吸収し、自らのものへと無意識に昇華させていくアリサ。
遂には恐怖の象徴だったあのアラガミと同族のアラガミをブレードで倒せるようになっていた。お姉ちゃんと慕う人物が食べていたモノがアラガミの中にあり、喜んでもらおうとそれを掴んだ。コアを掴んだ時に痛みが走ったが、いつもの事なので特に気にする事はなかった。
そして、コアをお姉ちゃんが口に含むと左目が蒼い焔に包まれた。
「お、お姉ちゃ・・・か、顔が・・・燃え、て」
どう言った原理かは分からないが恐らく、タイミング的に自分が渡したコアが原因だとアリサはすぐに理解した。どうにかして消そうと手を伸ばしたが、手を合わせるように優しく握られた。
どうしたのかと焔ではなく、表情を見てみると変化は少ないものの確かに微笑んでいた。
不器用な笑顔だった。それでも、初めて見たその笑顔にアリサは目が離せなかった。
だが、微笑みはすぐに消え、残ったのはいつもの無表情の顔に未だに煌めくように燃える蒼い焔。まだ、さっきまでの笑顔が忘れられなくて暫く顔を見続けているとある事に気が付いた。
それは自分があまりお姉ちゃんの顔を見ていなかった事だ。ジェスチャーやらで意思疎通が行えるようになったが、それは身体全体であり、寧ろ無表情のお姉ちゃんの心情を悟るのに顔色を窺う事は殆ど意味が無かった。
だが、こうして改めて見ると人形のように綺麗な顔立ちをしており、宝石のように輝く蒼い焔がそれを一層際立たせていた。
熱くない炎、というのはこんな世界でも珍しいものであり、そして綺麗な物や可愛い物が好きな年頃となるアリサは興味が惹かれた。どうなっているのか気になり、焔に手を入れてみたりすると、暖かいような何も感じないような不思議な感覚だった。更に手を伸ばすとその手を掴まれた。
どうやら、これ以上は目だったらしく、それ故に止められたのだろう。暫くすると焔が消えた。ちょっと残念な気持ちになった。
焔の無い顔も綺麗でいいが、その上を知ったならそっちの方がいい。そんな気持ちでその後も狩っては食べさせてを繰り返した。
途中で自分も食べたらお揃いになるだろうか?と思い、コアを食べようとしたアリサだったが、お姉ちゃんに全力で止められた。不満に思ったものの、両親のように信頼するようになった人がそう言うんだから危険なのだろうと渋々諦めた。
◇
更に月日が過ぎていった。
いつの間にか身長が伸びて大好きなコートの中に居にくくなってきた。最近では少しキツくなって胸元から顔を出してみた所、そこからの景色が気に入った。
乗り物なんて滅多に乗らないし、こんなスピードを出せる物自体が殆ど無い。これまでコートの中に包まっていた事を若干後悔するレベルだ。
そんなある日の朝。
いつも通りに魚を捕りに行こうとお姉ちゃんが魔法みたいに四輪のバイクをどこからともなく取り出し、アリサはコートの中に入ろうとするとお姉ちゃんから待ったが入った。
何事かと思ったアリサはお姉ちゃんの行動に驚いた。
なんと、後部座席に座らされたからだ。近頃、だいぶ精神が回復し、遠慮が無くなったアリサは勿論、抗議した。
「お姉ちゃん!確かに最近はコートの中が窮屈になった気がするけど、これはいくらなんでもあんまりじゃない!?いや、別にお姉ちゃんの中に居たいとかそんなんじゃなくてですね?ただアリサはあんなスピードで後ろなんていう危ない場所に乗ったら確実に吹き飛ばされるんじゃないかと危惧して、こうやって意義を申し立てている訳であって決して━━━━━」
だらだらと言い訳してなんとかコートの中に入ろうと言いくるめようとするアリサだったが・・・
「!・・・えへへ~♡」
コートを羽織らされてあっさり堕ちた。嬉しさのあまり前に乗るお姉ちゃんに抱き着き、頬を擦り付けると擦り付ける度に少しビクっとしている事に気が付いた。
それに味を占めたアリサは案外、後ろも捨てたもんじゃないなと大満足であった。
◇
いつも通りにお姉ちゃんが食料調達しに行って、アリサがトライクと呼ばれる乗り物で暇を持て余していた。成長したアリサは今では寝る事すら無くなり、それにより新しい発見があったものの、こうして暇な時間が増えた。
寝ようと思ってもいつも寝れる訳ではなく、寧ろ寝過ぎて睡魔のひとつも襲って来ない程だ。アラガミを掃討したりなどの運動後は寝れるのだがいつもいつも狩っている訳では無い。
そんなアリサには目の前に絶好の玩具があった。要は魔が差したのである。アリサ本人もイケない事だと分かってはいるが、だからこそ止められない。だが、こういうのは大抵の場合、バレる。
