全員がジャージに着替え、グラウンドに集合すると
「遅い、時間は有限…テキパキ動け」
「いや、てかこれからなにするんすか?」
来るのが遅いとぼやく相澤先生に赤髪のツンツンが質問した。まぁそうだわな、他の科やB組も多分体育館だろうし…そう思ってると
「今から個性把握テストを行う」
「「「「個性把握テスト!?」」」」
「入学式は!?ガイダンスは!?」
「ヒーローにそんな事をする悠長はない。雄英高校は自由な校風が売り文句だが、それは先生側も同じということだ」
相澤先生がこれから行おうとする事を発表すると全員が驚いた。特にさっき緑髪の少年と話してた茶髪の娘は本来やってるであろう事をすっぽかしてやることに驚きを隠せていないが相澤先生はそれらの質問を一蹴した。
まぁ、驚く気持ちも分かる。だが…俺は別の事への驚きが心を占めていた。
(親父の個性って確か予言じゃなかったよな)
こう思ってしまう程である。何故かと、
雄英の校則は自由がモットー…教師にも当てはまる。教師にもよるがいきなり何かをしてきてもおかしくねぇって事だ
(警戒はしてたが…ここまで大当たりだと逆に怖いな)
後で親父に聞くことが増えたが、今はこっちだなと意識を向けると
「お前ら中学の頃やっただろう?ソフトボール投げとかの個性禁止の体力測定」
「それを今からやるんですか?」
「そうだ、それを個性を使ってやる。爆豪、お前中学の頃の記録覚えてるか?」
「67m」
「んじゃ、円から出なければなにをしてもいいから個性使って投げてみろ」
そう言って相澤先生は爆豪にボールを投げ渡した。
「んじゃまぁ…死ねぇ!!」
…掛け声やべぇだろ。本当にヒーロー科志望かあいつ?だが、爆豪の個性は爆発、または爆破系か。攻撃力や殺傷力という点ではかなりの強個性なんだが…
(全力で使える場所がかなり限定されるな。あと個性を使う事で発生する音で居場所がバレるし煙による一時的な視界の悪さ、騒音被害や場合によっては器物損害等々…まぁそこはあいつの力量次第かな?)
自分なりに分析を始めた。情報は武器だと師匠も言ってたし、この個性把握テストでクラス全員の個性が見れるかも知れない。どういう個性を持ってるのか知れるのは数少ないチャンスと考えよう。
(
そう推測と分析をしてると、相澤先生の端末から電子音が聞こえ、こちらに見せた。
「まずは己の最大限を知ることから始める。それがヒーローの素地を作る合理的手段」
記録は705.2m…普通のやり方じゃ絶対に出せない記録である。まぁ俺からしたら他人の記録なんて悪いがそこまで興味がない。あるのは自分の記録だ。といっても眼中にないって訳ではないんだけどな。
「良し…ならトータル成績最下位は見込みなしと判断し、“除籍処分“にしよう」
「「「「はぁ!?」」」」
「うん?」
考え事に熱中してたので何がなにやら…近くのえーと…名前知らないんだよなぁ。髪型が特長的でなんか育ちが良さそうな女子が近いから聞くか。
「なぁ、何があったんだ?」
「え?聞いてらっしゃらなかったんですか?」
その女子いわく個性解禁による測定で
(まぁ分からなくもねぇな。半端な気持ちでやっても結果は分かりきってるしな)
だが俺には関係ねぇ、俺は俺でやるさ。
◆◆◆◆
最初は50m走…得意といえる競技だ。それぞれ個性を使ったり個性ゆえか使わなかったりして記録を出していた。ちなみに一番速いのは飯田というメガネくんだ。記録は3秒04…充分速いな。個性は多分スピード系、ふくらはぎの所にバイクとかについてる…マフラーだったかな?が付いていた。そして、
「次、爆豪と前田」
「はい」
名前を呼ばれたのでスタート地点へ歩き準備する。
『位置について』
呼吸を整え、
『よーい』
ロボットの言葉に注意を払い、
『スタート』
一気に駆け抜ける!ゴールを大きく越えたが、まぁ良いとして…記録は?
『2秒35』
「チッ」
舌打ちしてしまった。まぁこれが今の俺の実力なら受け入れるしかねぇ。肉体強化や個性の強化、そして
(ま、目標があるだけマシかな?)
そう思いながら戻ると、
「おま、めっちゃ速ぇな!」
「スッゲー才能マンじゃねぇか!」
「てか何で舌打ちしたんだ?」
等々とクラスメイト達が近づいてきた。
「単純にもう少し速く行けたと思ったからだよ。まぁ、まだまだ速く出来るかもしれねぇけど…それはこれから次第って事だな」
「2秒台でも充分スゲーんだけどな」
「正直飯田ってやつがトップと思ってたし」
その飯田も悔しそうにしていた。だが、
(記録なんざ、その気になれば塗り替えられるんだがな)
口に出さないが、一時の記録なんざ本人次第で変わるもの。まぁそいつ次第ではあるけどな。
そして他のクラスメイトの測定が終わり、次の測定が始まった。ちなみに待ってる間はクラスメイト達と自己紹介をしてた。
◆◆◆◆
そして測定は次々と終わっていった。握力や立ち幅飛び、反復横飛び、上体起こし、長座体前屈、持久走…そして残すはボール投げだけだ。ちなみに反復横飛びと上体起こし、持久走はいい結果を出せたが握力や立ち幅飛び、長座体前屈は微妙な結果だった。たけどもこれからこれらを伸ばしていけば良いかとプラスに考え直す。そして、
「次、前田」
「はい」
順番が来たのでボールを受けとる。どうやろうかと考え…
(これでいくか)
やり方が決まったのでその通りにする。まずボールを左手に持ち変え、軽く真上に投げる。周りがどよめいていたが数歩下がってボールがいい感じの所に落ちてきた瞬間、
「うぉらぁ!!」
ボールを思いっきり蹴り飛ばした。蹴ったボールはグングン上に上がっていき…相澤先生の端末から電子音が聞こえた。
記録は…1150m
「うーん…もうちょっと行けたか?…」
やっぱり普通に投げるべきだったかと少し後悔した。ま、しゃあないか、もっと鍛えれば良いだけだしな。そして次の緑谷という緑髪の少年の番になった。顔の表情はもうヤバイくらいに落ち込んでた。そして意を決したのか思いっきり投げたが
46m
「…は?」
個性を使おうとしてたのだろうし、緑谷自体も何がなにやら分からない状態だった。
「個性を消した」
そう相澤先生が言ったので相澤先生を見ると髪が逆立って目が赤く光ってた。
「抹消ヒーロー…イレイザーベッド!」
緑谷がそう叫んだ。だが他のクラスメイト達はあまり知っていなさそうだった。あまりメディアに出ないタイプのヒーローのようだ。
(そうなると親父や師匠も相澤先生と同じなのか?)
親父はメディアを好んでいないし、師匠はそもそもメディアに上がる事自体ないのだ。師匠いわく
わざわざメディアに出る等愚の骨頂…自分から弱点等を探させる等…殺してくれと言っている様なものだ
とよく俺に言ってたな。まぁメディアに出るヒーロー達もその対策はしてるだろうが…それでも手の内を晒すのはどうかとは思うけど。
そして相澤先生は緑谷に近づき、何かを話してた。何を話してるんだろうなぁ…助言かそれとも宣告か…何であれそれらは結果次第だろうな。それとさっきから爆豪は緑谷の事をクソナードとかデク言ってるが…同じ中学か?だとしたら緑谷に同情するよ…あんなチンピラと一緒とか俺なら無視か最悪黙らせるな。そして話が終わったようで緑谷は円の中に入りまた軽く助走をし、腕を大きく振りかぶってボールを投げ飛ばした。だがさっきと違うのはボールが思いっきり飛んでいったからだ。そして緑谷は右手の人差し指を抑えてたが、その指は変色していて動かすだけでも痛そうな状態だった。実際緑谷は涙目だし、無理をしてるってのがすぐに分かる。だが、
「まだ…やれます!」
確かに指一本だけなら支障は少ない。まぁその指一本という代償があるがそれでもあの超パワーだ、充分すぎと言っても過言じゃねぇ。だが、疑問も生まれた。
(指一本だけであれだけのパワーがあるのなら握力も良い数値を出せたはずなんだが)
あれだけのパワーなら握力の測定の時測定器を握り潰してもおかしくない。仮説をたてるとしたら
(後天的に発生した個性ゆえに体が付いていけてないのか?)