現に思ったように出来ずに焦り出すアリサは戻って来たお姉ちゃんに見下ろされるまで気が付かなかった。お姉ちゃんの影で気が付き、冷や汗を流しながら見上げるアリサ。アリサ本人からは影が差した無表情のお姉ちゃん。
普通に怖かった。
「お、お姉ちゃん!?あ、いや、これは違くて・・・だから・・・えーと・・・その・・・あ、手が滑っちゃってー・・・あ、アハハ・・・ハハ・・・・・・あぅ・・・」
聡いアリサでも流石に言い訳を思い付かなかったし、そもそも嘘を吐きたく無かった。それでも今のお姉ちゃんが怖く感じたし、嫌われたくないとも思い、その結果、手が滑ったなどと分かり易過ぎる返答した訳だ。
そんなお姉ちゃんの反応は手をゆっくりと上げた。
「っ!」
それにアリサは眼をぎゅっと瞑って身構えたが、やって来たのは頭に乗る大好きな人の手。目を開けてみると無表情ではあるもののお姉ちゃんがどこか生暖かい眼差しでアリサを見ていた。
お姉ちゃんはそのまま手を退けるとアリサを膝に乗せて一から教えて見せていった。
そして特に躓く事無く乗りこなせたがお姉ちゃんが平気な顔で並走しだした事にアリサは少しだけ驚いた。が、隣で走れる喜びでどうでも良くなった。
その後、暇さえあればコートを着せてもらってトライクを走らせて貰えるようになり、アリサはもう訳が分からなくなるくらいに歓喜に打ち震えた。
◇
ある日、突然お姉ちゃんに外へ連れ出されたアリサ。何事かと思い、顔色を窺うが何をするかはよく分からなかった。まぁ、付いて行けば分かるか、と思い付いて行ったがいつまでもよく分からず歩くだけ。
どうやら文字通り歩くだけと気付いたのは何日か後の話。意図は掴めなかったが、アリサにはいつしかこの時間が恋しくなってきていた。
特に何をするでもない。強いて言うならただ歩くだけ。それだけなのに、とても心が満たされた。アラガミに食い尽くされた嘗ての美しい町が輝いて見えた。今、この世界に自分たちだけだとさえ錯覚した。いつまでもこんな時間が続いてくれと終わりが近付く度に何度も願った。
その日は、ちょっと我儘を言ってもう少しだけ、ほんの少しだけ歩く事になった。まだこの時間に浸っていられると嬉しくて堪らなかった。
そんな時だった。左側から肉が切り裂かれるような音が聞こえたのは。嫌に時間の流れが長く感じながらも、何があったのかと振り向いた。
「・・・え」
そこには斬り離された片腕と肩口から噴水のように蒼と黒が混ざった血を吹き出すお姉ちゃんだった。
「・・・ッ!」
「ぐっ!?」
思考が現実に追い付く前に何かに吹き飛ばされ、宙に投げ出された。時間の流れが遅くなった世界で見えたのは片脚を蹴り上げたまま、あの綺麗な笑顔で何かを伝えるように口を動かしたお姉ちゃんと、それを踏み潰すいつかのあの黒いアラガミだった。
「がはっ!」
子供の軽い身体はバウンドせずに壁まで直撃し、時間の流れが元に戻ると同時に漸く止まった。
「ぁ・・・ぁあ・・・ぅぅ・・・」
すぐに助けに行こうと起き上がろうとしたが、呼吸もままならず中々起き上がれない。克服した筈のあの時の記憶が蘇ってくる。
這い蹲るようにしてなんとか顔を上げると、目の前の地面に転がる斬り落とされた片腕に、あのアラガミがお姉ちゃんが居た所を何度も何度も攻撃している光景だった。
「・・・え・・・あ・・・・・・ぁぁ」
視界が歪み、整い始めた呼吸が悪化しだした。いつまでも不気味な血を流し続けるその腕から目が離せない。気付けば攻撃する音が止んでいた。
あの時の光景が何度も何度も繰り返される。パパとママが喰い殺された時と状況があまりにも酷似していた。
(大丈夫。お姉ちゃんは強い。あんなアラガミなんかに・・・負ける・・・筈が・・・・・・筈、が・・・)
ない、とは自らが浴びたどう考えても致死量の血に心の中ですら言い切る事が出来なかった。それに片腕を目の前で斬り落とされたのだ。不意討ちだったとはいえ、今の状態で適うとは思えなかった。それでも、もしかしたらお姉ちゃんがやっつけたから音が止んだんじゃないのかと希望を抱いた。
だって、私よりもあんなに強いのだから。アラガミなんかに負けない。負ける筈がない!!
自分の身体が震え、心が完全に屈している事すら気が付かずに、アリサは音が止んだ方向を向いた。そして、目にしたのは━━━
背中の鋭利な翼で吊るされたお姉ちゃんがアラガミの口へと落ちていき、その身体を噛み潰される瞬間だった。
「待っ・・・」
ブシャァァァァ!!