もしそうだとしたら指を代償にしたりというのも頷ける。後天的に発生する個性なんてあるのかと思うが、実際に後々になって個性が発生したという案件もあると親父が言ってたな。そして何故か爆豪が緑谷に凄い形相で近づいていった。緑谷もビビってたし、止めようかと動こうとしたら
「あまり個性を使わせんな…俺はドライアイなんだ!」
相澤先生が首の布を操り爆豪を捕縛していた。なるほど、相澤先生の個性は視界に入ってる相手の個性を消すことが出来る、そしてその個性の解除となるキーは多分まばたきなのだろう…確かドライアイはあまりまばたきをしない人がなるって聞いたから、まばたきをする瞬間までは視界に入ってる相手の個性を消すことが出来るようだ。そしてあの捕縛術…かなり相性が良さそうだ。そして暴れる爆豪に相澤先生が耳元で何かを言うと大人しくなった…
◆◆◆◆
そして結果発表…最下位は緑谷だった。緑谷が凄い落ち込んでると、
「ちなみに除籍は君たちの最大限を引き出すための合理的虚偽」
「「「「ええええ!?」」」」
「あんなの虚偽に決まってますわ。少し考えれば分かったでしょうに」
(さて、それはどうだろうな)
相澤先生の発言に驚くやつもいれば
そして説明があるとの事で教室に戻った。
◆◆◆◆
説明が終わり帰ってると、
「おーい」
声がしたので校門を見ると、そこには拳藤と心操がいた。
「お前、入学式に来てなかったけどどうした?」
「本当本当。A組だけ入学式とガイダンスに来なかったんだよ?何してたの?」
「個性把握テストをグラウンドでしてた。除籍をかけた」
「はぁ!?何それ!理不尽過ぎない!」
「文句は担任の相澤先生に言ってくれ。まぁ除籍は虚偽って事になったけど」
「虚偽ってお前」
「最大限を引き出すための合理的虚偽だそうだ」
「な、何か前田の担任の先生厳しそうだね…私達の担任は見た目は怖いけど優しい先生だったよ?」
「へぇ~…まぁ何とか頑張るさ。そういえば発目は?」
「ああ…何か取りに戻っ「前田さーん!!」「どわぁ!?」…て来たな」
心操が発目の事を教えてくれようとしてたらその発目が急に抱きついて来たのだ。
「前田さん前田さん!!ついさっき新しいベイビーが思い浮かんだんです!なので手伝ってください!もちろん良いですよね!?さぁ帰りましょうそうしましょう」
「うぉい発目俺は手伝うなんて一言も言って…って腕に抱きつくな引っ張るな!てかお前人の話を聞け!」
俺の話をスルーしてうでに抱きついて引っ張る発目…本当こいつは人の話を聞かねぇ…
◆◆◆◆
「えーと、いつもあんな感じなの?」
「あんな感じっていうと?」
「発目さんが前田の腕に抱きついて引っ張るの。確か入学式前もやってたけど」
「ああ、いつもだよ」
「ふーん…そうなんだ」
「気になるのか?」
「べ、別にそんなに気にはならないよ」
(そんなにではないけど気になるのか)
「何、その表情?」
「何でもねぇよ」
「おーい心操、拳藤こいつ止めるの手伝ってくれ!」
「だそうだ。行こうぜ」
「そうだね」
無事に入学出来た彼ら。だがあくまでもこれはスタートライン。彼らのヒーローへの物語は始まったばかりだ。
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