「・・・ッ!・・・ッ!」
待ってと口にする前にアラガミの口から蒼と黒の血が再び吹き出す。その隙間に苦しむお姉ちゃんが見え隠れする。
「ぁぁ・・・ぁぁ・・・!」
何度も何度も何度も何度も何度も何度もあの時の光景が蘇ってくる。
まただ。また奪われた。
私が何をした。なぜ、私ばかりなのか。
少しの我儘も許してはくれないのか。
ただ、この時間が終わって欲しくない。だから、ほんの少しだけ我儘を言っただけじゃないか。
なんで・・・なんで・・・。
「!」
己の中で応えの返って来ない問い掛けを繰り返しているとふと、口から出したお姉ちゃんの上半身が起き上がろうとしている所が見えた。
まだ終わってない。まだ間に合う。
希望の光が見えた。針の穴のように小さな光。それでもアリサにとっては太陽のように明るい希望の光が。
助ける為に掴み取る為に立ち上がろうとした。
だが、脚は動かなかった。
「なん・・・で・・・」
己の脚を見下ろせば、震える脚と一緒に震える身体が見えた。ここに来て、漸くあの頃に戻ったのだと理解したアリサ。タンスの中で震えて、ただ見てるだけの弱くちっぽけな自分に戻ったのだと。
「なん・・・でよ・・・・・・お姉ちゃんが・・・お姉ちゃんがまだ助かるかもしれないのに!なんで動かないのよ!!また失うのよ!!その恐怖が分からない訳ないでしょ!忘れた訳ないでしょ!それでも!・・・それでも・・・なんで・・・動かないのよぉ」
それでもあの時の自分とは違う。もう繰り返さない、もうあんな思いをするのはごめんだとどれだけ自分を奮い立たせてもその場から一歩どころか、立つ事すら叶わなかった。
「お願い・・・動いて・・・動いてよぉ。嫌なの。もう何も失いたくないの。だから・・・だからぁ・・・」
グシャッ!
そして、未だに抵抗しようとしていたお姉ちゃんに遂にトドメを刺すかのように思いっ切り顎に力を入れた。
「・・・ぁ」
更に勢い良く血を吹き出し、力無く項垂れるお姉ちゃん。もう、アリサの心は限界をとうに通り越していた。
(こんな世界・・・もう・・・・・・嫌だァ)
◇
「ん・・・ここは・・・」
「目が覚めたかね」
病室である少女が目を覚ました。そこへちょうど来ていた医者が声を掛けると少女はそちらへゆっくりと振り向いた。
「貴方は・・・?」
「私は大車。医者であり、まぁ、君の担当医だ」
「医・・・者・・・?」
「覚えてないかね?君は危険区域で倒れていた所をゴッドイーターに救出されたんだ」
「危険・・・区域・・・・・・危険・・・危険・・・・・・!」
「ど、どうした!?」
「パパ!ママ!ごめんなさい!違うの!!そんなつもりじゃなかったの!!」
「ちっ、鎮静剤が切れたか。おい!新しいのを持って来てくれ!」
「は、はい!」
突如、錯乱しだした少女に医者は近くに居た者に薬を持ってくるように伝えた。その後も薬が届くまで少女の錯乱は収まらず、それを止めようとした他の医者達が逆に重症を負ってしまった。
原因はその少女の人間とは思えない腕力によるもの。明らかに、その少女は異常だった。
「ふむ。今日、いや、当分は無理そうだな」
事態を大人しく見ていた大車はそう結論付け、病室を後にし、何処かに電話を掛け出した。
「あぁ、支部長。私です。大車です。・・・はい、その件ですが、少女の精神状態的に当分は無理そうです。暫くは治療に専念すべきかと。てはい、分かりました。・・・それでは失礼します」
電話を終えた大車は思考に耽った。
「まさか、生きていたとはな。ちょうど一年前に死んだとされた少女、アリサ・イリーニチナ・アミエーラ。しかも蒼と黒の液体
そう口にするや大車は次の患者の元へと向かった。
病室には鎮静剤を打たれ、眠る少女が。その小さな口からある言葉が寝言のように紡がれた。
「パパ・・・ママ・・・」
その紡がれた言葉にはあれだけ慕っていた人物を呼ぶ言葉が確かに無かった。
アリサ・イリーニチナ・アミエーラは、一年の時を経て救出され、そして、その一年の記憶が丸々消えていた。
・・・いや、ちゃうねん(唐突)
シリアス無しとか言ってましたけど、この世界では無理でした。
閑話って事で勘弁してくだされば幸いです。
あと、ロシア編?がほぼ終了です。
後はアラガミと戦って極東に行きます。
それはマジで4月頃になります・・・多分。
そして、アリサには記憶喪失になってもらいました。
いやだって、あれだけの体験したら、そりゃ記憶の1つや2つは無くなるでしょうって思ったので。
・・・まぁ、そっちの方が話を進めるのに都合がいいってことがあるかもしれなくもないかもですけど。
一年だけ、正確には主人公との記憶が消えたのも上と似たような理由です。
流石に完全な記憶喪失は話が思い付きませんでした。
因みに、アリサが動けなかった理由ですけど、精神的なダメージは勿論のこと、実は主人公が蹴り飛ばしたダメージも割と深刻な原因だったりするんですけど、それが明かされる事は永遠に無いでしょうね。
なんせ、当事者二人がその事に気が付いてないんですから。
さて、これからどうやって倒そうか・・・。
それでは次回も気長にお待ちください!
あ、主人公は健在ですよ?